有価証券報告書-第96期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/26 10:20
【資料】
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【項目】
96項目

対処すべき課題

「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年1月31日内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(30)の規定を当事業年度に係る有価証券報告書から適用しております。
文中には、中期経営方針等に関する様々な業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報が開示されています。これらの業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報は、将来の事象についての現時点における仮定及び予想、並びにアサヒグループが現在入手可能な情報や一定の前提に基づいているため、今後様々な要因により変化を余儀なくされるものであり、これらの予想や目標の達成及び将来の業績を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
アサヒグループは、純粋持株会社であるアサヒグループホールディングス株式会社のもと、酒類、飲料、食品事業をグローバルに展開しています。
2019年より、グループ理念「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、持続的な成長と中期的な企業価値の向上を目指しています。AGPは、Mission、Vision、Values、Principlesで構成され、グループの使命やありたい姿に加え、受け継がれてきた大切にする価値観とステークホルダーに対する行動指針・約束を掲げています。国内外の事業会社は、AGPに基づいた戦略を策定、実行していくことにより、グループ一丸となって企業価値の向上に努めていきます。
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(2)中長期的な経営戦略
AGPに基づいて更新した「中期経営方針」では、3年程度先を想定した「主要指標のガイドライン」や「財務、キャッシュ・フローのガイドライン」を示しつつ、以下の3つの重点課題を設定し、“グローカルな価値創造経営”を推進します。
① 高付加価値化や収益構造改革による『稼ぐ力の強化』
・国内外での高付加価値ブランドの育成とクロスセル※1の拡大などによる売上成長
・ZBB(ゼロベース予算)の導入や調達体制の最適化などによる収益構造改革
(ZBBを含む収益構造改革の効率化効果(2019年~2021年累計)は300億円以上を目指す)
・ROIC※2を活用した事業管理、キャッシュ・フロー最大化などによる資産・資本効率の向上
② 新たな成長源泉の拡大に向けた『経営資源の高度化』
・イノベーション、ディスラプション※3を実現する風土改革、無形資産(研究開発・人材力等)への投資
・既存事業を補完するボルトオン型M&Aや競合・異業種とのアライアンスの拡大
・デジタルトランスフォーメーションによる構造改革、ビジネスモデルの進化
③ 持続的な価値創造プロセスを支える『ESGへの取組み深化』
・「環境ビジョン2050」の設定、強みを活かした価値創造によるサステナビリティの向上
・グローカルタレントマネジメントやダイバーシティの推進、人権マネジメント体制の構築
・リスクマネジメントの高度化やグループ・グローバル成長を支えるガバナンス改革
こうした3つの重点課題をエンゲージメント・アジェンダ(建設的な対話の議題)としてステークホルダーとの対話を深め、持続的な成長と中期的な企業価値の向上を目指します。
※1 当社グループの各国の商品を他の国・地域で販売する施策のことを指します。
※2 税引後事業利益を投下資本で除すことで求められる指標(投下資本利益率)のことを指します。
※3 デジタル技術等の活用により既存市場を破壊(ディスラプト)し、新たな市場を創造することを指します。
(3)目標とする経営指標
「中期経営方針」における主要指標のガイドラインは、事業利益及びEPS(基本的1株当たり当期利益※1)のCAGR(年平均成長率)で一桁台半ばから後半の成長を目指すとともに、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率※2)で13%以上の水準の維持を図ることを、主な経営指標の目標としています。
財務、キャッシュ・フロー方針のガイドラインとしては、フリー・キャッシュ・フローは年平均1,700億円以上を目指し、これを原資としてM&Aなどの成長投資を優先しつつ、投資余力を高める債務削減を推進していきます(大きな投資案件がない場合は、Net debt/EBITDAは、2021年までには2倍以下に低下する見込み)。株主還元については、2021年までに、配当性向を35%(※2)に引き上げていく方針です(将来的な配当性向は40%を目指す)。
(※1)算出する際の「親会社の所有者に帰属する当期利益」は、事業ポートフォリオの再構築など一時的な特殊要因を除くベース
(※2)算出する際の「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」は、事業ポートフォリオの再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除くベース
当社は、Anheuser-Busch InBev SA/NVグループが豪州で保有するビール・サイダー事業(以下、「CUB事業」といいます。)の取得(以下、「CUB事業の買収取引」といいます。)についてAnheuser-Busch InBev SA/NV社と合意に達し、2019年7月19日付で、株式売買契約を締結しておりますが、CUB事業の買収取引は豪州競争法当局等の豪州の関連政府機関の承認等の売買実行のための先行条件の充足が前提となり、本書作成時点においては、CUB事業の買収取引のクロージングの実行は2020年第2四半期中を予定しています。また、CUB事業の取得に関連し、資本調達を含めたファイナンス・プランを検討していますが、前述の「中期経営方針」のガイドライン及び重点課題の内容は、CUB事業の取得及びそれに伴う資金調達による影響を考慮しておりません。当社は、CUB事業の買収取引のクロージングの実行後、これらの影響を考慮の上、中期経営方針等の見直しを予定しております。
(4)対処すべき課題
今後の外部環境としては、世界経済全体の不確実性が増しているものの、グローバルな消費構造の多価値化やプレミアム化の進展に加えて、国内では東京オリンピック・パラリンピックの開催や酒税の改正などにより、多様なチャンスとリスクが拡大することが想定されます。また、価値創造プロセスを支えるESGに対しても、ますますその取組みを深化させていくことが求められています。
そのような状況の中、アサヒグループは、『稼ぐ力の強化』においては、国内では『アサヒスーパードライ』など主力ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、最適生産物流体制の構築など収益構造改革に継続して取り組みます。海外では、国際ビール事業を再編し、グローバルとローカルの各市場に注力できる体制に移行するなど、更なるグローバルプレミアムブランドを強化するとともに、ローカル市場での成長基盤を拡大していきます。
『経営資源の高度化』においては、2019年7月にAnheuser-Busch InBev SA/NVと株式売買契約を締結したオーストラリアのビール・サイダー事業を行うCUB Pty Ltdなどの取得成立を目指し、日本、欧州、オセアニアの3極を核としたグローバルプラットフォームの構築を推進します。また、イノベーションやディスラプションを実現するための風土改革、無形資産(研究開発・人材力等)への投資も強化していきます。
『ESGへの取組み深化』においては、環境、人権、アルコール関連問題に加え、アサヒグループの強みを活かした価値創造を軸に持続可能な社会の形成を目指していきます。また、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)やリスクアペタイトの効果的な運用※1により、適切なリスク管理とリスクテイクを推進していきます。
※1 エンタープライズリスクマネジメント(ERM)及びリスクアペタイトの詳細は、「2 事業等のリスク 1.アサヒグループのリスクマネジメント体制及び2.アサヒグループ リスクアペタイト」に記載しています。