有価証券届出書(新規公開時)

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2021/02/19 15:00
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133項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当事業年度におけるわが国経済は、雇用環境の改善による緩やかな景気回復が続いていたものの、2019年10月からの消費税増税による景気の減速や米中間の通商問題、英国のEU離脱等の海外経済の動向に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済活動の停滞により、先行きは非常に不透明な状況にあります。
当社を取り巻くEC市場の環境は、引き続き小売りのEC化が進み、2019年度におけるBtoC-EC市場の伸び率は6.67%増(出典:「ITナビゲーター2020年版」 2019年12月4日 野村総合研究所)の見通しなど、主な顧客である通販事業者の商圏であるEC市場が拡大していることから、依然として当社事業に追い風になっております。
このような環境の下、当社は引き続き顧客からの要望と信頼に応えるべく、物流品質を高める行動を進めるとともに、業務効率改善への先行投資として、封函機やAGV(無人搬送車)の導入を行い、自動化可能な業務範囲を広げることにも努めました。
一方で、雇用環境の改善による企業の人手不足感の高まりやEC化の進展による宅配件数増加の影響により、物流業界では人材確保のための労働条件改善を目的とした宅配会社の料金値上げはありましたが、特に今期から本格稼働した2つのFC(東京都足立区、大阪府大阪市)の賃借料負担の増加や新センター立上げに伴う人員増強のための労務費増加等の影響により、売上原価率が前事業年度の90.2%から93.7%と上昇し、収益面で厳しい結果となりました。
なお、東京、足立、埼玉、三郷及び大阪FCの5拠点に加え、2019年10月に有限会社あきゅらいず(現 株式会社LIGUNA)の物流子会社である株式会社TETOTETOから通販物流事業を譲り受け、三鷹サテライトセンターの稼働を開始しております。
また、業容拡大に伴う管理部機能の拡充を目的とした人員増強に備え、2020年1月に東京都千代田区神田練塀町に東京本社を移転しました。
その結果、当事業年度の業績は、売上高8,385,453千円(前年同期比12.6%増)、営業利益は荷造運賃、労務費及び賃借料等の増加により売上原価が前年同期比16.9%増加し、また間接部門の強化に伴う人件費の増加等により販売費及び一般管理費が前年同期比28.2%増加したことにより、84,911千円(同77.7%減)となり、経常利益は102,705千円(同73.6%減)、当期純利益は76,545千円(同71.6%減)となりました。
第22期第3四半期累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大を受けた緊急事態宣言が解除された2020年5月以降、段階的に経済活動の再開が見られたものの、2021年1月に緊急事態宣言が再度発令され、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社を取り巻くEC市場の環境は、2019年におけるBtoC-EC市場における物販系分野は10兆515億円(前年比8.09%増)、EC化率は6.76%(前年比0.54ポイント増)と増加しており、引き続きEC市場は拡大傾向と考えられます(出典:「令和元年度 電子商取引に関する市場調査」 経済産業省)。また、新型コロナウイルス感染症の影響から、当社の主たる顧客である通販事業者につきましては、実店舗での営業に様々な制限を受けたことにより、新規に通販事業を開始する傾向が見られました。
当社においては、新型コロナウイルス感染症拡大防止に努め、従業員が安心・安全に働ける環境を整備するとともに、当社は日本の通販事業者と消費者を繋ぐインフラ事業の側面を持つことを自覚し、安全対策と事業拡大の両立に向けた施策を会社一丸となって取り組んでまいりました。
従業員の安全対策については、出勤日には体調不良者の有無について報告することを徹底するとともに、事務職のテレワークの一部導入及び役職員のマスク着用義務等を行ってまいりました。
事業面については、新規に通販を開始する事業者のお問合せ数の増加と営業活動が功を奏し、新規の顧客数は順調に増加いたしました。また、既存の顧客については、新型コロナウイルス感染症の影響により、出荷数を大幅に伸ばす顧客と出荷数が伸び悩む顧客の両極化が見られました。
その結果、当第3四半期累計期間の業績は、売上高7,969,844千円、営業利益193,767千円、経常利益209,035千円、四半期純利益129,062千円となりました。
財政状態の状況
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
(資産)
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べて、272,270千円増加し3,279,362千円となりました。これは、流動資産のうち、新規FC開設に伴う前払賃料の増加などにより前払費用が60,427千円増加したこと、及び利益減少に伴う中間還付法人税等の増加により未収法人税等が37,592千円増加したこと、並びに現金及び預金が12,017千円増加したこと、固定資産のうち、工具、器具及び備品が空調設備の取得などにより70,236千円増加したこと、及び建物附属設備が内装工事などにより35,091千円増加したこと、並びに機械装置が自動こん包ラインシステムの取得などにより33,927千円増加したことによるものです。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べて、214,048千円増加し2,193,729千円となりました。これは、流動負債のうち、新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な出荷数減少で荷造運賃が減少したことなどにより買掛金が96,867千円減少したこと、及び利益減少に伴い未払法人税等が70,187千円減少したものの、新規FC開設に伴うフリーレント部分の未払賃料の増加などにより未払金が304,838千円増加したこと、固定負債のうち、設備投資に必要な資金の調達として長期借入金が68,380千円増加したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べて、58,221千円増加し1,085,633千円となりました。これは、主に当期純利益の計上による繰越利益剰余金が56,497千円増加したことによるものです。
第22期第3四半期累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における資産合計は、前事業年度末比973,504千円増の4,252,867千円となりました。流動資産は未収法人税等などの還付により減少したものの、現金及び預金や売上高増加に伴う売掛金などの増加により、前事業年度末比911,822千円増の2,786,621千円となりました。固定資産は、減価償却費の計上により有形固定資産などは減少したものの、新規センター開設に伴う差入保証金などの増加により、前事業年度末比61,682千円増の1,466,246千円となりました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債合計は、前事業年度末比769,804千円増の2,963,533千円となりました。流動負債は出荷数増加に伴う荷造運賃に係る買掛金の増加や新規FC開設に伴うフリーレント部分の未払賃料に係る未払金などの増加により、前事業年度末比671,343千円増の2,295,541千円となりました。固定負債は、転貸に伴う預り保証金の増加や新規FC開設に伴う設備投資としての長期借入金などの増加により、前事業年度末比98,460千円増の667,991千円となりました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は、四半期純利益の計上などの増加により、前事業年度末比203,700千円増の1,289,334千円となりました。
この結果、自己資本比率は、前事業年度末比2.8ポイント減の30.3%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、877,110千円となり、前事業年度末と比べて12,017千円の増加となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は242,491千円(前事業年度は474,495千円の獲得)となりました。これは、主に各FCの有形固定資産やWMS等のソフトウェアに係る減価償却費110,134千円の計上及び税引前当期純利益102,705千円の計上並びに新規FC開設に伴うフリーレント部分の未払賃料の増加による未払金311,405千円の増加等により資金増加があった一方、新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な出荷数減少に伴う荷造運賃の減少などによる仕入債務96,867千円の減少及び新規FC開設に伴う前払賃料の増加などによる前払費用60,417千円の増加並びに法人税等の中間分の支払額132,659千円の計上等により資金減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は265,754千円(前事業年度は551,346千円の使用)となりました。これは、仕入債務に係る保証金の回収などによる収入36,415千円があった一方、主に新規FC開設に伴う有形固定資産の取得による支出210,328千円及び新規FC開設などに伴う保証金の差入による支出76,416千円の資金の減少があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、得られた資金は35,301千円(前事業年度は248,459千円の獲得)となりました。これは、新規FC開設資金として長期借入れによる収入180,000千円にて資金が増加した一方、主に長期借入金の返済による支出126,428千円等の資金が減少した影響によるものです。
(2) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当社は、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
② 受注実績
当社の受注実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、受注実績に関しては販売実績の項をご参照ください。
③ 販売実績
当事業年度における販売実績を示すと、以下のとおりであります。なお、当社の事業セグメントは、通販物流事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称第21期事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)第22期第3四半期累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
通販物流事業(千円)8,385,453112.67,969,844

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
相手先第20期事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第21期事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第22期第3四半期累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
(株)LDH JAPAN1,306,89617.61,280,07515.31,279,98316.1
(株)カーブスジャパン1,051,88214.11,037,40212.4747,4709.4

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
第21期事業年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
(売上高、売上原価及び売上総利益)
当事業年度における売上高は8,385,453千円(前年同期比12.6%増)となりました。これは主に新規顧客を獲得したことにより、消費者からの注文が増加し、運送売上高が増加したこと、新規顧客を獲得したことにより、第19期に設立した三郷FCと当事業年度に設立した足立FCの稼働率が上昇し、保管業務や管理業務が含まれるセンター売上高が増加したことによるものです。また、売上原価は7,854,500千円(同16.9%増)となりました。これは主に消費者からの注文が増加したことによる荷造運賃及びFC内作業増加に伴う労務費の増加に加え、保管面積の増加によって賃借料等が増加したことによるものです。この結果、売上総利益は530,952千円(同27.2%減)となりました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は446,041千円(前年同期比28.2%増)となりました。これは主に間接部門の強化に伴う人件費の増加及び東京本社の移転費用が発生したことによるものです。この結果、営業利益は84,911千円(同77.7%減)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当事業年度における営業外損益は17,793千円(前年同期比112.9%増)となりました。これは主に保険金収入により営業外収益が増加したことによるものです。この結果、経常利益は102,705千円(同73.6%減)となりました。
(特別損益及び当期純利益)
当事業年度における特別利益及び特別損失は発生しておりません。また、法人税、住民税及び事業税24,878千円並びに法人税等調整額1,281千円を計上しております。この結果、当期純利益は76,545千円(前年同期比71.6%減)となりました。
第22期第3四半期累計期間(自 2020年4月1日 至 2020年12月31日)
(売上高、売上原価及び売上総利益)
当第3四半期累計期間における売上高は7,969,844千円となりました。これは主に顧客社数の増加があったことによるものです。また、売上原価は7,325,997千円となりました。これは主に顧客社数の増加に伴う荷造運賃費等の増加や、新規FC運営に伴う賃借料の増加があったことによるものです。この結果、売上総利益は643,846千円となりました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は450,078千円となりました。これは主に管理部門の強化に伴う人件費の増加があったことによるものです。この結果、営業利益は193,767千円となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当第3四半期累計期間における営業外損益は15,267千円となりました。これは主に事業所税還付による収益16,693千円を計上したことによるものです。この結果、経常利益は209,035千円となりました。
(特別損益及び四半期純利益)
当第3四半期累計期間における特別損益は294千円となりました。これは固定資産売却益343千円を計上したことによるものです。
以上の結果、税引前四半期純利益は209,329千円、四半期純利益は129,062千円となりました。
財政状態の分析
財政状態の分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況の分析に関する情報については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社における資金需要は、主として荷造運賃、賃借料等の運転資金及びFC新設時の設備導入並びに保証金の差入等があります。運転資金の財源については自己資金により賄い、FC新設等の資金につきましては、株式上場時の新株発行による調達資金の活用及び金融機関からの調達を予定しております。なお、資金の流動性については、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は877,110千円となっており、また、取引銀行1行と当座貸越契約を締結しているため、十分な流動性を確保しているものと考えております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表等は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因にもとづき見積り及び判断を行っておりますが、不確実性があるため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(固定資産)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産及び法人税等調整額に影響を及ぼす可能性があります。
(貸倒引当金)
当社は、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、取引先の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合、貸倒引当金の繰入額の増加又は貸倒損失が発生する可能性があります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高及び経常利益を重要指標としております。
第21期事業年度は、上記「① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおり、売上高は増加し、経常利益は減少しました。今後も原価及び経費の低減を図りつつ、売上高及び経常利益の拡大に努めてまいります。
第20期事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第21期事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第22期第3四半期累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年12月31日)
売上高(千円)7,446,5778,385,4537,969,844
経常利益(千円)389,671102,705209,035