有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/21 15:00
【資料】
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【項目】
150項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は創業以来、理念経営を推進しており、「人が活きる、人を活かす。 ~人的資本の最大化・最適化・再配置~」をミッションとし、ビジョン「事業を通じて、新しい価値を創造し、すべての人が活き活きと働く社会創りをめざします。」を掲げております。
企業を取り巻く環境は大きく変化し、社会の課題解決と新しい価値やイノベーションの創出が求められております。当社グループは、そのような変化に向けて、私達が持続可能な未来に新しい企業価値を提供していくために、当社グループのパーパス(存在意義)をコーポレートステートメント「あらゆる課題は、人で解決する。」に込め、経営の基本方針として、あらゆる企業や組織の課題解決と価値創造のパートナーとして寄り添ってまいります。そして、働く一人ひとりに、柔軟な働き方や自律的なキャリア形成、活躍の場の広がりを提供してまいります。
<コーポレートステートメント>「あらゆる課題は、人で解決する。」
私たちはこの日本の社会が抱える多くの課題を解決し、新しい価値の創造を促すことで
すべての人が幸福に暮らし、活き活きと働くことができる社会の実現に貢献したいと考えています。
そのためには人材を資源(Human Resources)より資本(Human Capital)と捉え、この国で不足、偏在するコンサルタントなどの高いレベルの専門性と能力を持った人材を最適配置し、企業や社会の課題解決、価値創造を推進、その価値がシェアされ
循環し続けてゆくような社会をつくる必要があります。
そこで当社は課題の発見、解決、さらに新しい価値の創造に答えるため
正社員採用、フリーコンサル、スポットコンサルなどの複合的なサービスを展開。
あらゆる企業や組織の課題解決と価値創造にパートナーとして寄り添うと同時に、働く一人ひとりに柔軟な働き方や自律的なキャリア形成、活躍の場の広がりを提供しています。
これら活動を通じて課題解決につながるコンサルティングがもっと身近になり、誰もが自由に活用できる世の中となることが、企業、産業、社会の課題の解決と新しい価値やイノベーションの創出を促し、この国によりよい未来をもたらすと、私たちは信じます。
(2)経営環境及び中長期的な経営戦略
我が国における最近の人的資本をめぐる動きとして、2022年5月に経済産業省より「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」が公表され、また、同年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)が内閣府より公表されました。当社グループは、社会の課題解決と新しい価値やイノベーションの創出に向けた「人的資本」の重要性が高まっていると考えております。人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営においては、従来の雇用慣行から脱却し、多様性を尊重した個人と組織の自律的な関係構築が求められます。そのための、副業や兼業、フリーランス等を含めた多様な働き方を選択し活躍できる環境の整備が進み、企業の人的資本に関する情報開示も促進されております。今後、人的資本経営を踏まえた人事戦略は、あらゆる企業の持続的な成長において重要な位置づけになると考えております。
デジタル化や脱炭素化という大きな変革の波のなか、人口減少に伴う労働力不足にも直面する我が国において、創造性を発揮して付加価値を生み出していく原動力は「人」であります。しかし、企業変革を推進する人材の状況について、日本企業では、量と質の両面で人材不足が課題であり(注1)、また、2030年には約45万人のIT人材が不足すると試算されております(注2)。他方で、国内のビジネスコンサルティング市場は、DXを進める企業のビジネス変革支援への需要がすべてのサービスセグメント/産業分野において継続し高成長を維持する見込みであります(注3)。加えて、従業員の副業・兼業を容認する企業は近年増加し、企業側も優秀な外部人材を活用することを模索する動きが進んでおります。これらのことから、ハイエンド人材領域の人材紹介及びスキルシェアのニーズは益々高まっていくと考えております。
なお、当社グループが展開する事業の市場規模に関して、人材紹介に係る市場については、株式会社矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査(2022年)」(2022年10月19日発表)によると、2021年度の人材紹介業市場規模は2,960億円となっております。また、コンサルタントのスキルシェアに係る市場については、IDC Japan株式会社のプレスリリース(注3)によると、2021年の国内ビジネスコンサルティング市場規模は5,724億円になったとみられております。
(注)1.出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2021」 Copyright 2021 IPA
2.出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年3月、IT人材需給に関する主な試算結果の中位シナリオ
3.出典:IDC Japanプレスリリース「国内ビジネスコンサルティング市場予測を発表」(2022年5月23日)
上述のとおり、人的資本経営が強く求められる潮流のなか、当社は創業当時から「人的資本の最大化・最適化・再配置」を標榜し、追究してまいりました。需要が高まっているハイエンド人材領域における人材紹介及びスキルシェアの各サービスを強化・拡大することで、我が国に不足しているハイエンド人材の最適配置が一層進むとともに、人材不足が予測されるデジタル・DX領域も含め、ハイエンド人材が持つ能力・スキルのシェアリングが拡大・浸透するものと考えております。これにより、企業や社会の課題解決と新しい価値やイノベーションの創出、そして我が国の人的資本経営の実現に貢献できるものと考えております。
当社グループは、上記の経営の基本方針及び経営環境を踏まえ、経営戦略として、当社グループが持つ複合サービスを、より効率的且つ効果的に展開すべく、リカーリングビジネス推進による、スキルシェア及び事業会社向けサービスの拡大を図ってまいります。正社員採用サービスとフリーコンサルサービス「フリーコンサルBiz」に、スポットコンサルサービス「コンパスシェア」を加えた複合サービスとそのプラットフォームのデジタル化により、サービス利用が進むことでデータベースはさらに充実・拡大し、その利用率を高めて効率的且つ効果的にサービスの提供が可能になると考えております。
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(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記(2)の経営戦略を推進する上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
① リカーリングビジネス推進に向けた事業投資
当社グループが目指すリカーリングビジネスの推進によるトップライン成長のため、スキルシェアのサービス開発や機能改善を進め、事業会社のサービス利用を促進してまいります。具体的には、副業紹介サービスを起点としたハイエンド人材との接点機会を増加させることで、従来の転職やフリーランスにおける案件獲得よりも広く人材との接点を確保し、ハイエンド人材との継続的な関係構築と人材データベースの充実を図ります。また、事業会社向けサービスの拡大のため、各サービス間の連携を向上させ、アップセル・クロスセルを可能とするソリューション提案力の強化を図ります。加えて、蓄積されたハイエンド人材のデータベースを活かしたキャリアデザインサポートの充実や、機械学習による予測モデルの導入等に取り組むなど、リカーリングビジネスをさらに活性化させるためのデータベースの整備やサービス拡充目的のシステム投資も実施してまいります。
② 持続的な成長のための人的資本投資
当社グループの事業を牽引する人材の確保と育成は当社グループの成長の礎であり、さらなる事業拡大及び経営体質の強化を図るうえで重要な経営課題であると認識しております。そのため、人材の採用強化及び育成を推進して生産性を高めるとともに、将来の経営を担う中核人材の育成等を進めてまいります。また、従業員がその能力を存分に発揮できるよう、業務効率化や勤務環境の整備等、働きやすい環境づくりを推進し、人的資本の価値最大化に努めてまいります。
③ 当社グループ及びサービスの認知度向上
当社グループが持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、当社グループ及び提供サービスの認知度を向上させ、継続的な顧客の獲得及び人材登録数の増加により、データベースを充実・拡大していくことが重要であります。そのため、企業顧客の獲得については、新規獲得を目的にWeb広告を中心としたプロモーション活動に積極投下してまいります。また、人材獲得については、転職・フリーランス・副業に興味を持つハイエンド人材を横断的に獲得するため、Web広告やメディア媒体等のチャネルを組み合わせた戦略的な広告を投下してまいります。加えて、当社グループの理念やビジョンを各ステークホルダーに伝えるべく、コーポレートブランディングや広報活動等を推進し、認知度向上に取り組んでまいります。
④ 内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの充実
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、ステークホルダーからの信頼を得ることが不可欠であると考えております。そのため、経営の効率性及びリスク管理能力を高め、財務・非財務情報を適切に開示し、健全性及び透明性を確保できる管理体制の整備を行うことで、内部管理体制の強化及びコーポレート・ガバナンスの充実を進めてまいります。
⑤ 財務基盤の安定化と株主還元
当社は純資産の積上げが十分でなく、今後の事業拡大や必要な投資等に備えるために財務基盤の安定性向上が必要であると認識しております。また同時に、株主還元も重要な課題であると認識しております。財務基盤の安定化のための内部留保の充実を勘案しつつ、株主還元との適切なバランスを模索してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、正社員採用、フリーコンサル、スポットコンサルなどの複合サービスを展開しており、独自のポジショニングをさらに強固なものとしていくため、売上高を重要な経営指標と位置づけ、目標達成に向けて取り組んでおります。また、事業を継続的に発展させていくためには、収益力を高め、適正な利益確保を図ることも必要であることから、営業利益についても重要な経営指標と位置づけております。これに加え、正社員採用サービスにおいては入社決定数、フリーコンサルサービスにおいてはフリーコンサルタントの稼働人数を各サービスの売上成長を測定する指標として重視しております。