有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/21 15:02
【資料】
PDFをみる
【項目】
144項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念である「わたしたちは、「心」のこもった接客、一流のサービス、最適な情報を提供し、お客様から信頼を得ます。そして会社の発展と社員の幸福の実現をめざします。」という考え方の下、「“未来の街”を創造する」というビジョンの実現に向けて、事業等を探求し、新世代の通信規格や最先端のデジタルテクノロジーを活用した商品やサービスの提供により、誰もが安心・安全・便利に暮らせる未来の街「Safe City」(※1)の実現に取り組んでおります。
当社グループは、このビジョンを実現するためには、株主をはじめ、顧客、取引先、従業員、地域社会等の全てのステークホルダーの利益を重視した経営を行うことが、当社グループの使命であると考えており、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実・強化を図り、経営の健全性、透明性及び効率性を確保することが経営上の重要課題であると認識しております。
※1 Safe Cityとは、新世代の通信規格及び最先端のデジタルテクノロジーを活用し、人が安心・安全かつ便利に暮らせる未来の街のことを指します。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、堅実で持続的な成長の実現を通じて新たな価値の創造を図り、安心・安全な街づくりへの貢献を目指しており、売上高成長率及び営業利益成長率を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標としております。
(3)経営環境
新型コロナウイルス感染拡大収束の不透明感が続く経営環境下にありますが、当社のセキュリティ事業に係る市場においては、画像処理技術の向上によって防犯・監視カメラが高画質・高感度となり、またAIやIoTの発展に伴い自動制御やクラウド等の汎用化が進んだことを背景に、事件・事故の解決や未然防止の目的から防犯・監視カメラの必要性が高まってきております。実際、防犯・監視カメラは、犯罪抑止と犯罪捜査に大きく貢献しております。
(刑法犯犯罪認知件数と検挙率)
0202010_001.png出典:公益社団法人日本防犯設備協会 統計データ(警察庁 令和2年の刑法犯に関する統計資料)
カメラの需要は防犯・監視カメラだけではなく、AI(画像認識)と組み合わせることで、従来のセキュリティカード等によって扉を開閉する形式から、AI顔認証による入退室が可能となり、なりすましの防止につながります。また、AIカメラを店舗に用いることでAIによる属性分析で顧客層に適したアプローチのできる売場を形成し、顧客は事前登録することで顔認証による決済ができるなど、その活用範囲はひろがっております。
今後、防犯・監視カメラは社会全体の安心・安全並びに利便に貢献するデバイスとなるものと認識しております。当社グループでは、国内外の電子機器メーカーとの連携により、多種多様な市場ニーズに対応するとともに、当社の商品力とソリューションを活かし、B to BからB to Cへ、さらにはB to G(※2)へと活動領域を広げ、日本全国の各地にSafe Cityの構築の普及を図ることを目指しております。
もう一つ事業であるモバイル事業に係る市場においては、2020年の政府による「携帯電話の料金値下げ」要請を受け、キャリアは料金プランを一斉に引き下げております。また、インターネット上で申し込みが完結可能なサービスを展開しており、従来にない低価格なプランを展開しております。その他では、第4のキャリアとして、楽天モバイルが市場に参入し、業界に新たな動きが生じてきております。
このような状況下において、当社はソフトバンク株式会社の委託販売代理店及び移動通信事業に携わる1企業として、顧客と真摯に向き合い、ホスピタリティの向上に努めることが、顧客の確保につながると認識しております。この取り組みを実施することで定常的なインセンティブが獲得できるものと考えており、当社ではショップクルーの接客態度や適切な商品知識の維持と向上に取り組み、さらにそれを踏まえた顧客ニーズに適したソリューションの強化を継続してまいります。その他、5G(※3)の普及範囲拡大に伴う産業用データ通信端末としての利用拡大に鑑み、ITクラウド事業者との連携を高めつつ、新たなサービスの開発等にも取り組んでまいります。
※2 B to Gとは、Business to Government の略
※3 5Gとは、5th Generationの略(第5世代移動体通信端末)
(セキュリティ事業)
セキュリティ事業における防犯・監視カメラ市場は、株式会社矢野経済研究所の調査(出典:株式会社矢野経済研究所 2021年度版ネットワークカメラ/VCA画像解析システム市場)によれば、2020年の国内市場は、新型コロナウイルス感染症流行の影響から防犯・監視カメラの設置が行えず、市場に停滞感が漂うことになりました。これは市場が縮小したものではなく、防犯・監視カメラに関する設備投資が保留になったことによるものです。そのため、2021年以降は一時ストップとなっていた設備投資が再び動き出すことが予想され、市場は回復へと向かうと予測されています。このことから市場は、2024年には2,600億円を超えると予測されています。
市場の動向としては、フードディフェンスの背景から工場にカメラの導入が進み、工場における需要は拡大傾向にあります。また、物流倉庫、マンション管理、住宅管理の分野でも需要があり、さらに公共施設等におけるモニタリングの需要、河川水位情報や交通網の遠隔モニタリングの需要からも拡大が予測されています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、カメラ画像による認証や分析といった機能の付加価値からも市場の拡大が予測されています。
0202010_002.png出典:株式会社矢野経済研究所「2021年度版ネットワークカメラ/VCA画像解析システム市場」
(注)1.ベンダー出荷金額ベース
2.カメラ、サーバー・エンコーダ、NVR/DVR録画装置、VMSソフトウエア、VCAシステム、その他システムを構築するハードウェア、ソフトウエアを対象として算出。ただし、工事費や保守・メンテナンス料は含まない。
3.なお、上記見込数値及び予測数値に関しては、高い不確実性を伴うものであって、実際の市場規模と大きく異なる可能性があります。
よって、この成長市場に対し、当社は海外メーカーとアライアンスを組み、市場が求めるニーズに対応した商品の投入を迅速に行っております。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の際には、スピーディーかつ適切な判断と温度検知ができるAI温度測定機能付顔認証デバイス「FACE FOUR」を投入し、市場から高い評価が得られたと認識しております。現在、東京、名古屋、大阪の主要都市の他、北陸、札幌、仙台、新潟、広島、福岡の計9箇所に販売拠点を置き、複数の商流を使って病院、博物館、美術館、学校、福祉・介護施設、飲食店等の多くの場所に納入しております。当社商品は単なる検温目的でなく、顔認証と電気錠と連携させ、顔認証アクセスコントローラーとして入室管理を実現できる情報セキュリティ管理のソリューションへ展開しております。当社は2020年11月に当社商品「FACE FOUR」に新たに4つの機能(手首検温、スマホ通知、プリンター連動、音声変更)を付加した「FACE FOUR+(プラス)」の企画及び商品化を行いました。上記市場分析にもあるとおり、今後の日本の市場においては、当社商品のように付加価値を持たせた商品需要が高まると予想され、当社は常に市場分析を行い、また、全国の販売代理店にヒアリングを行い、市場に求められる商品企画及びその提供を行っていきます。
更に、東京オリンピック・パラリンピックを契機に政府や行政主導による安心・安全のための環境対策が促進され、その後、各施設への防犯・監視カメラ機器並びに監視等システムの導入にかかる需要が高まってきております。
技術革新要素においても、映像圧縮方式をはじめ光学技術・クラウドシステムの高度化により、より高い次元でのセキュリティサービスの提供を可能とするほか、個人生活の利便性向上や企業のマーケティングにおける顧客行動分析など、それまでのセキュリティの枠組みを超えたサービスの拡大や、それに伴うさまざまなニーズの喚起が起こりつつあります。こうした環境のなか、当社では国内外の大手電子機器メーカーとの強い連携を背景に幅広い商品ラインナップを提供するほか、当社が認定する販売業者に対して商品の安定供給と商圏の確保を提供することにより、共存共栄関係の中、販売の拡大を図って参ります。またセキュリティシステム商品の企画・開発に注力し、より高度かつ社会的ニーズに合致したセキュリティ環境の提案を進めていきます。
(モバイル事業)
モバイル事業に関しまして、当社事業の主な事業領域である携帯電話等販売市場では、総務省が2019年に「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」を発表し、ここではシンプルで分かりやすい料金体系の実現を図るべく端末代金と通信料金との完全分離を打ち出したことに伴い、それまでのような通信回線契約を条件とした端末価格の値引きが抑制されることとなりました。また大手通信事業者による通信料金の値下げや中古端末のSIMロック解除の義務化、更に楽天株式会社による移動体通信事業(MNO)への新規参入・サービス開始により、固定ユーザーの確保に向けた業界内での競争は一層、熾烈化の様相を呈するとともに、通信キャリアによる代理店事業者へのインセンティブ評価が極めて厳しいものとなり、代理店同士の統合や事業譲渡といった淘汰がますます進展する状況にあります。こうした中で、当社では質の高いサービスの提供によってユーザーの提案・販売拡大に努めるとともに、中小規模の地域同業者との業務提携、M&A等により、効率性の高い店舗網の維持・拡大を図ることで、安定収益の確保に努めて参ります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①セキュリティ事業における商品ラインナップの強化・拡大及び保管等場所の確保
セキュリティ事業における防犯・監視カメラの販売において、新規及びリプレイス需要に対応するため、顧客ニーズを踏まえたソリューションの提供が重要となります。当社グループは、国内外の防犯・監視カメラ等メーカーと連携をはかり、多様化や高度化する顧客ニーズへの対応を実現しておりますが、今後さらなる多様化やそれに伴うニーズの変化に対応していくための体制の構築、収益構造を改善していくことが重要であると考えております。その対策の一環として、当社グループではオリジナル商品となる「D'SSブランド」を立ち上げております。当ブランドは、性能を簡素化し、低価格とすることを基本コンセプトとしております。他の国内メーカーと価格面での差別化を図り、コストパフォーマンスに富んだ防犯・監視カメラシステムの展開を行っております。
また、商品ラインナップの強化・拡大に伴い、商品を効率的に保管でき、かつ商品の品質を担保できる組立て作業場の確保が重要となります。当社グループは、自社の施設と設備、そして外部の委託倉庫を活用して迅速かつ的確な商品供給の顧客ニーズに対応しております。今後、よりスピード感をもって顧客ニーズに対応していくためには、中長期的な設備投資が重要であると認識しており、引き続き商品管理の効率化及び品質管理の強化に取り組んでまいります。
②新たな顧客層への対応力の強化
当社の現状のセキュリティ事業においては、主にスーパーマーケットやドラッグストアといった事業会社が主要な販売先となっておりますが、今後はマンションやオフィスビル等の開発・販売事業者、あるいは地方公共団体等の社会資本企業体に対する需要の増加が見込まれております。ここでは価格競争力と高機能ラインアップの棲み分けを明確にしつつ、周辺市場を含めた受注ボリュームの拡大を図ることが重要となりますが、これに伴う施工作業を十分に賄うための対応能力の整備・強化が課題となっております。当社では2019年1月に電気工事事業者であるアクト通信株式会社を子会社化し、更に同社の事業遂行能力を高める取り組みの実施により内製機能の強化を図っておりますが、今後の顧客層の拡大に伴う需要増に対しては、外部業者との提携を含めた更なる機能強化と、安全かつ適切な施工のための提携事業者の管理・教育が課題となっております。
③新たな商品及びサービスの展開について
当社には、AI(画像認識)を用いたAI温度測定機能付顔認証デバイス「FACE FOUR」があります。当該商品は非接触のニーズに対応し、マスク有無の識別が可能であり、また同時に温度検知も可能とした商品になります。その後、機能改良を加えワクチン接種者及び中和抗体獲得者・抗原検査の陰性者に対して発行されたデジタルワクチンパスポートを読み取る機能を搭載した「Face Four Pass」を商品化しております。
次なる主力商品とするべく、省人化を目指した自律走行式AIロボットの企画・開発を行っており、自律走行式除菌ロボット「UV FOUR」、自律走行式噴霧ロボット「MIST FOUR」、自律走行式配膳ロボット「CARRY FOUR」をリリースし、医療機関、飲食店、宿泊施設、オフィスを中心に展開を行っております。
加えて、これからの買い物体験を変えるAIスマートストア「Face Free~Motte ke!」の実用化に向け、実証実験に取り組んでおります。「Face Free」は、店内に設置された多数のAIカメラによって、画像認識機能と荷重センサー棚から誰がどの商品を手に取ったかを認識することができるため、入店時に入口にある温度検知顔認証端末に顔をかざし、好きな商品を手に取って店を出るだけで決済が完了するシステムとなっております。
当社グループは、新たな商品及びサービスの展開に取り組んでいくとともに、これら商品を体験できる環境整備も重要であると認識し、商品の訴求を目的とした中長期的な設備投資(体験型ショールーム等)が重要であると考えております。体験を通じて商品の仕様及び特長、また顧客がもつ課題解決への作用具合、それらを適確かつ迅速に訴求することが競合他社との差別化につながり、今後の商品販売の促進につながっていくものと考えております。
このように当社は、今後も市場ニーズへの対応強化を図るため、防犯・監視カメラをはじめとした商品の企画・販売に注力し、更なる事業拡大を図ってまいります。
④モバイル事業における顧客訴求力強化に向けた取組み
モバイル事業において、キャリア(※)が構成するインセンティブ獲得のための条件は、重要な動向となります。現在、従前の販売台数を基礎とした条件から、1人のお客様(あるいはご家族)に対する携帯電話、インターネット(光)回線、IoT商材等様々なサービスを組み合わせ、複合商材の獲得に重点を置く条件に変わってきております。当社が着実に成長するためには、そのような事業環境の変化に素早く適応し、お客様及びキャリア双方から継続的に高い評価を得ることが重要な課題であると認識しております。このため、当社では人材育成を通じてショップクルーの接客能力の向上と店舗運営の効率化を図っております。
※ キャリアとは、電気通信事業者(=携帯電話会社)であります。
⑤収益力の高い店舗網の整備
モバイル事業において、店舗の立地条件や店舗網を運営するうえでの業務の効率化が極めて重要になります。これについて、当社では通信事業者との連携に基づき、好条件エリアへの新規出店・移転を行うほか、中小同業者との事業提携や、将来の投資回収等を考慮した適切な金額による商流変更の実施により、収益性の高い店舗網の整備に努めるとともに、お客様が居心地の良いと感じる快適な店舗空間を提供するための改装や移転等を効率的に進めることが課題となります。
⑥優秀な人材の継続的な確保
当社グループでは、常に新しいサービスを創出しつつ中長期的に成長を続けるためには、優秀な人材の採用、育成が最重要課題であると認識しております。当社ではこれまで、新卒者を中心として優秀な人材の採用に努めるとともに、役職員に対しても細やかなメンタルケア、労働環境改善等のES(従業員満足度)への配慮に加え、働き方の改革等も踏まえた人事戦略を行っており、今後もこの継続・強化を図ってまいります。また、当社のバリューに掲げる「1人ひとりが、センターで輝ける企業へ」を社員一丸となって実践し、成功と失敗を繰り返しながらも成長し続ける「ダイワ通信らしい企業風土」をこれまで以上に推進して参ります。
⑦コーポレート・ガバナンスの継続的な強化
当社グループは、より有効性の高いコーポレート・ガバナンスを実践していくことを経営の重要課題と位置付け、経営の効率性、健全性を高めるコーポレート・ガバナンス・コードに対応した体制の整備・充実に努めております。引き続き、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、一層の体制強化を図って参ります。