有価証券報告書-第19期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/03/31 14:18
【資料】
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【項目】
159項目
4.重要な会計上の見積り及び判断
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行うことが要求されております。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及びそれ以降の将来の会計期間において認識されます。翌連結会計年度において資産や負債の帳簿価額に重要な修正を加えることにつながる重要なリスクを伴う見積り及びその基礎となる仮定は以下のとおりであります。
(気候変動による影響)
当社グループでは、連結財務諸表の作成において気候変動及びネットゼロへの移行による影響を考慮しております。当社グループは、パリ協定目標に則した低炭素社会の実現に貢献すべく、2050年までに排出量ネットゼロとする目標を設定しております。一方で、石油・天然ガスは経済社会活動に引き続き不可欠なエネルギー源として、その安定供給を図ることを使命としており、特にアジアを中心に今後も堅調な需要が想定される天然ガスは、引き続き収益基盤であり続けるものと認識し、石油・天然ガス事業、低炭素化ソリューション事業、電力事業及びその周辺分野を主要な事業領域として推進しております。
気候変動及びネットゼロへの移行による影響は、石油・天然ガス事業、低炭素化ソリューション事業、電力事業及びその周辺分野のいずれにおいても重要であり、これらの影響に関して、当社グループでは、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook(WEO)の公表政策シナリオ(IEA-STEPS)等の複数のシナリオを参照し、長期的な将来のエネルギー需要や顧客動向等の事業環境分析を行い、経営戦略の策定や経営判断に利用しております。
シナリオ分析は、それらシナリオが実現すると仮定した上で、将来的な政策動向や事業環境の変化の可能性をいち早く把握し、経営戦略・経営計画へ反映することを目的としたものであり、会計上の見積りに反映される最新の入手可能な信頼のおける情報に基づく判断や仮定とは異なります。そのため、シナリオ分析において、当社グループの各プロジェクト資産の減損や引当金の増加等の兆候が示された場合でも、それらを即時に連結財務諸表に反映すべきとは限らないと考えております。また、会計上の見積りにおいては、当該シナリオ分析結果に加え、当社グループの戦略、各国の政策、外部機関の分析結果、及び各プロジェクトにおける固有の状況等を総合的に勘案し、合理的な見積りを行っております。ただし、将来における気候変動リスクに対する当社グループの戦略の変更や世界的な脱炭素化の潮流の変化は、これらに重大な影響をもたらす可能性があります。
(将来の油価見通し及びインターナルカーボンプライス)
将来の原油・天然ガス価格は主に国際市況により決定され、国際的・地域的な需給、世界経済等の多様な要素の影響を受け著しく変動します。会計上の見積りで利用する油価については、複数の外部機関が公表するレポートに基づき、経営者の最善の見積りと判断により決定しております。超長期的な油価の見通しに当たっては、IEA等が公表するシナリオを考慮する一方、中長期の時間軸ではロシア・ウクライナ情勢等による価格高騰や足元で堅調なエネルギー需要等のアップサイド要因を考慮し、当連結会計年度末において、中長期油価見通しは2028年度以降70米ドル/バレル(ブレント油価、インフレの影響は除く)と見積っており、また、当社グループの取り扱う天然ガスの販売価格も大部分が原油価格にリンクしているため、当社グループの非金融資産の減損の兆候判定及び減損テストにおいては当該油価見通しを重視しております。また、各プロジェクトの非金融資産の使用価値算定に用いる見積将来キャッシュ・フローには、インターナルカーボンプライス(以降ICP)を織り込んでおり、カーボンプライス制度が存在する豪州のプロジェクトでは、複数の外部専門家の価格予想等を参照し、2030年81豪ドル/tCO2e、2040年93豪ドル/tCO2e、2050年116豪ドル/tCO2e(インフレの影響は除く)を用いております。その他の国や地域では、カーボンプライス制度が存在する場合は、外部専門家の価格予想等を用いた当社グループの見積価格を参照し、カーボンプライス制度が存在しない場合は、IEA-STEPSの韓国価格に連動した変動価格を参照しております。なお、前連結会計年度においては、カーボンプライス制度が存在しない場合、IEA-STEPSのEU価格に連動した変動価格を参照しておりましたが、現在議論されている本邦のGX-ETS制度設計概要を踏まえると現行の韓国ETS制度に近いコンセプトとなっていること等を考慮し、参照先をIEA-STEPSの韓国価格に連動した変動価格に変更しております。ネットゼロへの移行に伴い、低炭素エネルギー選好が高まることで、原油・天然ガス価格の下落といった主要な仮定の見直しやICPの引上げが必要となる場合には、石油・ガス資産、のれん及び持分法で会計処理されている投資につき減損損失を計上する可能性があります。
(埋蔵量)
当社グループの石油・ガス資産(開発・生産資産)は、確認埋蔵量及び推定埋蔵量の合計数量に基づいて、生産高比例法により減価償却しており、生産高比例法に用いる埋蔵量はPRMS(Petroleum Resource Management System)に基づいて算定しております。なお、当該埋蔵量の算定に用いる将来の油価見通しについては、米国証券取引委員会規則S-X Rule 4-10(a)と同様の、期中の月初油価・ガス価平均価格を使用しております。当該埋蔵量の見積りは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク Ⅰ.事業等の主要なリスク 1 石油・天然ガス開発事業の特徴及びリスクについて (5)原油、コンデンセート、LPG及び天然ガスの埋蔵量」に記載のとおり、将来の油価見通しのほか多くの前提、要素及び変数の仮定に基づいて評価され、これらの仮定は経営者の最善の見積りと判断により決定しております。
この埋蔵量の見積りは、当連結会計年度末に計上した石油・ガス資産(開発・生産資産)3,494,902百万円及び(1)「非金融資産の減損」における減損テストにも影響します。埋蔵量の見積りに使用する仮定は、ネットゼロへの移行等の経済状況の影響を受け、油価の下落やICPの上昇といった埋蔵量の下方修正につながるリスクが顕在化した場合には、減価償却の加速や減損損失が発生する可能性があります。
以上の分析に基づき経営者が行った連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積りは以下のとおりであります。
(1)非金融資産の減損
当社グループでは、非金融資産の減損の兆候判定及び減損テストにあたり、将来の原油価格、埋蔵量、操業費、開発費、ICP及び割引率を主要な仮定としております。
当連結会計年度において、主に短期の原油価格及び生産量の見通しの下落に伴いプレリュードFLNGプロジェクトで14,713百万円の減損損失を計上しております。また、連結財政状態計算書に計上されている重要な非金融資産としてイクシスLNGプロジェクトに関するものがあり、当連結会計年度末においては石油・ガス資産(開発・生産資産)1,846,315百万円、持分法で会計処理されている投資708,238百万円となっております。持分法で会計処理されている投資は、当社グループが67.82%の持分を保有するIchthys LNG Pty Ltdに対する投資残高となっております。Ichthys LNG Pty Ltdが保有する主な資産はイクシスLNGプロジェクト下流事業に係る石油・ガス資産であり、同社における当連結会計年度末時点の石油・ガス資産の残高(当社グループの持分割合を乗じた金額)は3,160,960百万円であります。
当連結会計年度において、主要な仮定及びプロジェクトの操業状況等を考慮して減損の兆候判定を行った結果、イクシスLNGプロジェクトに関する非金融資産についてもインフレ等によるコストの増加に伴う減損の兆候は認められたものの、使用価値が帳簿価額を上回ったため減損損失を認識しておりません。
当項目は、注記「12.石油・ガス資産」、注記「16.非金融資産の減損」及び注記「34.持分法で会計処理されている投資」に関連します。
(2)資産除去債務
将来発生する国内外の石油天然ガス生産設備等の撤去及び廃鉱に係る資産除去債務は、生産可能年数又は契約期間満了までの年数及び操業終了時の撤去・廃鉱コストの合理的な見積りに基づき、当連結会計年度末において396,937百万円を計上しております。当連結会計年度末時点では、気候変動に関する各国の規制強化等による生産可能年数の短縮は認識しておりませんが、気候変動に関する各国政府の今後の政策・法規制によっては、将来、当社グループの石油・ガス資産の生産停止時期の前倒し、撤去対象資産の増加、廃鉱の作業方法の変更及び割引率の見直し等により資産除去債務が増加する可能性があります。また、国内天然ガス供給販売施設である天然ガスパイプラインについては、当連結会計年度末時点において信頼性のある見積りができないため資産除去債務を計上しておりませんが(注記「21.資産除去債務」参照)、事業終了時期を決定できるような事業環境等の変化を特定した場合には資産除去債務を計上する可能性があります。
当項目は、注記「21.資産除去債務」に関連します。