有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/19 15:00
【資料】
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【項目】
135項目

対処すべき課題

消費税等の増税や競争の激化といった中小生産者には厳しい経営環境が続く中、当社では、新たな販売機会を望む生産者は今後さらに増えていくと考えており、こうした生産者に新たな販売機会を提供するプラットフォームを通じて地域の活性化に貢献しつつ、当社の成長を実現していくことを目標としております。
この経営目標を具現化するため、当社では以下の事項を重要な課題と認識し、その対応に引き続き取り組んでまいります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「わくわく広場」の運営を通じて、ビジョンとして掲げる「安心と笑顔が広がる世界をつくる」ことを実現してまいります。そのために、プラットフォーム型でありながらリアルな店舗を有しているという特徴的なビジネスモデルに磨きをかけるとともに、他のお店では買う事の出来ない商品を取りそろえることで、お客様が当社の店舗を目指して来店して下さるデスティネーションストアの構築を目指してまいります。
(2)中長期的な経営戦略
当社では、プラットフォーム成長の鍵は「場」と「ユーザー」の拡大であると認識しております。
そのため、シェアショップ事業における「場」である店舗数を積極的な出店戦略により伸ばすとともに、「ユーザー」である登録生産者数を伸ばすことにより、全体的な流通総額の拡大を図る方針であります。当社ではお客様から受領した販売代金から生産者へ支払う仕入代金(予め登録時に生産者に同意いただいている当社で決定した一定の料率で算出した金額)を流通総額より控除した金額を営業収益として財務諸表に表示しておりますので、流通総額の拡大が営業収益及び利益の増加に重要な影響を持つ指標と認識しております。以上のことから、当社の重要な経営指標として、流通総額、店舗数及び登録生産者数を注視し、成長に向けた経営資源の投資を継続してまいります。
①「場」の拡大に向けて
店舗数の拡大に当たっては、以下の戦略を織り交ぜることにより、全国的な展開エリアを拡大させつつ、バランスよくドミナント化を進めてまいります。
(a)地域ドミナントの深化
他の小売店と同様、当社のビジネスモデルにおいても、ドミナント化を進めることにより店舗運営の効率化を図ることが可能となります。
シェアショップ事業においては、地域ドミナントが深まることにより、既存の生産者にとっては、近隣の出品可能な店舗が増え販路拡大になるとともに、新規の生産者の商品が既存の店舗にも増えやすくなる傾向があり、既存のローカルサプライチェーンを新規出店に当たり活用することが出来るため、出店効率を高めることが可能となります。
(b)未出店エリアへの拡大
シェアショップ事業においては、ローカルサプライチェーンを店舗周辺で漸次形成することが前提となっており、既存のサプライチェーンの存在を出店に当たって必要としておりません。そのため、既存店や物流網が無い未出店のエリアであったとしても、将来的なドミナント化を見込むことが出来る地域であれば新たな店舗を通常の出店投資と同様の範囲で行う事が可能となっており、出店エリアの拡大を進めてまいります。
②「ユーザー」の拡大に向けて
当社では、生産者が「いつ・何を・いくつ・いくらで」出品するかを自由に決定できることから、商品力の強化のためには各店への出品する生産者の数を増やしていくことが不可欠となります。そのため、生産者にとっての収入機会の場としての魅力を高めつつ、日本各地の生産者へのアプローチを専属部署のスタッフや各店舗従業員が継続することにより、登録生産者数を増やしていくことが商品力の強化につながると考えております。この点については、既存の店舗であったとしても、店舗周辺の登録生産者数を拡大していく余地があるため、継続的なアプローチを行っております。
また、新規の生産者を増やしていくことに加え、既存の生産者に対しては、自らの商品が「いつ・何が・いくつ・いくらで」売れたのかといった販売情報を見やすく使いやすい状態で積極的に開示し、出品を促す情報システムを提供しており、こうした情報発信の強化継続や、宅配便を利用した店舗への納品、当社が一部の地域で運営している物流センターの利用といった、生産者が出品しやすい・出品したくなる物流システムの提案により、生産者の出品意欲を高め、魅力的な商品がたくさん集まるプラットフォームとしての価値を向上させてまいります。
(3)経営環境
当社が推進するシェアショップ事業と類似する販売スタイルである農産物直売所関連の経営環境としては、農産物直売所経由での農業生産関連事業の販売金額は成長してきている(参考資料:農林水産省統計部「6次産業化総合調査報告」)一方で、スーパーマーケットでも野菜の産直コーナーの展開を進めている店舗も増加しており、競争環境は厳しさを増していると考えております。また、一般的な農産物直売所において中心的な商材である青果は、気候変動や天災といった要因により、価格変動の影響を受けやすい商材となっております。こうした環境の中、当社では単なる青果の直売所ではなく、「地域を結ぶ直売広場」としての機能を発揮して青果以外の産直商材の登録生産者数を増やし、品種の拡大を図ることで激化する競争環境において大きな優位性を発揮しております。
外部競争環境としては、こうした厳しい環境は継続していく見込みですが、一方で、シェアショップとしての機能を必要とする生産者は今後さらに増えていくと考えており、こうした生産者に新たな販路を提供することが、地域の活性化に貢献するという当社の社会的意義につながるものと考えております。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、流通総額、店舗数及び登録生産者数を重要な経営指標と考えております。
当社の成長に対して重要な上記の指標を伸長させていくためには、プラットフォームを利用する生産者を増やすとともに、より多くの商品を出品いただく環境づくりを行い、店頭に集まる商品を増やしていくことが、お客様にとって魅力のあるプラットフォーム、すなわち、売り場・店舗につながり、結果として営業収益・利益の拡大につながっていくと考えております。
また、生産者とお客様を結ぶプラットフォームである店舗数そのものを拡大させていくことで、より多くの生産者に販売機会を提供するとともに、お客様に魅力的な商品をお届けしていきたいと考えております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(2)に記載の、経営方針及び経営戦略を実行していく上で、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
(特に優先度の高い対処すべき事業上及び財務上の課題)
①新規登録生産者の獲得
シェアショップ事業を成長させていくためには、いかに効率的かつ効果的に商品を出品しプラットフォームを利用する新規登録生産者を獲得していくことができるかが課題と認識しております。この課題に対処するために、当社では、生産者開拓を行う担当部署を設けており、スキル向上とスタッフの拡充に取り組んでおります。また、「わくわく広場」を利用することにより生産者の収入が増加するメリットを継続的に訴求し、生産者の登録拡大に向けた活動を続けてまいります。
②新規出店数の加速
店舗数を拡大させるためには、収益力のある新規出店数を継続させていくための社内体制の整備等を進めることが課題と認識しております。この課題に対処するために、当社では、出店候補物件の評価プロセスの整備や出店意思決定後の出店プロセスの整備に取り組んでおります。
③新規出店エリアの拡大
店舗数の拡大にあたっては、未出店のエリアも含め新規店舗の出店を行っていくことが課題になっていくと認識しております。この課題に対処するために、当社では、現在のシェアショップ事業が成立しやすいエリア・地域を分析しつつ効率的に新規出店エリアの拡大を進めていくほか、販売商品や商品供給体制の面で新たなビジネスパッケージを考案し、これまで出店の難しかった未出店エリアへの出店も進めていきたいと考えております。
④「お客様がまた来たくなる店舗」の運営
生産者がより多く出品したいと感じられるプラットフォームを実現するには、出品した商品がお客様へ販売され、収入に結びつくことが実感できる店舗となっていくことが課題と認識しております。この課題に対処するために、当社では、「お客様がまた来たくなる店舗」をつくることを、店舗運営にあたっての判断指針の第1に掲げ、店舗への浸透を図っております。
⑤店舗で取り扱う商品及び売り場の安全性・遵法性の確保
「わくわく広場」に出品される加工食品に関しては、生産者及び店舗スタッフが「食品表示法」、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」等の各種法令に基づく商品表示・店頭表示を理解し、順守することが課題であると認識しております。この課題に対処するために、当社では日頃からこれらの関連法令等に関する情報発信を社内外に行っておりますが、引き続き関連法令に基づく表示に努め、お客様に安心してお買い物をして頂けるよう、売り場の安全性の確保を図ってまいります。
⑥人材の確保
継続的な成長の源泉である人材は、当社にとって重要な経営資源であると認識しており、中途採用も含め、優秀な社員を継続的に雇用し、その成長機会を提供し、事業規模を拡大させる人材を確保、育成することが長期的な当社の成長にとっての課題であると認識しております。この課題に対処するために、当社では、教育・育成及び人事評価制度の充実等の各種施策を進めてまいります。
⑦生産者の販売増加に向けたサポートの充実
プラットフォームとしてのシェアショップの成長には、プラットフォーマーである当社の努力だけではなく、店頭に十分な商品が展開されるように、生産者に魅力的な商品をより多く出品してもらうことができるかが課題と認識しております。この課題に対処するために、当社では、生産者の出品を促すため、リアルタイムで詳細な販売データをスマートフォンやパソコンを通して確認出来る情報システムを自社で構築・改善する体制を持つことにより、生産者が状況に応じたタイムリーな出品判断をできる仕組みを提供するなど生産者向けの情報発信体制の強化に取り組んでおります
⑧コンプライアンス体制の強化
当社は、過去に関係会社との取引において貸倒損失を計上しておりますが、この問題については当社が被った損失相当額を貸付当時の取締役であった現代表取締役社長の髙品政明より受領することにより、経済的損失は解消しております。詳細は「第5 経理の状況 注記事項(重要な後発事象)2 以前の親会社であった株式会社イアケス(2018年12月に破産。以下「同社」という。)への貸付金の貸倒に係る受取補償金の受領」をご参照ください。今後このようなコンプライアンス意識の希薄さに起因する問題を防止するよう、コンプライアンスを含む経営管理体制の強化を引き続き図ってまいります。具体的には、当社のガバナンスの高度化を目的として、取締役候補者の指名や取締役が受ける報酬の妥当性を審議し、取締役会に答申を行う「指名・報酬委員会」を設置いたしました。また、コンプライアンス統括責任者を任命し、法令等の遵守、懸念事象発生時の報告及び対応を行うとともに、取締役会において定期的に重要事項の審議及び報告を行うなどの対応をしております。法令遵守は企業存続の基本として全社的に更なる徹底が必要であると考えており、全従業員を対象にコンプライアンス意識の更なる醸成を進めてまいります。
(その他の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
①食品ロスへの対応
当社では新鮮な野菜を提供することが他の店舗との差別化につながる点の一つであると考えており、青果の陳列期間を当社独自で定め、陳列期間を超える青果は店頭から撤去しております。これらの、まだ十分に食べられるにもかかわらず、「わくわく広場」の付加価値を維持するために廃棄せざるを得ない食品ロスは当社にとっての課題であると認識しております。この課題に対処するために、当社では、地方自治体とも連携し、店舗近隣のこども食堂をはじめとしたNPO法人等に対して、陳列から外れた食品を生産者の同意も得た上で無償提供しており、今後こうした連携をさらに増やすことで、食品ロスを少しでも削減してまいります。
なお、この取組が評価され、埼玉県より「令和元年度 彩の国埼玉環境大賞 優秀賞」を受賞しております。
②自然災害への対応
「わくわく広場」に出品される主力商品の一つが、生産者が直接出品する青果ですが、台風や洪水、強風などの自然災害の被害が発生し、生産者に被害が発生した場合、出品量が減るなどの影響が生じるといった課題があると認識しております。当社では、出店エリアの拡大に伴い、日本各地で登録する生産者が増えており、自然災害の影響が軽微にとどまったエリアの生産者が宅配便などを活用して出品するスタイルを提供することにより、自然災害による物量の変動への対応を進めております。
③財政状態健全化への対応
当社は創業以来複数の事業を展開してきている中で、現在のシェアショップ事業を収益事業として運営するに至っておりますが、その業態変更の過程において、新規事業への投資や不採算事業からの撤退を繰り返す中で使用価値の低下した流動資産及び固定資産に対して2016年9月期に評価損や除却損等を特別損失として計上し、2016年9月期の当期純損失が1,614,382千円となった影響により当社は2021年9月期第3四半期末まで債務超過(その後の利益計上により2021年9月期末時点では純資産35,414千円となり債務超過は解消)となっておりました 。その過程において金融機関からの借入金が増加し、有利子負債残高が2020年9月末時点で3,173,435千円(総資産の73.9%)、2021年9月期末時点で2,774,835千円(総資産の58.1%)となっております。有利子負債残高については減少傾向にあるものの、金利上昇局面においては支払利息負担が増加する可能性があります。また、当社では、安定的な資金調達をはかるため、金融機関との間でシンジケートローン契約を締結しておりますが、本契約には一定の財務制限条項が付されており、当社がこれらに抵触した場合、期限の利益を喪失し一括返済を求められる等の可能性があります。なお、金融機関との間で締結しておりますシンジケートローン契約に基づく借入金の財務諸表計上額及び財務制限条項の条件につきましては、「第5 経理の状況 注記事項 (貸借対照表関係)3財務制限条項」をご確認ください。当社では事業の成長を通じ財政状態の健全性を図るため、財務制限条項の条件の良化に向けて、金融機関との交渉を継続しつつ有利子負債残高の減少を進めてまいります。