有価証券届出書(新規公開時)

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2021/11/11 15:00
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事業内容

当社グループは純粋持株会社である当社(株式会社ネットプロテクションズホールディングス)、連結子会社2社(株式会社ネットプロテクションズ、恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.))の計3社で構成されています。「第1 企業の概況(はじめに)」に記載のとおり、当社グループは2000年1月に設立した旧ネットプロテクションズ(旧商号:株式会社ネットプロテクションズ)が2002年より開始したBNPL(Buy Now Pay Later:後払い)決済サービスを提供する決済ソリューション事業を単一の報告セグメントとしています。
① 企業ミッション
当社グループは「つぎのアタリマエをつくる」というミッションのもと、全ての商取引を安全・スムーズにすることを目指し、決済ソリューション事業を展開しています。近年、BtoC、BtoB、CtoCなど、販売形態が多様化していますが、これらの商取引における最大の課題は「信用リスク」と捉えています。売り手と買い手が安心して商取引をできる社会インフラを創ることが、機会損失を解消し世の中を活性化すると考え、信用リスクを保証する「BNPL決済サービス」を提供しています。さらに、当社グループは「ティール組織」(注1)を採用し、事業及び組織の両面で革新的な仕組みを作っており、それを広げていくことを目指しています。これからも事業、組織の両面で「つぎのアタリマエ」を追求してまいります。
② 事業ミッション
「flowtec(フローテック)」(注2)という技術開発思想のもと設計した当社グループのBNPL決済サービスを通じて、誰もが安心かつスムーズに商取引できる社会の実現を目指しています。これまで2002年より蓄積してきた膨大な取引データとテクノロジーを組み合わせることで、高い与信通過率を誇る高精度の与信システムを構築しています。
③ 組織ミッション
「ティール組織」をもとに設計した当社グループの組織体制、及び人事評価制度を通じて、社員の自己実現と社会発展の両立を目指しています。当社グループはマネージャー制度を廃止し現場担当者の意見を尊重した意思決定をすることで、社員個々人の成長やモチベーションの維持及びパフォーマンスが向上する環境を構築しています。
(注1)特定の人員に恒久的に権限・責任が集中することを回避し、従業員個々人が経営幹部候補として自律的に業務遂行を行うことを推進する背景から、当社グループにおいてはマネージャーの役職を廃止。代わりに、各部署において、各期で流動的に交代可能な情報・人材・予算の采配の権限を有する役割として「カタリスト」を配置。
(注2)flowtecとは、商取引を安全に・スムーズにすることはもちろん、信用力を底上げすることで、誰もが分け隔てなく取引できる世界をつくるという当社グループの技術開発思想そのものを示すブランドネーム
<サービス概要>2002年より日本で初めての信用リスク保証型のBNPL決済サービスを提供しています。その特徴は、顧客が一連の決済関連業務をワンストップでアウトソースできることにあります。決済関連業務には与信審査、請求書発行、入金確認/消込、督促/回収、貸倒れ対応があり、それぞれの業務に専門事業者が存在しますが、当社グループが提供するサービスはこれら全ての機能を包含しています。また、BNPL決済サービスの総合プロバイダーとして、個人、法人、EC、対面販売など取引形態を問わずBNPL決済サービスをご利用頂けるよう、当社グループでは複数サービスを提供しています。これらのサービスに共通するスキームは以下の通りとなります。
[サービスの流れ]
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主体当社グループの提供するサービスの仕組み及び各取引主体の享受するメリット
買い手
(購入者・購入企業)
購入商品の到着・サービスの提供を受けた後、当社グループから発送される請求書を用い、コンビニエンスストア・銀行・郵便局・LINE Payの何れかで支払いを行います。商品着荷・受取及びサービス享受後に支払いを行うため、詐欺等の商品トラブルを避けることができます。
売り手
(加盟店)
出荷・役務などの提供後、当社グループより売買代金から手数料を控除した額を受け取ります。これにより、買い手(購入者・購入企業)に対する信用リスクを負うことなく確実に代金を回収できます。当社グループの提供するサービスの導入に伴い、決済手段としてBNPL決済サービスを希望する買い手(購入者・購入企業)からの新規注文及び新規顧客の増加が期待できます。なお、一部の取引については、買い手(購入者・購入企業)が当社グループに支払いを行う前に、当社グループより売り手に立替払いを行うことで、売り手における販売代金の早期回収にも寄与しています。
当社グループ出荷・役務提供等の取引成立を条件に購入者の信用を確認の上で、売買代金を売り手(加盟店)に支払うことで債権を買い取り、その後買い手より代金を回収します。債権の額面に対し所定の手数料率を掛けて算出される取引手数料及び請求書発行手数料等を売り手(加盟店)から受領し、営業収益として計上します。

当社グループでは、加盟店のインターフェースとしてはSaaS(Software as a Service)型で導入されるサービスを提供しており、与信判断についても過去より蓄積された膨大なデータを活用して大半で自動判断を行っていることから、テクノロジーを活用して新しい信用を創造するビジネスを運営しているものと考えています。2021年3月期末時点において累計3億件を超える取引データを有し、2021年3月期の年間では6,600万件以上の取引がありました。取引データの内訳は、累計2.8億件以上のBtoC取引データ、累計1,000万件以上のBtoB取引データであり、さらに76,000店超の加盟店情報を活用することで、取扱高を拡大させながら、継続的に未払い率を低下できるテクノロジー力が特徴となります。
[実績]
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(注3)NP後払い、atone、NP掛け払い、AFTEEのサービス提供開始から2021年3月31日時点迄の累計取引件数
(注4)年間取扱高、加盟店総数、年間取引件数はBtoC取引向けサービス及びBtoB取引向けサービスの21年3月期合計値
[未払い率と取扱高の推移]
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(注5)各期の取扱高のうち、18ヶ月を超えて未払いとなった取引額の割合(2021年3月期については、2021年9月末時点で未払いとなっている取引額の割合(貸倒処理前のものを含む))
結果として、NP後払いにつき、2021年3月期末時点においては、約97%という高い与信通過率(注6)を実現しながら、未払い率は0.6%未満に留めております。購入者・購入企業において身に覚えのない事由により与信が通らず取引ができないといった不都合を生じさせず、加盟店における取扱高の最大化に寄与しており、今後も継続的に与信システムの高度化を図ってまいります。
(注6)NP後払いにおける2021年3月期の取引登録件数のうち、当社グループにて与信判断上NGとした件数を除いた割合(氏名・電話番号が一致し複数回NGと判断した取引は同一ユーザーによる取引として集約)
(提供するサービスについて)
上述の各サービス共通の事業コンセプトのもと、当社グループでは主に以下のサービスを提供しています。
[当社グループの事業領域]
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サービス名称サービス概要
BtoC取引向けサービス
0201010_006.png[エヌピー後払い]BtoC取引のECを対象にしたBNPL決済サービスです。
2021年3月期における年間取扱高は3,422億円(前年対比16.3%増)であり、当社グループの国内BNPL決済サービスのリーディングカンパニーとしての成長に、最も寄与したサービスです。
0201010_007.png[アトネ]BtoC取引を対象にスマートフォンを活用した会員制のBNPL決済サービスです。
ECでの利用に加え、QRコードを活用することで実店舗での利用も可能となっています。ポイントについてはatoneでの利用に加え、NP後払いの利用で貯まったポイントも購入時の値引きに利用可能です。
0201010_008.png[アフティー]BtoC取引を対象にスマートフォンを活用したBNPL決済サービスで、2018年8月より台湾で展開しています。「NP後払い」と「atone」から得られたノウハウをもとにローカライズした通販向けのBNPL決済サービスです。
BtoB取引向けサービス
0201010_009.png[エヌピー掛け払い]BtoB取引を対象としたBNPL決済サービスです。
企業間取引における少額債権を主対象とした掛け払い決済を取扱っています。多種多様な業態の加盟店との取引実績を積み上げ、2021年3月期における年間取扱高は752億円(前年対比27.1%増)となっています。

各サービスの具体的な内容は以下のとおりです。
① BtoC取引向けサービス
BtoC取引向け国内BNPL決済サービス市場において40%以上(注7)のシェアを誇ります。購入者にとってBNPL決済サービスはクレジットカード登録不要で簡単に利用でき商品確認後に支払える安心・便利な決済です。また国内BNPL決済サービスで当社グループのみが購入金額に応じてポイントを付与しています。加盟店はBNPL決済サービスを導入し、購入者のBNPLニーズに対応することで新規顧客の増加・売上アップが期待できます。
(注7)矢野経済研究所「2021年版 オンライン決済サービスプロバイダーの現状と将来予測」より、BNPL決済サービス市場の2020年度見込金額(8,820億円)と「NP後払い」、「atone」の2020年度取扱高合計金額(約3,600億円)をもとに算出
[当社グループの提供価値]
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(注8)当社グループ所定の審査を通過した取引が対象。ただし審査通過後に、当該取引の売り手と買い手との間に紛争が生じた取引、その他規約に規定の所定の事由がある取引については対象外とする
当社グループの主要サービスである「NP後払い」は、2002年のサービス開始以来、19年連続で取扱高の成長を遂げている決済ソリューションです。2021年3月期における年間取扱高は3,422億円(前年対比16.3%増)となっており、当社グループにおける全サービスの年間取扱高4,381億円のうち、78.1%を占めています。
[NP後払い 年間取扱高の推移]
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「NP後払い」はクレジットカード情報の登録が不要であり、氏名・住所・電話番号等を登録するといった簡単な手続きでBNPL決済サービスを利用できるサービスです。本サービスに加盟するECサイトでの買い物をした購入者は、注文時に決済手段として「NP後払い」を選択し、商品受取りと同時若しくは後に届く請求書を用いてコンビニエンスストア・銀行・郵便局・LINE Payにて原則14日以内に支払いを行います。当社グループは加盟店より、債権の額面に対し加盟店毎に所定の手数料率を乗じて取引手数料を受領しています。取引手数料は加盟店毎に設定していますが、基本的にはプランに応じて2.9%~5.0%の手数料率に月額固定費を加算しております。
利用ユーザーは主に20代から50代の女性であり、①クレジットカード情報の漏洩、不正利用の防止、②請求書に伴う都度支払いによる使い過ぎの防止、③クレジットカード情報の入力を不要とすることによる決済手続きの手間の解消(注9)などを理由に「NP後払い」が支持され、決済手段として選択されています。
(注9)2018年12月28日~30日に全国の20代以上の男女1,738人を対象としNPポイントクラブ(NP後払い・atoneの利用で貯めることができるNPポイントが使えるサイト)の会員(以下、「NP会員」という。)向けにインターネット調査を実施
[購入者世代・性別分布]
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出典:2021年4月1日時点におけるNP会員の内訳
当社グループは2002年3月の本サービスのリリース以降、ECサイト構築支援を行うカート事業者とも連携しながら加盟店数及びユーザー数を着実に伸ばし続け、2021年3月末時点において提携ショッピングカート(注10)132サービス、加盟店数69,000店超、ユーザー数においては会員向けポイントプログラム「NPポイント」の会員数は450万人超となっており、またNP後払いの年間ユニークユーザー数は1,580万人を超える規模にまで拡大しており、国内で15歳以上の約7人に1人に利用(注11)されている計算になります。当社グループでは、これら顧客資産に基づく膨大な取引データの蓄積を通じて、高度な詐欺検知と詐欺傾向学習能力を有する与信システムの強化に継続的に努め、与信審査の精度を常時向上しており、実際に与信審査能力を背景に当社グループを選ぶ加盟店が多いことを加盟店へのヒアリングを通じて確認しており競合対比での高い競争力を有しているものと認識しています。
(注10)NP後払いとCSV(Comma Separated Valuesの略称。データのやり取りで用いられる互換性の高いファイル。他プロダクトに当該ファイルをアップロードすることによりシステム間でのデータのやり取りを可能にする)若しくはAPI(Application Programming Interfaceの略称。ソフトウェアの一部を公開することで、他のソフトウェアと機能の共有を可能にするインターフェース)連携をしているカート数
(注11)15歳以上の人口1億1,048万人(総務省 人口統計 2021年4月1日概算値)÷2021年3月期の年間ユニークユーザー1,580万人により算出
「atone」は、購入者が自身の保有するスマートフォン等で無料の会員登録をすることで、EC及び実店舗にてキャッシュレスでの売買(BNPL決済)を可能とするサービスです。
お買い物の代金を商品の到着・内容を確認後に翌月にまとめて後払いにて支払うことが可能となり、支払手段としてコンビニエンスストアでの現金払い又は銀行口座振替が可能なため、ユーザーにとってお買い物後に商品到着・内容を確認した上で支払いが可能である点、お買い物の都度支払う必要がない点、支払方法が複数ある点から安心・便利な決済サービスとなります。翌月にまとめて後払いにて支払いが可能なatoneは、特にスマートフォンの利用に慣れており、所得が比較的低い若年層による利用拡大に寄与しております。また、atoneで商品を購入した場合、取引額の0.5%を会員ポイントとして付与しており、このポイントを次回の買い物に充当でき、atoneにおける利用に限らずNP後払いの利用で貯まったポイントも同様に次回の買い物に充当可能であるため、ユーザーメリットも大きな決済サービスと言えます。加盟店に対しては業界最低水準の1.9%~の決済手数料で提供しております。
本サービスでは、会員登録により購入者への信用判断が精緻化されるため、サービス・デジタルコンテンツといったこれまで「NP後払い」では取扱ってこなかった非物販商材へのサービス提供が可能となっています。また、日本政府による「キャッシュレス・ビジョン」(注12)にて2025年に40%のキャッシュレス決済比率が目標として掲げられていることから、今後実店舗でのキャッシュレス決済の採用が広がると考えられ、「atone」の対象市場の更なる拡大が期待されます。今後はNP後払いとatoneの会員の統合や、NP後払いとatoneのインターフェース統合により、加盟店にとっては一本の開発で同時導入ができるようになる予定です。既存のユーザー及び加盟店メリットに加え、さらに両者の利便性を高めた形でのサービス展開に向けて、機能等を拡充してまいります。
(注12)出典:経済産業省 2018年4月「キャッシュレス・ビジョン」
「AFTEE」は、日本国内で得た知見を活用し、2018年8月より台湾にて提供を開始しているサービスです。
購入者は事前の会員登録は不要で、携帯電話番号を用いたSMS認証(注13)のみでBNPL決済サービスを利用できます。また、スマートフォンアプリをダウンロードすることで1ヶ月分のお買い物の代金をまとめて後払いすることや、最大24回の分割払いを行うことができます。クレジットカードの利用に不安がある方やクレジットカードを持っていない方でも安心・便利に利用できる決済として広がりつつあり、2021年3月時点で台湾最大手ECショップの1つであるPChomeをはじめ約1,800店舗のECショップに導入されています。
なお本サービスについては、2018年3月より株式会社ネットプロテクションズの海外支店として台湾オフィスを設置しサービス展開しておりましたが、2021年5月には株式会社ネットプロテクションズの子会社として台湾に現地法人恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.)を新設し、2021年6月に株式会社ネットプロテクションズより当該子会社に「AFTEE」を事業譲渡した結果、現在は恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.)にて「AFTEE」を運営しております。
(注13)システムやサービスの利用者認証の方式の一つで、スマートフォン・携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)で認証コードを送り、これをその場ですぐに入力させることで本人確認を行う認証方式。
② BtoB取引向けサービス
購入企業にとってBNPL決済サービスは事前手続き不要で簡単に買い掛け取引ができる決済です。またペーパーレスにも対応しておりDX(Digital Transformation)化の手助けとなります。加盟店はBNPL決済サービスを導入することで少額かつ大量に発生し手間がかかっていた請求業務をアウトソースできコスト削減も期待できます。また購入企業が代金を支払わなかった場合も未払いリスクは保証されます。
[当社グループの提供価値]
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(注14)当社グループ所定の審査を通過した取引が対象。ただし審査通過後に、当該取引の売り手と買い手との間に紛争が生じた取引、その他規約に規定の所定の事由がある取引については対象外とする
「NP掛け払い」は、企業間取引における少額債権を主対象とした掛け払い決済サービスです。
2011年のサービス開始以降、NP後払いを通じて構築した小口決済向けのリスクコントロール能力と運用力を「NP掛け払い」に活用することで、BtoB領域においても信用リスク保証型のBNPL決済サービスを提供しています。本サービスの導入により、売り手(加盟店)企業は与信、請求書発行、入金確認、督促といった請求関連業務をアウトソースすることができ、更に未回収リスクを低減できます。買い手(購入企業)にとっても、当社加盟店との取引について、事前手続き不要であり、ペーパーレスにも対応していることによりDX化推進に寄与するうえに、まとめて支払うことが可能となるため、事務負担の軽減につながり、加えて当社が加盟店と買い手(購入企業)の間に入ることにより、新規取引先に対する与信手続きの煩雑さ等の理由から通常では取引ができない企業との取引も可能になるメリットがあると認識しています。
「NP掛け払い」はBtoB領域のEC事業者、卸売り・業務用販売商品を取り扱う事業者、大手企業からITベンチャーなど様々な業種・規模で利用されており、2021年3月期の年間ユニーク購入企業数(注15)は410,000社に達し、国内で日本企業の約8社に1社に利用(注16)されている計算となり、年間取扱高は752億円、昨年対比で27.1%の成長を遂げています。また、企業間のあらゆる掛け取引への対応が可能であるため、対象市場は膨大なものであると認識しています。さらに、近年の少子化の進展による労働力人口の減少、働き方改革・テレワーク普及等によるDX化・業務効率化の必要性が増していることに加え、事業拡大に伴い決済業務の効率化が重視される傾向が高まり、決済サービス等のアウトソース活用ニーズは益々拡大するものと考えています。
(注15)年間(2020年4月1日~2021年3月31日)に当社グループより請求書を発行した企業のうち、企業名が一致した企業数
(注16)日本企業数359万社(経済産業省「2019年版 中小企業白書」)÷2021年3月期の年間ユニーク購入企業410,000社により算出
[事業系統図]
当社グループの事業の系統図は、以下の通りです。
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