有価証券報告書-第20期(2025/01/01-2025/12/31)
②戦略
(a)方針
当社は、2015年12月に「気候変動対応の基本方針」を発行し、その後、パリ協定目標達成に向けた各国の取組みを支持するため、2021年1月に2050年自社排出量ネットゼロ(Scope1+2)目標を定めました。以降、外部環境の変化や長期戦略及び中期経営計画の更新に合わせて、方針及び2050年自社排出ネットゼロを目指すための目標を見直しています。2025年2月には「INPEX Vision 2035」の発表にあわせて「気候変動対応の基本方針」を改定しました。
(b)リスク及び機会
当社では、毎年当社グループの気候変動関連リスク及び機会の評価を行っています。リスク及び機会の評価結果は以下のとおりです。
2025年末における気候変動関連リスク/機会の評価結果
(短期:1年未満、中期:1~3年未満、長期:3年以上)
移行リスク
物理的リスク
機会
(c)気候レジリエンス
イ)気候関連のシナリオ分析
気候変動のリスク及び機会は不確実性が高いことから、当社では、複数のシナリオを活用しシナリオ分析を行っております。具体的には、2050年※1までの低炭素社会に向けたエネルギー需給などの事業環境の見通しについて、国際エネルギー機関(以下「IEA」)発行によるWorld Energy Outlookレポート(以下「WEO」)のIEA-STEPS、IEA-APS及びIEA-NZE等を参照しています。これらのシナリオから当社グループのビジネスにおける移行リスク及び物理的リスクを評価しています。また当社は、これらのシナリオを用いた分析を活用し、長期的な経営戦略として2025年2月に「INPEX Vision 2035」を策定しました。今後も複数のシナリオを活用しながら事業環境の変化をいち早く把握し、社会の動向に合わせ経営戦略・経営計画の見直しを行っていきます。
※1 IEAのWEOでは2050年までの国際エネルギー情勢について展望している
ロ)移行リスクの財務的評価
当社グループの移行リスクにおいて、WEO内のシナリオを活用し、以下2つの手法でリスクの財務的評価に取り組んでいます。
一つ目は、インターナルカーボンプライスを用いた当社グループの各プロジェクトの経済性評価です。世界では既に150以上の国・地域が2050年ネットゼロ宣言を行っており、今後更なる気候変動関連政策強化に伴い、各国においてカーボンプライス導入の法規制が進むと推測されることから、ベースケースからインターナルカーボンプライスを考慮した上で経済性を評価しています。ベースケースからの適用をルール化したことにより、社内では温室効果ガスにかかるコストが事業投資における重要な要素として認識されています。また、ステークホルダーに対しては、当社グループが移行リスクを考慮した上で経営判断を行っていることを示しています。財務的評価に用いているインターナルカーボンプライスについては、WEOのカーボンプライスを参考に毎年更新しています。プロジェクト所在国にカーボンプライス制度が存在する場合は、外部専門家の価格予想等を用いた当該国における当社グループの見積価格を参照しています。カーボンプライス制度が存在しない場合は、IEA-STEPSの前提から妥当性を検証して価格を決定しています。2025年はWEO2024のIEA-STEPS韓国価格を採用しており、2026年度も引き続きWEO2025のIEA-STEPS韓国価格(2035年US$ 52/tCO2e、2040年US$ 62/tCO2e、2050年US$ 75/tCO2e)を参照価格として設定します。
二つ目は、当社グループの事業ポートフォリオのレジリエンス評価です。これは、IEAが示す各シナリオにおける油価とカーボンプライスの推移が、当社グループのポートフォリオに与える影響を評価するものです。2025年時点では、WEO2024を参照し、IEA-STEPS、IEA-APS及びIEA-NZEのシナリオが提示している油価及びカーボンプライスをプロジェクトのNPV計算に適用し、簿価からの変化率を算出することで、将来の当社グループのポートフォリオが受ける影響を評価しています。2026年の評価では、WEO2025を参照し、IEA-STEPS及びIEA-NZEで評価する予定です。
今後も事業環境の変化を織り込みながら本手法の運用基準の深化を継続し、当社グループの事業ポートフォリオの競争力向上に努めていきます。
移行リスクの財務的評価への2つのアプローチ
ハ)物理的リスクのレジリエンス評価
当社は、物理的リスクにおいて、急性リスクと慢性リスクに分けて当社グループのアセットのレジリエンス評価を行っています。2018年に物理的リスクについての評価プロセスを検討後、ロードマップを設定し、主要オペレータープロジェクトであるイクシスLNGプロジェクトと新潟県の国内アセットにおける評価を開始しました。これは、国内及び海外における操業中のオペレータープロジェクトにおける保険付保額を100%カバーしています。その後も、前提としていた日本の気象庁発行の観測・予測評価報告書が更新されたことを受け、当社グループの主要施設の一つである直江津LNG基地に対する物理的リスクを再評価しています。同報告書内RCP8.5シナリオでは、平均海面上昇幅を0.19m程度と予測されていますが、評価の結果、同基地はこの水面上昇に耐えうる構造です。さらに、国内アセットに対しては、社外の評価サービスを用いた河川氾濫及び高潮による直接損害額及び間接損害額を試算しています。企業総合補償保険における上位10地点の国内事業所、国内パイプライン及び主要子会社事業所を対象としており、2030年及び2050年時点の想定損害額は限定的であることを確認しています。これらの物理的リスク評価では、共通してIPCC第5次評価報告書のRCP8.5シナリオにおける21世紀半ばの平均気温上昇、海面上昇などの指標を利用しています。
これらの評価を踏まえて、イクシスLNGプロジェクトをはじめ沿岸部に立地する主要施設の慢性リスクは、海水位上昇などを織り込んで設計しているため、洪水リスクは低いと判断しています。また、今後の気温上昇により運転効率の低下などの影響が考えられますが、適宜施設の改善・メンテナンスを行っており、2030年までに大きな損害が出ないと評価しています。急性リスクに関しては、主要オペレーター案件で適切な計画、操業、訓練、外部情報活用などにより、台風やサイクロンなどの極端な気象現象に十分な備えを持って取り組んでいます。当社グループの主要な拠点である直江津LNG基地のLNG受け入れ桟橋設備では、施設の被害があった場合に備えて、近隣発電所との間に基地間を接続する連系配管を有しています。これにより、連系配管を利用して当該発電所の受け入れ桟橋からLNGを受け入れる体制を構築しています。加えて、当社グループの主要施設は、自然災害の財物保険の手配により、急性リスクによる財務的損失の軽減を図っています。また、国内での自然災害についてはパイプラインのリスク評価や対応策の検討の上、自然災害リスクの高い部分において引替え工事を実施しました。
なお、当社グループでは、HSEマネジメントシステム文書であるHAZID(Hazard Identification)ガイドラインにおいて、HAZIDワークショップを行う際のガイドワークの一つに気候変動による影響を定めており、新規プロジェクトを含め当社グループの事業活動のライフサイクルを通したリスク管理アプローチに物理的リスク評価を組み込んでいます。今後も組織横断的なチームで定期的に評価の実施や適切な開示を進めていくと同時に、分析手法を多様化させ、より多角的な評価を進めていきます。
物理的リスクへレジリエンス評価へのアプローチ
(d)気候移行計画
当社は「INPEX Vision 2035」、「2025-2027 中期経営計画」及び上記のシナリオ分析をもとに、限界削減コストカーブ(MACカーブ)※1を活用し、当社グループ事業の低炭素化ロードマップを作成しています。基準年である2019年から2025年までに省エネ設備の更新やメタン排出管理等のGHG削減活動により、温室効果ガス原単位を着実に削減しています。今後は、外部環境の変化や技術進展、政策的な支援等を踏まえ、GHG削減に伴う費用と削減効果のバランスを考慮・評価しながら、段階的に低炭素化の取組みを推進していく考えです。具体的には、豪州等の生産施設にCCSを設置することで油ガス生産時のCO2の削減や、自社が使用する電気を再生可能エネルギーに切り替えること等により計画的に温室効果ガス原単位を下げ、2035年に60%削減(基準年比)を目指します。2035年以降は、発電施設での水素燃焼タービンの採用、電化の推進やさらなる再エネの活動、技術進展に応じた最適な削減施策の採用により、2050年ネットゼロの達成を目指します。
※1 個別の削減対策について、削減ポテンシャル(対策の実施により想定される削減量)と削減コスト(CO2を1トン削減するために要するコスト)を把握し、削減コストの安い順に各対策の削減ポテンシャルを並べたもの。

(a)方針
当社は、2015年12月に「気候変動対応の基本方針」を発行し、その後、パリ協定目標達成に向けた各国の取組みを支持するため、2021年1月に2050年自社排出量ネットゼロ(Scope1+2)目標を定めました。以降、外部環境の変化や長期戦略及び中期経営計画の更新に合わせて、方針及び2050年自社排出ネットゼロを目指すための目標を見直しています。2025年2月には「INPEX Vision 2035」の発表にあわせて「気候変動対応の基本方針」を改定しました。
| 気候変動対応の基本方針 1.当社は、今後も増加する我が国及び世界のエネルギー需要に応え、長期にわたり引き続き、エネルギーの安定供給の責任を果たしつつ、2050年ネットゼロの実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取組みます。 2.気候変動に関するパリ協定目標の実現に貢献すべく、2050年自社排出ネットゼロを目指す気候変動対応目標を設定します。 3.ネットゼロの実現に向けて、社会のニーズに応えるべく、低炭素化の取組みを確実に推進します。具体策として、「現実的な移行期の燃料」としての天然ガスをよりクリーンな形で供給していきます。加えて、第三者向けにCCSやクリーン水素・アンモニア等の低炭素化ソリューションを提供するとともに、電力関連分野の新たな取組みを強化します。 |
(b)リスク及び機会
当社では、毎年当社グループの気候変動関連リスク及び機会の評価を行っています。リスク及び機会の評価結果は以下のとおりです。
2025年末における気候変動関連リスク/機会の評価結果
(短期:1年未満、中期:1~3年未満、長期:3年以上)
移行リスク
| リスク区分 | リスク評価対象 | リスク発生時期見込 | 対策状況 |
| 政策・法規制 | IEA-NZEシナリオで世の中が推移し、プロジェクト所在国・地域が気候変動対策を強化した結果、カーボンプライシング制度やメタン排出管理規制及び環境法令等の 導入・強化により、Scope1,2排出量に対する直接的コストが増加するリスク | 短期~長期 | ・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・プロジェクト所在国・地域の政策や動向のモニタリング ・財務的評価、経済性評価の実施 ・プロジェクト操業におけるクリーン電力の導入 ・2030年までに通常操業時ゼロフレア ・メタン排出原単位0.1%を維持するための管理 ・OGMP2.0に加盟しノンオペレータープロジェクトも含めたMRV(Measurement, Reporting and Verification)を強化 ・カーボンクレジット戦略の策定・実行 ・関連するステークホルダーとのエンゲージメント |
| 政策・法規制 | 石油ガス事業を進める上で生じる気候関連訴訟リスク | 短期~長期 | ・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・世界情勢の把握 ・社内ガバナンス体制の構築 ・適時・適切な開示 ・関連するステークホルダーとのエンゲージメント ・物理的リスク評価の実施 |
| 技術・市場 | IEA-NZEシナリオで世の中が推移したにもかかわらず、当社のCCS・水素の商業化がさらに遅延するリスク | 中期~長期 | ・プロジェクト所在国・地域の政策や動向、技術進展のモニタリング ・世界情勢の把握 ・新規技術開発への投資 ・技術向上への各施策 ・コスト削減の取組み ・営業活動の推進 ・関連するステークホルダーとのエンゲージメント |
| 市場 | 投資家や金融機関から当社の事業内容や温室効果ガス排出量削減に向けた取組み及び情報開示が不十分とみなされ、資金調達に悪影響を及ぼすリスク | 短期~中期 | ・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・TCFD提言等に沿った情報開示の推進 ・投資家や金融機関との対話等エンゲージメントの実施 ・調達先とのエンゲージメントや資金調達先の多様化に向けた検討 |
| 市場 | 再生可能エネルギーやEV等の低炭素エネルギー選好により、石油ガスの需要が減少するリスク | 長期 | ・事業ポートフォリオの見直し ・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・プロジェクト所在国・地域の政策や動向、技術進展のモニタリング ・CCS等低炭素事業の取組みの加速 ・コスト削減の取組み |
| リスク区分 | リスク評価対象 | リスク発生時期見込 | 対策状況 |
| 評判 | Scope1、2の絶対排出量目標未設定による、当社グループの気候変動対応に対するレピュテーションが低下するリスク | 短期~長期 | ・プロジェクト所在国・地域の政策や動向のモニタリング ・脱炭素に向けた以下の取組みを社外のステークホルダーに丁寧に説明する。 -プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 -2050年ネットゼロ、2035年排出量原単位60%低減目標の設定 -CCS等低炭素事業の取組みの加速 -メタン排出原単位0.1%を維持するための管理 -新規プロジェクトの温室効果ガス削減目標への影響を評価 |
| 評判 | Scope3の削減目標を設定しないことによる、当社グループの気候変動対応に対するレピュテーションが低下するリスク | 短期~長期 | ・脱炭素に向けた以下の取組みを社外のステークホルダーへ説明 -調達先とのエンゲージメントや調達先多様化の検討 -CCS等低炭素事業の取組みの加速 -削減貢献量の目標及び進捗の開示 ・カーボンオフセット商品の販売等による販売先の排出量削減に向けた取組みの推進 |
物理的リスク
| リスク区分 | リスク評価対象 | リスク発生時期見込 | 対策状況 |
| 急性 | 極端な気象現象が操業に悪影響を及ぼすリスク | 短期 | ・定期的に急性物理的リスク評価を実施 ・防災対策を盛り込んだ設計、設備の修繕、改装 ・マニュアル策定、訓練、外部情報活用 |
| 慢性 | 長期的な平均気温上昇、降雨パターンの変化、海面上昇が操業施設に悪影響を及ぼすリスク | 中期~長期 | ・定期的に慢性物理的リスク評価を実施 ・防災対策を盛り込んだ設計、設備の修繕、改装 ・マニュアル策定、訓練、外部情報活用 ・沿海部の施設における対海面上昇対策の実施 |
機会
| 機会区分 | 機会評価対象 | 機会発生 時期見込 | 進捗状況 |
| 資源の効率 | 生産プロセスでのエネルギー効率改善 | 短期 | ・イクシスLNGプロジェクトにおける生産時の燃料ガス・フレア削減イニシアチブ、ガス漏えい検知・修理(LDAR)プログラム等を通じた低炭素化操業を推進 |
| エネルギー源 | 再生可能エネルギー電源の生産プロセスでの活用 | 中期~長期 | ・イクシスLNGプロジェクトにおけるバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の導入検討並びにオンサイトコンバインドサイクル発電プラントから再生可能エネルギー由来系統電力への切り替えに係る検討推進 |
| 長期 | ・ノルウェーのウィスティング油田開発計画において、発生するCO2の圧入処分を前提とした海上でのガスタービン発電を検討 | ||
| 製品及び サービス | 天然ガス/LNG | 長期 | ・イクシスLNGプロジェクトでの液化能力拡張の検討 ・アバディLNGプロジェクトの実現 |
| CCS/水素 | 長期 | ・参画中のプロジェクトとCCSの組み合わせや第三者向けCCSの検討(イクシスCCS、アバディCCS) ・首都圏CCS等先進的CCS事業の推進 ・国内外における水素の事業及びサプライチェーン機会を検討(柏崎水素パーク等) | |
| 電力関連 | 短期~長期 | ・地熱、太陽光、風力等再生可能エネルギー発電事業の推進、及び再生可能エネルギー発電から需給管理、電力販売までの電力バリューチェーン構築の検討及び追求 | |
| 石油・天然ガス以外の地下資源等 | 中期 | ・成東水溶性ガス田からの副産物であるヨウ素の供給を通じペロブスカイト型の太陽電池の普及を側面支援 | |
| 市場 | 新しい市場へのアクセス | 短期 | ・カーボンオフセット商品の販売 ・LCAF(Low Carbon Aviation Fuel)のサプライチェーン構築に向けた関係各所との協議 |
| 中期 | ・再生可能資源由来燃料であるリニューアブルディーゼル(低炭素軽油:RD)の国内提供及び、RD40(40%のRDを軽油に混ぜた燃料)の実証を実施 |
(c)気候レジリエンス
イ)気候関連のシナリオ分析
気候変動のリスク及び機会は不確実性が高いことから、当社では、複数のシナリオを活用しシナリオ分析を行っております。具体的には、2050年※1までの低炭素社会に向けたエネルギー需給などの事業環境の見通しについて、国際エネルギー機関(以下「IEA」)発行によるWorld Energy Outlookレポート(以下「WEO」)のIEA-STEPS、IEA-APS及びIEA-NZE等を参照しています。これらのシナリオから当社グループのビジネスにおける移行リスク及び物理的リスクを評価しています。また当社は、これらのシナリオを用いた分析を活用し、長期的な経営戦略として2025年2月に「INPEX Vision 2035」を策定しました。今後も複数のシナリオを活用しながら事業環境の変化をいち早く把握し、社会の動向に合わせ経営戦略・経営計画の見直しを行っていきます。
※1 IEAのWEOでは2050年までの国際エネルギー情勢について展望している
ロ)移行リスクの財務的評価
当社グループの移行リスクにおいて、WEO内のシナリオを活用し、以下2つの手法でリスクの財務的評価に取り組んでいます。
一つ目は、インターナルカーボンプライスを用いた当社グループの各プロジェクトの経済性評価です。世界では既に150以上の国・地域が2050年ネットゼロ宣言を行っており、今後更なる気候変動関連政策強化に伴い、各国においてカーボンプライス導入の法規制が進むと推測されることから、ベースケースからインターナルカーボンプライスを考慮した上で経済性を評価しています。ベースケースからの適用をルール化したことにより、社内では温室効果ガスにかかるコストが事業投資における重要な要素として認識されています。また、ステークホルダーに対しては、当社グループが移行リスクを考慮した上で経営判断を行っていることを示しています。財務的評価に用いているインターナルカーボンプライスについては、WEOのカーボンプライスを参考に毎年更新しています。プロジェクト所在国にカーボンプライス制度が存在する場合は、外部専門家の価格予想等を用いた当該国における当社グループの見積価格を参照しています。カーボンプライス制度が存在しない場合は、IEA-STEPSの前提から妥当性を検証して価格を決定しています。2025年はWEO2024のIEA-STEPS韓国価格を採用しており、2026年度も引き続きWEO2025のIEA-STEPS韓国価格(2035年US$ 52/tCO2e、2040年US$ 62/tCO2e、2050年US$ 75/tCO2e)を参照価格として設定します。
二つ目は、当社グループの事業ポートフォリオのレジリエンス評価です。これは、IEAが示す各シナリオにおける油価とカーボンプライスの推移が、当社グループのポートフォリオに与える影響を評価するものです。2025年時点では、WEO2024を参照し、IEA-STEPS、IEA-APS及びIEA-NZEのシナリオが提示している油価及びカーボンプライスをプロジェクトのNPV計算に適用し、簿価からの変化率を算出することで、将来の当社グループのポートフォリオが受ける影響を評価しています。2026年の評価では、WEO2025を参照し、IEA-STEPS及びIEA-NZEで評価する予定です。
今後も事業環境の変化を織り込みながら本手法の運用基準の深化を継続し、当社グループの事業ポートフォリオの競争力向上に努めていきます。
移行リスクの財務的評価への2つのアプローチ
| プロジェクト経済性評価 | ポートフォリオレジリエンス評価 | |
| 評価手法 | インターナルカーボンプライスを用いたプロジェクトの経済性を評価 | 下記シナリオによる油価及びカーボンプライスによる影響を評価 (2025年時点 – WEO2024参照) |
| IEA-STEPS | ||
| IEA-APS | ||
| IEA-NZE | ||
| 指標 | インターナルカーボンプライス適用によるIRR (ベースケース) | 上記指標価格適用による簿価からの変化率 |
ハ)物理的リスクのレジリエンス評価
当社は、物理的リスクにおいて、急性リスクと慢性リスクに分けて当社グループのアセットのレジリエンス評価を行っています。2018年に物理的リスクについての評価プロセスを検討後、ロードマップを設定し、主要オペレータープロジェクトであるイクシスLNGプロジェクトと新潟県の国内アセットにおける評価を開始しました。これは、国内及び海外における操業中のオペレータープロジェクトにおける保険付保額を100%カバーしています。その後も、前提としていた日本の気象庁発行の観測・予測評価報告書が更新されたことを受け、当社グループの主要施設の一つである直江津LNG基地に対する物理的リスクを再評価しています。同報告書内RCP8.5シナリオでは、平均海面上昇幅を0.19m程度と予測されていますが、評価の結果、同基地はこの水面上昇に耐えうる構造です。さらに、国内アセットに対しては、社外の評価サービスを用いた河川氾濫及び高潮による直接損害額及び間接損害額を試算しています。企業総合補償保険における上位10地点の国内事業所、国内パイプライン及び主要子会社事業所を対象としており、2030年及び2050年時点の想定損害額は限定的であることを確認しています。これらの物理的リスク評価では、共通してIPCC第5次評価報告書のRCP8.5シナリオにおける21世紀半ばの平均気温上昇、海面上昇などの指標を利用しています。
これらの評価を踏まえて、イクシスLNGプロジェクトをはじめ沿岸部に立地する主要施設の慢性リスクは、海水位上昇などを織り込んで設計しているため、洪水リスクは低いと判断しています。また、今後の気温上昇により運転効率の低下などの影響が考えられますが、適宜施設の改善・メンテナンスを行っており、2030年までに大きな損害が出ないと評価しています。急性リスクに関しては、主要オペレーター案件で適切な計画、操業、訓練、外部情報活用などにより、台風やサイクロンなどの極端な気象現象に十分な備えを持って取り組んでいます。当社グループの主要な拠点である直江津LNG基地のLNG受け入れ桟橋設備では、施設の被害があった場合に備えて、近隣発電所との間に基地間を接続する連系配管を有しています。これにより、連系配管を利用して当該発電所の受け入れ桟橋からLNGを受け入れる体制を構築しています。加えて、当社グループの主要施設は、自然災害の財物保険の手配により、急性リスクによる財務的損失の軽減を図っています。また、国内での自然災害についてはパイプラインのリスク評価や対応策の検討の上、自然災害リスクの高い部分において引替え工事を実施しました。
なお、当社グループでは、HSEマネジメントシステム文書であるHAZID(Hazard Identification)ガイドラインにおいて、HAZIDワークショップを行う際のガイドワークの一つに気候変動による影響を定めており、新規プロジェクトを含め当社グループの事業活動のライフサイクルを通したリスク管理アプローチに物理的リスク評価を組み込んでいます。今後も組織横断的なチームで定期的に評価の実施や適切な開示を進めていくと同時に、分析手法を多様化させ、より多角的な評価を進めていきます。
物理的リスクへレジリエンス評価へのアプローチ
| アセット評価 | |
| 評価手法 | 急性リスクと慢性リスクにリスクを分け、プロジェクトごとにアセットの物理的リスク評価を実施 |
(d)気候移行計画
当社は「INPEX Vision 2035」、「2025-2027 中期経営計画」及び上記のシナリオ分析をもとに、限界削減コストカーブ(MACカーブ)※1を活用し、当社グループ事業の低炭素化ロードマップを作成しています。基準年である2019年から2025年までに省エネ設備の更新やメタン排出管理等のGHG削減活動により、温室効果ガス原単位を着実に削減しています。今後は、外部環境の変化や技術進展、政策的な支援等を踏まえ、GHG削減に伴う費用と削減効果のバランスを考慮・評価しながら、段階的に低炭素化の取組みを推進していく考えです。具体的には、豪州等の生産施設にCCSを設置することで油ガス生産時のCO2の削減や、自社が使用する電気を再生可能エネルギーに切り替えること等により計画的に温室効果ガス原単位を下げ、2035年に60%削減(基準年比)を目指します。2035年以降は、発電施設での水素燃焼タービンの採用、電化の推進やさらなる再エネの活動、技術進展に応じた最適な削減施策の採用により、2050年ネットゼロの達成を目指します。
※1 個別の削減対策について、削減ポテンシャル(対策の実施により想定される削減量)と削減コスト(CO2を1トン削減するために要するコスト)を把握し、削減コストの安い順に各対策の削減ポテンシャルを並べたもの。
