有価証券報告書-第101期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
(1)住友の事業精神
当社グループは430余年にわたり「ものづくり」の会社として必要とされる製品を安定的にお客様に供給することを社会的責務とし、時代の変化に臨機応変に対応しながら事業を継続してきました。こうした思想、理念は「住友の事業精神」として創業から長きにわたり受け継いできました。当社グループは、この先人達が築き上げてきた「住友の事業精神」の持つ価値観、倫理観の重要性を今一度十分に認識し、当社グループの事業と事業に対する社会からの信頼を確固たるものにするべく、これからも努力を重ねてまいります。
| 第1条 わが住友の営業は信用を重んじ、確実を旨とし、もってその鞏固(きょうこ)隆盛を期すべし 第2条 わが住友の営業は時勢の変遷理財の得失を計り、弛張(しちょう)興廃することあるべしといえども、いやしくも浮利に趨(はし)り軽進すべからず (1928年 住友合資会社社則「営業の要旨」より抜粋) |
(2)経営理念と経営ビジョン
当社グループは、住友の事業精神に基づき、当社が社会的な使命と責任を果たしていく指針として、次のとおりグループ経営理念とグループ経営ビジョンを定め、事業を進めています。
| 「SMMグループ経営理念」 ・住友の事業精神に基づき、地球および社会との共存を図り、健全な企業活動を通じて社会への貢献とステーク ホルダーへの責任を果たし、より信頼される企業をめざします ・人間尊重を基本とし、その尊厳と価値を認め、明るく活力ある企業をめざします |
| 「SMMグループ経営ビジョン」 ・技術力を高め、ものづくり企業としての社会的な使命と責任を果たします ・コンプライアンス、環境保全および安全確保を基本としたグローバルでの企業活動により、資源を確保し、 非鉄金属、機能性材料などの高品質な材料を提供し、企業価値の最大化をめざします |
(3)長期ビジョン
当社グループは、上記の経営理念や経営ビジョンを受け、その到達すべき目標として長期ビジョン「世界の非鉄リーダー」とそのターゲットを定めています。当社グループは、経営理念や経営ビジョンを基盤とし、資源を確保し、非鉄金属や電池・機能性材料など高品質な商品の提供を通じて、成長性と持続性を拡大させ、当社の企業価値を高めていきます。
| 「世界の非鉄リーダー」とは ・資源権益やメタル生産量において、グローバルでの存在感(=世界Top5に入るメタル)がある ・資源メジャーでも容易に模倣できない、卓越した技術や独自のビジネスモデルを有している ・持続的成長を実現し、安定して一定規模の利益をあげている ・SDGs等の社会課題に積極的に取り組んでいる ・従業員がいきいきと働いている |
| 長期ビジョンのターゲット ・ニッケル:生産量15万トン/年 ・ 銅:権益分生産量30万トン/年 ・ 金:優良権益獲得による鉱山オペレーションへの新規参画 ・材料事業:ポートフォリオ経営による税引前当期利益250億円/年の実現 ・ 利益:親会社の所有者に帰属する当期利益 1,500億円/年 |
(4)重要課題と2030年のありたい姿
「住友金属鉱山グループサステナビリティ方針」では、社会の持続的発展に貢献する経営課題に取り組み、事業の持続的な成長と企業価値の向上を図るとしています。当社グループは、このサステナビリティ方針に従い2020年3月に重要課題を定め、その重要課題に対応する「2030年のありたい姿」を実現するためにサステナビリティ活動に取り組んでまいりました。その後、気候変動の状況やDXをはじめとする技術革新などの変化を受け、持続可能な社会実現への貢献と企業価値の向上に対する社会的要請の高まりを踏まえ、11の重要課題を6つに集約しました。
また各重要課題における「2030年のありたい姿」を整理し、それぞれのありたい姿の実現度合いを測定するKPI及び目標を設定しました。なお、6つの「重要課題」の詳細については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ全般 ② 戦略」をご参照ください。
(5)中期経営計画2027
当社グループは、長期ビジョンとターゲットの達成に向け中期経営計画を3年ごとに策定しています。2025年5月に2025年度から2027年度を対象とする「中期経営計画 2027」(以下、「中計27」という)を公表しました。当社グループでは、本中計期間を長期ビジョン『世界の非鉄リーダー』実現にむけた正念場と位置づけ、「ものづくり力」を高めて収益力を取り戻し、企業価値を持続的に向上していく基盤を再構築するとともに、足元の課題克服と並行して、長期的な目線で企業価値の向上に取り組んでおります。
なお、文中における将来に関する事項は、中計27を公表した時点において当社グループが判断したものであります。
① 当社を取り巻く経営環境
「中計27」の策定に際して考慮すべき中期的な経営環境として以下を挙げております。
a.資源開発の難易度は今後も上昇
・資源ナショナリズムの高揚
・鉱山の高地・奥地・深部・低品位化
・地域社会との良好な関係性構築の難度上昇
・環境規制強化
・投資及び電力・資材代などのランニングコスト上昇
b.非鉄金属の需給バランスは当面供給過多で推移
・ニッケルは中国、インドネシアでの生産増、電気自動車(EV)普及速度の低下により供給過多の状況が継続
・世界の銅地金の生産能力は増加が見込まれる反面、銅精鉱の供給増は限定的で、製錬マージン(TC/RC)の回復は2030年以降の想定
c.材料事業はまだら模様で回復には力強さを欠く
・電池材料はEV需要の鈍化と海外電池メーカーの台頭により事業環境が急速に変化し、価格・技術競争が激化
・機能性材料については、EV需要の鈍化と生成AI以外の牽引役不在のなか、ブロック経済の進行などにより先行きは不透明
なお、足元の経営環境は、緊迫した状況が続く中東情勢など地政学的リスクの長期化や不動産不況による中国経済の低迷、米国の関税政策をはじめとする国際的な貿易摩擦や金融市場の調整に伴う各国・地域におけるインフレ再燃リスクなど、不確実性の高い状況が継続しています。
非鉄金属の需給については、銅は、中東情勢や各国政策などの不確実性が需要を鈍らせ、供給過多となると見込まれています。一方、ニッケルは、需要が緩やかに増加する一方、インドネシアを中心に増産に制約がかかり、供給過多は次第に改善すると見込まれます。
また、材料事業の関連業界においては、生成AIをはじめとする先端技術の普及の進展や成長を続けるデータセンター用途での需要の増加は見込まれていますが、世界経済の先行きが不透明なことから市場の成長が鈍化するリスクもあり、予断を許さない状況にあります。
② 中計27の基本戦略とその進捗
a.事業環境変化への対処
・ケブラダ・ブランカ銅鉱山とコテ金鉱山の戦力化
JVパートナーとの協働による操業の安定化、さらなる生産性向上追求
・電池材料事業の立て直し
事業規模に見合った体制への再構築、徹底した生産性改善、コスト削減の実施
全固体電池用/Ni系次世代電池材料、LFP電池材料等の開発継続
・製錬事業の競争力強化
高効率、低コスト操業の追求、原料対応力強化
・事業ポートフォリオ管理(ROCE経営の推進)
フェロニッケル事業:ニッケルマット製造炉新設による当社ニッケル事業全体のサプライチェーン強化
LT/LN事業(結晶):製造拠点集約、用途拡大追求
b.次の成長への準備
・ニッケル・銅・金開発プロジェクト
カルグーリー・ニッケル・プロジェクト グーンガリーハブ(オーストラリア)の推進
ウィヌ銅・金プロジェクト(オーストラリア)の推進
・リチウムイオン二次電池リサイクル事業
計画どおりのリサイクルプラント建設推進と稼働開始
・SiC(シリコンカーバイド)貼り合わせ基板
SiC貼り合わせ基板 SiCkrest®(8インチ)の拡販
貼り合わせ支持基板となるSiC多結晶の拡販
・近赤外線吸収材料の推進・拡大
SOLAMENT®農業領域への参入、新規用途開拓
c.持続的成長を支える資産・技術・人材の活用
優良な鉱山資産、卓越した技術、DX基盤、成長戦略を支える人材の活用による「ものづくり力(稼ぐ力)」の強化
d.経営基盤の維持・強化
・サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラル社会への貢献をはじめとするサステナビリティ活動の推進
「2030年のありたい姿」に沿った重要課題への取り組みによる、社会課題への対応と事業の持続的な発展・企業価値向上の実現
2050年カーボンニュートラルに向けた「ロードマップ」に基づいた、GHG排出量の削減と低炭素貢献技術の開発推進
・資本コストや株価を意識した経営の推進
これまで推進してきた成長戦略の確実な刈り取り
棚卸資産圧縮、政策保有株式縮減などを含む資本効率の追求
ROCE経営の推進
株主還元の強化(下限指標DOEの水準引き上げ、機動的な自己株式の取得)
・コーポレートガバナンス体制の検討
役員株式報酬制度導入検討
取締役会をはじめとしたガバナンス体制の見直し検討
中期27の初年度となる当期の進捗状況及び今後の戦略の内容については、資源事業では、当社が25%の権益を持つケブラダ・ブランカ銅鉱山フェーズ2開発プロジェクト(チリ)において2025年4月にプロジェクトファイナンス契約で定める完工条件を全て達成しました。生産量は、期央にかけては尾鉱堆積場の制約による影響を受けましたが、期末にかけて徐々に制約が解消されました。コテ金開発プロジェクト(カナダ)では、順調に商業生産を継続しました。また、Rio Tinto PLC(英国 ロンドン)が保有するウィヌ銅・金プロジェクトの権益のうち 30%を取得することについて、契約を締結しました。
製錬事業では、銅製錬を行う東予工場(愛媛県)、ニッケル製錬を行うニッケル工場(愛媛県)や播磨事業所(兵庫県)において安定した操業を継続するとともに、使用済みのリチウムイオン二次電池から銅、ニッケル、コバルト、リチウムを回収するリサイクルプラントの建設や世界最大規模のニッケル資源量を有するカルグーリー・ニッケル・プロジェクト グーンガリーハブの検討などの将来を見据えた戦略投資を進めています。
材料事業では、電池材料事業は、新たな増産のため建設を進めてきた新居浜工場(愛媛県)が完工し、2025年5月に竣工式を行いました。機能性材料事業では、データセンター関連の電子部品向け部材や、触媒等の需要が堅調に推移しました。また、SOLAMENT®(近赤外線吸収材料:CWO)のブランディング戦略を推進しました。
また、2025年3月に見直した6つの重要課題と各重要課題に対応する13の「2030年のありたい姿」に基づき、社会の持続的発展に貢献する経営課題への取り組みを進めています。
③ 目標とする経営指標
「世界の非鉄リーダー」実現に向けては、健全な財務体質に裏打ちされた大型プロジェクトやM&Aへの機動的な対応が欠かせません。当社グループは2026年2月に財務戦略の基本方針を見直し、財務体質の健全性を示す指標として連結自己資本比率を50%超とし、また、資本コストを意識した経営を推進するため、その適正水準を55%と位置づけ、株主還元等を強化し2028年3月期までに58%とすることを目指すこととしました。
(6)その他
㈱ジェー・シー・オーは、施設の維持管理、低レベル放射性廃棄物の保管管理、施設の廃止措置に向けた準備のため、施設の解体や除染等を推進するための諸施策を進めております。当社は、同社がこれらに万全の態勢で取り組むことができるよう引き続き支援を行ってまいります。