有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/06/01 15:00
【資料】
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【項目】
134項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、企業理念である「創造・誠実・躍進」のもと、IT営業アウトソーシング事業、ヘルスケアビジネス事業の拡大及びヘルスケアDXによる新たな製品・サービスを創出し、個人の健康状態に合わせた予防や治療を行うことで健康寿命が延伸することができる社会の実現に取り組んでいく方針です。
(2) 経営環境及び経営戦略
当社のIT営業アウトソーシング事業の位置するIT業界(ソフトウエア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業)における市場規模は、2009年度の売上高15兆円から2018年度は売上高25兆円へと増加の一途を辿っております(出典:総務省・経済産業省『「2019年情報通信業基本調査」主業格付けベース結果』)。又、ヘルスケアビジネス事業の位置するヘルスケア業界の市場規模は、2030年に40.4兆円になると見込まれております(参考:株式会社日本総合研究所 平成29年度健康寿命延伸産業創出推進事業(健康経営普及推進 ・環境整備等事業)調査報告書より)。
当社は、このような環境下でIT営業アウトソーシング事業を通じて、大手IT企業とのネットワークを構築し、DX推進・データ分析ができる人材を育成しております。又、ヘルスケアビジネス事業を通じて、シニアプラットフォームを構築し、ヘルスケア・リビングラボの取組みを拡大することで、介護施設での実証支援等を通じ、介護分野を対象とした製品の開発支援等を行っております。
そして、当社の顧客であるヘルスケア分野での事業拡大及び参入を検討する企業への営業活動の促進、レクリエーション介護士の育成に向けた企業連携による、シニアプラットフォームの拡充、介護だけでなく医療業界にも、DXを推進することで、ヘルスケアDXによる新たな製品・サービスの創出を行い、成長戦略の実現を図ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、主な経営指標として売上高成長率及び経常利益を重要な経営指標と考えております。
売上高成長率は、企業の成長性を示す最も基本的な指標であり、経常利益は、経常的な企業活動の結果で得られた利益を示していることから重視しており、両指標ともに毎年目標を設定しております。
又、事業別にはIT営業アウトソーシング事業については営業派遣配属(注)人数を、ヘルスケアビジネス事業については「レクリエーション介護士」2級認定者数を重要な経営指標としております。
営業派遣配属人数と「レクリエーション介護士」2級認定者数を事業別の重要な経営指標としている理由は、営業派遣配属人数は、IT営業アウトソーシング事業の成長性を客観的に判断することができるためであり、「レクリエーション介護士」2級認定者数は当社が目指しているヘルスケアDXの構築の基盤となるシニアプラットフォームの中心となると考えているためです。
(注)配属とは、顧客との人材派遣契約及び業務委託契約に基づき業務に従事することをいいます。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
企業を取り巻く経営環境は、急速な高齢化、経済格差、人口の減少、IT活用による情報格差等、かつてない社会構造の急速な変化の中にあり、顧客による選別や評価はなお一層厳しく、競争は激化するとともに企業の存在価値を常に問われる事業環境にあります。当社が、このような加速度的に多様化する時代に、持続的に成長し社会貢献していくためには、強い組織の構築と事業規模の拡大で強固な経営基盤の確立を目指す必要があります。これらを達成するために、現状下記の事項を優先的に対処すべき課題として取組んでまいります。
① IT営業アウトソーシングの認知度向上
当社のIT営業アウトソーシング事業は、未だ成長過程にあり、大手IT企業の顧客を更に増やし、事業を拡大するためには、認知度を向上することが必要となります。これまでもセミナー等を通じて、認知度の向上を図ってまいりましたが、より一層の啓蒙活動やプロモーションを通じて、認知度を向上し、大手IT企業の顧客を増やしてまいります。
② IT営業アウトソーシング事業における採用力と教育体制の強化
新型コロナウイルス感染症の影響により採用市場が不透明な中、取引実績のある人材紹介会社との連携を密にした、IT業界及び営業未経験の若年層の採用を積極的に進めておりますが、派遣後における退職者数の抑制が課題になっております。マネジメント層から若年層に対するフォローを強化することで派遣後のコミュニケーションを増やし、会社への帰属意識向上を図るとともに、eラーニング等を利用し派遣後の教育を強化いたします。これらの取組みにより、退職者数の抑制を図ってまいります。
③ シニアプラットフォームの拡充
当社がより多くのヘルスケア分野への事業拡大及び参入を検討する企業を支援するためには、シニアプラットフォームの拡充が重要となります。そのためには、より多くの介護関係者、高齢者の健康情報を集積することが課題となります。今後もヘルスケア・リビングラボのエリア拡大と介護レクリエーションの普及を通じて、介護関係者とのつながりを強めることで情報の集積を図ってまいります。更に、高齢者の健康情報の集積につながる問診票のオンライン化に取り組んでおります(現在、開発を進めており、提供開始は2022年以降の予定)。問診票のオンライン化は、健康記録の習慣化だけではなく、PHR(パーソナルヘルスレコード)(注)として発展・活用していくことで自らの健康状態にあったサービスを受け、健康寿命の延伸に寄与することを目指してまいります。
(注) PHR(パーソナルヘルスレコード=Personal Health Record)とは、個人の健康・医療・介護に関する情報のことです。個人の健康・医療・介護に関する情報を自ら時系列で管理し、自らの健康状態にあったサービスを受けることにより健康寿命の延伸を実現することを目指します。
④ ヘルスケア・リビングラボの取組みの拡大
当社が推進するヘルスケア・リビングラボの取組みを拡大するためには、自治体に取組みの意義と効果を適切に伝えることが重要であると考えております。その意義と効果のひとつとして、現在、高齢者の認知機能や心身機能の維持・向上に資するプログラムを立案・実施し、結果の検証を大学(研究機関)と進めておりますが、大学(研究機関)との連携を深め、より多くのプログラムの検証が必要と考えております。今後は、効果の検証を基にした積極的な広報活動を行い、ヘルスケア・リビングラボの取組みの意義と効果を広めてまいります。
⑤ ヘルスケアビジネス事業の事業モデルの推進
ヘルスケアビジネス事業では、「レクリエーション介護士」の増加のための営業活動、自治体や公的機関と連携した運営受託業務を進めてまいりましたが、安定利益を確保する事業モデルには至っておりません。介護レクアカデミー(注)の会員数の拡充、自治体や行政を対象としたセミナー開催により新たな運営受託業務の獲得に取組んでまいります。
又、介護事業者向けの派遣サービスの提供を開始しております。「レクリエーション介護士」を対象に、当社への派遣登録を促し、介護事業者への派遣を行っております。これらの取組みにより、収益基盤の向上を図ってまいります。
(注) 介護レクアカデミーとは、介護レクリエーションをテーマとした「学びの場」、「交流の場」、「実践の場」を提供することで、介護現場でのレクリエーションの価値向上につなげることを目的とした会員サービスです。
⑥ コンプライアンス体制の強化
リスク・コンプラ委員会及びコンプライアンス推進室の活動を中心に、コンプライアンス強化を図ってまいります。
リスク・コンプラ委員会は1ヶ月に1度開催し、リスク及びコンプライアンスに関わるものを取扱っており、コンプライアンスに関わるものとして当社事業運営に関わる法令改正のチェック、コンプライアンスに関する研修内容及び実施スケジュールの協議、コンプライアンス違反発生時の対応協議等を実施しております。コンプライアンス推進室では、リスク・コンプラ委員会とも連携の上、コンプライアンス遵守を図るための各種企画を立案し実行しております。又、リスクに関わるものとしてリスク発生時の対応協議やリスク報告の精査等を実施しております。なお、当該委員会は、コンプライアンス委員会及びリスクマネジメント委員会として、個別に組成されていた両委員会を2020年10月に統合し、運営を行っております。