有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/09/13 15:00
【資料】
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【項目】
151項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「100年企業への挑戦」を経営理念とし、オペレーティング・リースの対象となる航空機や船舶等の資産価値を見極め、適切にマネージメントを行うことで、株式、債券などの伝統的な有価証券投資とは異なる投資効果を有する高度な商品組成を行い、税務や法務の専門家、金融機関などのパートナーが持つ高い専門性を組み合わせることで、投資家には付加価値の高い金融ソリューションを、航空・船舶会社等の借り手(レッシー)である資金需要者には競争力のあるファイナンスの提供を行い、投資家、パートナー、借り手(レッシー)とともに100年企業を目指していくことを基本方針としております。
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(2)経営環境
① 市場動向
わが国を含む世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の制限や個人消費の低迷により先行き不透明な状況が続いたものの、ワクチン接種の進展に伴う感染者数の減少や、欧米主要先進国を中心とした行動規制の緩和等により旅客需要が大幅に回復するなど、低迷していた経済活動や消費活動に再開の兆しが見られました。しかしながら、ウクライナ情勢の影響による原油価格や資源価格の高騰、物価上昇への対策として各国が政策金利の引き上げ等を進めた事による為替の大幅な変動など、確実な経済回復については依然不透明な状況が続いております。新型コロナウイルス感染症の蔓延による渡航規制等の影響を大きく受けた航空業界においては、2020年の世界の航空旅客需要は大幅な減少となりましたが、ワクチンの普及や、それに伴う移動制限の緩和を受け、2021年には主要先進国を中心に国内線・域内線の需要回復が始まり、渡航規制緩和の拡大に伴い2024年頃にはコロナ禍前の水準まで回復し、再び拡大基調となることが想定されております。一方、船舶業界は新型コロナウイルス感染症による急激な経済活動の縮小等により、世界の海上輸送量は前年比で減少したものの、2020年後半以降は、経済活動の再開に伴い、製品・原料輸送ともに荷動きは回復基調が続いております。それに伴い、世界の船腹量(船の輸送力)も毎年増加を続けており、世界経済の発展と合わせ、今後も需要の増加が見込まれています。
また、航空業界及び海運業界においては、世界的な業界団体がけん引し、業界を挙げて脱炭素化への取り組み目標を掲げており、目標の達成に向け、燃費効率の低い古い機材から環境性能に優れた新しい機材へのリプレイス需要が増えていくことが想定されております。
0202010_002.png*1<航空旅客需要の推移>(出典:一般社団法人 日本航空機開発協会「民間航空機に関する市場予測 2022-2041」より)
*2<海運需要の推移>(出典:公益財団法人 日本海事広報協会「日本の海運 SHIPPING NOW2021-2022」より)
アンクパートナーズ合同会社の調査によると、日本型オペレーティング・リース市場(JOL及びJOLCOの市場)規模は、新型コロナウイルス感染症の影響がまだ大きく生じていなかった2019年度においては約6,200億円であったものが、コロナ禍における航空機案件への投資家心理の冷え込みや、リース各社が新規の商品組成・販売に慎重になった事等により、2020年度、2021年度は約3,700億円台に縮小いたしました。
しかしながら、コロナ禍からの旅客需要の回復や経済活動の再開に伴う投資家心理の改善等を受け、2022年度は約4,800億円、2023年度は約5,900億円と日本型オペレーティング・リース市場においても順調な回復が見込まれております。
そのような市場環境のなか、当社においては、政府支援が明確な主要先進国を中心とするエアラインや、財務基盤が強固な航空会社・海運会社等を中心とした投資案件の組成に注力し、2022年3月期の主な組成実績としては、世界最大手航空会社米デルタ航空向け航空機案件、独ルフトハンザ航空向け航空機案件、SFLコーポレーション(転用船者:A.P.モラー・マースク)向け船舶案件等の世界を代表する大手エアライン・海運会社案件の組成を行っております。
0202010_003.png*3出所:アンクパートナーズ合同会社 マーケットニュース(ミニレポート)
「2022年 JOLCOマーケットの動向調査」 「JOLCO+JOLの出資金額」」より当社作成
② 競合優位性
a.商品組成力
新型コロナウイルス感染症の拡大によって生じた航空業界の業績悪化や、それに伴う航空機案件への投資に対する投資家心理の冷え込み等、今後も同じように起こりうる事業リスクを鑑み、特定業界へ過度に依存しない商品ラインナップの構築や、投資家ニーズの多様化に応えうる、より一層魅力ある商品の開発が求められます。そのため、ファンド事業では商品ラインナップの更なる拡充及び市況等を鑑みた柔軟な商品提供体制を構築するべく船舶・コンテナ案件の組成体制を強化した他、タックス・マネジメントニーズに対応する商品(JOLCO)に加え、航空機リース業としての安定収益や償却資産の保有ニーズ、事業基盤の拡大・事業承継等に向けた収益機会の多様化などの機会も得られる商品(JOL)も、当社事業の中核とするべく取り組んでまいりました。
その結果、2022年3月期の組成実績としては組成総額157,135百万円のうち、航空機JOL案件18,490百万円(組成総額に占める割合:11.7%)、航空機JOLCO案件76,162百万円(同:48.4%)、船舶コンテナJOLCO案件62,482百万円(同:39.7%)、また商品出資金等販売額は、総販売額56,002百万円のうち、航空機JOL案件25,056百万円(総販売額に占める割合:44.7%)、航空機JOLCO案件20,235百万円(同:36.1%)、船舶JOLCO案件10,711百万円(同:19.1%)となり、多様な投資家ニーズに対応するバランスの取れた商品提供を行ってまいりました。
b.SBIグループのネットワークを活用した全国販売網
当社グループの事業拡大のためには、ファンド等の購入者である投資家の増加が必要となります。当社では、地域金融機関等の他、証券会社、税理士・会計士などのパートナーと投資家の紹介に係るビジネスマッチング契約を締結しております。また、SBIグループのネットワークを活用し有力地域金融機関等の開拓に取り組んだ他、地域を代表する税理士・会計士との資本業務提携等を通し、各パートナー企業との深く強固なリレーション構築に取り組みました。
2022年3月末日時点でのパートナー数は179社と前年度の123社から56社増加し、また、優良顧客を抱える有力パートナーとのリレーション強化が奏功した結果、1パートナーあたりの出資金等販売額は312百万円と、前年度の179百万円から約76%増加しております。その結果、2022年3月期の従業員1人あたり経常利益額は約57百万円となり、少ない従業員数で効率性の高い事業運営体制を実現しております。
今後は、2022年3月期にSBIグループに参入した新生銀行グループ各社との関係強化を図っていく他、引き続き有力パートナーの開拓、リレーション強化により当社営業体制の更なる成長の加速を図って参ります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、SBIグループの掲げる「顧客中心主義」のもと、お客様の最善の利益を第一に考え、航空機や船舶等の資産を対象に、投資家にオペレーティング・リース取引を利用したさまざまな魅力ある商品への投資機会を安定的に提供し、顧客満足の向上と企業価値の増大を継続して図るべく、主に以下の課題に取り組んでまいります。
① 資金調達力の増大
当社グループが事業を展開するには、ファンド組成における組合契約に基づく出資金の一時的な引受や、航空機の購入など多額の資金を必要とします。これらの資金は、その大半を金融機関からの借入により調達しております。そのため、当社グループの資金調達力の増大は複数案件の同時組成や大型案件の組成を可能とし、当社グループの業績伸長に寄与します。当社グループは既存金融機関との取引枠拡大や新たな金融機関との取引により、資金調達力の増大を目指します。
② プロフェッショナル人材の確保
当社グループ事業を支える優秀な人材の確保は、当社グループにとって、重要な課題と考えております。当該事業を遂行するにあたり、高度な専門知識や経験が求められることから、オペレーティング・リース取引に係る事業経験者やリースファンドの販売経験者の積極的採用を行い、プロフェッショナル人材層を厚くするとともに、採用した人材への継続的な教育や業務環境の整備を行い、人材の長期定着化を図ってまいります。
③ DX等を活用した業務効率化への取り組み
当社グループの取り扱う商品は、組合契約満了までの期間が概ね10年程度と長期の運用期間となっており、新たな商品の組成並びに販売に伴い、期中管理等の業務量は増加する傾向にございます。そのため、積極的にDX等を活用する事により、業務の効率化を図るとともに、オペレーションミスの削減等を図ってまいります。
(4)今後の成長戦略
① 新たな収益源への展開
様々な投資家のニーズへお応えすべく、商品ラインナップの更なる拡充を図るとともに、新たな投資家層へのアプローチに向け船舶・航空機における機関投資家向けファンド事業への事業展開を検討しております。
その第一歩として当社が船舶を保有し用船事業を行うプリンシパルインベストメント事業を開始いたしました。これまで培った知見・ノウハウやプリンシパルインベストメント事業によって新たに得る経験を活かし、船舶・航空機オペレーティング・リース専業者として長期的な成長を目指してまいります。
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② 市況に左右されない商品提供体制の強化
2021年3月期に開始したJOL商品並びに、2022年3月期に組成体制を強化した船舶・コンテナ案件が寄与し商品出資金等販売金額が大幅に拡大致しましたが、今後新たに取り組みを検討している船舶JOL商品並びに機関投資家向けファンド事業等、商品提供体制の更なる強化により、多様な投資家ニーズにお応えし、且つ、市況環境に左右されず、安定的に良質な案件を提供する体制の強化を図ってまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、経常利益であります。また、この経営指標に影響する商品出資金等販売金額並びに商品組成金額を把握しており、これらの指標につきましては今後も継続的に増加させるよう努めてまいります。