有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/14 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
167項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、『「個の時代」の、担い手に。』というミッションをかかげており、InstagramやYouTubeなどSNS上で活動されている多様なインフルエンサーを支援しております。インフルエンサーを基軸としたプラットフォームを作ることで、様々な企業がSNSをうまく活用でき、インフルエンサーがより活躍できる世界になり、現代の細分化された消費者のニーズにサービスがマッチするより良い世界を実現できると考えております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
前項の経営方針に基づき、インフルエンサーの支援を通じて世の中に提供する価値の最大化を目指します。
当社グループは、この価値提供から生み出された結果である売上総利益(企業と消費者に対する請求総額である取扱高から、インフルエンサーに対する金銭報酬の支払額と商品原価を差し引いたもの)についても重要な指標として考えております。
そして当社グループは、今後の成長可能性と社会に与えるインパクトを勘案し「toridori base」を注力サービスとしておりますので、「toridori base」の売上総利益の成長が当社グループ全体の中長期的な企業価値向上に影響を与えると認識しております。また、上記「toridori base」の成長に直結する重要指標として、「toridori base」の顧客数および顧客当たりの四半期売上総利益を注視しております。
なお、各種指標の四半期ごとの推移は、以下のとおりであります。
サービス別売上総利益
toridori
base
(千円)
toridori ad
(千円)
toridori promotion
(千円)
toridori
made
(千円)
toridori studio
(千円)
合計
(千円)
2020年12月期第1四半期2,72179,14920,081-31,709133,662
2020年12月期第2四半期4,461100,46121,661-18,689145,273
2020年12月期第3四半期6,93485,36326,963-20,496139,758
2020年12月期第4四半期10,72461,64838,775-31,100142,248
2021年12月期第1四半期18,33075,70136,662-37,405168,098
2021年12月期第2四半期33,59285,40342,404-51,250212,650
2021年12月期第3四半期54,92490,72754,93446,64836,286283,522
2021年12月期第4四半期79,28483,02666,98154,76530,293314,350
2022年12月期第1四半期89,647129,41769,06261,87724,222374,226
2022年12月期第2四半期135,316146,50478,53540,76020,719421,835
2022年12月期第3四半期198,377154,32673,54882,48531,416540,154

(注1) 「toridori made」は2021年7月よりサービスを開始しております。
「toridori base」の顧客数(注1)及び顧客当たりの四半期売上総利益(注2)
顧客数(社)顧客当たりの四半期
売上総利益(円)
2020年12月期第1四半期7237,796
2020年12月期第2四半期7559,483
2020年12月期第3四半期12555,479
2020年12月期第4四半期20851,558
2021年12月期第1四半期30859,514
2021年12月期第2四半期52563,985
2021年12月期第3四半期84165,309
2021年12月期第4四半期1,15168,883
2022年12月期第1四半期1,32367,761
2022年12月期第2四半期1,87472,207
2022年12月期第3四半期2,29686,401

(注1) 各四半期において、「toridori base」の有料会員として当社からの請求対象となった顧客の数
(注2) 「toridori base」の四半期ごとの売上総利益を顧客数で除することで算出
(3)経営戦略等
当社グループはこれまで「toridori base」を強化する戦略を推進してまいりましたが、今後もこの戦略を継続いたします。「toridori base」に主として経営資源を投下しながら、既存事業である「toridori ad」、「toridori promotion」、「toridori studio」の安定成長と、「toridori made」を始めとする新規領域への挑戦を引き続き行ってまいります。
① 「toridori base」への積極的な投資
顧客にとっての「toridori base」の価値は、適切なインフルエンサーをキャスティングでき、SNS利用の効果を実感できることであり、インフルエンサーにとっての「toridori base」の価値は豊富な広告案件が存在することです。更なるプラットフォームとしての価値向上のためには、顧客数を増やすこと、インフルエンサーの増加・定着、顧客単価の増加が必要不可欠です。
顧客数を増やすために、①新規顧客を獲得するための販路拡大(地方銀行や中小企業との関係性の深い会社との代理店契約・アライアンス強化)②顧客の利用体験強化(インフルエンサーの分析、キャスティングによる効果測定機能の実装、インフルエンサーのデータ蓄積による信用力・影響力の可視化)を行います。
2022年12月期に行った機能追加によって、インフルエンサーのPR投稿を自社のSNSアカウント・Googleサービス等、インフルエンサーのアカウント以外の媒体で露出できるようになり、顧客企業がより効果を実感しやすいサービスに成長しております。このように、顧客企業の販促の悩みを解決できるインフルエンサーマーケティングプラットフォームとして進化したいと考えており、機能追加に伴って販売プランの見直しやオプションメニューの増加を行うことで顧客単価の向上を実現していきたいと考えております。
他方、インフルエンサーの増加・定着のための取り組みも行っており、豊富な案件の提供やインフルエンサー活動を活性化させるサポートについても行います。
② 「toridori ad」、「toridori promotion」、「toridori studio」の安定成長
当社グループは、「toridori ad」、「toridori promotion」、「toridori studio」のサービスを通じて、様々な企業の要望に応え、需要が増加しているインフルエンサーマーケティング市場全体と同様の水準で売上総利益の拡大を目指します。
③ 新規領域への挑戦
新規領域への挑戦として、2021年7月には株式会社GIVINを買収する形で、ブランド運営支援サービスである「toridori made」を開始、また2022年4月には支援インフルエンサーの裾野を広げるべく、セレクトブランドECショップの運営を開始いたしました。当社グループとしては、それだけに留まらず、今後もインフルエンサーのマネタイズポイントの多岐化に伴う支援領域の拡張とプラットフォーム構築によるマイクロインフルエンサーへの支援領域の拡大を進めて参ります。
(4)経営環境
2020年においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により日本の総広告費が前年比88.8%と縮小する中で、インターネット広告市場は前年比5.9%増の2兆2,290億円(注1)と引き続き成長をしております。さらに、2021年においては、日本の総広告費が前年比110.4%と成長する中で、インターネット広告費はその成長を大幅に超える21.4%増の2兆7,052億円(注2)となっており、更なる成長を遂げております。
そのような環境下において、近年では消費者の認知・検索という行動においてSNSが果たす役割はますます拡大しております。2010年代までは、消費者はテレビを見て認知を行い、Googleなどの検索エンジンで検索する、という流れが主流でした。しかし近年では、Instagram、TikTokやYouTubeといったSNSで新しい情報を認知し、検索するという流れが主流になりつつあります。15-24歳に対する意識調査では、ブランドの認知を「Instagram(51.0%)」、「Twitter(48.5%)」、「動画配信サービス(45.0%)」 にて行うという結果や、ブランドや商品の情報収集についても「Instagram(31.5%)」、「Twitter(29.3%)」「動画配信サービス(29.0%)」にて行うという結果がでております(注3)。
これまでの、テレビ・検索エンジンが認知・検索に影響を与えていた時代において、企業はテレビを見る消費者に対してマス広告を行い、検索エンジンでの検索に対応するためSEO対策(Search Engine Optimization,検索エンジンのオーガニックな検索結果において、特定のウェブサイトが上位に表示されるよう、ウェブサイトの構成などを調整すること)を行ってきました。そのため、認知領域では大手の広告代理店や芸能事務所が、検索領域ではネット広告代理店やポータルサイトが大きな影響力を持っていました。しかし、2020年代より、SNSが消費者の認知と検索の主たる媒体になりつつあり、当社グループの提供するインフルエンサーと企業をつなげるプラットフォームの認知・検索領域における影響力はますます高まっていくと考えております。
また、SNSで広告を行う場合には、広告代理店の担当者がついて、企画・インフルエンサーとの調整をすべてアナログで行っており、広告予算に余裕がある大手企業が高い手数料を代理店に支払い、メガインフルエンサーをキャスティングすることが一般的でした。
しかし当社グループが提供するサービスでは、企業の方が直接アプリで簡単にインフルエンサーをキャスティングできるので、値段を安く抑えることができ、幅広いお客様に利用していただくことができます。今までインフルエンサーマーケティングを行うことが困難だった中小企業及び個人事業主の方々に新しい手段を提供することで、当社グループ自身がインフルエンサーマーケティングの市場そのものを広げていきたいと考えております。そうした中、当社の注力サービスである「toridori base」は通販事業者・店舗事業者など事業形態を問わず、また、事業者の規模の大小を問わずご利用いただくことができるため、グルメ・ビューティー・トラベルジャンルを中心とした多種多様な事業者にご利用いただいております。当該事業者の広告費の規模は広大であると考えており、また、日本国内にインフルエンサーの数も豊富に存在しているため、上記市場規模を支えられるほどのSNSの利用環境へと変化してきております。Web上での集客、代理店活用、展示会への出店など様々な顧客獲得施策を取ることで上述の様々な事業者に対してアプローチしており、現在月間で約300社(2022年12月期第3四半期の平均実績)の新規顧客より契約をいただいております。また、月間では約20,000件(2022年12月期第3四半期の平均実績)のマッチングが成立しております。
(注1) 株式会社電通「2020年 日本の広告費」
(注2) 株式会社電通「2021年 日本の広告費」
(注3) SHIBUYA109 lab.調べ 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント 「Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査」
このような環境の中で、当社グループは市場全体の拡大とともに、「第1 企業の概況 3 事業の内容 当社グループの事業の内容」に記載のとおり、注力サービスである「toridori base」への積極的な投資と、インフルエンサーに対する支援領域の拡大及び支援する対象インフルエンサーの裾野の拡大を経営戦略の柱としております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の主な課題は以下のとおりであります。
① 売上の拡大並びに利益及びキャッシュ・フローの定常的な創出
当社グループは、各サービスにおいて機能性・利便性の向上及び市場シェアの獲得が重要と考えており、特に主力サービスの「toridori base」において、システム開発人員やサービスの拡販に係る人件費、及び顧客獲得にかかるマーケティング活動の広告宣伝費などを継続的に投下しており、当該事業単体では未だ黒字化に至っておりません。前述「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営戦略等 ① 「toridori base」への積極的な投資」にも記載の通り、当サービスにおいては継続的な新規顧客の獲得と継続的な既存顧客の利用、更にはサービスの付加価値向上に伴う顧客単価の向上といった施策が成長戦略上重要であり、上記を実現する為のコストは今後も継続的に必要不可欠なものであると考えております。
また、2021年7月より新たに参入したブランド運営支援サービスである「toridori made」においては、各ブランドの採算改善や在庫管理体制の改善等の施策に取り組んでおりますが、当該事業としては未だ黒字化には至っておりません。
加えて、「toridori made」事業を担う株式会社GIVINの買収により計上したのれんの償却費や、当社グループ全体の事業規模の拡大に伴う全社的な組織体制強化の為の管理コスト等も増加傾向にある状況です。
上記の背景により、当社グループは過年度の業績に関して継続的に赤字を計上しており、2020年12月期及び2021年12月期において、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスの状況となっております。ただし、キャッシュ・フローは、マイナスの状況ではありますが、潤沢なキャッシュポジションと自己資本比率を鑑み、現時点において財務上の課題を認識しておりません。
今後財務上の課題の発生が想定される場面及び発生確度につきましては、「2 事業等のリスク (2)当社グループのビジネスモデルに関するリスクについて ① 継続的な投資と赤字計上について」をご参照下さい。
資金繰りが悪化した場合の対策につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析」をご参照下さい。
当社グループは、費用対効果を見ながら、今後も継続的に必要な投資を実施する方針であり、引き続き一定期間において赤字を計上することを想定しております。中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に当たっては、各事業においてこれらの必要コストを上回る売上高の成長が重要であり、今後とも各事業における成長戦略を進めてまいります。
② 人材採用、育成による生産性向上
当社グループの更なる発展を目指すため、事業成長にあった組織及び人事評価体制の確立、優秀な人材の確保、また確保した人員の早期育成の仕組みが不可欠だと考えております。企業理念の社内浸透やリモートワーク環境の整備及びオンライン研修制度の整備を強化し人材育成を通じて会社全体の生産性を向上させることで、さらなる収益性向上に努めてまいります。
③ 広告審査体制の整備
当社グループが受ける広告案件は、広告関連法令やインターネット広告業界の自主規制に違反しないよう、厳格な広告審査基準を顧問弁護士と連携して制定したうえで、管理部門による審査を実施し、不適切な広告案件を排除するよう努めております。
また、広告マッチングの各サービス「toridori base」、「toridori ad」、「toridori promotion」におけるインフルエンサーの投稿は、顧客企業の商品の体験等をインフルエンサーが各種SNSにおいて投稿、拡散するものでありますが、広告関連法令やインターネット広告業界の自主規制に則った厳格な広告審査基準を顧問弁護士と連携して制定し、管理部による審査を実施しており、「toridori ad」に関しては、外部機関による二重の審査も実施しております。さらに、一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の会員として定期的な広告審査に関する情報の共有を受けるとともに、必要に応じて顧問弁護士等へ相談する体制を整えております。広告審査の結果、審査基準に抵触するインフルエンサーの投稿については、修正を依頼している他、インフルエンサーが適切な投稿を行うよう随時注意喚起を実施し、その法令遵守意識の啓蒙に努めております。今後、事業拡大による広告案件の増加や、新たなマーケティング手法を開発した際においても、広告審査体制の整備、対応を行ってまいります。
④ 開発体制の構築
インターネット市場の技術革新のスピードは非常に早く、またソーシャルメディアマーケティング市場において、新たなサービスや競合他社が次々と現れます。当社グループでは、競合優位性の確保及び事業の拡充を図るため、顧客やインフルエンサーの利便性をより高めるための既存サービスの機能改善や、新規広告商品やサービスの開発、投資を行っております。当該開発に際しては、システム開発の必要性や優秀な人材の拡充が必要となるため、迅速な開発が行える体制整備や優秀な人材の確保を行ってまいります。
⑤ 当社グループ及びサービスブランドの知名度向上
当社グループが今後も成長を続けていくためには、自社サービスの知名度向上により、インフルエンサーの拡充及び顧客企業からの認知の拡大が必要不可欠と考えています。今後も費用対効果に注意を払いながらもプロモーション活動を強化してまいります。
⑥ ブランド開発領域の確立
2021年12月期より本格開始した「toridori made」において、流行に敏感な購入消費者の消費トレンドを的確に理解したうえで、安定して企画、提案していく必要があります。そのために、インフルエンサーと購入消費者とのコミュニケーションを一層深めていくとともに、購入消費者およびインフルエンサー双方のニーズにマッチした商品を開発できるようマーケティング体制の強化に努めてまいります。
⑦ 情報管理体制の強化
当社グループはインフルエンサーおよび「toridori made」における購入消費者含め個人情報を多く預かっており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、個人情報保護管理規程に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備と共に、外部業者による脆弱性の確認等を継続的に実施し、情報管理体制の強化・整備を行ってまいります。
⑧ 内部管理体制の強化
当社グループは成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、当社グループといたしましては、コーポレート部門の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化に取り組んでまいります。
⑨ 法規制等の変動に対応する社内体制
当社グループの事業は、広告関連法令、インターネット広告業界の自主規制、各種SNSプラットフォーム規約等の制約を受けますが、それら規制の改正、変更等の事業環境の変化に迅速に対応するため、事業部門とコーポレート部門が連携して情報の収集、分析、管理を行っております。また、規制等の変更に伴い対応が必要である際は、社内への周知、教育等によりその徹底を図っており、これらの対応を継続的に行ってまいります。