有価証券報告書-第96期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/26 10:20
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96項目

研究開発活動

アサヒグループでは、第7次中期経営計画の達成に向けて、酒類、飲料、食品の各事業において独自価値を持つ商品の開発、及びグループのコア研究領域である酵母、乳酸菌から、発酵技術を通じて将来の各事業での革新的なファーストエントリー商品につながる技術開発を進めています。また、研究戦略の立案、研究開発、及び新規事業創出に取り組む新会社、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ㈱を設立し、2019年4月より事業を開始しました。重点領域を設けて、グループ戦略に基づいた研究課題や新規事業への取組みにリソースを重点的に配分し、これまで蓄積してきた酵母や乳酸菌研究の知見等を深掘りし、新たな事業や価値の創出に取り組んでいます。また、先端技術やオープンイノベーションを積極的に活用し、従来の研究開発領域に捉われない取組みを進めています。
当年度におけるグループ全体の研究開発費は、12,828百万円です。そのうち酒類事業に係る研究開発費は3,465百万円、飲料事業に係る研究開発費は2,053百万円、食品事業に係る研究開発費は1,622百万円、国際事業に係る研究開発費は1,971百万円、その他の事業又は全社(共通)の研究開発費は3,715百万円です。
[酒類事業]
(商品開発関連)
アサヒビール㈱は、『アサヒスーパードライ』の中長期のブランドスローガンを“THE JAPAN BRAND”と設定し、製造後翌日出荷の「鮮度実感パック」や工場出荷からお客様のご自宅まで一貫して温度管理をした「うまさ実感チルド便」など“最高品質の提供”と“飲用機会の拡大”に取り組みました。一方、若年層や女性といった新たなユーザーの拡大に向けて“もう一つのスーパードライ”をテーマに新需要の創造に向けた提案を強化してきました。『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』をクオリティアップし、発酵度を高め「後味の良さ」を向上させるとともに、アルコール度数を5.5%に高め、しっかりとした飲みごたえを実現しました。また、原材料の配合比率を見直すことで、「冷涼感」を生み出すポラリスホップの特長を引き立たせる中身設計としました。さらに『アサヒスーパードライ ザ・クール』は、「スーパードライ」ブランドの味の骨格はそのままに、苦味や渋みを抑えることで、よりすっきりした味わいをお楽しみいただけるビールで、「スーパードライ」ブランドとしては、初の業務用市場向けの商品として334mlの小びんで発売しました。ダーツやビリヤード等のレジャー業態、スポーツバー、クラブといった業態を中心に、「ザ・クール」をびんから直接飲用するスタイルを提案し“若者が仲間と一緒にビールを飲んで、開放的に盛り上がる!”そんな体験を通してエントリーユーザーのトライアルを促進し、飲用体験の拡大を図っていきます。また『アサヒスーパードライ ロイヤルリミテッド』は、国産麦芽のうまみを丁寧に抽出し、通常より濃度を高めた麦汁を長期二段熟成※1させることで、コク・香りといったビールの風味をより際立たせました。発酵・熟成時には雑味の多い成分を丁寧に取り除き、豊かな味わいと同時に「スーパードライ」ブランドの特長であるキレの良い後味を実現しました。
「スーパードライ」以外にも、グラスに注いで色や香り、ゆったり楽しめる深いコクで秋らしい季節感が感じられる秋限定醸造『アサヒ 紅』を発売しました。クリスタル麦芽を一部使用し、赤褐色の色合いとコクのある味わいを実現しました。アルコール度数6.5%のしっかりとした飲みごたえと、希少ホップ“アマリロ”を一部使用することで爽やかでフルーティーな香りをお楽しみいただけます。
いよいよ目前にせまったオリンピック東京2020大会のゴールドパートナーとして様々な面から大会を盛り上げていきます。『アサヒ ゴールドラベル』は、大会1年前を記念して発売した特別限定醸造の生ビールです。原材料には、厳選した麦芽とファインアロマホップを一部使用し、華やかな香りとしっかりとした飲みごたえを実現しました。
発泡酒市場においては、発売13年目を迎えた“糖質ゼロ※2”発泡酒のパイオニアである『アサヒ スタイルフリー⦅生⦆』をリニューアルしました。爽快な飲みやすさはそのままに、麦の使用量を『アサヒ スタイルフリー〈生〉』史上最大に増量することで、麦由来の本格的な味わいと飲みごたえをさらに向上させました。
新ジャンル市場においては、『アサヒ 極上<キレ味>』を新発売し、お客様から高い評価をいただきました。原材料に麦を100%使用し※3、アサヒビール独自の高発酵醸造技術※4と冷涼ホップの活用等により“当社最高レベルのキレ”と“本格的な飲みごたえ”を実現しています。
『クリアアサヒ』は「磨き抜いた“麦の味”」をブランドメッセージとして採用し、大麦と濃厚な香りが特長の麦芽を増量し、アロマホップを新規採用することで、雑味のないクリアな後味はそのままに、より麦の味わいと心地よい香りを実感できるようクオリティアップしました。“糖質ゼロ・アルコール6%”の新ジャンル『クリアアサヒ 贅沢ゼロ』のクオリティアップでは、麦の使用量を『クリアアサヒ 贅沢ゼロ』史上最大に増量し、麦の風味が豊かな麦芽エキスを採用することで、これまで以上に贅沢な麦の味わいを実現しました。また、よりうまみ成分が多く、雑味の少ない麦汁のみを厳選して使用することでより後味の良い味わいとなっています。期間限定商品として『クリアアサヒ 桜の宴』、『クリアアサヒ 夏日和』、『クリアアサヒ 秋の宴』、『クリアアサヒ 吟醸』を、エリア限定商品として『クリアアサヒ 九州うまか仕込み』、『クリアアサヒ 東北の恵み』、『クリアアサヒ 北海道の恵み』、『クリアアサヒ 関西仕立て』を発売し、それぞれの季節や地域に合った商品を通じてさらなる飲用シーンの拡大を目指しました。
“プリン体ゼロ※5・糖質ゼロ・人工甘味料ゼロ”、3つのゼロで、カロリー最少級※6の新ジャンル『アサヒオフ』のクオリティアップではミュンヘン麦芽を新たに採用し、ドイツ産ホップを100%使用することで、より麦の旨みか感じられる飲みごたえを実現しました。
クラフトビール市場においては、世界で親しまれる個性豊かで多様なビアスタイルを手軽に楽しめる新ジャンル「アサヒクラフトスタイル」として、『ブリティッシュ』、『アメリカン』、『IPAタイプ』、『アンバーラガー』を新発売しました。
ビールテイスト清涼飲料市場においては、『アサヒドライゼロ』のクオリティアップを実施しました。『アサヒ ドライゼロ』は、原材料の配合バランスを最適化し、従来品より炭酸ガスの強さを高めることで「コクとキレ」の向上を図りました。期間限定商品として発売した『アサヒ ドライゼロライム』は、「ドライゼロ」ブランドの特長であるビールらしい味わいはそのままに、ライムの爽やかな風味を加え、暑い時期にぴったりなスッキリとした味わいを実現しました。また2018年に期間限定で発売しご好評いただいたブランド初のペットボトル商品『アサヒ ドライゼロスパーク』を通年商品として新発売しました。ビールらしい味わいを維持しながら、ご支持いただいた「高炭酸※7」をさらに高めることで、のどへの刺激感を高めました。ペットボトルでゴクゴク飲める、スッキリとした後味をお楽しみいただける商品です。
RTD※8市場においては、アルコール度数9%の無糖※9RTD「ウィルキンソン・ハード」シリーズを刷新し、「ウィルキンソン・ハードナイン」として、『無糖ドライ』、『無糖レモン』、『無糖ジンジャ』、『期間限定無糖ライム』を発売しました。従来品よりも炭酸ガス圧を約1割高め、当社RTD史上“過去最高のガス圧”を実現し炭酸の爽快さを強化しました。また、従来のジン、フルーツスピリッツ※10に加えて、新たにウォッカを使用した独自の「トリプルスピリッツ製法」※11を採用しました。クリアですっきりとした後味をお楽しみいただけます。また程よい“お酒感”を求めるニーズの高まりを受け、「ウィルキンソン・ドライセブン」シリーズとして『ドライレモン』、『ドライレモンライム』、『期間限定ドライレモントニック』、『期間限定ドライレモンジンジャ』、『期間限定ドライレモンコーラ』を発売しました。ウォッカをベースに、果物由来のフルーツエキス※12とフルーツスピリッツを使用した独自の「クオリティシャープ製法」※13を採用し、果実本来の味わいがありながらも、“すっきりとした甘くない”味を実現しました。
「アサヒもぎたて」では基幹フレーバー『まるごと搾りレモン』、『まるごと搾りグレープフルーツ』、『まるごと搾りぶどう』、『まるごと搾りオレンジライム』、『手摘み白桃』、『まるごと搾りシークァーサー』のリニューアルを行いました。原材料だけでなく製造工程や容器の形状まで一貫した「鮮度マネジメント※14」を当社RTDカテゴリーで初めて導入し、これまで以上の“つくりたてのおいしさ”と“活きた果実の味わい”や、すっきりと飲み飽きない後味を実現しました。通年商品に加えて期間限定商品として『手摘み青梅』、『まるごと搾り青りんご』、『手摘みライチ』、『まるごと柑橘搾り』、『爽やかスウィーティー』、『爽やかパイン』、『宮崎産日向夏』、『マスカットオブアレキサンドリア』、『しっとり洋梨』、『しゃりっと林檎』、『すっきり香る柚子』、『高知産直七』、『温州みかん』を発売し、季節に合わせた商品を積極的に発売することでRTD市場におけるプレゼンス向上を図りました。
また果実1/2個分※15の果汁を贅沢に使用してご好評いただいている「アサヒ贅沢搾り」の基幹フレーバーである『グレープフルーツ』、『レモン』、『桃』、『キウイ』をリニューアルし、果汁などの原材料の配合バランスを見直すことで“果実感・果汁感”をさらに強化しました。また期間限定商品として『白ぶどう』、『ライチ』、『ブラッドオレンジ』、『りんご』、『洋なし』、『オレンジとカシス』を発売しました。
ハイボール市場においては、『ニッカ淡麗辛口ハイボール』をリニューアルしました。軽やかなウイスキーをベースに、瀬戸内産レモンエキスを加え、炭酸強めのソーダを使用することで、よりすっきり爽快に飲める味わいを実現しています。「プリン体0.0※16」「人工甘味料0」とし、口当たりがよくすっきりとした淡麗辛口の味わいで、様々な食事との相性をお楽しみいただけます。期間限定品としては『クリアジンジャー』、『ドライコーラ』を発売しました。また「ウィルキンソン」ブランドから『ウィルキンソン・ハイボール』を発売しました。さらに「ブラックニッカ ジャーハイスタイル 香り楽しむハイボール」として『かろやかオレンジピール』、『涼やか大葉』、『きりっと和山椒』を発売しました。飲食店を中心に提案してきたハーブ、スパイス、フルーツなどの香り豊かな素材をウイスキーに仕込み、炭酸で割った、甘くない味わいで食事と一緒にお楽しみいただけるジャーハイを、缶ハイボールで提案することで多様なウイスキーの楽しみ方をお客様に提案しました。伸長を続けるハイボールカテゴリーにおいて、幅広い提案を強化し、プレゼンス拡大を図っていきます。
その他、『アサヒSlat(すらっと)』、『アサヒチューハイ果実の瞬間』、『アサヒカクテルパートナー』、『カルピスサワー』などのRTD商品でリニューアル(クオリティアップ)や季節限定商品を発売しました。
サワーテイスト清涼飲料※17市場においては、機能性表示食品である「アサヒスタイルバランス」の基幹フレーバーを一部リニューアルし、『完熟パインサワーテイスト』、『ヨーグルトサワーテイスト』を発売しました。
ワイン市場においては、『サントネージュ 酸化防止剤無添加のやさしいワイン(赤、白、濃い赤)』、『サントネージュ 和の雫(赤、白)』、『サントネージュ 限定醸造日本ワイン5品種ブレンド(赤、白)』、『ニッカ シードル(紅玉リンゴ、トキりんご、ロゼ、ヌーヴォースパークリング2019)』を発売しました。
焼酎市場においては、焼酎甲類乙類混和売上No.1ブランドの「かのか」から『麦焼酎 かのか 吟麗すっきり仕立て』、『麦焼酎 かのか 芳醇コク深仕立て』、『芋焼酎 かのか 濃醇まろやか仕立て』、『芋焼酎 かのか 華やかすっきり仕立て』、『芋焼酎 焼き芋かのか』、『芋焼酎 かのか 紅はるか』を発売しました。
ウイスキー市場においては、ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所設立50周年に際し、数量限定で『シングルモルト宮城峡 リミテッドエディション2019』、『シングルモルト余市 リミテッドエディション2019』を発売しました。また「ブラックニッカ ディープブレンド」の数量限定商品として『ブラックニッカ ディープブレンド ナイトクルーズ』を、「ブラックニッカ リッチブレンド」の数量限定商品として『ブラックニッカ リッチブレンド コンフォートアロマ』をそれぞれ発売しました。
※1:通常よりも1.2倍長い期間、二段階の温度変化を行って熟成を行うこと。
※2:栄養表示基準による。以下同じ。
※3:麦芽、大麦、スピリッツ(大麦)を使用。ホップ使用量を除く。
※4:高発酵を実現する酵母管理技術・発酵制御技術、糖分解酵素活用技術など。
※5:100ml当たりプリン体0.5mg未満を「プリン体0」と表示しています。
※6:100ml当たり22kcal。発泡酒をベースとした当社「リキュール(発泡性)①」比。
※7:充填時において。ドライゼロ缶商品比。
※8:「Ready to Drink」の略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。以下同じ。
※9:アサヒビール㈱は、糖類と甘味料を一切使用しないことを「無糖」と定義しています。
※10:ニッカウヰスキー㈱の特許技術により蒸溜した、フルーツスピリッツを指します。果皮等の原料をアルコールに浸漬させた浸漬酒を減圧蒸溜することで、果実の甘さを残さずに、柑橘の香りのみを抽出した蒸溜酒。以下同じ。
※11:ウォッカ、ジン、フルーツスピリッツの3種類の原酒を使用し、きりっとしたお酒の味わいがありながらも、クリアですっきりとした後味を実現した当社独自の製法。
※12:果物を粉砕し、さらに加圧機にかけることで、果実本来の風味を抽出したエキス。非加熱のフルーツエキスを使用することで、すっきりとした風味を実現しました。
※13:フルーツエキスとフルーツスピリッツをベースに使用することで、“すっきりした味わい”を実現した当社独自の製法。
※14:従来の「収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用」「劣化を抑制し、果実由来の香りを維持する超低温殺菌技術の活用」に加えて、「製造時間の短縮」「抗酸化効果の強化」「容器形状の変更」を行いました。これら5点の“鮮度”を徹底的に追求する一連の取り組みを指します。
※15:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より算出した、果物1個当たりの重量に占める果皮などを除いた果汁量の1/2相当量以上を使用しています。
※16:100ml当たりプリン体0.05mg未満を「プリン体0.0」と表示しています。
※17:ノンアルコールでサワーやカクテルのような味わいを楽しめる清涼飲料の総称です。
(技術開発関連)
商品の中味開発分野では、『クリアアサヒ プライムリッチ』、『ニッカ シードル スイート』、『麦焼酎 かのか 25度』、『麦かのか 焙煎まろやか仕立て』の4商品が、International Taste Institute※1の世界的な食品・飲料品のコンテストにおいて、“極めて優秀”と認められた製品に贈られる、最高レベルの優秀味覚賞“三ツ星”を受賞しました。『クリアアサヒ プライムリッチ』は4年連続受賞、さらに『ニッカ シードル スイート』、『麦焼酎 かのか 25度』は3年連続で受賞した製品に贈られる“クリスタル味覚賞”を受賞しました。
『竹鶴25年ピュアモルト』が、ウイスキーの国際的コンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード2019」(WWA)において、「ワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」を受賞し、“世界最高賞”のブレンデッドモルトウイスキー(ピュアモルトウイスキー)として認定されました。『竹鶴17年ピュアモルト』が2012年、2014年、2015年、2018年に、『竹鶴21年ピュアモルト』が2007年、2009年、2010年、2011年にワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキーをそれぞれ受賞しており、「竹鶴」ブランドとして9度目の受賞となります。また『竹鶴25年ピュアモルト』、『竹鶴21年ピュアモルト』が、世界的な酒類品評会である「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2019」においてダブルゴールドを受賞しました。本年から、ゴールドよりもテイスティング結果が優れた賞と位置付けられるダブルゴールドが新設され、『竹鶴25年ピュアモルト』、『竹鶴21年ピュアモルト』の2商品がニッカウヰスキー社商品として初めて受賞しました。『竹鶴17年ピュアモルト』、『フロム・ザ・バレル』もゴールドを受賞しました。ISCでのニッカウヰスキー社商品のゴールド受賞は12年連続となります。さらに『竹鶴25年ピュアモルト』は、ジャパニーズウイスキー部門において最高賞の“トロフィー”を受賞しました。ISCでのニッカウヰスキー社商品の“トロフィー”受賞は、2017年『ニッカ カフェモルト』、2018年『ニッカ カフェウオッカ』に次いで3年連続、5度目となります。また、「竹鶴」ブランドとしては2度目の受賞です。
容器包装分野では、パナソニック株式会社と「高濃度セルロースファイバー成形材料」※2を活用した、世界初※3のビール用カップ「森のタンブラー」を共同開発しました。「高濃度セルロースファイバー成形材料」は、間伐材などの木材から精製したパルプを主原料とした“紙製材料”であり、自然由来の木の風合いをお楽しみいただけます。高い形状自由度とリユース可能な強度を持つとともに、印刷適性も高いことから、各種イベント等に合わせた設計が可能です。また、成形時の温度条件によって色目が変化するため、3種類の中から希望の色目を選択できます。近年、SDGsを初めとした環境意識の高まりから、イベントやコンサート、スポーツ観戦の会場においてリユース可能な容器の普及が進んでいます。「森のタンブラー」には、植物繊維由来の細かな凹凸を表面に施すことで、ビール類の持続性のあるきめ細かな泡をつくりだす特長があることから、ご家庭での利用価値も高いリユースカップとして訴求していきます。また「森のタンブラー」は、「2019年日本パッケージングコンテスト 飲料包装部門賞」を受賞しました。
研究・技術開発分野では、当社が長年取り組んできた『日本が世界に誇る生ビール、その製造における微生物品質保証技術の開発』が「第23回安藤百福賞優秀賞」を受賞しました。この賞は新しい食品の開発並びに食科学の振興に貢献する独創的な研究・開発に贈られます。微生物品質保証技術関連では、昨年の文部科学大臣表彰、生物工学奨励賞(江田賞)に続いての受賞となりました。培った技術を応用し、また知見を公知とすることで、世界の生ビールの品質向上に貢献していきます。さらに『ビール酵母の発酵に寄与する因子解明と産業への利用』が「2019年農芸化学女性企業研究者賞」を受賞しました。この賞は企業での農芸化学分野の研究あるいは商品開発における顕著な成果に対して授与されています。ビール酵母の特徴を研究によって裏付け、醸造技術開発へ応用した内容が評価され、受賞となりました。
「EUROPEAN BREWERY CONVENTION 2019」(2019年6月2日~6日、ベルギー アントワープにて開催)にて、当社が取り組むビール醸造研究の最新の研究成果を発表しました(口頭発表2件、ポスター発表3件)。このうち『ホップ耐性遺伝子をもつ乳酸菌L.nageliiの特性』がポスター発表全130件の中から優秀な3件に送られる「good poster」賞を初受賞しました。このほかに「American Society of Brewing Chemists」、「Master Brewers Association of the Americas」、「YEAST2019」においても当社が取り組む最新の研究開発成果を発表しました。
※1:International Taste Instituteは、ベルギーブリュッセルに本部を置き、世界中の食品や飲料品の味覚を審査し、優れた製品を表彰・プロモーションする機構です。審査員はヨーロッパで最も権威ある15の調理師協会及び国際ソムリエ協会(ASI)に属する一流シェフやソムリエで構成されています。2018年までは、iTQi=International Taste&Quality Instituteという名称で展開されてきましたが、2019年から味覚にフォーカスした機構として名称が変更となりました。
※2:パナソニック㈱が独自に開発したナノ~マイクロに微細化されたパルプ成分を55%以上含有する新開発の樹脂です。同社独自の金型・樹脂成形技術により、独特の風合いと強度を実現できます。パナソニックが受託した環境省の委託業務(平成27年度~平成29年度セルロースナノファイバー製品製造工程におけるCO2排出削減に関する技術開発)で得られた成果を活用しています。
※3:当社調べ
[飲料事業]
(商品開発関連)
アサヒ飲料㈱は「国内飲料トップクラスの収益性を堅持し、業界のリーディングカンパニーを目指す」との方針のもと、「三ツ矢」、「カルピス」、「ウィルキンソン」といった100年ブランドを3つ有する企業として次なる100年の成長を目指し、「本質価値の強化」と「未来に向けた成長基盤の構築」に取り組んでおります。
研究開発部門においては、「ワンダ」、「三ツ矢」、「カルピス」、「十六茶」、「おいしい水」、「ウィルキンソン」の6つの重点ブランドについて、ブランド価値向上、及び新規領域の強化に取り組んでまいりました。
「ワンダ」ブランドでは、「モーニングショット」、「金の微糖」、「極」といった定番商品の強化に加え、ボトル缶市場への継続的な商品展開と、伸長傾向にあるPETボトルコーヒー市場に新商品を投入しました。
ボトル缶市場に向けては、昨年に引き続き「ワンダ 極」シリーズを積極的に展開し、「微糖」、「ブラック」、「カフェオレ」に加えて「ジャパンドリップ」を発売し、飲用機会の拡大を図りました。さらに、「ワンダ ラテリッチ」シリーズを新展開し、女性の飲用傾向が高いカフェラテとフルーツを組み合わせた新たなコーヒーの楽しみ方を提案しました。
また、PETボトルコーヒー市場に向け、振ることで泡までも楽しむ新たな飲用スタイルを提案する「ワンダフルワンダ」シリーズや、カフェイン少なめで軽やかな味わいとミルク由来の白色の液色を特徴とした「ワンダ ホワイティラテ」を展開しました。
「三ツ矢」ブランドにおいては、1964年東京五輪当時の「全糖三ツ矢シャンペンサイダー」の味わいを再現した、「『三ツ矢サイダー』NIPPON」を開発し、「国民的炭酸飲料」地位強化に向け、「安心・安全」、「日本生まれ」を訴求しました。前年から引き続き、さっぱり・リフレッシュニーズを満たす有糖領域と無糖領域の中間領域として、「『三ツ矢』レモネード」を開発し、新ジャンルの定着化を図りました。一方で嗜好・リラックスニーズを満たす「『三ツ矢』くちどけもも」、「『三ツ矢』くちどけマンゴー」などの濃厚感を訴求した製品も開発し、多様な消費者のニーズに対応して参りました。
「カルピス」ブランドでは、希釈して飲用するコンクタイプ、そのまま飲用するストレートタイプにおいて、季節ごとに様々な種類の果実と「カルピス」を組み合わせた新商品を数多く展開しました。加えてコンク「カルピス」を濃いめに希釈した味わいが楽しめる「濃いめの『カルピス』」シリーズ、他発酵素材との組み合わせによる新しい味わいが楽しめる「発酵BLEND」シリーズを展開し、幅広い味わいを提案しました。
さらに本年度は「カルピス」の発売から100周年を迎え、これを記念した限定製品「匠の『カルピス』」及び「『カルピス』贅沢時間マンゴーの王様」を発売し、お客様から高い評価を頂きました。
「十六茶」ブランドにおいては、「アサヒ 十六茶」が2005年から「カフェインゼロ」として生まれ変わり、2019年で15年目を迎えました。2019年は、「東洋健康思想に基づいた16素材の健康ブレンド」という独自の健康価値に加えて、誰でも安心して飲めるように「アレルギー特定原材料等27品目不使用」とし、さらに健康価値を強化しました。
また、内臓脂肪、脂肪、糖のトリプルヘルスクレームの機能性表示食品「アサヒ からだ十六茶」は中身の原料を見直し、すっきりとした口当たりはそのままに、より深い味わいへ改良した「アサヒ からだ十六茶α」を発売しました。その他に、インターネット通販限定商品として「こども十六茶」、期間限定商品として「脱水対策十六茶」、「十六茶ほうじ茶」、「あったまる十六茶」などを展開しました。
「おいしい水」ブランドにおいては、環境問題に配慮した「ラベルレス」ボトルの販売拡大を図る一方、「おいしい水プラス『カルピス』の乳酸菌」の商品改訂を実施し、「カルピス」100周年と連動した売り場展開を行いました。
「ウィルキンソン」ブランドにおいては、炭酸水No.1ブランドのもつ価値の更なる強化を目指し、「『ウィルキンソン』タンサンレモン」を強化、シェア拡大に貢献しました。また、新しいフレーバーの提案として「『ウィルキンソン』タンサンティー」、「『ウィルキンソン』タンサンクールシトラス」を開発し、エントリー層の拡大にも努めました。
また、海外展開の取り組みとして、台湾においては、「カルピス」ブランド、「十六茶」ブランド、「ワンダ」ブランド、「三ツ矢」ブランド、「ウィルキンソン」ブランド、「ほっとレモン」を展開しております。「カルピス」ブランド、「十六茶」ブランド、「ほっとレモン」は現地の嗜好に合わせた現地製造品を展開しております。本年、「味わい『カルピス』メロン」を新フレーバーとして提案いたしました。また、日本からの製品輸出も積極的に展開いたしました。
また、新規領域の強化については、社会として健康意識が高まる中、日本中のみなさまが毎日の「飲みもの」を通じて、ココロもカラダも健康になれる事を目指し、健康課題解決に向けた取り組みを推進しています。
その中で、アサヒグループ独自の確かなエビデンスを有した素材を使用した製品の開発や、「安全」「安心」といった各ブランドがもつベーシックな「健康」価値の訴求を強化することで、「アサヒ飲料=健康に強みを持つ会社」というイメージの醸成を目指して積極的な取り組みを実施しています。
“ココロの健康”に関して、当年度は「強炭酸水」のもつ機能の解明に取り組みました。慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 満倉靖恵教授との取り組みでは、脳波解析を用いて炭酸水の飲用が感性へ与える影響を検証し、強炭酸水の飲用により「集中度」が高まることを確認しました。炭酸水関連研究につきましては、2020年度も引き続き力を入れて推進していく予定にしています。
また、「カルピス」ブランド発売100周年限定商品である「匠の『カルピス』」の飲用により気分にどのような変化が起こったかについて理化学研究所 片岡洋祐先生の技術指導のもと「KOKOROスケール」※1で試験を行い、「匠の『カルピス』」飲用により、「ココロが満たされる」方向に気持ちがシフトすることを明らかにしました。
これらのデータを活用することで、お客様にとってアサヒ飲料の商品は確かな価値ある商品であることの理解促進と満足度を高めて参ります。
“カラダの健康”に関しては、機能性関与成分としてアサヒグループ独自のペプチド素材「ラクトノナデカペプチド」を活用した「はたらくアタマに」シリーズを発売しました。「ラクトノナデカペプチド」は、認知機能の一つである注意力(事務作業の速度と正確さ)の維持と作業効率の維持に役立つことが報告されている成分であり、「はたらくアタマに」シリーズはこの「ラクトノナデカペプチド」を含む、世の中の働く人に向けた飲料シリーズです。ブラックコーヒー、果汁炭酸、乳性飲料、抹茶ラテ、小型乳性ドリンクと幅広いラインナップで展開しました。
発売中の「守る働く乳酸菌」、「届く強さの乳酸菌」、「『アミール』やさしい発酵乳仕立て」、「カラダカルピス」の継続展開に加え、今後ともアサヒグループの保有する確かなエビデンスを有する素材を活用した商品の積極的な開発を推進して参ります。
※1 KOKOROスケール:個人の主観的な気分を時間・場所を選ばずスマートフォンなどで簡単に入力できる理化学研究所が開発した気分測定ツール。
(技術開発関連)
製品、工程、ご指摘品解析に必要な安全・安心技術(新規分析技術、解析技術)の拡充と、品質に影響を及ぼす微生物の検出技術、同定技術、静菌技術の研究についても継続して取り組んで参りました。従来では解析が不可能であった加熱殺菌された乳酸菌についても「RNA-MLSA法」という新たな遺伝子解析技術を開発し、製品中に含まれる機能性乳酸菌を判別し検出することが可能となりました。
マーケティング戦略と連動した容器包装開発では、100周年限定の「カルピス」用PETボトルの開発を行いました。このボトルは、商品コンセプトを形状に反映することに加え、年代・性別ごとの手の寸法データより、多くの方が持ちやすいボトル外周長と多面体形状を採用しました。また、「WONDA」ブランド用には、振って飲むスタイルや、大容量ホット販売に適した新形状のPETボトルを開発しました。「おいしい水」用には開けやすい段ボールカートンとして、天面に開封用手穴を付与した形状の開発を行いました。環境配慮型の容器包装開発においては、持続可能な容器包装の実現に向けて制定した「容器包装2030」に基づき、リサイクルPETの各種容器への適用評価を行い、市場展開を開始しました。また、植物由来原料を使用した容器包装の開発では、2016年より継続している「三ツ矢サイダー」PET1.5L製品の全包装材料に植物由来原料を使用した商品において、一層のCO2削減に貢献すべく軽量キャップを採用するとともに、その展開数量を拡大しました。さらに、「おいしい水」ブランドに使用するラベルへもバイオマスインキの採用を開始しました。
[食品事業]
(食品開発関連)
アサヒグループ食品㈱は、既存ブランドの価値向上を重点課題として、展開中のカテゴリーにおける商品開発を行って参りました。
菓子カテゴリーの「ミンティア」シリーズでは、小粒ならではの瞬間的リフレッシュ価値を提供する「ミンティア(レギュラー)」、大粒ならではの持続的リフレッシュ価値を提供する「ミンティアブリーズ」の特長をそれぞれ生かした商品を積極的に展開することで、リフレッシュ市場のさらなる拡大を図りました。また、2年目となる「みんなMINTIA!」のコミュニケーションコンセプトのもと、積極的な広告・販促施策を実施して参りました。年間を通して商品・広告・販促の三位一体となった活動を展開することでブランド力の向上を図りました。「キャンディ」では、需要が高まる冬に向けて栄養素を配合した『濃ーい苺』、人気の飲料ブランドから『カルピスミルクキャンディ』などの新商品を発売いたしました。さらに『焼き芋キャンディ』、『モーニングキャンディ』、『ちえばあちゃんの知恵袋のど飴』等、バラエティ豊かな商品を発売し、市場の活性化とユーザー層の拡大を図りました。
2018年大好評をいただき、当初の発売計画を大幅に上回る出荷となったため、販売を一時休止させていただいておりました健康食品カテゴリーの『1本満足バー プロテインシリーズ』は、7月に全国販売を再開いたしました。本シリーズはプロテインを手軽に摂取できるシリアルバータイプの栄養調整食品としてプロテイン市場の更なる拡大に貢献しています。
カップスープカテゴリーでは、近年著しく伸長している糖質コントロール市場向けに、寒天とコンニャクで作った麺が入った「おどろき麺0(ゼロ)」シリーズを発売しております。2019年はシリーズ展開として、水で戻す『汁なし麺0(ゼロ)麻辣担々麺』とショートパスタ風の糖質ゼロの麺を使用した『おどろき麺0(ゼロ)完熟トマトのミネストローネ風』、『おどろき麺0(ゼロ)濃厚チーズのカルボナーラ風』を発売することで、「おどろき麺0(ゼロ)」シリーズの“手軽に糖質コントロールができるワンカップスープ商品”のポジションをさらに強化しました。
フリーズドライ食品カテゴリーでは、主力であるみそ汁やスープカテゴリーのブランド強化のために、素材を活かした商品の開発など、フリーズドライの優位性が発揮できる新価値の提案に取り組みました。流通では、即席みそ汁市場全体は横ばいですが、その中でフリーズドライ食品の伸びが大きくなっています。そのフリーズドライ食品のトップメーカーである当社が、即席みそ汁市場の伸びを牽引するために、緑黄色野菜や根菜・海藻・きのこなどを使った「おいしいバランス」が楽しめる「10品目の一杯」シリーズから『こがねの椀』、『あかねの椀』、『わかばの椀』を発売しました。スープカテゴリーでは、素材本来の旨みを引き出すことに注力した「Theうまみ」シリーズから食べ応えのある『炙り牛スープ』、『燻製鶏スープ』を発売しました。また、『うちのお吸い物 たまごと三つ葉』はご家庭での保管にも便利な5食入りの商品として発売し、大変ご好評をいただいています。通販向けでは、「金のだし」シリーズから、ラインアップ拡充として『とうふ』を発売しました。その他、通販ならではの商品として、2年の開発期間を経て商品化に成功した『フリーズドライの匠 一人鍋 海老天ぷら入り鍋焼きうどん』を数量限定で発売しました。さらに、アマノフーズのWebマガジン「アマノ食堂※1」で企画・商品化する「まかないごはん」シリーズの第三弾として『大人のピリ辛牛煮込み』、『大人のポテサラ』を発売しました。これらの商品により、新規領域のフリーズドライ食品を読者が実際に“食べる”体験を通じて、フリーズドライの魅力やおいしさを体感できるようにしました。また、近年伸長している機能性表示食品として『おだやかプラス わかめスープ』を発売しました。本品は食後の血中中性脂肪値の上昇をおだやかにすることが報告されている難消化性デキストリンを配合しています。
これら商品開発に加え、フリーズドライ食品の魅力の情報発信店であるアンテナショップ「アマノ フリーズドライステーション」の常設店として「北海道・札幌店」、「大阪・LINKS UMEDA店」、期間限定店として「成田空港店」を立ち上げ、「アマノフーズブランド」の知名度向上に取り組みました。
ベビーフードカテゴリーでは、30種の食材体験により、離乳食期に様々な味を学ぶことで味覚を広げるサポートを行う新シリーズ「WAKODO GLOBAL」7品を発売しました。また、お子さまとのおでかけ時のベビーフードを充実させるため、「BIGサイズの栄養マルシェ おでかけ」シリーズの5品を追加発売しました。また、8種の野菜と3種のくだもの入り「1歳からのMYジュレドリンク 1/2食分の野菜&くだもの」3品や、親子で一緒に作れる1歳からの「ミルクデザート」シリーズ3品などを発売し、幼児向け飲料、デザート商品を充実させました。
ベビー用スキンケアカテゴリーでは、1906年に国産初のベビーパウダーとして発売され113年の歴史を持つ「シッカロール」ブランドから、『シッカロールナチュラル ベビージェルローション』、『シッカロールナチュラル ベビーケアスティック』の2品を発売し、商品ラインアップの強化を図りました。
シニア向けカテゴリーでは、“アサヒのおいしい介護食”「バランス献立 やわらか食」シリーズとして『いわしのつみれ汁 白味噌仕立て』、『いわしと野菜の生姜煮』、『なめらかおかず 白身魚と野菜 クリーム煮』を発売し、メニューの充実を図りました。
サプリメントカテゴリーでは、「ディアナチュラ」ブランドから、27種の成分がまとめて摂れるプロテインパウダーとして『ディアナチュラアクティブ ホエイ+ソイプロテイン グレープフルーツ味』を発売しました。また、同ブランドの機能性表示食品である「ディアナチュラゴールド」シリーズから、尿酸値高め(尿酸値7.0以上)の男性をターゲットに、毎日飲み続けやすい錠剤タイプの商品として『ディアナチュラゴールド アンセリン』(30日分)を発売しました。
スキンケア化粧品カテゴリーでは、「素肌しずく」ブランドより、セルフ化粧品市場に向けた大容量のポンプタイプ商品『素肌しずく 保湿化粧水』、『素肌しずく 保湿ゲル』の2品を発売しました。
また、大人のための栄養サポート食品として『カラダ届くミルク(300g・140g)』を全国発売し、アサヒグループ食品初となる大人用粉ミルク商品としての認知拡大とさらなる市場活性化を図りました。
健康食品の通信販売等を手掛けるアサヒカルピスウェルネス㈱では、アサヒグループ独自の「菌のチカラ」を活用したサプリメントを展開しており、本年もラインナップの拡充を図りました。その一つは「枯草菌C-3102株」(納豆菌と同種に分類されます)を配合した「骨こつケア」であり、日本で初めて「骨密度」を訴求した機能性表示食品として発売しました。また「毎日の健康的な歩みをサポートする乳酸菌」として新たに開発された「ラクトバチルス・カルバタス CP2998株」の菌体の量産化を図り、本株を配合した「ロコトモ」を発売しました。今後も独自の素材や技術を活用し、お客様の健康的な暮らしを応援する商品の開発に取り組んでまいります。
※1:アマノフーズが展開するWebマガジン https://amanoshokudo.jp/
(技術開発関連)
当社では、だしや食材の旨味を生かした味作りの技術が非常に評価され、日常の食事から介護食まで幅広くお使いいただける食べやすさに配慮した食品「バランス献立」(やわらか食)シリーズが[商品・技術部門]において第49回食品産業技術功労賞を受賞しました。
[先端研究]
(健康素材)
アサヒクオリティーアンドイノベーションズ㈱では、アサヒグループの先端研究の拠点として、グローカルな独自価値創造の源泉となることを長期ビジョンに掲げ、研究開発を推進しています。その中で、酵母・乳酸菌などの微生物活用技術や、健康食品の開発で培った機能性評価技術を活かして、健康に役立つ新たな素材の開発を行うとともに、微生物による発酵技術の展開、目的物質を量産的に高生産するための培養制御技術開発に取り組んでいます。
具体的には、カルピス酸乳に含まれる「ラクトノナデカペプチド(LNDP)」に認知機能のひとつである記憶力・注意力の維持に加え、計算作業・視覚情報作業の効率を維持する機能を見出しました。これらは、アサヒグループの様々なブランドに機能性表示食品として活用されています。また、すでに心理的ストレスを和らげ、睡眠の質(眠りの深さ)を高めることを見出した乳酸菌CP2305株に、長距離走などによる心身の疲労軽減効果があることも見出し、論文発表しました。乳酸菌CP2998株には、高齢者の歩行機能向上効果があることも確認し、論文発表しています。今後も微生物研究、発酵技術の活用を通じて、お客様の健康維持に貢献してまいります。
(開発イノベーション)
中長期にわたるコア研究を支えるべく、最先端の解析技術プラットフォームの構築を行っています。iPS細胞技術なども積極的に取り入れながら、化学領域、微生物領域、生化学領域の各領域に対して早急に解析技術の体制構築を行ってまいります。
最新のAI技術やVR技術に関する研究開発にも取り組んでいます。AIを活用した原料の自動検査や乳酸菌素材の製造効率化、VRを活用したマーケティング手段の革新など、最先端のIT技術による業務の効率化や高度化に挑戦していきます。
従来から万全を期している食の安全については、マイクロプラスチックの検出技術など、常に最新のリスクに対応するべく技術開発を行っています。また、海外事業会社のビール・飲料工場において国内工場と同等レベルの品質管理を実現できる様に技術支援を行うと共に、グループ各社の品質保証部門と連携した品質保証体制の充実を図っております。
(環境価値創出)
アサヒクオリティーアンドイノベーションズ㈱では、2018年11月に受賞した日経地球環境技術賞の優秀賞「ビール工場排水を利用した燃料電池(SOFC)による連続発電」に対して、社会実用可能と判断できる10,000時間連続発電を成功させ、環境省補助事業のもと、CO2排出ゼロの燃料電池発電設備を建設しており、年内に稼働予定としています。また、2019年6月にアサヒビール茨城工場に、再生可能エネルギー(太陽光)由来の電力を用いて水素を製造・貯蔵し、その水素を用いた燃料電池で電力を得る装置を導入し、試験稼働を開始しました。2019年12月末には、敷地内にボイラーの排ガスからCO2を回収する試験設備を設置し、現在、その性能を評価しております。回収CO2は大気に放出されず、CO2排出量の削減に繋がります。今後は、この回収された炭酸ガスの用途・技術開発にも着手する予定です。また、昨今のプラスチックの環境に与える負荷課題を踏まえて、リサイクル素材やバイオ由来素材の実用化にも取り組んでいます。これらの取り組みを通じ、環境負荷低減技術と事業収益向上の両立や持続的な価値向上サイクルの実現に貢献してまいります。
(新規事業)
時代の変化に対応した独自のポジション・ポートフォリオを確立するために、独自技術の発展に加え、将来の新規事業となり得るベンチャー企業への投資や協業を通じ、オープンイノベーションにも力を入れています。従来のバリューチェーンを脅かす可能性のある分野や、グループ事業におけるシナジー効果が期待できる分野、また環境価値創出など社会課題の解決につながる分野を中心に、積極的な先行投資を行っています。具体的には、コーヒー副産物の成分が農作物の凍霜害を防止することを見出した知見をもとに、ベンチャー企業と提携し、凍霜害防止剤の事業化を推進しています。この取組みにより、グループ内の飲料工場から排出されるコーヒー副産物を有効活用しながら、安定的な農作物収穫に貢献します。また、食品業界で先駆的に導入していたComputer Aided Engineering(CAE)技術の経験を蓄積させつつ、グループ内に留まらない技術の事業化も検証しています。これらの活動を通じて、非連続な成長を遂げるためのイノベーション創出を推進してまいります。