有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/08/19 15:00
【資料】
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【項目】
164項目
第1【企業の概況】
(はじめに)
当社は、1997年9月16日に設立された株式会社シンプレクス・ホールディングスを前身としております。株式会社シンプレクス・ホールディングスは、フィナンシャル・スポンサーであるカーライル・グループの支援の下、2013年4月1日にマネジメント・バイアウト(MBO)(注1)を目的として設立された株式会社SCKホールディングスによって、2013年10月に完全子会社化され、東京証券取引所市場第一部の株式上場を廃止いたしました。また、上場廃止後、主要株主の交替及び2回の吸収合併を経て、現在の当社に至っております。株式会社シンプレクス・ホールディングスの設立から現在に至るまでの沿革は、以下のとおりです。
(注1)マネジメント・バイアウト(MBO)とは、一般に、買収対象会社の経営陣の全部又は一部が資金を出資して、買収対象会社の事業の継続を前提として買収対象会社の株式を取得する取引をいいます。
(1)株式会社シンプレクス・ホールディングスの設立
株式会社シンプレクス・ホールディングスは、1997年9月16日に設立された株式会社シンプレクス・リスク・マネジメントが起源となっており、金融フロンティア領域(注2)に特化したシステム開発事業を展開することで、堅調に業績を伸ばしてまいりました。株式会社シンプレクス・リスク・マネジメントは、2000年2月7日に商号を株式会社シンプレクス・テクノロジーへと変更し、2002年2月にJASDAQ市場に株式を上場いたしました。株式上場後、2010年10月1日に株式会社シンプレクス・コンサルティングを新設承継会社とする会社分割を行い、純粋持株会社として商号を株式会社シンプレクス・ホールディングスに変更しております。株式会社シンプレクス・ホールディングスの株式上場の推移は、次のとおりであります。
2002年2月 JASDAQ市場に上場
2004年5月 東京証券取引所市場第二部に上場
2005年9月 東京証券取引所市場第一部に上場
2013年10月 東京証券取引所市場第一部上場廃止
(注2)金融フロンティア領域とは、当社グループ内の造語であり、金融機関のフロントオフィスにおけるトレーディング等の収益業務及びリスク管理業務等をテクノロジーの側面から支援する領域を指します。銀行、総合証券、インターネット証券が主たる顧客です。
(2)株式会社SCKホールディングスによる株式公開買付けと上場廃止
株式上場後も、株式会社シンプレクス・ホールディングスは、創業以来13期連続で増収増益を達成する等、金融フロンティア領域における国内トップブランドとしてのポジション獲得に向けて力強い成長を続けてまいりました。しかしながら、2010年3月期を境に減益基調となり、厳しい事業環境にさらされることになりました。具体的には、2011年3月期から2013年3月期の3期にわたって、いずれも期中に業績予想の下方修正を実施したほか、2008年3月期を初年度とし2013年3月期を最終年度とする第二次中期事業計画で策定した業績目標も未達に終わる等、抜本的な構造改革を実施しない限り、当社グループの今後の持続的な成長は、極めて不透明といわざるを得ない状況となりました。
このような中、中長期的に当社グループが持続的な企業価値向上を実現させていくためには、MBOの手法により株式を非上場化し、一貫した方針の下で迅速かつ大胆に経営改革を実施できる体制を構築する必要があると考え、カーライル・グループの支援の下、株式会社シンプレクス・ホールディングスの株式公開買付け(以下「本公開買付け」という。)を行うことを決定いたしました。
本公開買付けは、カーライル・グループの投資ファンドを主たる出資者として2013年4月1日に設立された株式会社SCKホールディングスによって、2013年6月14日から8月5日まで実施されました。
本公開買付け終了後、株式会社シンプレクス・ホールディングスは、株式会社SCKホールディングスの子会社となり、2013年10月15日に東京証券取引所市場第一部の株式上場を廃止いたしました。
(3)株式会社SCKホールディングスと株式会社シンプレクス・ホールディングスの吸収合併
2014年1月1日、株式会社SCKホールディングスは、株式会社シンプレクス・ホールディングス及び株式会社シンプレクス・コンサルティングを消滅会社とする吸収合併を行い、同日付で株式会社SCKホールディングスの商号をシンプレクス株式会社に変更しております(以下「前シンプレクス株式会社」という。)。
(4)株式会社SKホールディングスによる前シンプレクス株式会社の株式取得と主要株主の異動
2016年9月13日、カーライル・グループの投資ファンドが保有する前シンプレクス株式会社の全株式を取得することを目的として、株式会社日本政策投資銀行を主たる出資者とする株式会社SKホールディングスが設立され、同年11月、株式譲渡に伴う主要株主の異動が発生しております。
なお、株式会社SKホールディングスは、当該株式譲渡に要する資金調達として、株式会社日本政策投資銀行が単独の有限責任組合員となる組合に対して種類株式を発行すると共に、金融機関からの外部資金調達を実施しております。
(5)株式会社SKホールディングスと前シンプレクス株式会社の吸収合併
2016年12月1日、株式会社SKホールディングスは、前シンプレクス株式会社を消滅会社とする吸収合併を行い、同日付で株式会社SKホールディングスの商号をシンプレクス株式会社に変更しております。
(6)シンプレクス・ホールディングス株式会社の設立
2016年12月1日、シンプレクス株式会社は単独株式移転により、シンプレクス・ホールディングス株式会社を設立し、持株会社体制に移行しました。
これらの変遷を経て、現在のシンプレクス・ホールディングス株式会社に至っております。
以上の当社の事業運営主体の変遷を図示いたしますと、次のようになります。
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<当社の変遷>0201010_002.png
(7)上場廃止後の事業の状況
上場廃止から7年間の月日を経て、当社グループは主に以下の2点においてドラスティックな変化を遂げるに至っております。
① 金融フロンティア領域でのブレイクスルー
上場廃止後の当初4年間は、成長の踊り場に至った金融フロンティア領域でブレイクスルーを果たすべく、プロアクティブなコンサルティングセールスを徹底することに専念してまいりました。個別のシステム案件の提案に限定しない、顧客ビジネスの中長期的な発展に寄与するための提案活動を行うため、当社内トップ層の人材を集中的に顧客常駐型で配置する等の施策を実施しました。FinTechの波が到来し、金融機関のビジネスにテクノロジーの力が不可欠であるという認識が深まる中、当社グループが創業来育んできた独自のビジネスモデルであるSimplex Way(注3)の価値が、プロアクティブなコンサルティングセールスと相まって発揮され、金融フロンティア領域における事業領域の深耕が進み、大きなブレイクスルーを果たすことができたと認識しております。これにより、IDC Financial Insightsが発表する世界の金融ITサービス企業ランキング「FinTech Rankings」に2012年より9年連続でランクインを果たす等、金融フロンティア領域における国内有数のITサービス企業として認知されるに至っております。
(注3)Simplex Wayとは、当社グループ内の造語であり、ビジネスとテクノロジー双方に精通したハイブリッド人材で編成されたプロジェクトチームが、最上流のコンサルティングからシステム開発、運用保守に至るすべての工程に責任を持ち、一気通貫かつ自社完結でのトータルソリューションを提供するビジネスモデルを指します。Simplex Wayの詳細については、後記「3 事業の内容 (当社グループのビジネスモデルの特徴)」をご参照ください。
② 金融フロンティア領域からクロスフロンティア領域へ、事業領域の拡大
近年、デジタル技術の進展・普及に伴い、あらゆる産業において、テクノロジーを駆使してビジネスモデルそのものを改革していく、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が急務となっております。こうした流れに連動する形で、当社グループがサービス提供を手掛ける対象領域も急速に拡大しており、金融フロンティア領域以外の複数領域において、トップポジションを狙える機運が高まりつつあります。
こうした状況下において当社グループは、金融フロンティア領域を包含したクロスフロンティア領域(注4)へと事業領域を拡大しております。上場廃止後に新たに獲得したAI/ブロックチェーン/クラウド技術等のキーテクノロジーを活用することにより、生命保険会社(以下「生保」という。)や損害保険会社(以下「損保」という。)、暗号資産交換業者のほか、非金融系企業を対象とした高付加価値サービスを広く提供するに至っております。2021年3月期において、売上収益全体の28%程度が、上場廃止以降に参入した新規領域(生保・損保/暗号資産/エンタープライズDX等(注5))から生み出されております。
(注4)クロスフロンティア領域とは、当社グループ内の造語であり、顧客企業のビジネスの成功にテクノロジーが大きく貢献する領域を指します。言い替えれば、テクノロジーとビジネスが不可分の関係にあり、テクノロジーを駆使することでさらなるビジネスの発展を望むことができる領域を指しています。金融フロンティア領域は、まさにテクノロジーが主導する形でビジネスが推進されてきた領域であることから、クロスフロンティア領域の主要な領域のひとつですが、これに加えて、当社グループが直近で進出している、生保・損保、暗号資産等の新規領域、さらには、業種横断で提供される戦略/DXコンサルティングサービスを含みます。
(注5)エンタープライズDXとは、クロスフロンティア領域のうち、当社における売上収益が業種単位で一定の規模に満たない業種群の総称です。
(8)再上場の目的
前述の様々な施策を行った結果、MBOによる上場廃止を行った2014年3月期には売上高が12,073百万円、EBITDA(注6)が1,863百万円(日本会計基準。2010年8月から2016年6月にかけて連結対象子会社であったバーチャレクス・コンサルティング社分を除く。)であったのが、2021年3月期には売上収益が27,532百万円、EBITDA(注7)が5,530百万円(国際財務報告基準(以下「IFRS」という。))となっており、大幅な成長を達成しております。当社グループとしては、MBOの目的であった中長期的に当社グループが持続的な企業価値向上を実現できるようになったものと確信しております。当社グループがさらなる成長を遂げるためには、次のような理由から、株式の再上場が重要な戦略であると考えております。
目覚しい発展を遂げているFinTech及びInsurTech分野等で競争力を維持・向上させるための技術革新への対応に加え、大手金融機関の大規模案件への対応、さらには非銀行・非証券分野での発展を確実なものとするべく、優秀な人材をより多く確保し、顧客企業に対してこれまで以上に付加価値の高いサービスを提供していくことが重要になっております。また、新規領域における顧客開拓を推進していくうえでは、優れた技術や営業力を有する企業との提携・協力等が必要不可欠であるため、上場企業として、企業内容の透明性及び社会的信用力を高めることが重要な要素と考えております。加えて、さらなる成長のための資金調達手段多様化の観点から、株式市場からの調達を可能とするための株式上場が重要であると考えております。
(注6)日本基準におけるEBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
(注7)IFRSにおけるEBITDA=営業利益+減価償却費+識別可能資産償却費