有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/19 15:00
【資料】
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【項目】
120項目
(1) 経営成績等の状況
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 市場状況並びに経営成績の概要及び分析
第10期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
新型コロナウイルス感染症により経済活動が強く制限され、世界経済へ甚大な打撃を与えております。2020年4月以降、新規感染者数は先進国においては収束傾向にあるものの、発展途上国においては増加しており、依然として高水準で推移しております。各国においては、大規模な経済対策とともに段階的な経済活動の抑制緩和が進められることが想定されるものの、各国間の入国制限措置は継続されており、正常化の時期は見通せない状況にあります。
しかし、当社においては、リモートワーク及び交代出社の導入、WEB会議の推進、並びにマスクの支給及び紫外線殺菌灯の設置等の感染防止対策を徹底し、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、従前と変わらぬ事業活動の水準を維持しており、主として国内のパートナー企業とのパイプラインについて、新たな研究開発契約の締結及び商用化に向けた研究開発を着実に進め、当事業年度中に新たなライセンス契約の締結に至っております。
また、商用化第1号であるバイオマス由来のアミノ酸(バリン)については、当社とのライセンス契約に基づき、中国企業において2018年10月より製品販売が開始されており、中国市場においてバリンの供給量を拡大し、堅調なランニングロイヤリティを得ているところであります。
そのほか、当社としては、商用化段階に至っていない、又は研究開発契約を受託していない技術についても、当該技術が対象としている製品の市場規模や市場価格等、将来的な成長性が見込めると判断されるものについては、自社単独での研究開発を進める方針としており、行政機関による助成事業を受託しております。
以上の結果、当事業年度は売上高334,338千円(前年同期比65.5%増)、営業損失114,531千円(前期営業損失280,818千円)、経常損失113,960千円(前期経常損失275,578千円)、当期純損失116,424千円(前期当期純損失289,303千円)となりました。
なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
第11期第3四半期累計期間(自 2020年10月1日 至 2021年6月30日)
世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として先行き不透明な状況が続いております。当社においては、このような経済背景を踏まえ、国内外、特に海外のパートナー企業の動向も要素の1つとして事業計画を策定しており、政府による規制や新型コロナウイルス感染症による市場の動きに左右されない事業運営を図っております。
これにより、当第3四半期累計期間においては、上述の世界的なバイオ化の潮流も受け、新たに樹脂原料のライセンス契約及びアミノ酸の研究開発契約を締結するに至り、国の委託事業による収益も計上しております。
以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は312,578千円、営業損失58,310千円、経常損失55,781千円、四半期純損失58,065千円となりました。
なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
② 財政状態の分析
第10期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
a 資産
当事業年度末における流動資産は495,849千円となり、前事業年度末に比べ237,686千円減少いたしました。これは社債60,000千円の満期償還及び研究開発費により、主に現金及び預金が192,430千円減少したことによるものであります。固定資産は78,622千円となり、前事業年度末に比べ7,573千円減少いたしました。これは主に設備投資により機械及び装置が13,268千円、ソフトウエアが6,925千円増加した一方、定期預金の満期到来により長期預金が14,732千円及び償却によりリース資産が13,353千円減少したことによるものであります。この結果、総資産は574,472千円となり、前事業年度末に比べ245,260千円減少いたしました。
b 負債
当事業年度末における流動負債は139,121千円となり、前事業年度末に比べ173,201千円減少いたしました。これは主に社債60,000千円の満期償還及び前受金が94,008千円減少したことによるものであります。固定負債は110,504千円となり、前事業年度末に比べ44,186千円増加いたしました。これは主に借入れにより長期借入金が60,000千円増加した一方で、リース返済によりリース債務が13,453千円減少したことによるものであります。
c 純資産
当事業年度末における純資産合計は324,847千円となり、前事業年度末に比べ116,244千円減少いたしました。これは主に利益剰余金が116,424千円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は56.5%(前事業年度末は53.8%)となりました。
第11期第3四半期累計期間(自 2020年10月1日 至 2021年6月30日)
a 資産
当第3四半期会計期間末における流動資産は1,013,721千円となり、前事業年度末に比べ517,871千円増加いたしました。これは主に第三者割当増資により現金及び預金が520,680千円、仕掛品が6,704千円及び基礎研究開発費等の前払費用が10,097千円増加した一方、受取手形及び売掛金が19,624千円減少したことによるものであります。固定資産は83,095千円となり、前事業年度末に比べ4,472千円増加いたしました。これは主に設備投資により機械及び装置が10,710千円、建物附属設備が2,639千円、工具、器具及び備品が2,308千円増加した一方、リース資産が減価償却により9,984千円減少したことによるものであります。この結果、総資産は1,096,817千円となり、前事業年度末に比べ522,344千円増加いたしました。
b 負債
当第3四半期会計期間末における流動負債は80,218千円となり、前事業年度末に比べ58,902千円減少いたしました。これは主に前受金が37,791千円及び未払金が11,531千円減少したことによるものであります。固定負債は199,816千円となり、前事業年度末に比べ89,312千円増加いたしました。これは主に借入れにより長期借入金が96,670千円増加した一方で、リース返済によりリース債務が5,587千円減少したことによるものであります。
c 純資産
当第3四半期会計期間末における純資産合計は816,782千円となり、前事業年度末に比べ491,934千円増加いたしました。これは第三者割当増資により、資本金が275,000千円、資本準備金が275,000千円増加したこと、利益剰余金が58,065千円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は74.5%(前事業年度末は56.5%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
第10期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本項目において「資金」という。)については、前事業年度末より194,885千円減少し、424,116千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フロー状況とそれらの要因は次のとおりであります。
a 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果、支出した資金は171,175千円(前事業年度においては124,331千円の支出)となりました。これは主に研究開発設備等の減価償却費24,116千円、及び受取手形及び売掛金の回収に伴う売上債権の減少額38,064千円等の増加要因があったものの、税引前当期純損失113,960千円、及び前受金の減少額94,008千円、諸経費の削減による未払金の減少額32,818千円等の減少要因によるものであります。
b 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果、支出した資金は10,237千円(前事業年度においては48,421千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出16,242千円、無形固定資産の取得による支出7,072千円の減少要因があったものの、定期預金の満期による収入12,277千円等の増加要因によるものであります。
c 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果、支出した資金は13,471千円(前事業年度においては320,980千円の資金獲得)となりました。これは主に新型コロナウイルス感染症影響下における経営安定化のための長期借入金による収入60,000千円の増加要因があったものの、社債の満期償還による支出60,000千円、及びリース債務返済による支出13,300千円等の減少要因によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績
当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b 受注実績
当社が提供する役務の性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c 販売実績
第10期事業年度及び第11期第3四半期累計期間における販売実績は次のとおりであります。なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。
セグメントの名称第10期事業年度
(自 2019年10月1日
至 2020年9月30日)
第11期第3四半期累計期間
(自 2020年10月1日
至 2021年6月30日)
販売高(千円)前年同期比(%)販売高(千円)
バイオリファイナリー事業334,338165.5312,578

注1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第9期事業年度
(自 2018年10月1日
至 2019年9月30日)
第10期事業年度
(自 2019年10月1日
至 2020年9月30日)
第11期第3四半期
累計期間
(自 2020年10月1日
至 2021年6月30日)
販売高
(千円)
割合(%)販売高
(千円)
割合(%)販売高
(千円)
割合(%)
DIC株式会社18,9679.482,91224.890,92729.1
三菱HCキャピタル
株式会社
30,0009.055,00017.6
環境省53,34816.054,40717.4
Ningxia Eppen Biotech
Co., Ltd.
37,06818.338,29711.534,38411.0
伊藤忠商事株式会社16,0004.834,00010.9
伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社12,5006.250,00015.017,5005.6
日本航空株式会社71,34035.38,5002.55280.2
Natural Beauty株式会社28,50014.13,5621.1

2.上表の金額には、消費税等を含んでおりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。
また、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、過去の実績や市場動向を勘案し、合理的に判断しておりますが、不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表にかかる重要な会計方針の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
特に次の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当社の将来の事業計画を基に、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。
将来の事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失を計上する可能性があります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産については、当社の将来の課税所得見込みや想定実効税率等、現状入手可能な将来情報に基づき、合理的に将来の税金負担を軽減する効果を有し、回収可能性があると考えられる範囲内で計上することとしております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。
② 経営成績の分析
第10期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
a 売上高
当事業年度における売上高については、前事業年度より132,298千円増加し、334,338千円となりました。これは主に石油資源の枯渇、CO2削減又は使い捨てプラスチックにかかる法的及び業界の規制を見据えた企業の、石油由来の化学品からバイオマス由来の化学品への転換の需要の伸長による、研究開発契約の件数の増加によるものであります。
b 売上原価
当事業年度における売上原価については、前事業年度より28,823千円減少し、148,741千円となりました。これは主に当事業年度において、研究開発契約における外注役務が前事業年度と比較して減少したため、当該外注費分につき売上原価として配賦される研究開発費が減少することによるものであります。
c 販売費及び一般管理費及び営業損失
当事業年度における販売費及び一般管理費については、大幅な人員の増加もなく、前事業年度と同規模の活動を行った結果、前事業年度より5,165千円減少し、300,129千円となりました。以上の結果、営業損失は114,531千円となりました。
d 営業外収益、営業外費用及び経常損失
当事業年度における営業外収益については、前事業年度より3,881千円減少し、4,096千円となりました。また、営業外費用については、前事業年度より787千円増加し、3,525千円となりました。これは主に新型コロナウイルス感染症対策給付金及び補助事業による収入の増加、並びに為替差損によるものであり、以上の結果、経常損失は113,960千円となりました。
e 特別利益、特別損失及び当期純損失
当事業年度における特別利益及び特別損失の発生はなく、法人税、住民税及び事業税2,464千円を計上した結果、当期純損失は116,424千円となりました。
第11期第3四半期累計期間(自 2020年10月1日 至 2021年6月30日)
a 売上高
当第3四半期累計期間における売上高については、312,578千円となりました。これは主に研究開発契約の着実な履行及び研究開発段階にあったパイプラインのStageが進捗し、複数件のライセンス契約の締結に至ったことによるものであります。
b 売上原価
当第3四半期累計期間における売上原価については、101,375千円となりました。これは計上された売上高に紐づく研究開発契約に関して費消された研究開発費によるものであります。
c 販売費及び一般管理費及び営業損失
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費については、269,513千円となりました。これは主に人件費、支払報酬及び研究開発費によるものであります。以上の結果、営業損失は58,310千円となりました。
d 営業外収益、営業外費用及び経常損失
当第3四半期累計期間における営業外収益については、5,205千円となりました。また、営業外費用については、2,676千円となりました。これは主に新型コロナウイルス感染症対策給付金及びD種種類株式による第三者割当増資にかかる株式交付費によるものであり、以上の結果、経常損失は55,781千円となりました。
e 特別利益、特別損失及び四半期純損失
当第3四半期累計期間における特別利益及び特別損失の発生はなく、法人税、住民税及び事業税2,283千円を計上した結果、当四半期純損失は58,065千円となりました。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性の分析
当社は、自らは製品の生産設備を保有せず、研究開発に必要な設備のみを有し、技術を提供する事業形態であることから、資金需要の主なものは、菌体及びバイオプロセスの基礎開発にかかる研究開発費その他人件費等の事業活動費でありますが、2022年9月期以降に、事業活動の拡大のための新たな研究施設の建設、発酵槽や自動化機器等の研究開発設備への大規模な追加投資を予定しております。
運転資金については、2020年9月期末までは、第三者割当増資による株式の発行によってベンチャーキャピタル等より調達しております。2020年9月期においては新型コロナウイルス感染症による経済の低下の可能性を鑑み、融資により60,000千円を調達しております。2021年9月期においても100,000千円の融資及び第三者割当増資による株式発行により550,000千円を調達しております。
上述の大規模投資については上場に伴う第三者割当増資による株式の発行による調達を予定しております。なお、それ以降は現時点において大規模な資金需要の計画はなく、基本的に流動性の高い銀行預金により賄う方針であります。
⑤ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析
当社は、新興市場であるバイオリファイナリー業界においては、当面、売上高の拡大が同業界における企業成長を示すものと考えており、目標とする経営指標として売上高を掲げております。
売上高実績については、大型の研究開発契約の締結による研究開発収入及びライセンス契約の締結によるライセンス一時金等の計上により、2019年9月期は202,040千円(2018年9月期比7.0%増)、2020年9月きは334,338千円(前年同期比65.5%増)であります。これは、現時点において予定どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社は、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、経済動向、世界市場を対象としたライセンス契約による製品の市場展開、特定の第三者の技術を基盤とする事業展開、技術の損失、漏洩及び知的財産権の侵害等によるリスクを認識しております。
これらのリスクに対応するため、当社は、製品の市場動向を見据え、ライセンシーとの密な提携により、予算や各種計画の精度を上げるとともに、研究開発活動への投資を拡大して、当社単独による特許権の取得や多様な製品を対象とした研究開発を推進し、併せて情報セキュリティの拡充を含む内部統制の向上により、情報資産の管理、保全に取り組んでまいります。