有価証券届出書(新規公開時)

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2021/08/18 15:00
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【項目】
128項目

研究開発活動

当社は医薬品等の開発・販売等事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの研究開発活動の概要は記載しておりません。
第22期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
当事業年度における当社が支出した研究開発費の金額は81,434千円です。
なお、当事業年度末日の当社研究開発従事者人員は6名(臨時雇用者を含む)です。
第23期第1四半期累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年6月30日)
当第1四半期累計期間における当社が支出した研究開発費の金額は5,848千円です。
なお、当第1四半期累計期間末日の当社研究開発従事者人員は3名(臨時雇用者を含む)です。
(研究開発活動)
当社は、医薬品・医療機器開発の複数のパイプラインを有しており、医師主導治験などを活用して開発を進めています。
最近事業年度等の主要なパイプライン進捗概要は以下のとおりです。
PAI-1阻害薬RS5614の:慢性骨髄性白血病に対する後期第Ⅱ相試験医師主導治験を終了し、安全性と有効性を確認POCを取得することが出来しました。また、新型コロナウイルス感染症(RS5614のCOVID-19)肺炎に伴うARDSに対する国内での前期第Ⅱ相医師主導治験試験を終了し安全性を確認した後に後期第Ⅱ相医師主導治験試験を開始しました。米国とトルコにおいてもCOVID-19に伴うARDSの第Ⅱ相医師主導治験試験を実施開始していました。さらに、メラノーマに対する第Ⅱ相医師主導治験を開始しました。RS5614の新型コロナウイルス肺炎及びその他肺傷害等の呼吸器疾患治療薬のライセンスに関する優先交渉権を第一三共株式会社に許諾し、契約一時金を受領しました。また、RS5614のメラノーマは第Ⅱ相医師主導治験を実施しています。
ピリドキサミンRS8001は、:自閉スペクトラム症に対する第Ⅱ相医師主導治験試験を終了し、本薬剤の有効性を適切に評価するために検討すべき課題が明らかになりました。また、統合失調症は後期第Ⅱ相試験企業治験のデータ解析を進めています。さらに、月経前症候群及び月経前不快気分障害治療薬に対する第Ⅱ相医師主導治験を開始し、あすか製薬株式会社からオプション契約に基づくマイルストーンを受領しました。
RS9001(ディスポーザブル内視鏡)に関する:ライセンス契約を米国バクスター社と締結し、現在同社により承認申請の準備を進めています。それに応じて、バクスター社から契約一時金及びマイルストーンを受領しました。
人工知能を活用した医療ソリューション開発については、:RSAI01(呼吸機能検査診断システム)に関するライセンス契約をチェスト株式会社と締結し契約一時金を受領しました、また、RSAI02(慢性透析システム支援)はニプロ株式会社と共同研究契約を締結し契約一時金を受領しました。
最近事業年度等における各パイプラインの開発状況の詳細は以下のとおりです。
a.RS5614(PAI-1阻害薬)
(a) 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬
前期第Ⅱ相試験で得られたCML患者でのRS5614の有効性を確認するために、総投与期間が48週間の後期第Ⅱ相試験を東北大学、秋田大学、東海大学において医師主導治験として実施しました(治験開始は2019年9月開始で、治験終了日は2020年12月)。
計画どおり後期第Ⅱ相試験を終了し(2021年3月治験総括報告書を作成)、POCを取得しました。RS5614 180mg/日、48週間のTKIとの併用投与は、既存治療に比べてTreatment free remission (TFR)の達成率を著しく高める有効かつ安全な治療法であることが実証されました。TKI長期使用の重篤な副作用を減じて患者のQOLを維持できること、医療経済的な観点からもメリットの高い治療法を提供できると考えます。
2021年4月厚生労働省(審査管理課)と先駆的医薬品指定制度についての事前相談、2021年5月(条件付承認品目該当性相談)及び2021年6月(医薬品第Ⅱ相試験終了後相談)のPMDAの事前相談など、第Ⅲ相医師主導治験を含めた今後の開発ロードマップ策定の準備を開始いたしました。
(b) COVID-19に伴うARDS治療薬
RS5614の肺微小血栓、線維化、肺気腫改善作用及び肺(上皮)保護作用を基に、2020年から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害、呼吸不全での前期第Ⅱ相医師主導治験を東北大学、京都大学、東海大学、東海大学大磯病院、東海大学八王子病院、東京医科歯科大学、神戸市民医療センター中央市民病院の多施設共同、単群、非盲検試験で実施しました。
本試験準備の為、PMDA事前面談を2020年4月に実施しました。事前面談に基づき実施計画書を確定し、その後各施設でのIRB審査を実施し、2020年7月にPMDAから治験届が受理されました。
当該試験については、AMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究代表機関は東北大学、当社は分担研究機関)」に応募し、同年7月に採択されましたので、公的資金での治験実施が可能となりました。当社は、治療薬の製造と提供など業務を分担しました。
本研究は、定性的な主要評価項目のために有効性評価はできませんが、治験薬との因果関係で可能性ありの重篤な有害事象はないことから、RS5614 180mg/日までのCOVID-19肺炎患者での安全性は確認できたと考えます。なお、6月に治験総括報告書を完成しました。
現在、プラセボ対照後期第Ⅱ相試験(医師主導治験)を実施中です。2021年3月にはAMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究代表機関は東北大学、当社は分担研究機関)」に採択され、PMDA事前面談を2021年4月に実施しました。事前面談に基づき実施計画書を確定し、その後各施設でのIRB審査を5~6月で実施し、2021年6月から治験を開始しました(2022年3月終了、6月には治験総括報告書が完成予定)。登録患者数100名を見込む医師主導治験であり、国内20の医療機関の多施設共同、プラセボ対照試験となります。また、2021年度春の調整費にも採択され、治験予算が追加されました。
尚、海外においては、米国ではノースウェスタン大学、欧州(トルコ)ではメデニエット大学で、類似のプロトコールでそれぞれ第Ⅱ相医師主導治験を実施しています。米国においてはCOVID-19患者を対象として2週間の投与を行う単盲検試験計画で2020年7月にFDAの承認を受け、2020年12月から開始しています(ClinicalTrials.gov:NCT04634799)。トルコにおいては2020年6月トルコ保健省の許可を受け、5例での非盲検試験を2021年1月に終了し(安全性には特に問題がないことを確認)、現在、二重盲検試験を実施する準備を進めています。
2020年12月、RS5614の新型コロナウイルス肺炎及びその他肺傷害等の呼吸器疾患治療薬の全世界を対象とした開発及び商業化の独占的実施許諾(ライセンス)に関する優先交渉権を第一三共株式会社に供与し、当社は2020年12月に契約一時金を受領しています。
(c) 悪性黒色腫(メラノーマ)治療薬
PAI-1阻害薬RS5614が、免疫チェックポイント分子を制御し免疫系を活性化する作用に基づき、メラノーマ治療薬の有効性と安全性を確認するための第Ⅱ相試験を実施します。2020年4月にPMDAの事前面談、2020年7月対面助言(戦P454)を実施し、PMDAの助言などに基づき実施計画書を作成しました。2020年12月に東北大学のIRBにおいて実施計画書の承認を受けました。
進行性悪性黒色腫(メラノーマ)患者40例を対象とした非盲検試験で、ニボルマブ併用のもと、RS5614を1日1回120mgで投与を開始し(安全性に問題がなければ医師の判断で180mgに増量可能)、8週間投与後に、有効性(RECIST評価による奏効率)と安全性の評価を実施します。なお、本プログラムは、2021年5月にAMED「橋渡し研究プログラム」シーズCに採択され、AMEDの助成金を得て2021年7月から実施しています。
(d) 抗がん剤による間質性肺炎の予防・治療
RS5614が肺線維症、間質性肺炎を改善する非臨床試験成績に基づき、抗がん剤の副作用である間質性肺炎をRS5614が予防できるかどうかを京都大学と共同で研究します。2021年2月より京都大学と共同研究契約の協議を進めております。非臨床試験成績の結果で、RS5614の有効性を確認できれば、医師主導治験での臨床開発に進める予定です。
(e) RS5441(PAI-1阻害薬)脱毛症治療薬
2016年にRS5441の皮膚科適応症の開発商業化権を導出した米国Eirion Therapeutics, Inc.(エイリオン社)では男性型脱毛症での第Ⅰ相試験を米国で準備中です。2021年3月エイリオン社はRS5441を含む複数の製品の中国における開発商業化権を、中国Shanghai Haohai Biological Technology社(以下Haohai社)に許諾し、Haohai社から31百万ドルの投資契約を締結しました。この資金調達によりエイリオン社の研究開発が加速化されると期待します。
(f) RS5614(治験薬の製造)
米沢浜理薬品工業で、グローバルに使用できるRS5614原薬のGMP品26.2㎏を委託合成し、それを用いて佐藤薬品工業でTM5614(60㎎)錠を14万錠強、9錠入りピロー包装を15,000袋製造しました。併せて、同数のプラセボ錠(ピロー包装)も製造しました。浜理薬品工業柴島工場で国内用治験薬原薬のGMP品3㎏を委託製造しました。
b.RS8001(ピリドキサミン)
(a) RS8001(自閉スペクトラム症治療薬)
自閉スペクトラム症患者に対するピリドキサミンの有効性及び安全性を探索的に評価し、適切な対象患者集団や用法用量、評価指標を決定することを目的として、易刺激性を有する自閉スペクトラム症患者を対象として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施しました。RS8001あるいはプラセボを朝食後及び夕食後1日2回8週間経口投与することとし、RS8001投与量は12-19歳で800mg/day、1,200mg/day、20歳以上で1,200mg/day、2,000mg/dayです。
有効性評価項目としては、主要評価項目は異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)興奮性サブスケールスコアのベースラインからの変化量を、副次評価項目はABC-J総スコア、その他サブスケールスコア、感覚プロファイル(複数の感覚領域の過敏さや鈍感さに対しての包括的な評価)を検討しています。
2018年9月に最初の患者の組み入れが開始され、東北大学、大阪市立総合医療センター、宮城県立こども病院、弘前大学、国府台病院、国立成育医療研究センター、国立精神・神経医療センター、山形大学、自治医科大学、神戸大学、瀬川記念クリニック、函館中央病院、福井大学の13医療機関の多施設共同治験として実施しました。新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、対象である小児の病院受診が控えられたために、治験調整医師を中心に毎月1度の治験推進会議を開催し、ポスターや患者用パンフレットなどの促進策を併せて実施し、約2年間で70例以上の症例を組み入れ、2020年11月に治験を終了しました。2021年3月に症例検討会を実施し開鍵しました。
主要評価項目の「最終評価時点のABC-J興奮性サブスケールスコア平均変化量」において実薬高用量群が最も改善していましたが、用量反応関係ならびにプラセボ群と統計的な有意差は確認できませんでした。また、安全性に大きな問題がなく、忍容性が良好であることが示されました。
2021年6月に治験総括報告書を完成しました。本薬剤の有効性を適切に評価するためには、対象患者の選定、プラセボ効果を減少する治験計画(当社が、PMS/PMDD治療薬の医師主導治験で実施しているプラセボリードイン方式の採用)など、検討すべき課題が明らかになりました。
(b) RS8001(月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PMDD)治療薬)
2019年度にAMEDのCiCLEに採択され、近畿大学、東北大学、東京医科歯科大学、東京女子医科大学で第II相医師主導治験を進めています。2020年度は、①第Ⅱ相試験(医師主導治験)計画(案)の作成(2020年3月治験実施計画書(骨子)、同年7月同意説明文書案)、②PMDAレギュラトリーサイエンス(RS)戦略相談(2020年4月対面助言(戦P440)相談記録)、③治験体制構築(治験調整事務局(株式会社CTD)、CRO契約(株式会社アクセライズ)、各実施施設での治験審査委員会(IRB)、治験計画届(10月、変更届12月)、④治験薬(製剤)の製造(12月検収)を実施しました(これらは全てAMEDのCiCLEの2021年6月の中間評価の達成すべきマイルストーンに相当)。
当初の予定である2021年2月より早い、2020年11月から治験を開始できましたが、コロナ禍の影響による患者の来院の減少が考えられましたので、2021年2月に治験調整事務局の主催で、症例登録促進のための対策会議(Web会議)を開催しました。症例登録促進のための対策として、1)実施施設の追加、2)広告・啓発活動、3)ボランティアパネルの利用等が議論されました。2021年度前半の取り組みとして、①早川クリニックを実施施設として追加し、②広告・啓発活動に取り組むこととしました。また、広告・啓発活動の一環として、院内ポスターや啓発用の冊子も作成しました。さらに、NPO法人Healthy Aging Projects for Women(HAP)主催で治験調整医師による薬剤師対象Webセミナーが2021年3月に実施されました。今後とも、NPOと協賛した疾患啓発のための治験責任医師等による公開講座なども開催する予定です。
2021年5月にAMED評価委員会で上記マイルストーン達成状況及び今後の取進めについて報告をしました。
2019年12月、RS8001のPMS/PMDD治療薬の日本における開発及び商業化の独占的実施許諾(ライセンス)に関する優先交渉権をあすか製薬株式会社に供与し、当社は2019年12月に契約一時金を、2020年12月にマイルストーンの対価を受領しています。
(c) RS8001(統合失調症治療薬)
導出先の興和株式会社による統合失調症後期第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検試験)が2020年度終了しました。主要評価項目であるPANSS陰性症状尺度の総スコアではプラセボ群と実薬群で明確な差は無く、興和株式会社では今後の開発を行わない方針です。当社は、興和のご協力を得て開示いただいた資料を精査した上で、当該疾患領域の専門家とも協議し、今後の開発方針を検討しています。
(d) RS8001(更年期障害)
本プロジェクトでは、更年期障害の2大症状(ホットフラッシュとうつ)の治療薬としてRS8001の臨床研究を東京医科歯科大学との共同研究として実施予定です。40例(実薬20例、プラセボ20例)の医師主導での臨床研究で、2021年12月を目途に開始する予定です。現在、共同研究契約及びIRBの準備を進めています。
(e) RS8001(治験薬の製造)
佐藤薬品工業への製造委託で、RS8001 300mgを含むカプセルを5万個、それと識別不能なRS8001 240mgを含むカプセルを5万個、更にプラセボのカプセルを10万個製造しました。それらを用いて、PMDsの医師主導治験用に個装箱が作成され、CROのアクセライズによってランダム割付が実施されました。
c.RS9001(ディスポーザブル極細内視鏡)
非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡を東北大学と共同開発しています。順天堂大学、東京慈恵会医科大学で実施した医師主導治験の成果等を基に、2020年5月に大手医薬品及び医療機器会社であり腹膜透析医療におけるリーディングカンパニーであるバクスター社と共同開発及び事業化に関する契約(ライセンス契約)を締結し、契約一時金を受領しました。
バクスター社とガイドカテーテル製造業者の交渉が遅延していることから、まずは、メインフレームであるファイバースコープのみ(付属品であるガイドカテーテル抜き)で承認申請することをバクスター社と合意し、2021年3月にPMDAからその方針で進めて良いことをご確認いただきました。現時点では、2021年度中に薬事承認申請の提出を目指しています。
2021年6月、ファイバースコープ製造業者とバクスター社が供給契約を締結したことに伴いマイルストーン支払いを受領しました。2022年にはPMDAへ「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き」で申請を提出し、可能な限り早いタイミングでの承認及び保険償還を目指します。
d.人工知能(AI)を活用した医療ソリューションの開発
当社は、1)医療ニーズの把握と医療現場での開発を重視する視点、2)多くの医師や診療科とのネットワーク、3)医薬品や医療機器の医師主導治験で蓄積された経験やノウハウを基に、医師と医療機関、AI技術を有するITベンダー、出口の製薬・ヘルステック企業間を結ぶハブとなり、実地臨床に役立てられる本格的な医療ソリューション(診断、治療)の開発に取り組んでいます。現在、呼吸機能検査診断、透析医療支援システム、糖尿病治療支援システム、発音・発語及び嚥下機能診断、小児発達障害(識字障害)音読診断の5つの開発パイプラインを有しています。
(a) RSAI01(呼吸機能検査診断システム)
スパイロメトリーの検査結果(フローボリューム曲線)から呼吸器機能や疾患を診断するAIアルゴリズムの開発に着手しました(京都大学、NECソリューションイノベータとの共同研究)。2020年7月にスパイロメトリーのリーディングカンパニーであるチェスト株式会社と共同開発及び事業化に関する契約を締結し、契約一時金を受領しました。同年11月には京都大学倫理審査委員会より承認を受け、同年12月よりデータの移管を開始しました。2021年7月に、京都大学から移管された初期データ(患者300名、健常人200名)に基づき分析した結果が得られましたが、予想以上の成績(疾患の診断率70-90%)が得られており、今後データ数(患者症例数1,000名)と質を改善することでさらに精度は向上することが期待できます。
(b) RSAI02(慢性透析システム支援)
血液透析中に発生する急激な血圧低下の予測を目指し2020年2月から研究を開始(東北大学、東京大学、聖路加国際大学、透析医療機関、NECとの共同研究)。同年6月には少数例での検証によりAI応用の可能性を確認。同年11月にはおよそ10倍のデータで検証。更なる分析精度向上のため、2021年3月には11万件以上の透析データで予測システムの開発。検証結果から研究の第一段階終了を確認しました。現在、医療データ数を300,000透析治療に増加することを目標として、データ移管作業を進めております。また、これまでの医療データは1年間の透析記録を基に予測装置を開発しておりましたが、より長期間の透析データを用いることで、バリエーション豊かな医療データとなり、予測装置に対して良い効果をもたらすと仮定し検討を進めております。さらに、個別患者での強化学習を可能とする分析エンジンを改良することで、予測精度をさらに向上させる予定です。
2021年5月にグローバルな血液透析医療機器メーカーであるニプロ株式会社と共同研究契約を締結しました。
(c) RSAI03(糖尿病治療支援システム)
糖尿病患者診療データから糖尿病専門医の患者ごとに異なる最適なインスリン投与量を予想できるアルゴリズム開発を目指し、2020年4月から東北大学及びNECと共同研究を開始。同年6月には倫理審査委員会にて承認を得てデータの移管を開始。10月に少数例での検証、2021年3月には患者症例数を増加し(350名)、分析エンジンを改良した結果、インスリン投与量数単位の誤差内で予測できるAIアルゴリズムが開発できています。今後、データ数(患者症例数1,000名)と質の改善、AIアルゴリズムの改良を図ることで、さらに精度は向上することが期待できます。
(d) RSAI04(発音・発語及び嚥下機能診断)
高齢者の誤嚥性肺炎は医療経済的にも大きな問題であり、その予備軍に対して嚥下機能の早期診断が必要と考え、2021年1月から東北大学の複数診療科(耳鼻咽喉科、歯科、医工学部リハビリテーション科)及びNECと共同研究を開始。患者の話す音の全周波数を抽出、AIで分解・解析することで、健常者の発音による周波数と患者の発音の周波数の違いを抽出し、嚥下機能を評価するためのAIエンジンも決定しました。2021年5月に東北大学倫理審査委員会の承認を受けましたので、6月から探索研究として100症例のデータを活用して解析を進めています。
(e) RSAI06(小児発達障害(識字障害)音読診断)
学習障害の一つである識字障害は早期に発見し、適切なトレーニングを受けることで一般生活が送れるようになる障害ですが、診断に時間がかかるため、簡便な検査法が望まれています。当社は、東北大学及びNECと共同研究を実施予定です。2021年10月から東北メディカルメガバンクの8歳児を対象とした発達障害調査データを基に、小児の文字や文章の音読データを元にAIを活用して、識字障害を評価するシステムの開発を目指します。
e.診断薬:血中フェニルアラニン測定キット
フェニルケトン尿症はフェニルアラニンを代謝する酵素が欠損することによる先天性アミノ酸代謝異常症のひとつです。重度の精神発達遅延を回避するためには乳幼児期に血中フェニルアラニン量を一定範囲内にコントロールする必要があり、血中フェニルアラニン量を頻回測定することが求められていますが、現時点で有用な測定キットはありません。当社は、自宅で簡便かつ正確に血中フェニルアラニン濃度を測定するシステムを、東北大学と共同開発しています。
2021年5月に診断薬に関する特許を東北大学と共同で出願しました。2021年6月にはPMDA相談を行い、新規診断法並びに在宅自己管理の承認申請や保険償還に向けた開発ロードマップの策定を開始しました。