有価証券報告書-第91期(平成26年1月1日-平成26年12月31日)

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2015/03/27 11:52
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対処すべき課題

「アサヒグループホールディングス株式会社」は、厳しさを増す経営環境の変化やステークホルダーのニーズの多様化などに対応するために「長期ビジョン2020」と、その実現に向けた3か年計画である「中期経営計画2015」を策定し、平成25年度から“バリュー&ネットワーク経営”を推進することにより、企業価値の向上を目指しています。“バリュー&ネットワーク経営”では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークを更に拡大することで、長期安定的な成長を図ります。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などによって資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上にグループ全体で取り組んでいきます。
当社は、株主や投資家の皆様、消費者の皆様をはじめとするステークホルダーの方々のご期待に応える企業活動を実現するために、アサヒグループのコーポレート・ガバナンスの充実を経営の最優先課題と考え、グループ経営の強化、社会との信頼関係の強化、企業の社会性・透明性の向上に積極的に取り組んでいます。また、本年6月には、国内の取引所に上場する会社を対象とする「コーポレートガバナンス・コード」の適用が予定されております。
当社は、本コードを適切に実践し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることで、ステークホルダーの方々、ひいては経済全体の発展にも寄与するという考え方に賛同し、以下のとおり取り組んでいきます。
・ 株主総会招集ご通知の早期発送や資本政策の開示など、株主様の権利が実質的かつ平等に確保されるよう、引き続き適切な対応を行うとともに、その権利を適切に行使することができる環境の整備を進めます。
・ 持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、ステークホルダーの方々のご支援によるものであることを認識し、社会のサスティナビリティを巡る問題や多様性を取り込んだ組織運営などにおいて、取締役会・経営陣はリーダーシップを発揮し、ステークホルダーの方々との適切な協働に努めます。
・ 財政状態・経営成績などの財務情報のみならず、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報などの非財務情報についても、決算説明会やインターネットによる情報開示などにより、分かりやすく有用性が高い情報提供に積極的に取り組みます。
・ 取締役会は、株主の皆様への受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に取り組み、収益力・資本効率などの改善を進めます。また、独立社外取締役を含めて経営能力を向上させ、適切にその役割・責務を果たします。
・ 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを車の両輪として、IR(インベスター・リレーションズ)・SR(シェアホルダー・リレーションズ)活動や株主様工場見学会などを継続して実施することにより、株主や投資家の皆様との間で建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)を推進します。
[酒類事業]
(アサヒビール株式会社)
「アサヒビール株式会社」は、多様な価値観やライフスタイルの広がりがますます進むことが予測されるなか、「総合酒類提案を通じて“最強のパートナー企業”を目指す!」をスローガンに、「夏場依存」からの脱却と「“コト”消費の創出」による需要拡大などに取り組み、「お客様のうまい!」に向けた活動を積極化します。
ビール類については、主力ブランドの強化とともに、イベントや催事に合わせたマーケティング活動の強化に取り組みます。『アサヒスーパードライ』では時間の経過による味の変化を抑制する「新・仕込み技術」を導入することで、「飲みごたえ」と「キレ」の向上を図り、更に味を「進化」させます。また、期間限定商品『アサヒスーパードライ エクストラシャープ』の発売や『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』の更なる販売強化など、より一層のブランド価値の向上に努めていきます。さらに、健康意識の高まりを背景に“糖質ゼロ”の発泡酒『アサヒスタイルフリー』の“プリン体ゼロ”の派生商品や新ジャンル『クリアアサヒ 糖質0(ゼロ)』を発売するなど、多様なニーズに対応した商品ラインアップの拡充を図ります。これらの取組みにより、ビール類において3年連続で前年を上回る販売数量を目指していきます。
ビール類以外の酒類については、各カテゴリーにおいて中核ブランドの育成と強化を図ります。洋酒では、「ニッカウヰスキー株式会社」の創業者の名前を冠した『竹鶴』の情報発信を中心に、『ブラックニッカ フリージングハイボール』の展開や復刻版の商品の発売など、積極的なマーケティング活動を展開していきます。また、「Brown-Forman Corporation」の『ジャック ダニエル』『アーリータイムズ』などの商品情報を積極的に発信することで、主力ブランドの認知度の向上に努めます。また、ワインでは、輸入デイリーワイン『サンタ・ヘレナ アルパカ』を中心に販売促進活動を強化していきます。
アルコールテイスト清涼飲料については、“糖質ゼロ”“カロリーゼロ”のビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』ブランドで“プリン体ゼロ”を実現した『アサヒドライゼロフリー』を発売するなど、市場における存在感を高めていきます。
また、缶蓋の変更による原材料コストの削減や減価償却費を中心とした固定費全般の効率化などにより、盤石な収益構造の確立を図ります。
[飲料事業]
(アサヒ飲料株式会社)
「アサヒ飲料株式会社」は、「ブランド強化を軸にした売上成長」と「より強靭な収益構造の確立」に取り組み、柔軟かつスピーディーな改革を推進し、更なる飛躍を目指します。
成長戦略の根幹をなす商品戦略として、既存商品の販売促進活動の強化や新商品の発売など、主力ブランドにマーケティング投資を集中することに加えて、新たな定番商品の育成を図ります。また、おいしさ価値の深化と健康価値を付加した商品の展開を通じて、更なるブランド価値の向上を図ることにより、市場における存在感を高めていきます。自動販売機の事業においては、売上の増加と合わせて資産の効率的な運用を進めて、安定した業績の確立に努めます。
さらに、操業度の向上による自社工場の生産性の向上やグループ購買の推進のほか、「カルピス株式会社」との最適生産物流体制の構築により、一層の収益構造の改革を推進いたします。
(株式会社エルビー)
「株式会社エルビー」は、新価値を提案する商品開発力の強化と販路の拡大、生産・物流コストの効率化により、成長戦略と収益構造改革の実現を目指します。
『カルピス』ブランドを中心にアサヒグループのブランドを活用した商品の積極的な展開などによる新価値の提案に加え、新規取引先獲得のための営業を強化することで売上の拡大を図ります。
また、需給調整能力の向上やグループ購買の推進による生産コストの低減など、収益構造の改革を進めます。
[食品事業]
(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社)
「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」は、「着実で健全な成長」「お客様の変化に対応できる組織・基盤の整備」「企業ブランド向上と風土改革」に取り組み、お客様の支持を得て成長する企業への発展を目指します。
タブレット菓子『ミンティア』ブランドの既存商品の強化や新商品の発売のほか、サプリメント『ディアナチュラ』における販売促進活動などの展開や、指定医薬部外品『エビオス錠』でパウチタイプの新商品を発売することなどにより、売上の拡大に努めます。
また、最適需給体制の構築による在庫の適正化や生産性の向上に取り組むことで、収益構造の強化を図ります。
(和光堂株式会社)
「和光堂株式会社」は、既存事業において生産性・収益性を高めるとともに、成長分野と位置づける高齢者向け事業や海外事業の育成を強化します。
容器入りベビーフード『栄養マルシェ』のリニューアルや簡単合わせ調味料『おやこdeごはん』の商品ラインアップの拡充に取り組むとともに、高齢者向け事業における営業活動を強化し、売上の拡大を図ります。
さらに、省エネ設備の導入による生産性の向上や原材料のコストダウンなどにより、収益性の向上に努めます。
(天野実業株式会社)
「天野実業株式会社」は、「食品市場における存在感の向上」「収益構造の改革」「お客様の生活を豊かにする創造企業」を基本方針として取り組んでいきます。
流通販売事業においては、主力のフリーズドライ味噌汁『いつものおみそ汁』や、『にゅうめん』の積極的な販売促進活動を展開します。通信販売事業では、新規顧客の獲得に向けた通信販売専用の商品の展開などにより、売上の拡大を目指します。
また、グループ購買の推進による原材料のコストダウンや、最適生産体制の整備などにより収益性の強化に努めます。
[国際事業]
(オセアニア事業)
オセアニア事業については、地域統括会社である「Asahi Holdings (Australia) Pty Ltd」を中心に、各地域事業会社の主力ブランドの育成や成長分野におけるマーケティング投資に加えて、生産・物流拠点の統合や組織統合シナジーの最大化などにより、飲料・酒類をあわせた総合飲料事業としての成長を目指します。
飲料事業では、成長カテゴリーにおける新商品の展開や健康志向へのニーズに対応した炭酸飲料の糖分カット商品の販売強化などにより、飲料市場全体における存在感を高め、売上の拡大を図ります。酒類事業では、主力の低アルコール飲料やサイダー(りんご酒)、『アサヒスーパードライ』に集中したマーケティング活動を通じて、持続的な成長を目指します。
さらに、引き続き最適な生産・物流体制の構築に向けた取組みを強化するとともに、組織統合による原材料の共同調達や間接部門の合理化などを推進し、更なるシナジーの創出を追求していくことで安定的かつ盤石な収益基盤を確立します。
(東南アジア事業)
東南アジア事業については、主力商品を中心にブランド力を強化するとともに、生産体制の整備を推進し、競争力のある収益構造を確立していくことで、成長基盤の構築を図ります。
マレーシアでは、4月に予定されている物品・サービス税の導入による厳しい経済環境を想定し、「Permanis Sdn. Bhd.」において、果汁飲料『Tropicana』や炭酸飲料『Mountain Dew』など主力ブランドを強化するほか、『ワンダ』のブランド力を高めるため、テレビCMやサンプリングなどの積極的なマーケティング活動を行い、売上の拡大を図ります。また、配送方法の見直しによる物流コストの効率化や原材料コストの削減に努め、収益性を高めていきます。「Etika」グループにおいては、主力のコンデンスミルク事業で業務用市場での販売を強化するとともに、成長著しいフレッシュミルク事業では販路の拡大に取り組みます。また、機能性を付加した容器の展開や生産工程の見直しによる生産性向上などにより、収益基盤の拡大を目指します。
インドネシアでは、「PT Indofood CBP Sukses Makmur Tbk」との合弁会社において、既存商品のブランド力の強化と新商品の投入などにより、市場における存在感を高めていくとともに、『Pepsi』や『Club』ブランドにおける販売促進活動を強化していきます。また、安定した生産体制を構築することでコスト競争力を向上させ、事業基盤の強化を図ります。
(中国事業)
中国事業については、プレミアムビール市場での『アサヒ』ブランドの地位向上を図るとともに、生産拠点における品質の向上と収益性の改善を目指します。
最重点市場の上海エリアを中心に、引き続き業態別営業体制による専門性の高い営業活動を推進していきます。業務用の営業において、中華料理店や韓国などの外国料理店での新たな取扱店の獲得を目指すとともに、インターネット通信販売の取扱い拡大や量販店での地位向上を通じて、売上の拡大を図っていきます。
また、現地生産拠点において、製造品種の最適化による生産性の向上を図るとともに、原材料コストやエネルギーコストの削減などに取り組むことで、安定した収益基盤を構築していきます。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号本文に規定される事項)を定めており、その内容等は次の通りであります。
①基本方針の内容
当社では、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者とは、アサヒグループの企業価値の源泉である“魅力ある商品づくり”“品質・ものづくりへのこだわり”“お客様へ感動をお届けする活動”や有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、その他アサヒグループの企業価値を構成する事項等、さまざまな事項を適切に把握したうえで、当社が企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者でなければならないと考えています。
当社は、当社株式について大量買付がなされる場合、当社取締役会の賛同を得ずに行われる、いわゆる「敵対的買収」であっても、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。また、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。
しかしながら、株式の大量買付のなかには、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買収者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買収者との交渉を必要とするものなど、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
このように当社株式の大量買付を行う者が、アサヒグループの企業価値の源泉を理解し、中長期的に確保し、向上させられる者でなければ、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益は毀損されることになります。
そこで当社は、このような大量買付に対しては、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益を守る必要があると考えます。
②基本方針実現のための取組み
(a) 基本方針の実現に資する特別な取組み
当社では、「『食の感動(おいしさ・喜び・新しさ)』を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す」ことを掲げた「長期ビジョン2020」を策定するとともに、その実現に向け “バリュー&ネットワーク経営” を推進することによる企業価値の向上を目指した3か年計画として「中期経営計画2015」の取組みをグループ全体で開始いたしました。
この「中期経営計画2015」では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークを更に拡大することで、長期安定的な成長を図ります。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などによって資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上に取り組んでいます。
「長期ビジョン2020」の達成に向けた「中期経営計画2015」をグループ全体で着実に実行していくことが、アサヒグループとステークホルダーとの信頼関係を一層強固に築き上げ、企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上につながるものであると考えております。
なお、当社は、前記の諸施策のため、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を図っています。
当社においては、平成12年3月30日に執行役員制度を導入したことにより、経営の意思決定と業務執行機能を分離し、業務の迅速な執行を図るとともに、取締役会における監督機能の強化に努めてまいりました。これに加え、3名の社外取締役と3名の社外監査役を、東京証券取引所の定める独立役員として指定し、同取引所に届け出ております。
また、当社取締役会の諮問機関であり社外取締役も委員となっている「指名委員会」及び「報酬委員会」の設置により、社外役員によるチェックが機能しやすい体制としております。
さらに、株主の皆様に対する経営陣の責任をより一層明確にするため、平成19年3月27日開催の第83回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮いたしました。
平成23年7月1日には純粋持株会社制へ移行することで、各事業部門の権限と責任の明確化や専門性の追求により事業基盤の強化を図るとともに、企業価値の向上を目指した国内外の事業ネットワークの拡大を推進いたしました。
(b) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、大量取得行為を行おうとする者に対しては、大量取得行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努めるなど、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。
③具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
② (a)に記載した各取組みは、①に記載した基本方針に従い、当社をはじめとするアサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益に沿うものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。