有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/10/23 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
139項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、「まるくて大きな時代をつくろう」を企業理念に、その実現に向けた第一弾の事業として、 クリエイターエンパワーメント事業を推進しています。
日本ならびに中国語圏におけるグローバルハンドメイドマーケットプレイス「Creema」の運営を行うマーケットプレイスサービス、「Creema」のプラットフォームを活用し、出店クリエイター・企業・地方公共団体のマーケティング支援を行うプラットフォームサービス、日本最大級のクリエイターの祭典「HandMade In Japan Fes’(東京ビッグサイト)」等の大型イベントの開催や、「Creema Store(新宿・札幌)」等の店舗を展開するイベント・ストアサービス、さらには、クリエイターの創造的な活動を応援することに特化したクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」など、クリエイターの活動を支援するサービスを様々な角度から展開し、まだ見ぬ巨大なクリエイター経済圏の確立と、クラフトカルチャーの醸成に力を注いでおります。
(2)経営戦略等
当社グループでは、マーケットプレイスサービスにてユーザー数(アプリDL数や訪問数等)を安定的に積み上げつつ、マーケットプレイスの運営を通じて構築される豊富なユーザー基盤、プラットフォーム基盤を活用し、広告サービスやイベント・ストアサービス等、周辺領域でのサービス収益もスケールしていくモデルとなっております。そのため、事業収益の基盤であり起点となるマーケットプレイスサービスの品質向上を通じたストック収益と戦略資産の積み上げに対し優先的にリソースを投下しつつ、そこで得た資産を活用する事業にもリソースを投下することで、シナジーの効く事業領域での収益源の多角化を図って参ります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの事業においては、中心的なサービスである「Creema」の、プラットフォームとしての価値を高めることが重要であるため、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、登録作品数、アプリダウンロード数及び流通総額であると考えております。
(4)当社グループの経営成績に影響を与える経営環境
日本のハンドメイドマーケット市場は、2010年、日本初のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を当社がリリースしたことに端を発する比較的新しい市場であり、現在の国内市場では、当社グループが運営する「Creema」と、GMOペパボ株式会社が運営する「minne」の二大サービスが市場を牽引しております。
一般社団法人日本ホビー協会が発行している『ホビー白書2018年版』によれば、日本のハンドメイドマーケット市場の直近4ヵ年の年平均成長率(CAGR)は168%と非常に高い水準で推移しております。
また、近年ではスマートフォンの普及等を背景に個人間の電子商取引(CtoC)の市場が年々拡大を続けております。それにともない、個人によるECサイトの開設や、企業によるECサイトの提供が増加基調にあり、これまで実店舗にてハンドメイド製品を提供していた企業がハンドメイド専門のECサイトを作成する等、オンライン上でのハンドメイド製品の流通が一般化しており、今後も市場規模は引き続き一定水準以上の高成長率で拡大することが見込まれます。
さらに、当社グループのマーケットプレイスはプラットフォームとしての一面を持つため、流通規模が拡大するにつれて、取引に携わるクリエイター数や会員数、作品数等が増加し、それに伴い、プラットフォームとしての価値も高まっていく構造にあります。プラットフォームとしての価値の高まりが、我々のプラットフォームが生み出す収益、例えば広告サービスからの収益や、クリエイター・会員向けの支援サービスの収益を押し上げることで、当社グループの事業が関わる市場規模は一層拡大していきます。そのため、当社グループのサービスの潜在市場規模は、単純なハンドメイドマーケット市場の市場規模を優に超える巨大なポテンシャルを保持していると考えております。
足元では、新型コロナウイルスの影響により、人々の生活様式や消費行動にも大きな変化がみられています。当社グループにおいても、大型イベントの開催中止や実店舗の休業を余儀なくされるなど、売上の減少要因となる影響が出ている一方、マーケットプレイスサービスにおいては「巣ごもり消費」のニーズを捉えて、売上を大きく伸ばしている他、従来より進めて参りました収益モデルの複層化の進展もあり、事業全体としては堅調に成長することができており、現時点において、新型コロナウイルスの当社事業への影響は限定的であると考えております。
新型コロナウイルスの収束には、相当程度の時間を要すると想定しており、また、収束後であっても、人々の生活様式等が元の通りに戻るとは限らないと想定されます。当社は常に、世の中の変化に迅速かつ柔軟に対応し、市場の動向やトレンド、ニーズを的確に捉えた経営を行っていく所存であります。
なお、2020年3月より、当社グループでは、従業員の安全を最優先し、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、時差通勤およびリモートワークの導入等を行っておりますが、現状、事業継続にあたって大きな問題は生じておりません。
(5)対処すべき課題
①プロダクトの強化と新技術への対応
2020年8月末時点において約19万人の登録クリエイターと、約1,000万品の登録作品を抱えるハンドメイドマーケットプレイス「Creema」の運営こそ、事業ポートフォリオ上で最も重要な事業と位置付けております。そのため、「Creema」のWebサイト・アプリのプロダクト品質向上を通じてサービスのユーザビリティを高め、消費者により優れた購買体験を提供し、クリエイターの方々に、「Creema」上でより多くの売上をあげていただくことこそが、当社の事業運営上最も重要なテーマと考えております。それ故に、まずは当社の競争力の源泉である「Creema」アプリ・Webサイトを中心にプロダクトの磨き込みを行い、消費者・ユーザー側のユーザビリティを高めて参ります。合わせて、クリエイターの利便性を高める複数機能のローンチ等も組み合わせることで、引き続きより多くの方に愛されるサービスに育ててまいります。
②マーケットの拡張
ハンドメイドマーケット市場は年々大幅に成長しておりますが、更なる市場拡大に向けては、今までハンドメイド製品に関心を持っていなかった非ハンドメイドユーザー層にもアプローチを行い、新しい顧客層を獲得していくことが重要であると考えております。まず、ファッションやアクセサリー、インテリア等、「Creema」が展開するカテゴリーの内、競争優位性があり、かつ世間全体のニーズも強い戦略カテゴリーの拡張を行い、当該カテゴリーのクリエイター数、登録作品数を増加させ、ハンドメイドユーザー層に限らず、非ハンドメイドユーザー層も含めたより多くの方々にも商品起点でサービスの魅力を訴求してまいります。また、東京や北海道に展開しているリアル店舗を引き続き運営し、今までオンラインでのハンドメイド作品の購入に馴染みのなかった方々との接触機会を増やし、消費者の裾野を広げていきたいと考えております。さらに、「HandMade in Japan Fes'」をはじめとする大型イベントの磨き込みや、地方自治体と連携した各種取り組みの強化も行い、国内外でより一層のハンドメイド文化の醸成を進めてまいります。
③収益モデルの複層化
当社では「Creema」を始めとする各種サービスの運営を通じて、豊富なユーザー基盤、プラットフォーム基盤を保持しております。こうした資産を活かしながら、クリエイター支援を目的とする新サービスを提供することで、結果として収益の強化・複層化につながります。例えば、クリエイターが自身の作品広告を「Creema」上でPRできる内部広告サービスや、企業・地方自治体とのタイアップを行う外部広告サービスを本格化させる等、「Creema」という大規模プラットフォーム上で展開される広告及びその他の収益機会は年々拡大を続けています。また、現在、クリエイター向けに展開しているスピード振込サービスに加え、クリエイター・ユーザーの利便性向上に資する会員事業の拡張を通して、日頃「Creema」をご利用いただいている方々への多様なニーズに応えられるよう準備を進めてまいります。さらに、「Creema」で活躍されているクリエイターの創作活動を支援する追加サービスや、ミュージシャンや芸術家等、ハンドメイド以外のクリエイター支援領域も含め、当社が蓄積してきた資産を活用した「新市場への参入」も積極的に推進してまいります。
④優秀な人材採用と企業文化の醸成
事業の継続的な成長を実現するためには、優秀な人材を採用すると同時に、強い企業文化を醸成していくことが重要であると考えております。当社では、引き続き優秀な人材の獲得に注力しつつ、ユニークな企業文化を今後一層発展させるべく、時代に沿った新たな人事制度の構築を行い、当社グループのブランド価値向上と強い企業体の構築に努めて参ります。
⑤経営管理と内部管理体制の強化
当社グループでは、事業の継続的な成長を実現していくために、経営管理体制の更なる強化・充実が必要不可欠であると考えております。事業成長に伴い、組織が拡大していく中で、重要指標のモニタリングや、会議体の設計・運用などを通して、組織の健全かつ効率的なマネジメントに取り組んでおります。また、今後更なる事業拡大を図るために、事業基盤を盤石にさせることが重要な課題であると認識しております。そのため、従業員に対して業務フローやコンプライアンス、情報管理等を徹底的に認知させるとともに、内部管理体制の強化・業務の効率化を行って参ります。