有価証券報告書-第129期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/24 10:22
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有報資料

当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
(2) ビジョン
当社グループを取り巻く経営環境は、近年、変化のスピードが加速している。
こうした経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。
ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。

(3) 鹿島グループのマテリアリティ
当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。

(4) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクや通商政策を巡る不確実性の高まりなど、先行きの不透明感が強まる局面が続いたものの、AI・デジタル関連投資の拡大が景気の下支えとなり、全体として底堅さを維持した。我が国経済は、物価が継続的に上昇する中でも、堅調な企業業績を背景に賃上げが進み、緩やかながら持ち直しの動きが見られた。
国内建設市場は、米国関税政策の影響により輸出関連企業の設備投資などに停滞が見られたが、成長に向けた民間企業の投資意欲は依然として高く、公共投資も安定的に推移したことから、高水準の需要が継続した。一方で、需給のひっ迫も常態化しており、建設コスト上昇への対応や適切な施工体制構築が課題となっている。
今後の世界経済は、AIを中心としたデジタル分野の需要や関連するインフラ整備に対する投資が中長期的に拡大していく見込みである。一方で、国際情勢の緊迫化や不安定な通商環境によるインフレ再燃が懸念されるなど、先行き不透明な状況が継続している。また、多様な人材の確保、育成を軸とする人的資本投資の重要性が高まるとともに、脱炭素や循環型経済への移行など、経済・社会構造の転換も加速する見通しである。このように事業環境が絶えず変化する局面において持続的な成長を実現するためには、社会、顧客が直面する課題を的確に把握し、確かな技術力に基づく質の高いサービス、付加価値を提供し続ける必要がある。
建設市場は、民間設備投資の拡大や老朽化したインフラ、都市機能の更新などにより、当面は国内外ともに堅調な需要が見込まれるものの、構造的な労働力不足や建設コスト上昇など、建設産業の根幹に関わる課題が継続している。技能労働者の処遇改善による担い手確保の推進や自動化・省人化による生産性向上に加え、環境負荷低減を実現する技術開発など、社会課題解決と中長期的な成長を両立させる取り組みが求められている。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
<「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」の推進>このような経営環境の中、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を着実に推進し、中核を成す国内建設事業、成長領域と定める不動産開発事業、海外事業を更に強化しつつ、バリューチェーンの拡充やR&D、イノベーション推進により、技術立社ならではの新たな価値を創出し、社会や顧客とともに未来を開拓することを目指す。
① ありたい姿
中期経営計画の策定にあたり、経営理念や受け継いできた企業風土、価値観などを「ありたい姿」として具体化している。当社グループの基盤である人と技術をつなぎ合わせ、顧客、さらにその先にある社会に貢献することを目指していく。

② 成長戦略の取り組み状況
「ありたい姿」を念頭に置きつつ経営環境などを踏まえ、成長戦略は、1)国内建設事業を深める、2)成長領域を伸ばす、3)技術立社として新たな価値を創る、4)サステナビリティを4つの柱としている。

1)国内建設事業を深める
生産施設やインフラ更新などの重点分野において、着実に受注、施工の実績を積み重ね、技術力の強化や知見・ノウハウの蓄積が進展している。また、安全性、生産性の向上に資する自動化施工システムの更なる深化や、将来のビジネス機会拡充に寄与する技術開発も成果を上げている。生成AIなどの先進技術の積極的な活用は、働き方の質を高めるとともに、安全を追求する労働環境の改善にも貢献している。
■当連結会計年度における成果、取り組み事例
・重点分野と位置づける「生産施設」において、半導体や自動車関連の大型工事を含め、4,000億円以上の工事を受注
・見積書・工程表の自動作成、現場の安全管理支援、橋梁の健全度診断などにおいて、AI活用を推進
・自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を、「新名神高速道路城陽工事」(京都府)などの複数工事に展開。工事範囲が複雑な形状であり、かつ盛土材料が変化する造成工事にも適用
・東京大学「ハイパーカミオカンデ」(岐阜県)において、地下600mに直径69m、高さ94mの世界最大級となる地下空洞を構築。今後の拡大が期待される地下空間活用ニーズに対応

2)成長領域を伸ばす
国内、海外において、建設技術と不動産ノウハウをかけ合わせた付加価値の高い不動産開発事業を推進している。海外では各地域の事業環境を慎重に見極めつつ、強固な収益基盤に成長した流通倉庫開発事業のグローバル展開を加速させており、国内では事業資産のレパートリーを拡充するとともに、賃貸物件の収益性を高める取り組みに注力している。
また、建設コスト上昇や金融環境の変化を見据え、外部資金の積極的活用を企図したプロジェクトの共同事業化により、リスク低減と資本効率向上を図っている。
■当連結会計年度における成果、取り組み事例
・米国で蓄積した実績、知見を活かし、流通倉庫開発事業のグローバル展開を促進。欧州、東南アジアに加え、豪州においても新規案件に着手。倉庫開発床面積(2015年以降)は累計745万㎡まで拡大
・国内、海外の複数の開発事業プロジェクトにおいて、共同事業者の招聘による外部資金活用により、事業リスク低減と資本効率向上を実現
・ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルホテル「Osaka Sakurajima Resort」(大阪府)や「新秩父宮ラグビー場」(東京都)等の大型開発プロジェクトが着工。レパートリーの拡充が進展
・国内賃貸物件のテナントリーシングを強化。全57棟(貸床面積約12万坪)の入居率95%を確保

3)技術立社として新たな価値を創る
建設事業の強化と社会課題解決への貢献を柱とする当社グループの技術開発については、外部パートナーとの協業、連携も深めつつ、技術の社会実装、普及展開に向けた取り組みが進展している。また、「防災・減災」、「ウェルビーイング、スマートビル」などの複数の研究領域において、社会、顧客のニーズに応えた新たな付加価値を創出している。
■当連結会計年度における成果、取り組み事例
・高速道路床版取替工事の工期短縮、ソーシャルロス低減を実現する「スマート床版更新(SDR)システム」の普及展開及び技術深化を目指し、「SDRシステム研究会」を設立
・光ファイバセンシング技術を活用した地中空洞化検知、路車協調型自動運転の実現に向け、外部パートナーと連携した研究開発や実証実験を開始
・「東京証券取引所ビル本館」(東京都)屋上に制震装置「D3SKY-L(ディースカイエル)」を設置。最新鋭の超高層ビルと同等レベルまで耐震性を向上させるバリューアップを実現
・アジア地域統括拠点「The GEAR」において、自然換気活用による空調依存の大幅低減を実現。ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)Technology AwardsのNew Commercial Building部門最優秀賞を獲得

4)サステナビリティ
「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、相互に関連する脱炭素、資源循環、自然再興の3分野における取り組みに注力している。環境保全と経済活動が両立する持続可能な社会の実現に向け、当社グループの人材、資産を幅広く活用しつつ、建設技術をベースにした研究開発を着実に進めている。
また、社会や顧客から信頼され、成長し続けるため、コンプライアンスや人権尊重を前提とした経営基盤を整備している。多様な人材の活躍を促す施策に加え、技能労働者の処遇改善や協力会社に対する支援を通じて、強固なサプライチェーン構築も目指している。
■当連結会計年度における成果、取り組み事例
・「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」を含む2種類の環境配慮型コンクリートを国土交通省の直轄工事に大量適用。当初計画のコンクリートを使用した場合と比較し、CO2排出量を約45t削減
・米国北西部の太平洋沿岸地域における森林の取得と持続可能な管理を目的とする森林ファンドに出資。脱炭素及び自然再興の実現に向けた取り組みを加速
・純木質耐火集成材を採用した木造建築となる「東北支店ビル」(宮城県)建替に着手。当社グループ社有林(約5,500ha)の産出材活用を計画し、森林の適正管理・再生による脱炭素社会の実現に貢献
・社員の熱意や会社への信頼度などを調査するエンゲージメントサーベイのスコアが2年連続で向上
・電子マネーなどと交換可能な建設技能者向けポイントサービスの導入、工事代金の支払早期化などにより、技能労働者の処遇改善、協力会社の財務基盤強化を支援


<財務戦略の更新>① 現状分析・評価
当社グループは、中期経営計画(2024~2026)の策定後も、事業環境や業績動向を踏まえ、財務戦略を適切に更新している。取締役会においては、資本コストや事業ごとの資本収益性を確認、評価するとともに、株式市場における各種指標、IR活動の実績を把握した上で、成長投資や株主還元などの財務戦略、キャッシュアロケーションを検証している。
当連結会計年度は、前連結会計年度に続き目標を上回る利益を確保し、過去最高益を達成した。2027年3月期についても、親会社株主に帰属する当期純利益は、中期経営計画の経営目標を大きく上回る1,700億円を目指している。
当社グループが認識している8%程度の株主資本コストに対し、当連結会計年度のROEは13.3%となった。2027年3月期以降も継続的に10%を超え、株主資本コストを十分に上回る資本収益性を確保できると見通している。
また、当連結会計年度末における当社の株価は、前連結会計年度末に比べ大幅に上昇しており、当社グループの利益成長と業績に連動した株主還元が株式市場において評価されたと認識している。
② 経営目標の達成状況
中期経営計画期間3か年累計の親会社株主に帰属する当期純利益は、計画策定時の3,500億円程度から1,200億円以上増加し、4,700億円以上となる見通しである。
中期経営計画 経営目標
経営目標2025年3月期
実績
2026年3月期
実績
2027年3月期
予想
2027年3月期2031年3月期
親会社株主に帰属する
当期純利益
1,258億円1,773億円1,700億円1,300億円
以上
1,500億円
以上
ROE10.2%13.3%-10%を上回る水準

③ 今後の取組み
こうした状況を踏まえ、企業価値・市場評価の更なる向上を図るため、財務戦略を更新した。成長に向けた施策と投資を着実に進めつつ、計画を上回る利益や政策保有株式の売却を主要な資金源として、株主還元の充実に加え、協力会社への支払早期化等によるサプライチェーンの強化を図っていく。また、経営方針や業績見込みについてのタイムリーな情報開示と多様な投資家・市場との対話の強化により、株式市場から信頼され、評価される企業グループを目指していく。
④ 財務戦略更新のポイント
成長投資・中長期的な成長を見据え、人的資本への投資に加え、「生産性向上」「新たな価値創出」に向けたR&D投資・デジタル投資を集中的に推進。
・国内外の不動産開発事業における資本効率向上を企図した共同事業化や市況を見極めた投資・回収時期の変更を主因に、ネット投資額は計画比200億円減少。
・株主資本コストの変動を意識しつつ、ROEは10%を上回る水準を継続。
資本構成・政策保有株式は継続的に縮減を推進。株式市場の動向を踏まえ、『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』とした目標の達成に向けて、3年間の売却額は計画比400億円増額の900億円程度を目指す。
・D/Eレシオの目安は0.7倍程度を維持。
株主還元・配当性向40%を目安として、業績向上に連動した配当金の引き上げを実施。
・自己株式取得は、政策保有株式の売却実績をベースに機動的に実施。2027年3月期は利益成長の加速を踏まえ、政策保有株式売却額を上回る400億円の取得を計画。あわせて、保有する自己株式を発行済株式総数の5%程度となるよう消却予定。
・3年間の株主還元総額を計画比800億円程度拡充。
サプライチェーン強化・持続的な成長を支えるサプライチェーンの強化に1,000億円程度を充当。
・工事代金の支払いに関して現金比率を高めるなど、支払早期化を実施し、協力会社の財務基盤改善を支援することに加え、建設技能者へのポイントサービス導入や手当・報奨金の拡充を推進。

⑤ 投資計画
鹿島グループの中長期的な成長に資する投資を厳選して推進しており、3年間の投資総額は計画策定時から400億円減少の1兆1,600億円、ネット投資額は200億円減少の4,900億円を見込んでいる。中長期的な成長を見据え、「生産性向上」「新たな価値創出」に向けたR&D投資・デジタル投資を集中的に推進するとともに、人的資本投資の一環として、上質なオフィスや福利厚生施設の整備を進めており、計画策定時と比較して、デジタル投資及び業務用不動産への設備投資がそれぞれ100億円増加する見通しである。国内・海外の開発事業に関しては、資本効率向上を企図した共同事業化や市況を見極めた投資・回収時期の変更を主因に、投資から回収を差し引いたネット投資額が合計で400億円減少する見込みである。
当連結会計年度までの2年間におけるネット投資額は累計2,660億円となった。
中期経営計画(2024~2026)2025年3月期
2026年3月期
累計投資実績
策定時今回更新増減
R&D投資600億円600億円-430億円
デジタル投資500億円600億円+100億円370億円
戦略的投資枠800億円800億円-110億円
業務用不動産などへの
設備投資
600億円700億円+100億円330億円
国内開発事業
(売却による回収)
(ネット投資額)
3,200億円
(1,700億円)
(1,500億円)
2,800億円
(1,300億円)
(1,500億円)
△400億円
(△400億円)
(-)
1,870億円
(1,020億円)
(850億円)
海外開発事業
(売却による回収)
(ネット投資額)
6,300億円
(5,200億円)
(1,100億円)
6,100億円
(5,400億円)
(700億円)
△200億円
(+200億円)
(△400億円)
3,230億円
(2,660億円)
(570億円)
投資総額
(ネット投資額)
1兆2,000億円
(5,100億円)
1兆1,600億円
(4,900億円)
△400億円
(△200億円)
6,340億円
(2,660億円)

(6) 目標とする経営指標
2027年3月期の国内建設事業は、資材の供給不足や建設コスト上昇に備え、リスク管理体制を一層強化するとともに、引き続き生産性向上に取り組んでいく。当社建設事業の売上総利益率は、土木事業20.4%、建築事業12.0%を予想しており、堅調な業績を維持する見通しである。国内開発事業は、事業資産の積上げが着実に進展しており、複数の物件売却による業績貢献を見込んでいる。海外事業については、不安定な国際情勢や金融環境を慎重に見極めつつ、不動産開発物件の売却を進めることにより、利益の増加を目指している。なお、為替レートは1米ドル156.56円を想定している。
このような国内外の状況を勘案し、2027年3月期の業績は、当連結会計年度比減収減益を見込むものの、親会社株主に帰属する当期純利益は、「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)」の経営目標「1,300億円以上」を大きく上回る1,700億円を予想し、2026年5月14日に下記のとおり公表している。ROEについては、引き続き10%を上回る水準を維持することを目指す。
売上高営業利益経常利益親会社株主に
帰属する
当期純利益
2027年3月期
連結業績予想(百万円)
2,900,000200,000206,000170,000

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