有価証券報告書-第96期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 16:16
【資料】
PDFをみる
【項目】
130項目

対処すべき課題

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は、以下の経営理念、経営ビジョン、CSR方針を経営の基本方針としております。
「SMMグループ経営理念」
・ 住友の事業精神に基づき、地球および社会との共存を図り、健全な企業活動を通じて社会への貢献とステークホルダーへの責任を果たし、より信頼される企業をめざします
・ 人間尊重を基本とし、その尊厳と価値を認め、明るく活力ある企業をめざします
「SMMグループ経営ビジョン」
・ 技術力を高め、ものづくり企業としての社会的な使命と責任を果たします
・ コンプライアンス、環境保全および安全確保を基本としたグローバルな企業活動により、資源を確保し、非鉄金属、機能性材料などの高品質な材料を提供し、企業価値の最大化をめざします
「CSR方針」
1.資源の有効利用およびリサイクルを推進するとともに、技術革新やエネルギー効率の継続的な改善などにより、地球温暖化対策に取り組みます
2.国内外において地域に根ざした活動を積極的に推進し、地域社会との共存を図ります
3.健全な事業活動を継続するために、人権を尊重するとともに、多様な人材が活躍する企業を目指します
4.安全を最優先し、快適な職場環境の確保と労働災害ゼロを達成します
5.多様なステークホルダーとのコミュニケーションを強化し、健全な関係を構築します
また、上記の経営方針を受けた到達すべき目標として長期ビジョンとターゲットを以下のとおり定めています。
『長期ビジョン』
「世界の非鉄リーダー」を目指す。
≪当社グループが目指す「世界の非鉄リーダー」≫
・ 資源権益やメタル生産量において、グローバルな存在感(=世界トップ5に入るメタル)がある
・ 資源メジャーでも容易に模倣できない、卓越した技術や独自のビジネスモデルを有している
・ 持続的成長を実現し、安定して一定規模の利益をあげている
・ SDGs等の社会課題に積極的に取り組んでいる
・ 従業員がいきいきと働いている
『ターゲット』
・ ニッケル:生産量15万t/年
・ 銅:権益分生産量30万t/年
・ 金:優良権益獲得による鉱山オペレーションへの新規参画
・ 材料事業:ポートフォリオ経営による税引前当期利益250億円/年の実現
・ 利益:親会社の所有者に帰属する当期利益 1,500億円/年
長期ビジョンとターゲットの達成に向け当社グループは3年ごとに中期経営計画を策定し実行しています。また2008年からはCSR活動を体系的に開始し、価値創造の方向性を示す「2020年のありたい姿」に取り組んだ後、新たな社会課題や当社グループの事業課題を視野に入れ、長期ビジョンの実現に向けた2030年時点でのマイルストーンとして「2030年のありたい姿」を2020年3月に公表し、活動を進めています。
(1) 中期経営計画
当社グループは、2019年2月に公表した、2019年度から2021年度を対象とする「2018年中期経営計画」(以下、「18中計」という。)を実行し、企業価値の一層の向上と新たな成長への挑戦を進めております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
① 経営環境
「18中計」の策定に際して考慮すべき中期的な経営環境として以下を挙げております。
<社会全体>・先進国、中国の経済成長率鈍化
・世界経済の不透明性、不確実性拡大
米中関係悪化、国家資本主義の拡大、保護主義の先鋭化
・移民問題、経済格差による社会的分断
ポピュリズムの台頭、地政学リスクの上昇
・先進国の少子高齢化の急速な進展
・労働生産性の伸びの鈍化による経済成長率の低下
生産性向上に向けたデジタルテクノロジーの適用
・世界的なSDGs対応、ESG投資への潮流加速
・持続可能な社会への転換(環境負荷の低減)
環境負荷物質(CO2等)排出量削減
資源リサイクルの拡大
シェアリングエコノミーの進展
<当社事業関連>・中期的な資源価格の上昇
優良鉱山開発案件の不足
EV化進展等による非鉄需要拡大
・資源開発、製錬操業をめぐる事業環境の悪化
資源ナショナリズムの高揚
鉱山開発における高地化、奥地、深部、低品位化など開発難度の上昇
環境規制強化、住民理解獲得の困難化
投資、ランニングコスト上昇
・デジタルテクノロジーの進化発展、インフラ化
AI、IoT、5G、VR技術の開発加速
CASE、ロボットなどの実社会への展開
② 基本戦略
「18中計」では、『コアビジネス(資源・製錬・材料)の成長基盤強化』『電池向け正極材を軸とした3事業連携の強化』『コーポレート機能の強化』を3大基本戦略とし、優先的に対処すべき課題である、ものづくり力/事業管理力の強化・向上、新製品・新事業の創出、成長を支える人材の確保・育成 の実現に向けた諸施策を展開してまいります。
◇コアビジネス(資源・製錬・材料)の成長基盤強化
ケブラダ・ブランカ2プロジェクト(資源)、ポマラプロジェクト(製錬)、電池増強(材料)を3大プロジェクトと位置付け、総力を挙げて推進してまいります。
ケブラダ・ブランカ2プロジェクトは、2018年12月に当社が参入を決定したチリの銅鉱山開発プロジェクトです。生産開始は2022年後半、マインライフは約28年、平均年間銅生産量は約24万tの大型プロジェクトとなる予定です。
ポマラプロジェクトは、インドネシア スラウェシ島における、コーラルベイ、タガニートに次ぐ第3のHPAL(低品位酸化ニッケル鉱の湿式処理)プラント建設プロジェクトです。参入を決定した場合、2020年代後半頃の操業開始を目指します。これによりニッケル生産量15万t/年のターゲット実現に向けて更に一歩前進します。
電池増強は、拡大が見込まれる車載用二次電池の需要に対応し段階的に能力を増強してまいります。2019年4月に新設した電池材料事業本部のもと、中長期的には2027年度までに、電池正極材料(ニッケル酸リチウム(NCA)、三元系(NMC)、水酸化ニッケル)の合計1万t/月の生産体制構築を目指します。
また、製錬事業を中心に、老朽化設備の維持更新投資や効率化投資を遅滞なく実施し、逸失利益・機会損失の極小化に努めてまいります。
◇電池向け正極材を軸とした3事業連携の強化
電池リサイクルの事業化(バッテリーtoバッテリー)に向け、2019年3月、廃リチウムイオン二次電池の新リサイクルプロセスパイロットプラントの稼働を開始しました。事業化が実現すれば、国内において持続可能な循環型社会の形成がより一層進み、世界的な資源枯渇に対応する資源循環に大きく貢献することになります。
◇コーポレート機能の強化
CSRや社内外のステークホルダーとのコミュニケーション活性化、ダイバーシティや働き方改革の推進、自由闊達な組織風土の再構築等に向け、2019年4月に本社組織をコーポレートコミュニケーション/コーポレートマネジメント/コーポレートプランニングという機能別部門に再編しました。また2020年6月には再編後の課題を整理して一部組織を改正しました。専門性を重視しつつ、グローバル化する諸課題にも対応する組織を目指します。特にコーポレートコミュニケーション部門においては、SDGs、ESGといった企業として求められる共通課題に連携して対応してまいります。
③ 目標とする経営指標
「世界の非鉄リーダー」実現に向けては、健全な財務体質に裏打ちされた大型プロジェクトやM&Aへの機動的な対応が欠かせません。当社グループは「18中計」において、財務体質の健全性を示す指標として連結自己資本比率50%以上の維持を掲げております。
④ 新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルスの感染症の拡大は未だ収束せず、経済環境の先行きは不透明な状況が継続していますが、現時点において「18中計」の戦略・目標の変更や大型プロジェクトの中止を判断するような状況にはなく、大型プロジェクトの実施可否については、想定しうる範囲で意思決定に必要な前提条件を予測し適切に判断いたします。
(2) その他
㈱ジェー・シー・オーは、施設の維持管理、低レベル放射性廃棄物の保管管理、施設の廃止措置に向けた準備のため、施設の解体や除染等を推進するための諸施策を進めております。当社は、同社がこれらに万全の態勢で取り組むことができるよう引き続き支援を行ってまいります。