有価証券届出書(新規公開時)

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2022/04/22 15:00
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研究開発活動

第13期連結会計年度(自 2020年9月1日 至 2021年8月31日)
当社グループは、ビジョンとして掲げる「テクノロジーに想像力を載せる」の考えに基づき、機械学習技術、深層学習技術、画像処理技術を用いたアルゴリズム及びソフトウエアの研究開発に取り組んでおります。
メインAIによる画像認識技術のビジネスでの実用化、社会実装にいち早く実績を残し企業活動において欠かせないシステムとして浸透、定着させるべく研究開発を進めてまいりました。当社グループの画像認識技術の特徴である顔画像に対する高い認証精度を実際のビジネスの現場で活用するためには、様々な外部環境への対処が求められ、研究分野は多岐にわたります。
第11期事業年度(自 2018年9月1日 至 2019年8月31日)の画像認識プラットフォーム・AIZE(アイズ)の提供開始に伴い、画像認識技術の実用が本格始動いたしました。導入企業様のニーズに応じた画像認識技術のカスタマイズ、機材や機材の設置環境に左右されない認証精度の追求を中心に研究開発に行っております。実用上で必要となる精度向上や機能追加の点では、新型コロナウイルス感染症拡大の情勢下においてマスク着用時での顔認証精度のさらなる向上や、テレワークの際の顔認証における写真によるなりすましを防止する機能等の研究を進め、一定の成果を得ております。このうちマスク着用時での顔認証につきましては、当社グループでは新型コロナウイルス感染症の流行以前より、他社に先がけて成果をだしておりました。画像認識プラットフォーム・AIZEは、新型コロナウイルス感染症の流行下における社会貢献を目指して開発した自動検温システムにも搭載しております。このシステムの顔認証AIは勤怠管理等感染拡大防止に止まらない機能を提供したことで注目されており、ITシステム企業、メーカーからも引き合いが増加し、それにともなって開発分野も拡大しております。
当社グループの画像認識AIの研究開発の源泉となりますのは、2014年より進めております囲碁AIの研究開発です。2015年に初めてコンピュータ囲碁の国内大会に出場後、国際大会、国内大会で好成績を納めてきました。2019年4月に世界一の囲碁AI開発を目的として、株式会社グロービス(東京都千代田区、代表:堀義人氏)、囲碁AI「AQ」開発者・山口祐氏、公益財団法人日本棋院(東京都千代田区、理事長:小林覚氏)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(東京都千代田区、理事長:中鉢良治氏)と協働した「GLOBIS-AQZ」プロジェクトに参画し、2019年12月に開催された第11回UEC杯コンピュータ囲碁大会(主催:電気通信大学エンターテイメントと認知科学研究ステーション)では、中韓を含め国内外から多くのチームが参加するなか準優勝となりました。つづく2020年には、囲碁AI国際大会で優勝することを企図して、量子コンピュータによる計算資源増大等先端分野での研究開発を進めようとしておりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により各種大会の中止あるいは規模縮小での開催となり、大会参加を断念、囲碁AIに注力しておりました研究開発リソースを実用的な画像認識技術に振り替えました。
画像認識技術は、これまでにも当社グループの事業において、AIによる価格査定(企業向けフリマアプリ)の開発やAI画像認識アプリ、自動運転に向けた技術解析支援システム(航空写真の地図データ化、車載画像の解析)の開発、手書き文字認識・OCR開発等、様々な分野において活用されております。
画像認識プラットフォーム・AIZEの実用が進むなかで顕在化した、次の二つのニーズについても研究を開始いたしました。人流を検知し人数をカウントする「群衆分析」は、リテールマーケティングへの活用を期して開発を進めております。また人の眼では認知できない微細な動きを検知する「モーションマグニフィケーション」は、顔画像による決済システムの信頼度を高めうる技術として研究に着手しております。この二つは、開発完了後、即時の実用化が見込める技術です。このように、ビジネスの現場とリンクした研究開発を進めるにあたり、当連結会計年度はメルクマールとなる一年となりました。導入企業様のニーズや市場の動向に応じて、AI、ブロックチェーン、IoTといった先端技術を活用した新規プロダクトの研究開発を続けてまいります。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は8,678千円であります。
第14期第2四半期連結累計期間(自 2021年9月1日 至 2022年2月28日)
前連結会計年度より継続して画像認識AIエンジンの機能向上に取り組んでおります。
既にサービス提供しております画像認識プラットフォーム・AIZE(アイズ)における顔認証AIエンジンの顔画像認証の精度のさらなる向上に引き続き注力しております。具体的には、当社グループの顔認証AIエンジンが当初より得意としておりますマスクやメガネ、帽子の着用時での認証について、さまざまなケースを想定したAIエンジンの機械学習を継続的に行っております。
また、AIZEの社会実装を進めていく過程において、撮影時のアングルやウォークスルー(通過する人物の撮影)により認証精度が比較的低下する事例の分析を行うため、AIエンジンの機械学習を用いた検証を行いつつ、機能改修を図るなど、研究開発を促進しております。実際に提供しているサービスでの検証が可能なのは、AIZEサービスがクラウドを介して提供されているためで、遠隔地に設置したカメラからの画像についても本社の研究開発チームが直接測定して研究開発に活かすことが可能となっております。こうした特徴を活かした継続的な機能改修の利点により、地方の公共施設や商店街へのAIZE Researchの導入が増加しております。
当第2四半期連結累計期間に入り、画像認識プラットフォーム・AIZE(アイズ)の導入数が伸び、認知が広がったことで多様な業界、業種からの引き合いに応じて研究開発の領域が広がる傾向が強まっております。
例えば、当社グループの販売パートナー企業からの要望により、クラウドではなくオンプレミス型でのAIZEサービスの実装を行いました。販売パートナー企業の製品にAIZEを搭載することにより、ネットワーク環境のない現場においてもAIZEの使用が可能となります。クラウドサービスとして設計されているAIZEをオンプレミス型に改修することにより、さらにAIZEの活用シーンは広がっております。
また、交通機関における顔認証サービスの提供について数件の引き合いがあり、その中で実際に運行しているバスに搭載する実証実験に成功し、メディアに取り上げられる事例となりました。
このほか、画像認識AIエンジンとして、顔認証に限らず物体検知での利用についても、顧客企業の要望に基づき研究開発を進めました。具体的には、ファミリーレストランチェーンにおける配膳の内容をAIカメラで認識するシステム等最先端案件の実導入に向けて開発中です。
AIエンジンの研究開発は、顔認証、画像認識にとどまらず、最適経路探索、推論、言語処理等も顧客からの引き合いに応じて研究開発に着手しております。このうち、最適経路探索につきましては、物流システム企業の倉庫で使用される自動搬送ロボット(AGV)に搭載するAIを開発し実証実験を行っております。
新型コロナウイルス感染症の影響等の理由により、前々連結会計年度より一時中断しておりました囲碁AIの研究開発を再開し、2022年3月に開催された第13回UEC杯コンピュータ囲碁大会(主催:電気通信大学エンターテイメントと認知科学研究ステーション)に参加いたしました。世界的に有名なオープンソフトを活用したプログラムが上位を占める中、オリジナルのプログラムでは最上位の6位を記録いたしました。日進月歩の囲碁AIの世界で約2年間のブランクを経て、なおかつ当社グループ独自開発のプログラムで上位入賞を果たしたことが、当社グループの技術力の高さと研究開発の大きな成果であると評価しております。
なお、当第2四半期連結累計期間における研究開発費の総額は3,659千円であります。