有価証券報告書-第90期(平成25年1月1日-平成25年12月31日)

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2014/03/27 9:06
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【項目】
139項目

対処すべき課題

「アサヒグループホールディングス株式会社」は、厳しさを増す経営環境の変化やステークホルダーのニーズの多様化などに対応するために「長期ビジョン2020」と、その実現に向けた3か年計画である「中期経営計画2015」を策定し、平成25年度から“バリュー&ネットワーク経営”を推進することにより、企業価値の向上を目指しています。
“バリュー&ネットワーク経営”では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークを更に拡大することで、長期安定的な成長を図ります。
また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などによって資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上にグループ全体で取り組んでいきます。
[酒類事業]
(アサヒビール株式会社)
「アサヒビール株式会社」は、消費税率の引上げにより消費者の購買行動に大きな変化が予測されるなか、お客様の潜在的なニーズや市場のトレンドを的確に捉えたブランド育成、商品づくりに取り組み、お客様に「選択される」企業を目指します。
ビール類については、主力ブランドの強化に取り組みます。高度なビール酵母の管理技術の導入により『アサヒスーパードライ』の味を更に“進化”させ、昨年ギフト限定で発売した『アサヒスーパードライ ドライプレミアム』の本格展開や『アサヒスーパードライ-ドライブラック-』のリニューアルなどを通じて、『アサヒスーパードライ』の一層のブランド価値向上を目指します。また、新ジャンルでは『クリアアサヒ』と『クリアアサヒ プライムリッチ』を刷新し、販売数量の拡大を目指します。さらに、“糖質ゼロ”発泡酒のパイオニア『アサヒスタイルフリー』においては、商品特長を訴求した販売促進活動を実施することで市場での存在感を高めていきます。
ビール類以外の酒類については、各カテゴリーにおいて中核ブランドの育成と強化を図ります。特に洋酒において、創業80周年を迎える「ニッカウヰスキー株式会社」の『竹鶴』『ブラックニッカ クリア』や「Brown-Forman Corporation」の『ジャック ダニエル』『アーリータイムズ』などの商品情報を積極的に発信することで、ブランドの認知度の向上に努めます。
アルコールテイスト清涼飲料については、昨年リニューアルしたビールテイスト清涼飲料『アサヒドライゼロ』において、引き続き店頭や街頭を中心としたサンプリング活動を実施し、市場における存在感を高めていきます。
また、缶蓋や段ボールなどの包装資材のコスト低減やグループ物流網の活用を進め、収益構造の改革に取り組みます。
[飲料事業]
(アサヒ飲料株式会社)
「アサヒ飲料株式会社」は、「確固たるブランドの育成」と「強靭な収益構造の確立」に取り組むことで、事業基盤の更なる強化を図ります。
『三ツ矢』『ワンダ』『アサヒ十六茶』『アサヒおいしい水』『ウィルキンソン』と『カルピス』の磐石化に向けたブランド強化及び新ブランドの育成・新商品の展開に取り組みます。また、自動販売機の事業では、効率化を踏まえた1台当たりの売上の増加により、安定した業績の確立に努めます。
さらに、最適な生産・物流体制や広告販促費の効率化を推進し、「カルピス株式会社」から移管・統合した国内飲料事業とのシナジーの早期創出に努めることで、収益構造の改革を進めます。
(株式会社エルビー)
「株式会社エルビー」は、主力のお茶・清涼飲料カテゴリーにおける商品開発などを通じて、新鮮さ・おいしさといったチルド飲料ならではの付加価値をお客様に提案していきます。
『カルピス』『バヤリース』を中心にグループのブランドを活用した商品を引き続き積極的に展開することに加え、量販店での取組みを強化することで売上の拡大を図ります。
また、需給調整能力の高度化やグループ購買の更なる推進による製造費の削減を行い、収益構造の改革を目指します。
[食品事業]
(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社)
「アサヒフードアンドヘルスケア株式会社」は、「着実で健全な成長」「お客様の変化に対応できる組織・基盤の整備」「企業ブランド向上と風土改革」に取り組み、競合他社にない独自の強みをつくりだすことで、成長と収益性を実現します。
ミント系錠菓『ミンティア』の新商品の発売やサプリメント『ディアナチュラ』のラインアップの充実により昨年の成長を加速させ、売上を拡大していきます。また、業務用の調味料事業では、国内において取引先との取組みを強化し主要商品の売上を拡大させる一方、海外においてはマーケティングや営業の体制を整備していきます。
さらに、高い競争力をもつ商品を開発するため、研究開発体制の強化を図ります。
(和光堂株式会社)
「和光堂株式会社」は、既存事業における収益性を高めるとともに、成長分野において次の柱となる事業の育成を目指します。
国内トップシェアのベビーフードでは、レトルトパウチの『グーグーキッチン』から野菜をメインにした新たな付加価値商品を発売し、市場の活性化を図ります。
また、生産体制の最適化による固定費の削減やグループ購買などによる原材料費の削減に努めます。
(天野実業株式会社)
「天野実業株式会社」は、「食品市場における存在感の向上」「収益構造の改革」「お客様の生活を豊かにする創造企業」を基本方針として取り組んでいきます。
流通販売事業では、主力のフリーズドライ味噌汁において様々な価格帯で商品を展開するなどラインアップの拡充を図ります。通信販売事業では、通信販売専用の商品の販売に注力していくことで、新規顧客の獲得を目指します。
さらに、製造工程の一部を内製化することにより生産性の向上を図るとともに、商品の開発段階からのコストダウンに取り組みます。
[国際事業]
(オセアニア事業)
オセアニア事業については、地域統括会社である「Asahi Holdings (Australia) Pty Ltd」を中心に、各地域事業会社の主力ブランドの育成や成長分野における事業展開に加え、事業会社間のコストシナジーの創出などにより、飲料・酒類をあわせた総合飲料事業としての成長を目指します。
飲料事業では、成長カテゴリーにおける新商品の展開や既存の炭酸飲料の糖分カットなどにより、飲料市場全体における存在感を高め、売上の拡大を図ります。酒類事業では、主力の低アルコール飲料の磐石化を進めると同時に、『アサヒスーパードライ』をはじめとする輸入ビールやサイダー(りんご酒)などの成長分野への積極的なマーケティング活動を通じて、強固かつ持続的な事業基盤を確立します。
さらに、引き続き最適な生産・物流体制の構築に加え、原材料の共同調達や間接部門の機能の最適化など事業全体におけるシナジーの創出を追求し、安定的な収益基盤を実現します。
(中国事業)
中国事業については、『アサヒ』ブランドの売上拡大による市場での地位向上を図るとともに、生産拠点の集約化を更に進めることで、品質の向上と収益性の改善を目指します。
最重点市場の上海エリアを中心に、昨年新たに編成した業態別営業体制による専門性の高い営業活動を継続していきます。業務用の営業では、日本料理店における新規取扱店の獲得に加え、外国料理店における樽生ビールの取扱店の拡大を推進します。量販店の営業では、チェーン・店舗別での管理を進め、販売促進計画に基づく提案型営業活動の強化を図ります。
また、現地生産拠点において、麦芽などの原材料費やエネルギーコストの削減など製造原価の低減に取り組むことで、中国事業の収益基盤を支えていきます。
(東南アジア事業)
東南アジア事業については、「Permanis Sdn. Bhd.」における主力ブランドの強化による売上の増加に加え、インドネシアにおける飲料事業の事業基盤を構築していくことで、東南アジアの事業ネットワークの拡大を図ります。
マレーシアでは、平成27年に予定されている物品・サービス税の導入により厳しい経済環境が想定されることを見据え、「Permanis Sdn. Bhd.」において、当社との共同開発により昨年発売した『ワンダ』の商品力を高める活動をテレビCMやサンプリングなどを通じて実施するとともに、炭酸飲料『Mountain Dew』など主力ブランドの強化を図り、売上の拡大を推進いたします。また、缶蓋やペットボトルの軽量化による原材料費の削減に加え、配送ルートの適正化による物流費の削減に努めます。
インドネシアでは、「PT. Indofood CBP Sukses Makmur Tbk」との合弁会社において、昨年発売した『ICHI OCHA GREEN TEA』の認知度向上を図ることや、コーヒーなどの新たなカテゴリーでの商品を発売することで、市場における存在感を高めていきます。また、自社工場の稼動による生産体制の整備を進め、コスト競争力を確保していきます。さらに、『Pepsi』ブランドの販売を強化し、『Club』ブランドのミネラルウォーター事業の基盤を活用することで、インドネシアにおける効率的な事業運営体制の確立を図ります。
なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号本文に規定される事項)を定めており、その内容等は次の通りであります。
①基本方針の内容
当社では、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者とは、アサヒグループの企業価値の源泉である“魅力ある商品づくり”“品質・ものづくりへのこだわり”“お客様へ感動をお届けする活動”や有形無形の経営資源、将来を見据えた施策の潜在的効果、その他アサヒグループの企業価値を構成する事項等、さまざまな事項を適切に把握したうえで、当社が企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者でなければならないと考えています。
当社は、当社株式について大量買付がなされる場合、当社取締役会の賛同を得ずに行われる、いわゆる「敵対的買収」であっても、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。また、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。
しかしながら、株式の大量買付のなかには、その目的等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買収者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買収者との交渉を必要とするものなど、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
このように当社株式の大量買付を行う者が、アサヒグループの企業価値の源泉を理解し、中長期的に確保し、向上させられる者でなければ、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益は毀損されることになります。
そこで当社は、このような大量買付に対しては、アサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益を守る必要があると考えます。
②基本方針実現のための取組み
(a) 基本方針の実現に資する特別な取組み
当社では、「『食の感動(おいしさ・喜び・新しさ)』を通じて、世界で信頼される企業グループを目指す」ことを掲げた「長期ビジョン2020」を策定するとともに、その実現に向け “バリュー&ネットワーク経営” を推進することによる企業価値の向上を目指した3か年計画として「中期経営計画2015」の取組みをグループ全体で開始いたしました。
この「中期経営計画2015」では、これまで育成・獲得してきたブランド・技術・コスト競争力などの「強み」への集中やそれを活かした新たな価値創造・革新に加え、国内外のネットワークを更に拡大することで、長期安定的な成長を図ります。また、売上と利益の成長を最優先に、株主還元の充実などによって資本効率を高めることで、重要業績評価指標であるROE(自己資本利益率)とEPS(1株当たり当期純利益)の持続的な向上に取り組んでいます。
「長期ビジョン2020」の達成に向けた「中期経営計画2015」をグループ全体で着実に実行していくことが、アサヒグループとステークホルダーとの信頼関係を一層強固に築き上げ、企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上につながるものであると考えております。
なお、当社は、前記の諸施策のため、コーポレートガバナンスの更なる強化を図っています。
当社においては、平成12年3月30日に執行役員制度を導入したことにより、経営の意思決定と業務執行機能を分離し、業務の迅速な執行を図るとともに、取締役会における監督機能の強化に努めてまいりました。これに加え、3名の社外取締役と3名の社外監査役を、東京証券取引所の定める独立役員として指定し、同取引所に届け出ております。
また、当社取締役会の諮問機関であり社外取締役も委員となっている「指名委員会」及び「報酬委員会」の設置により、社外役員によるチェックが機能しやすい体制としております。
さらに、株主の皆様に対する経営陣の責任をより一層明確にするため、平成19年3月27日開催の第83回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮いたしました。
平成23年7月1日には純粋持株会社制へ移行することで、各事業部門の権限と責任の明確化や専門性の追求により事業基盤の強化を図るとともに、企業価値の向上を目指した国内外の事業ネットワークの拡大を推進いたしました。
(b) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、大量取得行為を行おうとする者に対しては、大量取得行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努めるなど、金融商品取引法、会社法その他関係法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。
③具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
② (a)に記載した各取組みは、①に記載した基本方針に従い、当社をはじめとするアサヒグループの企業価値ひいては株主共同の利益に沿うものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。