有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/05/24 15:02
【資料】
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【項目】
143項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針・経営戦略等
当社グループは、「チームのコラボレーションを促進し、働くを楽しくする」というミッションを掲げ、企業や個人の生産性の向上に貢献してまいります。当社グループは、上記のミッションの下、プロジェクト管理ツール、ビジュアルコラボレーションツール、ビジネスチャットツール、セキュリティとガバナンス強化のためのツールの開発及び改良を継続的に行っております。
中長期的には企業が開発から製造、それに市場への製品やサービスの投入といった一連のビジネスを行う上で必要となるサービスをフルラインナップで提供できるようなサービス展開を行い、高いシェアを獲得することで収益性を高め、企業価値の増大を目指してまいります。
後述の通り企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は多くの企業において経営課題として意識されているものの、一般的には企業等のオフィスワークにおけるプロジェクト管理や業務フローは依然として文書作成や表計算ソフト等が中心となっているものと想定されます。企業におけるコミュニケーション面に着目すると、e-mailが一般的なツールとして広く使用されており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降はテレワークの普及にともないビジネスチャットやWeb会議といったコミュニケーションツールの需要が大幅に拡大(株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」(2021年8月)より)しているものの、当社グループは業務フロー全体の円滑化をサポートするサービスを提供し、コミュニケーションのみならずチームのコラボレーションを促進するサービスを提供する企業としてのポジションを確立することを目指しております。また、サービス開発にあたっては、一般的なオフィスワーカーの方をはじめとしてどんな職種の方でも親しみやすいUI(ユーザインターフェース)や高度なITスキルをもたない方でもシンプルで使いやすい操作性・機能性を追求することにより、エンジニアの方以外の幅広い職種の方々にご使用いただけるサービスの展開を進めて参ります。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが提供する「Backlog」、「Cacoo」、「Typetalk」及び「Nulab Pass」は、料金を顧客の使用期間及び使用容量、ユーザー数等に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益を獲得することができるものであるため、ARR(注1)、有料契約数(注2)及び解約率(注3)を指標として重視しております。
(注)1.Annual Recurring Revenueの略語であり、対象月の連結売上高に12(ヶ月)を乗じて算出されます。なお、2022年3月におけるARRは2,504百万円(前年同月比16.6%増)です。
2.2022年3月末時点における当社のサービスにおける有料契約数は18,541件です。
3.2022年3月の前月の月額利用料合計に占める解約に伴い減少した月額利用料合計の割合として算出した解約率は0.62%です。
(3) 経営環境
日本国内の経済環境は、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足が問題視される一方で、政府主導による時間外労働時間の上限引き下げをはじめとした労働法規の改正等、働き方改革が推進される中、労働生産性の向上に向けた取組みへの期待が高まっているものと認識しております。さらには、2020年初めに感染拡大の影響が出始めた新型コロナウイルス感染症を契機としたテレワークの普及により、リモート環境における労働生産性の向上が以前にも増して重要視されており、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は喫緊の経営課題として広く意識されているものと考えられ、このような傾向は新型コロナウイルス感染拡大にともなう生活様式の変化により中長期的に継続すると想定されます。
また、当社グループの主要な市場であるSaaS型グループウエアの市場規模は2020年度から年平均9.2%と堅調に成長しており、2025年には3,280億円となることが見込まれております。さらに、Backlogの主要な市場であるSaaS型プロジェクト管理ツールの市場規模は2020年度から年平均18.2%の成長が推定されております(株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」(2021年8月)より)。
このような市場環境の下、当社グループが提供するサービスに対する需要も市場の拡大に伴い高まっていくものと考えております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、今後の更なる成長を実現する上で、以下の事項を経営課題として重視しています。
① 既存サービスの強化による顧客満足度の向上と販売の拡大
当社グループが提供するサービスであるBacklog、Cacoo、Typetalk及びNulab Passを市場に投入後も顧客の声を取り入れ、継続的な開発・改良を行うことにより顧客満足度の向上を図ることが重要であると考えております。このため、LTV/CAC(注)とのバランスに留意しながら、今後も継続して広報活動、広告宣伝活動及びユーザーコミュニティの活性化等を通じ、サービスの認知度向上に努めて、販売の拡大を進めてまいります。
(注)LTV(Life Time Valueの略語で、顧客生涯価値を指します)とCAC(Customer Acquisition Costの略語で、顧客獲得単価を指します)の比率で、マーケティング活動の投資効率性を示す指標です。なお、2022年3月期におけるLTV/CACは14.6倍(各前月の月額利用料合計に占める解約に伴い減少した月額利用料合計の割合として算出した解約率を使用して算出)です。
② 優秀な人材の継続的な採用と育成
当社グループが中長期的に成長するにあたり、提供するサービスの付加価値を高め、新規顧客を獲得するとともに、サービスの解約率を低く抑えることが重要であると考えております。そのためには、優秀な技術者を中心とした人材の確保と育成が重要であると考えております。現時点においても優秀なエンジニア、管理系の人材が集まる環境は実現できておりますが、引き続き従業員が能力を最大限発揮できる体制を構築し、優秀な人材の採用と併せて、優秀な技術者の育成を進めてまいります。
③ 情報管理体制の強化
当社グループが提供するサービスは、顧客の様々な情報を預かっており、当該情報管理を継続的に強化し続けることが重要であると考えております。そこで外部の監査機関の監査を受け、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得する(JIS Q 27001:2014)といった対策を行っております。また、個人情報管理規程等に基づき管理を徹底するだけでなく、社内教育・社内研修の実施やシステムの整備等を継続して行っております。
④ 内部管理体制の強化
当社グループは、更なる事業拡大を推進し、企業価値を向上させていくためには、効率的なオペレーション体制を基盤としつつ、内部管理体制を強化していくことが重要であると認識しており、コンプライアンス体制及び内部統制の充実・強化を図ってまいります。