有価証券報告書-第94期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

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2018/03/28 11:28
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研究開発活動

アサヒグループでは、第6次中期経営計画の達成に向けて、酒類、飲料、食品の各事業において差別化された商品の開発、及びそのベースとなる技術開発を行っています。また、グループのコア研究領域である酵母、乳酸菌、フローラから、将来の各事業での革新的なファーストエントリー商品や新規事業創出につながる技術開発を進めています。更に、外部技術の活用により、研究開発の成果創出のスピードアップを図っています。
当年度におけるグループ全体の研究開発費は、11,665百万円です。そのうち酒類事業に係る研究開発費は3,641百万円、飲料事業に係る研究開発費は2,146百万円、食品事業に係る研究開発費は1,144百万円、国際事業に係る研究開発費は1,234百万円、その他の事業又は全社(共通)の研究開発費は3,497百万円です。
[酒類事業]
(商品開発関連)
アサヒビール㈱は、『アサヒスーパードライ』発売30周年を迎える本年に、特別限定醸造商品『アサヒスーパードライ エクストラハード』、『アサヒスーパードライ ジャパンスペシャル』、『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』、『アサヒスーパードライ みがき麦芽仕込み』を発売しました。『アサヒスーパードライ エクストラハード』は、醸造工程における発酵管理技術の向上などにより、「スーパードライ」史上最高の発酵度を実現し、“刺激的なキレ”とアルコール度5.5%の“力強い飲みごたえ”を楽しめるビールで、30周年にふさわしい新たな味わいを提案しました。
『アサヒスーパードライ ジャパンスペシャル』は、国産原料100%(※1)で醸造したギフト限定の商品で、“洗練されたクリアな味、辛口”といった『アサヒスーパードライ』ならではの特長はそのままに、新たに国産麦芽と希少な国産ホップに加え、厳選された国産高級米を採用しました。また、「うまさ澄み切り醸造」(※2)によって、雑味のないすっきりしたキレ味と飲みごたえを実現しました。『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』は、夏場のビール類の最盛期にうれしい冷涼感とキレ味をお楽しみいただける新しい価値を提案する商品で、ビールの苦味の後キレ向上に寄与する「イソコフムロン」(※3)の比率を一定に調整するホップ配合技術を用い、希少ホップ「ポラリス」の特長である冷涼感を最大限に引き出しました。『アサヒスーパードライ みがき麦芽仕込み』は、年末年始の“ハレの日”にふさわしい「こだわり」「華やかさ」「希少性」を提案する商品で、『スーパードライ』ならでは特長はそのままに、より雑味のないクリアな味わいを実現しました。世界生産量1%未満の希少ホップ「スロベニア産ボベック」を一部使用し、さらに麦芽粉砕技術や麦汁ろ過技術にみがきをかけた本商品独自の仕込み方法を採用しました。
クラフトビール市場においては、アサヒグループ本社ビルに隣接する飲食ビルを「隅田川パブブルワリー」に改装するとともに、クラフトビールの新ブランド『TOKYO隅田川ブルーイング』の基幹商品3品種『TOKYO隅田川ブルーイング ケルシュスタイル/香るヴァイツェン/ビタースタウト』を東京23区内の飲食店にて発売しました。
発泡酒市場においては、“糖質ゼロ(※4)”発泡酒のパイオニアである『アサヒスタイルフリー』をクオリティアップしました。今回のクオリティアップでは、ご好評をいただいている「すっきり爽やかなおいしさ」はそのままに、麦芽を増量し麦本来の味わいと飲みごたえを高めました。また、厳選したホップの配合を見直すことで、爽快な香りと膨らみのある余韻を感じられる中味に仕上げました。
新ジャンル市場においては、「クリアアサヒ」ブランド3商品『クリアアサヒ』、『クリアアサヒ プライムリッチ』、『クリアアサヒ 糖質0』をクオリティアップしました。『クリアアサヒ』は大麦を増量するなど原料の使用量を見直し、より麦のうまさを感じられるとともに、さらにキレが良くクリアな後味を実現しました。『クリアアサヒ プライムリッチ』は“国産ゴールデン麦芽増量”や“香り成分バランスの最適化”により、「プライムリッチ」の特長である“最高級のコク(※5)”と“最高級の香り(※6)”をさらに追求しました。『クリアアサヒ 糖質0』は、中味とパッケージを大幅に刷新し、『クリアアサヒ 贅沢ゼロ』として新発売しました。『クリアアサヒ 贅沢ゼロ』 は『クリアアサヒ 糖質0』と比較して麦の使用量を30倍に増やすとともに、国産ゴールデン麦芽を一部使用することにより、糖質ゼロでありながら麦由来の味わいをさらに高めました。 また、「クリアアサヒ」ブランドからは、期間限定商品として『クリアアサヒ 夏の涼味(すずみ)』、『クリアアサヒ 秋の膳』、『クリアアサヒ 吟醸』、『クリアアサヒ クリアブラック』を、東北エリア限定商品として『クリアアサヒ とれたての贅沢』をそれぞれ発売しました。また、ご好評をいただいている『アサヒ オフ』もクオリティアップを実施し、これまでの“プリン体0(※7)”“糖質0”“人工甘味料0”の3つの“0”はそのままに、おいしさを実現するために厳選した麦芽を増量することで、『アサヒ オフ』ならではの麦本来の味わいと飲みごたえがアップしました。
ビールテイスト清涼飲料市場においては、『アサヒドライゼロフリー』のクオリティアップを実施しました。『アサヒドライゼロフリー』はビールテイスト清涼飲料市場の中で、カロリーや糖質、プリン体などが気になるお客様により高い評価をいただいており、今回のクオリティアップでは、健康志向の高いお客様にとってさらに魅力あるブランドになることを目指しました。これまでの“カロリー0(※8)”“糖質0”“プリン体0.0”“アルコール0.00”に“人工甘味料0 ”を加えて「5つのゼロ」を実現しました。なお、“人工甘味料0”を実現するために天然甘味料の「ステビア(※9)」を新たに採用しました。
RTD(※10)市場においては、主力ブランド「アサヒもぎたて」の基幹4フレーバー『まるごと搾りレモン』、『まるごと搾りグレープフルーツ』、『まるごと搾りぶどう』、『まるごと搾りオレンジライム』のクオリティアップを実施しました。今回のクオリティアップでは、収穫後24時間以内搾汁果汁の使用はそのままに、各フレーバーに合わせて果汁や香味のバランスを見直すことにより、みずみずしい果実の味わいを強化しました。また、現行よりもガス圧を高めることで、よりすっきりとした後味を実現し、飲み飽きない味わいに仕上げました。独自技術である「アサヒフレッシュキープ製法」を進化させた、より低い温度帯での「超低温殺菌」を実現した「新⦅もぎたて⦆キープ製法」を採用することで、つくりたてのおいしさと活きた果実の味わいを高めました。また、5つ目の基幹フレーバーに『まるごと搾りシークァーサー』を加え、さらに期間限定フレーバーとして『手摘み青梅』、『ゴールデンパイン』、『手摘み洋梨』、『まるごと搾りりんご』、『まるごと搾りスウィーティー』、『宮崎産日向夏』をそれぞれ発売しました。また、近年、伸長を続けるRTDカテゴリーの高アルコール市場に向けて、『ウィルキンソン・ハード無糖ドライ』を発売しました。『ウィルキンソン・ハード無糖ドライ』は、ベースにジンを使用し、『ウィルキンソン タンサン』で仕上げた、炭酸強めで、“甘くない”、「無糖」の缶RTDです。レモンやライムなどの果皮をアルコール浸漬し、その浸漬酒をさらに減圧蒸溜した独自製法のスピリッツ(※11)を加えることで、しっかりとした飲みごたえと、香味バランスのとれた味わいを実現しました。さらに「ウィルキンソン・ハード」シリーズの第2弾として新フレーバー『無糖レモン』を発売し、第3弾として『無糖ライム』の発売を予定しています。その他、『アサヒSlat(すらっと)』、『アサヒチューハイ果実の瞬間』、『アサヒカクテルパートナー』、『カルピスサワー』などのRTD商品でリニューアル(クオリティアップ)や季節限定商品を発売しました。
サワーテイスト清涼飲料市場においては、「アサヒスタイルバランス」、「アサヒゼロカク」の一部をリニューアルし、『アサヒスタイルバランス香り華やぐハイボールテイスト』、『アサヒスタイルバランス素肌うるおうピーチスパークリング』を発売しました。
ワイン市場においては、『サントネージュ』、『サントネージュ 摘みたての贅沢(赤・白・濃厚黒ぶどう)』を発売しました。
焼酎市場においては、『本格芋焼酎 金黒』、『ニッカ・ザ・麦焼酎』を発売しました。
ウイスキー市場においては、ニッカウヰスキー社が製造する主力ブランド「ブラックニッカ」の数量限定商品として、『ブラックニッカ クロスオーバー』、『ブラックニッカ アロマティック』を発売しました。また、昨年「ブラックニッカ」発売60周年を記念して数量限定商品として販売した『ブラックニッカ ブレンダーズスピリット』を数量限定で再発売しました。
スピリッツ市場においては、国産スピリッツの新ブランド『ニッカ カフェジン』、『ニッカ カフェウオッカ』を発売しました。
※1:スターチは輸入トウモロコシから国内で製造した原料です。
※2:雑味の元となる濁りを少なくするよう麦汁の濁度を管理し、ろ過工程の厳格化によって雑味成分の多い部分を取込まないようにする技術。
※3:当社の研究開発部門が長年取組んでいるホップの研究によって明らかにした、ホップ中の苦味の後キレに寄与する成分。
※4:栄養表示基準による。以下同じ。
※5:発泡酒をベースとした当社「リキュール(発泡性)①」(限定商品を除く)における原麦汁エキス濃度の比較において。
※6:発泡酒をベースとした当社「リキュール(発泡性)①」(限定商品を除く)における複数の香気成分バランスの比較において。
※7:100ml当たりプリン体0.5㎎未満を「プリン体0」と表示しています。 以下同じ。
※8:100ml当たり5kcal未満のものに表示可能(食品表示基準による)。以下同じ。
※9:ステビアとは、キク科植物ステビアから得られた天然甘味料の一般名です。ステビアの乾燥葉には甘み成分が約10~12%含まれており、葉を噛んだだけでも強い甘みを感じます。
※10:「Ready to Drink」の略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。以下同じ。
※11:ニッカウヰスキー㈱の特許技術により蒸溜した、フルーツスピリッツを指します。原料(果皮等)をアルコー ル浸漬し、浸漬酒をさらに減圧蒸溜することで、果実の甘さを残さずに、柑橘の香りのみを抽出した蒸溜酒。本商品では、レモンライムスピリッツとグレープフルーツスピリッツの2種を使用しています。
(技術開発関連)
商品の中味開発分野では、アサヒビール㈱が製造する『クリアアサヒ プライムリッチ』、ニッカウヰスキー㈱が製造する『ニッカ シードル・スイート』、『麦焼酎 かのか 25度』の3商品が、iTQi(※1)の世界的な食品・飲料品のコンテストにおいて、“極めて優秀”と認められた製品に贈られる、最高レベルの優秀味覚賞「3ツ星」を受賞しました。また、『アサヒスーパードライ 瞬冷辛口』が、ベルギーの国際的なビールコンテスト「ブリュッセルビアチャレンジ2017」において、ゴールドメダル(※2)を受賞しました。同コンテストにおけるアサヒビール㈱商品のゴールドメダル受賞は、2015年の『アサヒスーパードライ』、2016年の『アサヒ ザ・ドリーム』に続き3年連続となります。
また、ニッカウヰスキー㈱が製造する『竹鶴25年ピュアモルト』、『シングルモルト余市』、『ザ・ニッカ12年』、『ニッカカフェモルト』、『ニッカ ブレンデッド』の5商品が、世界的な酒類品評会である「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)2017」において金賞を受賞しました。ISCでのニッカウヰスキー㈱商品の金賞受賞は10年連続となりました。さらに『ニッカ カフェモルト』は「ISC2017」において、グレーンウイスキー部門カテゴリー最高賞となる“トロフィー”を受賞しました。ニッカブランドが“トロフィー”を受賞するのは、2009年の「竹鶴21年ピュアモルト」、2015年「フロム・ザ・バレル」に次いで3度目となります。
容器包装・機器開発の分野では、「小容量135ml缶の開けやすい缶蓋」が、世界包装機構(WPO:World Packaging Organisation)主催の「ワールドスターコンテスト2018」において、「ワールドスター賞」を受賞しました。同コンテストは、各国で審査評価を受けた作品が集い、世界の優れたパッケージとその技術を開発・普及させることを目的としています。また、背負い式樽生サーバー「楽しょうサーバー」が、一般社団法人日本人間工学会において「平成29年度人間工学グッドプラクティス賞 優秀賞」に選定されました。
研究・技術開発分野では、ビール醸造技術において権威のある「EUROPEAN BREWERY CONVENTION(EBC) 2017」にて、当社が取り組むビール醸造研究の最新の研究成果を発表しました。また、ビール醸造技術で権威のある学会「American Society of Brewing Chemists Annual Meeting(ASBC) 2017」において、当社が取り組むビール醸造等の最新の研究成果を発表しました。
※1:iTQi(International Taste & Quality Institute、国際味覚審査機構)とは、ベルギーブリュッセルに本部を置き、世界中の食品や飲料品の味覚と品質を審査し、優れた製品を表彰・プロモーションする機構です。審査員はヨーロッパで最も権威ある15の調理師協会および国際ソムリエ協会(ASI)に属する一流シェフやソムリエで構成されています。
※2:ラガー・インターナショナルスタイルピルスナー部門において。
[飲料事業]
(商品開発関連)
アサヒ飲料㈱は成長戦略として「確固たるブランドの育成」を掲げ、「重点6ブランドの育成」と「健康を軸とした商品開発」の2軸にて商品開発を行って参りました。
「重点6ブランドの育成」については、「ワンダ」、「三ツ矢」、「カルピス」、「十六茶」、「おいしい水」、「ウィルキンソン」の6ブランドを重点ブランドと位置付け、積極的なマーケティング投資を行う事で、より強固なブランドへの成長を目指して参りました。
発売20周年を迎えた「ワンダ」ブランドでは、『モーニングショット』、『金の微糖』などを中心とした主力商品の継続育成に加え、伸長するボトル缶市場に対して継続的に新商品の展開を行いました。『ワンダ モーニングショット』は、春・秋二回のリニューアルを行いました。2017年秋のリニューアルでは、新たに開発した「モーニングクオリティ製法(※1)」を採用することで、『ワンダ モーニングショット』の特長である「スッと飲めて、キリッと苦味。」が一段と強く感じられ、より朝にふさわしいおいしさへと進化しています。
ボトル缶市場に向けては、販売2年目となる老舗珈琲店「丸福珈琲店」監修の「ワンダ 極」シリーズを積極的に展開いたしました。『微糖』、『ブラック』だけでなく、『芳醇ブレンド』、『キリマンジャロ100%』、『老舗の特製カフェオレ』等々の商品を発売いたしました。すべての商品で、「深煎りの極み」と呼ばれる「丸福珈琲店」独自の焙煎方法を参考にコーヒー豆を種類ごとに焙煎し、深煎り豆を中心に最適なバランスでブレンドしています。
また、コーヒーの多様化する消費者ニーズを踏まえ、コーヒーの新たな楽しみ方を提案するコーヒーゼリー飲料として『ワンダ シェイクゼリーコーヒー ほろ甘ブラック』、『ワンダ シェイクゼリーコーヒー まろやかキャラメル』の2品を発売いたしました。ペットボトル容器に入ったコーヒーゼリーに別付けされたミルクパウダーを加え、振る量やミルクの量を調整して自分好みの味や食感を楽しめる設計とし、若年層や女性層のコーヒーユーザーの創出に挑戦しました。
「三ツ矢」ブランドにおいては、最重点商品である『三ツ矢サイダー』について、「唯一無二の国民的炭酸飲料ブランド」としての「透明炭酸ならではの爽快な美味しさ」の強化を目指しました。そのために「三ツ矢」の象徴である「矢羽根」をモチーフとした小さな三角形をあしらった新容器の採用や、慶應義塾大学との共同検証において、『三ツ矢サイダー』の飲用時に感じている「爽快な“気持ち(感性)”」を数値化することなどを実施しました。また、24時間以内搾汁の透明果汁を使用し果実そのままのおいしさを活かした「三ツ矢新搾り」シリーズを発売し、透明炭酸の商品力強化と新たな魅力のご提案に取り組みました。日本の各地域との取組みによる「特産三ツ矢」シリーズは、引き続き「産地・品種指定」「国産果汁」を約束とし、日本生まれ 安心・安全の強化をご提案し、果汁炭酸市場での「三ツ矢」ブランドの存在感の拡大を目指して参りました。
「カルピス」ブランドにおいては、コンクタイプの「カルピス」の果汁入りバリエーションとして、通年販売の『巨峰』、に加え、半年毎に『メロン』と『みかん』を開発するとともに、季節限定の『シチリア産レモン』『南国マンゴー』『青森産りんご』および歳暮向けの『はちみつレモン』を開発しました。また300ml容量の牛乳で割って飲む「牛乳と楽しむカルピス」2品(『白(プレーン)』『マンゴー』)を開発しました。ストレートタイプの果汁入りの「カルピス」としては『とけあう白桃&カルピス』『味わうメロン&カルピス』『味わうパイン&カルピス』『味わう葡萄&カルピス』『ミルク&カルピスいちご』を開発いたしました。また 「カルピス」そのものの美味しさをお楽しみいただく『濃いめのカルピス』を、また一方ではゼロカロリーですっきりとした美味しさの『ゼロカロリーのカルピス すっきり』も開発して、お客様の高い評価をいただきました。「カルピスソーダ」のバリエーションとしては、『白桃』『青りんご』『巨峰』を開発しました。また濃いめに炭酸で割った「カルピス」の美味しさをお楽しみいただく『カルピスソーダ濃いめ』も『濃いめのカルピス』同様にご好評いただきました。
これらに加え、17年度は「カルピス」由来の乳酸菌科学により選び抜かれた乳酸菌「Lactobacillus(ラクトバチルス) amylovorus(アミロボラス) CP1563株」を配合する事により、乳酸菌で体脂肪を減らす「カラダカルピス」を開発して「カルピス」ブランドの新しい価値を提供し、お客様の支持を得る事ができました。
「十六茶」ブランドにおいては、『アサヒ 十六茶』が2005年から「カフェインゼロ」として生まれ変わり、2017年で13年目をむかえました。無糖茶市場の流れをとらえ2016年までで6年連続2,000万箱を突破しました。 2017年は、「十六茶」の健康価値の更なる強化に向け、中味・パッケージともに変更し、ブランド価値に磨きをかけました。 中味は、「東洋健康思想に基づいた16素材の健康ブレンド」として、近年注目を集める健康素材「ゆりね」「エゴマの葉」を新たに採用し、「カフェインゼロ」というこだわりのもと、すっきりゴクゴク飲めるおいしさに仕上げました。
また、昨年に続いて『アサヒ 十六茶 ご当地素材ブレンド』を発売しました。全国を7地域(北海道、東北、関東・甲信越、中部・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄)に分けて、その地域で採れた素材をブレンドしたご当地商品です。本年は、ご当地ならではの味わいや楽しさをより強化しました。具体的には、7地域のアサヒ飲料の各支社とディスカッションを繰り返し、よりご当地らしい素材の選定や風味作りなど、現地でお客様と直接接している営業担当者の意見を参考に、各地域の特色を活かした商品力の強化を行いました。
「おいしい水」ブランドにおいては、『おいしい水 バナジウム天然水』もフレッシュ無菌パック製法に変更することにより、ブランド価値向上を図りました。また、『アサヒ おいしい水プラス』に当社独自の素材である「カルピス」の乳酸菌を加えた『アサヒ おいしい水プラス カルピスの乳酸菌』については甘さ・後味はすっきりで、かつ 飲みごたえを向上する改訂を行いました。また、伸長する炭酸とフレーバーウォーターの中間領域を狙い、『アサヒ おいしい水プラス カルピスの乳酸菌 スパークリング』を発売しました。
「ウィルキンソン」ブランドにおいては、炭酸水NO.1ブランドのもつ価値の更なる強化をめざし、ブランド固有価値“刺激の強さを極めた、本格炭酸水”の強化・定着を図りました。『ウィルキンソン タンサン』『ウィルキンソン タンサン レモン』に『ウィルキンソン タンサン ドライコーラ』を加え、3本柱の育成を行いました。
「健康を軸とした商品開発」については、アサヒグループ独自の確かなエビデンスを有した素材を使用した商品の開発や、「安全」「安心」といった各ブランドがもつベーシックな「健康」価値の訴求を強化しつつ「アサヒ飲料=健康に強みを持つ会社」というイメージの更なる醸成を目指して積極的な取り組みを実施しています。また研究開発の分野においては、「健康」価値の追求として“カラダの健康”だけでなく“ココロの健康”も含めた両面からのアプローチを行っています。
“ココロの健康”に関しては清涼飲料飲用時の様々な“ココロの動き(※2)”に着目し、研究を行っています。本年は当社の重点ブランドの一つである「三ツ矢サイダー」と「ワンダ」の飲用時のココロの動きを検証しました。「三ツ矢サイダー」については、慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 満倉靖恵准教授の協力のもと、炭酸飲料を飲んだ時に感じる「爽快な“気持ち(感性)”」を科学的根拠に基づき、数値化するモデルを構築することに成功しました。続いて、構築したモデルを基に『三ツ矢サイダー』飲用時の爽快な気持ちを調査した結果、飲用前と比べて飲用後は、より「爽快な“気持ち(感性)”」が持てるということを、世界で初めて実証しました。「ワンダ」については『ワンダモーニングショット』を一日のスタートである朝に飲むことで、いったいどのように気分が変化するのか、理化学研究所が開発した最新のITを駆使した調査手法「KOKOROスケール(※3)」を活用し、調査を行いました。調査の結果、特に『ワンダモーニングショット』を飲用した後に、「前向きな気分(※4)」が有意に増すことが示唆されました。「前向きな気分」が増加した理由として、“味の強弱”よりもコーヒーらしい味わいや、後味のスッキリ感などといった“味わいの好み”の方に相関が強い傾向があることも分かってきており、更なる検証を進めています。今後『ワンダモーニングショット』以外の飲料で比較検討も実施し、それぞれの飲料による気分の変化を数値化して把握、評価していく予定です。これらのデータを活用することで、より消費者ニーズに対応した商品開発に活かせることが期待できます。
“カラダの健康”に関しては、本年は「カルピス」由来の乳酸菌科学により選び抜かれた独自の乳酸菌「Lactobacillus(ラクトバチルス) amylovorus(アミロボラス) CP1563株」を配合した、体脂肪を減らす機能がある乳性飲料・『カラダカルピス』を開発し「カルピス」ブランド初の機能性表示食品として上市しました。発売後の購買実態に関する調査では、「カルピス」の甘く爽やかな味わいがカロリーゼロで楽しめることや、乳酸菌で体脂肪対策が出来る点などが40代の方を中心に支持され、実際に「おいしくて飲みやすい」「毎日続けて飲んでいる」といった声を頂き、期中に上方修正した年間目標(1,500千箱→2,000千箱)を概ね達成する1,982千箱を出荷しました。今後も引き続き、乳酸菌や酵母を中心としたアサヒグループの保有する確かなエビデンスを有する素材を活用した商品の早期展開を図って参ります。
㈱エルビーにおけるデイリーチルド及びロングライフ(LL)紙容器飲料では、基幹カテゴリーであるデイリーチルド無糖茶とLL飲料の宅配向け商品に、機能性表示食品の開発に取組ました。デイリーチルド無糖茶には、食事の糖と脂肪の吸収を抑える『食事のおともに緑茶(1L)』『食事のおともに烏龍茶(1L)』の2品を、宅配向けLL商品では『ヒザ関節の動きの悩みを緩和 グルコサミン乳酸菌飲料風味』、『肌の潤いに役立つ ヒアルロン酸ヨーグルト風味』、『手足の血流維持をサポート ヘスペリジン ゆずりんご風味』の3品を発売しました。
カロリーゼロのデイリーチルド紅茶飲料として売上を拡大している「大人の紅茶」シリーズでは、これまでの「カロリー0」と「糖質0」に「カフェイン0」も訴求に加えた「トリプル0」と商品コンセプトを強化し、お客様のより高い健康志向に対応すると共に、競合他社製品との差別化を図りました。
デイリーチルド乳飲料では、好評を得ている『毎日の朝バナナオレ』に続く、コップ1杯に半日分の鉄分を配合した『毎日の朝ベリーオレ』を発売し、「毎日の朝」シリーズとして売上を大きく伸ばしました。
デイリーチルド果汁飲料では昨年発売したこだわりの果汁をみずみずしいおいしさに仕上げた「潤う果実」シリーズが安定的にCVSに採用され、主力商品として育成されつつあります。
グループシナジーとしては、「カルピス」ブランドにて基幹商品となる「味わいカルピス」の強化策として、牛乳を加えよりまろやかな味わいに仕上げたリニューアルの実施に加え、『白桃』、『フルーツミックス』、『マスカット』、『いちご』の4フレーバーを発売し、CVS向けに500ml容器での展開も開始しました。その他、CVS企業限定で『1日不足分のカルシウム&カルピス』を発売し、毎日の健康に配慮しながら濃厚な味わいが楽しめる500ml商品の充実を図りました。「カルピス」ブランド以外では、「なだ万」監修の『甘酒・塩仕立て』、『甘酒・柚子仕立て』、『冷やしあめ・金柑仕立て』の3品を発売し、新たな商品領域への参入を図りました。
また、グループ外の企業とのアライアンス強化にも取組み、ハウスウェルネス社のライセンスを受け『C1000 Lemon Squeeze 』カップ飲料を発売し、新たな顧客獲得を図りました。
※1濃縮したコーヒー成分を加え、ミルク分を超微粒子化する製法で、コーヒー感の強化と後味のスッキリ感の向上につながります。
※2「ココロの動き」:「飲用時、飲用後の感じ方の変化」を表しています。
※3「KOKOROスケール」:個人の主観的な気分を時間・場所を選ばずスマートフォンなどで簡単に入力できる理化学研究所が開発した気分測定ツールです。
※4「前向きな気分」:本調査では積極的な気分やスッキリとした気分などを含んだ、一般にいうポジティブな考え方や心境のことを表現しています。
(技術開発関連)
アサヒ飲料㈱では「強靭な収益構造の確立」を目指し、生産効率の最大化と操業度向上に向けた技術開発を行って参りました。具体的には、アセプティックPET200mlボトルの開発を行い、軽量化によるPET使用量の削減を行うとともに、自社製造可能品種の拡大による操業度向上を可能にしました。また、製品、工程、ご指摘品解析に必要な安全・安心技術(新規分析技術、解析技術)の拡充と有害微生物の検出技術、同定技術、静菌技術の研究についても継続して取り組んで参りました。これらの研究成果が認められ、「野菜果実飲料における耐熱性芽胞形成細菌のリスク評価」に関する研究論文が2017年日本缶詰びん詰めレトルト食品協会逸見賞に選ばれました。同賞は前年度に公表された関連論文を対象に審査を行い、業界発展に貢献した優秀論文を表彰するものです。美粧性を追求した容器開発としては、ブランドイメージとユーザビリティーを両立した、カルピスウォーターPET500mlボトルを開発し、2000年の発売以来17年ぶりとなるリニューアルを行いました。当容器は(公財)日本デザイン振興会2017年度グッドデザイン賞を受賞しました。また、三ツ矢サイダーPET500ml・430mlボトルにブランドロゴである矢羽根をイメージした加飾を施した容器を市場展開するなど、マーケティング戦略と連動した容器開発を行っています。
さらに、環境配慮型の資材開発においては、循環型社会に繋がる環境負荷低減として、植物由来原料を使用した資材開発を継続しています。昨年に引き続き『三ツ矢サイダー』PET1.5L製品に使用するボトル、キャップ、ラベルの全資材に植物由来原料を採用した商品を一部展開しており、本年はラベルにポリ乳酸を採用することで大幅にバイオ度を向上させました。この取組は、(公社)日本包装技術協会 2017年日本パッケージングコンテスト ジャパンスター賞、(公財)日本デザイン振興会2017年度グッドデザイン賞、World Packaging Organisation 主催 World Star Awardを受賞しました。
自動販売機開発では、三ツ矢サイダー等の商品をよりすっきりと美味しく飲んで頂く事を目的に、自動販売機の庫内温度を従来よりも4℃低くした“強冷自販機”を夏季限定で展開しました。展開した全ての月で前年比の売上を上回る結果となっており、来年以降も強冷自販機の展開を継続、お客様により良い商品を御提供して参ります。
[食品事業]
(商品開発関連)
アサヒグループ食品㈱のタブレット・菓子カテゴリーでは、錠菓市場シェアNo.1ブランド「ミンティア」のさらなる成長のため、新シリーズとして「ミンティアEXCARE」を投入しました。本シリーズは、“はたらくノドに。スマートタブレット”という新習慣を提案しており、『ミンティアEXCARE ハーブミント』は、18種類のハーブミックスエキスのほか、キキョウエキス、カリンエキスを配合、のどに広がる爽快感をお楽しみいただける味に仕上げました。また『ミンティアEXCARE ミルクミント』は、18種類のハーブエキスのほか、マヌカハニー、乳酸菌を配合、のどに潤い感を実感いただける味としました。
またスープカテゴリーにおいては これまでの「おどろき野菜」シリーズに加えて、“糖質ゼロの麺”を使用した「おどろき麺0(ゼロ)」シリーズを投入、『おどろき麺0(ゼロ) 香ばし醤油麺』と『おどろき麺0(ゼロ) 酸辣湯麺』の2品を発売いたしました。本商品には、寒天とこんにゃくで作ったプルプル食感の糖質ゼロの麺を使用、具材とスープが麺に絡み、本格的な味わいを楽しめる商品に仕上げました。
栄養調整食品カテゴリーの「クリーム玄米ブラン」からは、しっとりした食感で濃厚なブラウニーの味わいが楽しめる『クリーム玄米ブラン イチゴのブラウニー』を発売いたしました。
サプリメントカテゴリーにおいては、「ディアナチュラ」ブランドから『ディアナチュラベスト 49アミノ マルチビタミン&ミネラル』を発売いたしました。本商品は「ディアナチュラ」シリーズ最大の49種の栄養成分がまとめて摂取できる商品となっており、18種類のアミノ酸、12種類のビタミン、9種類のミネラルに加えて、10種類の乳酸菌を配合しております。また、ディアナチュラスタイルシリーズからは『ディアナチュラスタイル 葉酸×鉄 カルシウム 20日分』を2017年春に発売したところ非常に好評をいただき、秋に大容量品として60日分を投入いたしました。本商品は妊娠・授乳期に必要な栄養成分がまとめて摂れる商品となっております。また、2015年4月にスタートした機能性表示食品制度の新商品としては『ディアナチュラゴールド大豆イソフラボン』を発売しました。
フリーズドライ食品カテゴリーでは、主力である「みそ汁」カテゴリーのブランド強化、素材を活かしたスープの開発など、フリーズドライの優位性が発揮できる新価値の提案に取り組みました。流通向けでは、「うちのおみそ汁」ブランドから『あおさ』を、「いつものおみそ汁」ブランドから『3種のきのこ』を、「味わうおみそ汁」ブランドから『炙り鶏だんご』を、それぞれ追加で発売しました。フリーズドライスープの新ブランドとして、素材本来の旨みを引き出した“うまみ”あふれるスープをコンセプトに、「Theうまみ」シリーズを開発し、アイテムは『たまごスープ』『海藻スープ』『コーンスープ』を揃えました。また、5食入りのまとめ売りアイテムとして「きょうのスープ」シリーズを開発し、『たまごスープ5食』『減塩たまごスープ5食』を発売しました。通販向けでは、次世代にむけてのトライアルと位置付けて新価値の提案に取り組みました。お湯をかけるだけで揚げ物カツの食感を味わえる「カツ」シリーズとして、『チキンカツカレー』を発売しました。この商品は、長年培ってきたフリーズドライ製法の研究開発により実現し、多くのメディアで紹介されました。「おみそ汁」では、主力ブランドのおみそ汁「まごころ一杯」シリーズの定番タイプ・減塩タイプをリニューアルして、発売しました。これらの商品は、値上げと同時に風味をアップさせ、こだわりの国産具材のおいしさをさらに引き出したものになっています。新ブランドでは、「金のだし」シリーズから『焼なす』『なめこ』『あおさ』『五種の野菜』『ほうれん草』を発売しました。これらの商品は、「重ねだし製法」を用い、かつおだしの「旨み」と「香り」が堪能できるおみそ汁になっています。さらに、アマノフーズの汁物では最高価格帯のシリーズとして「絶品」ブランドを開発し、『さつま汁』『粕汁』『けんちん汁』を発売しました。これらの商品は、こだわりの食材のおいしさを最大限に引き出すことで、素材の味を活かしたコク深い、まさに絶品の味わいを実現しました。その他、通販ならではの商品として、季節の食材を楽しんでいただける「四季のみそ汁」シリーズや、「たっぷりにゅうめん」シリーズ、「炊き込みご飯」シリーズなどを発売しました。また「健康軸商品」では、「ラクトトリペプチド(LTP)(※1)」を配合した塩分1%未満の減塩みそ汁「やさしいおみそ汁」シリーズから、『とうふ』『野菜』『なす』『かきたま』『きのこ』の5アイテムを、3月に日本初(※2)の機能性表示食品のおみそ汁として発売しました。現在、通販向けの「定期便」の目玉商品として多くのお客様にご支持をいただいています。
ベビーフードカテゴリーでは、「子どもに安心な設計のものを選びたい」「離乳食を簡単に手作りしたい」、「時短したい」というようなニーズをとらえ、ベビー用乾めん『らくらくまんま』全3品(そうめん、うどん、マカロニ)を販売し、ご好評をいただいております。その他にも、好きな食材を加えてフライパンひとつで簡単におかずがつくれ、一歳から大人まで一緒に安心しておいしく召し上がれる簡単合わせ調味料『おやこdeごはん』全7品、素材を裏ごししたフリーズドライのベビーフード「はじめての離乳食」から、『はじめての離乳食 裏ごしにんじん』、おでかけに便利な飲みきりサイズのジュレ飲料『1歳からのMYジュレドリンク』全3品を販売いたしました。
シニア向けカテゴリーでは、高齢者の介護食に対する悩みを解決するため、“全ての人がいつまでもおいしく食べられること”を目指して、和光堂ブランドとして「食事は楽し」シリーズを展開してきました。シニア向け市場全体の更なる発展と、シニアカテゴリーの中で最も信頼のあるブランド確立を目指し、「安全性」と「簡便性」、「栄養バランスサポート」、「おいしさ」にこだわった、“アサヒのおいしい介護食”として介護食を『バランス献立』シリーズ(全33品)に刷新いたしました。
粉末飲料カテゴリーでは、「牛乳屋さん」シリーズから、お湯や水で溶かすだけでミルク感たっぷりのやさしい味わいが楽しめる『牛乳屋さんのロイヤルミルクティー』、『牛乳屋さんのやさしい珈琲』、『牛乳屋さんのやさしいミルクティー』3品をリニューアルいたしました。
※1:アサヒグループの乳酸菌研究より発見された、血圧を低下させる機能があると報告されている乳由来の機能性関与成分
※2:機能性表示食品として消費者庁に届出られたもののうち、おみそ汁としては日本初。
(技術開発関連)
アサヒグループ食品㈱では、フリーズドライ食品『いつものおみそ汁 なす』が、OMOTENASHI NIPPON実行委員会(※1)が主催する「OMOTENASHI Selection(おもてなしセレクション)」の2017年度第3期商品部門において、金賞を受賞しました。また、フリーズドライ技術の研究成果を、日本食品科学工学会 第64回大会にて発表し、日本食品工学会誌にて論文掲載されました。さらに、フリーズドライ食品の成分や、おいしさの研究成果を、日本食品工学会 第18回大会や日本味と匂学会 第51回大会にて発表しました。
※1 OMOTENASHI NIPPON実行委員会:ENGAWA(株)、(株)サニーサイドアップ、(株)博報堂、(株)フランチャイズアドバンテージ、(株)プラスディー(50音順)が運営しています。
[新規素材]
アサヒグループホールディングス㈱では、酵母、乳酸菌、フローラ、独自素材をコアとした研究開発を通して人々の心とからだの健康に役立つ商品・技術を提供することを目指しています。その中で、コアテクノロジー研究所では、「ビール酵母」の最外側にあり細胞を殻のように覆う「ビール酵母細胞壁」に着目し、人への健康効果を検証しました。その結果、「ビール酵母細胞壁」には、疲労感を軽減させる効果があること、また免疫力を向上させる可能性があることを明らかにしました。この研究成果を、日本食品免疫学会第13回学術大会で発表したところ、優秀な研究成果に贈られるポスター賞を受賞しました。免疫力の低下は、加齢やストレス、疲労などと深く関わっていることが知られています。「ビール酵母細胞壁」を活用した健康食品の開発により、人々の日々の健康に役立ててまいります。
当社が保有する枯草菌C-3102株(納豆菌と同種に分類されます)は、生きて腸まで届き、軟便者の腸内フローラの多様性を高めることや、腸内有用菌であるビフィズス菌を増やすことが確認されています。このC-3102株がビフィズス菌を増やすメカニズムの解明を目指し、ビフィズス菌増殖物質の探索に取組み、C-3102株がつくり出す2種類の環状ペプチド に、ビフィズス菌を増殖させるはたらきがあることを発見しました。この研究成果を第69回日本生物工学会大会にて発表しました。なお環状ペプチドにビフィズス菌を増殖させる作用があることを確認したのは、本研究が世界で初めてです。
当グループのコア技術の一つである乳酸菌を通じて人々の心と体の健康に貢献する商品、技術を提案することを目的に、コアテクノロジー研究所で、有用な独自乳酸菌の活用研究を行い、またプロセス開発研究所では、それら有用乳酸菌に対し、目的物質を高生産させる培地組成の検討や、量産化に向けた培養制御技術開発等に取り組んでいます。具体的には、アサヒ飲料社から2017年4月に発売した「カラダカルピス」の乳酸菌素材の商業生産に繋げました。
[食の安心安全]
食品の安全性に対するお客様の期待が高まる中、分析技術面からフードディフェンスの強化を目指しています。本年度は、特にLC-QTOF-MSやMALDI-TOF-MSなどの最新分析機器と、独自に構築した化学物質データベースを駆使することで、製品に洗剤や市販農薬を混入された際に、混入成分の迅速かつ網羅的な検出が可能となりました。また、水・原料・製品の安全性を正確かつ迅速に評価するために、最先端の分析技術を駆使し、微生物、残留農薬、残留動物用医薬品、カビ毒、有害金属、その他食品リスクに関する分析体制を常に更新しています。更に、各種学会や公的研究機関とも密な情報交流を行っており、食品リスクや新規技術に関する情報収集に役立てています。これらの活動を通じて、海外事業を含めたグループ各社の品質保証部門と連携し、アサヒグループ全体の品質保証体制の充実に貢献してまいります。
[新規事業]
既存事業の副産物として発生する酵母細胞壁を環境調和型の農業資材に加工する技術を確立し、2017年3月に本技術を用いて肥料原体の製造販売を行う新会社アサヒバイオサイクル㈱を設立いたしました。本技術は酵母細胞壁に独自の特許技術である水熱反応処理を施すもので、この反応による生成物が植物の成長や病害抵抗性の向上を促すことを通じて収量の増加や農薬使用量の削減に貢献することから、2016年度に地球環境大賞・農林水産大臣賞を受賞しています。本技術を用いてアサヒバイオサイクル㈱が製造する肥料原体「CW1」は、取引先肥料メーカーを通じて農業法人やゴルフ場等へ納入され高い評価をいただいております。
バイオエタノールに関する研究開発では、2017年12月より日本材料技研㈱へ対して当社の砂糖とエタノールの同時増産を実現する“逆転生産プロセス”の技術供与を開始いたしました。本技術は2013年度に地球環境大賞(グランプリ)を受賞し製糖産業など多くの関係者から関心を集めてきたもので、今後は革新的技術の実用化実績を有する日本材料技研㈱を通じて事業化を進めてまいります。