有価証券報告書-第112期(2023/12/01-2024/11/30)
② 戦略
当社グループでは気候変動に伴うさまざまなリスクと機会について、その重要性に応じて短期・中期・長期の観点から特定を行い、また外部環境の変化も踏まえ、定期的に分析・評価の見直しを行っています。リスクと機会の特定においてはIPCC※1や IEA※2などが発表しているシナリオを用いて、2つのシナリオを描いております。1つ目のシナリオは2100年時点において産業革命以前より1.5~2℃気温上昇し、環境政策が進展するシナリオ(以下「環境政策進展シナリオ」と表記)、2つ目のシナリオは2.7~4℃気温上昇し、気候変動に対し必要な施策や追加の対策が講じられない場合の成り行きシナリオ(以下「成り行きシナリオ」と表記)とし、2030年の事業におけるインパクトを算出しました。特定されたリスクと機会について対応策を検討し、単年度計画および中期経営計画に組み込んで、推進しています。
※1 IPCC
IPCCとは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)のことで、世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)により 1988年に設立された政府間組織です。各国政府の気候変動に関する政策に必要な科学的情報を提供しています。
※2 IEA
IEAとは、国際エネルギー機関(International Energy Agency)のことで、OECD(経済協力開発機構)の枠内における自律的な機関として第1次石油危機後の1974年に設立された組織です。エネルギー政策に必要な中長期の需給見通しなどの情報を提供しています。
・シナリオ分析の適用
中期経営計画において、段階的に分析範囲を拡張していきます。 分析計画は以下のとおりです。
2024年度は惣菜(じゃがいも、にんじん、たまねぎ)に対する気候変動リスクと機会の分析を手掛けました。特に主原料の食油・卵・食酢においての穀物を主体とした農作物に加えキャベツ、レタス、じゃがいも、にんじん、たまねぎなどの農作物も気候変動が影響することを認識しました。これに対し、特定の農作物への依存度合いを中長期的に引き下げていく戦略を検討しています。
・主な気候変動リスクと機会
<環境政策進展シナリオ>厳しい環境規制・高い炭素税が導入され、世界ではカーボンニュートラルが達成されます。農林水産部門ではCO₂ゼロエミッション化を実現する一方で、サプライヤーの環境対応コストが高まります。健康意識が高い消費者が増加し、サラダなど野菜の摂取量が増加します。また、環境意識の高まりから持続可能性が高い商品の需要も増加します。環境政策進展シナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
<成り行きシナリオ>低炭素化は進展するものの、2050年カーボンニュートラルは達成せず、気温が上昇する影響により、自然災害は激甚化・頻発化し、サプライヤー・自社の生産拠点で浸水被害発生頻度が上昇します。熱ストレスによる農作物の収量低下により、原材料調達コストが増加します。一方で気温上昇に伴い免疫事業などの需要が増加します。成り行きシナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
・気候変動リスクと機会に対する対応策(●リスクに備えた対応 ○機会を活かした取り組み)
シナリオ分析により特定されたリスクと機会に対し、次のテーマを推進し、持続的成長に活かしていきます。
○環境政策の進展した市場への対応
・環境配慮型商品の需要増加への対応
・農作物(食油)などを使いこなす技術革新
・原料相場に強い体質への転換
・容器包装プラスチックの軽量化
・使用したプラスチックの再利用
・再生プラスチックやバイオマスプラスチックの積極導入
・商品の使い方提案による環境負荷低減
○食品ロスの削減と有効活用
・野菜未利用部の有効活用(飼料・肥料化)
○温暖化による感染症への関心拡大
・酢酸菌ビジネスの展開
●CO2排出量の削減
・インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用による低炭素投資の促進
・CO2排出量の削減を指標とした設備投資(電化の推進、インターナルカーボンプライシング(ICP)の
導入など)
・製造工程中の加熱や殺菌工程の見直し
・再生可能エネルギーの活用・導入・サプライヤーとの協働
●洪水への備え
・洪水リスク評価に応じ重点的な対策
・主力製品のBCP(被災時に備えた事業継続計画)
インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用
当社は、気候変動リスクを財務的視点で評価し、低炭素投資を促進するため、ICPを導入しています。ICPは主に以下の目的で活用されています。
・設備投資の意思決定における炭素排出コストの考慮
・低炭素技術への投資促進
・社内での気候変動リスクに対する意識向上
2022年度より社内炭素価格の運用が開始され、その内部炭素価格をベースに2028年までの環境投資計画の立案を社内で進めています。これまでの運用では投資対効果が薄いとの理由から社内承認が難しい低炭素投資がありましたが、社内炭素価格の導入により、脱炭素を含めたトータルの投資対効果を示すことができ、より脱炭素への取り組みが加速することが期待されます。直近では、太陽光パネル導入などにおいて、社内炭素価格を用いた投資対効果を基に決裁が実行されています。
上記の対応策に関連して2024年度に実施した内容は主に下記のとおりです。
当社グループでは気候変動に伴うさまざまなリスクと機会について、その重要性に応じて短期・中期・長期の観点から特定を行い、また外部環境の変化も踏まえ、定期的に分析・評価の見直しを行っています。リスクと機会の特定においてはIPCC※1や IEA※2などが発表しているシナリオを用いて、2つのシナリオを描いております。1つ目のシナリオは2100年時点において産業革命以前より1.5~2℃気温上昇し、環境政策が進展するシナリオ(以下「環境政策進展シナリオ」と表記)、2つ目のシナリオは2.7~4℃気温上昇し、気候変動に対し必要な施策や追加の対策が講じられない場合の成り行きシナリオ(以下「成り行きシナリオ」と表記)とし、2030年の事業におけるインパクトを算出しました。特定されたリスクと機会について対応策を検討し、単年度計画および中期経営計画に組み込んで、推進しています。
※1 IPCC
IPCCとは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)のことで、世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)により 1988年に設立された政府間組織です。各国政府の気候変動に関する政策に必要な科学的情報を提供しています。
※2 IEA
IEAとは、国際エネルギー機関(International Energy Agency)のことで、OECD(経済協力開発機構)の枠内における自律的な機関として第1次石油危機後の1974年に設立された組織です。エネルギー政策に必要な中長期の需給見通しなどの情報を提供しています。
・シナリオ分析の適用
中期経営計画において、段階的に分析範囲を拡張していきます。 分析計画は以下のとおりです。
年度 | 対象範囲 |
2021年度 | マヨネーズ・ごまドレッシング |
2022年度 | マヨネーズ・ドレッシング・タマゴ(液卵・加工品) |
2023年度 | マヨネーズ・ドレッシング・タマゴ・パッケージサラダ(キャベツ、レタス) |
2024年度 | マヨネーズ・ドレッシング・タマゴ・パッケージサラダ・惣菜(じゃがいも、にんじん、たまねぎ) |
2024年度は惣菜(じゃがいも、にんじん、たまねぎ)に対する気候変動リスクと機会の分析を手掛けました。特に主原料の食油・卵・食酢においての穀物を主体とした農作物に加えキャベツ、レタス、じゃがいも、にんじん、たまねぎなどの農作物も気候変動が影響することを認識しました。これに対し、特定の農作物への依存度合いを中長期的に引き下げていく戦略を検討しています。
・主な気候変動リスクと機会
<環境政策進展シナリオ>厳しい環境規制・高い炭素税が導入され、世界ではカーボンニュートラルが達成されます。農林水産部門ではCO₂ゼロエミッション化を実現する一方で、サプライヤーの環境対応コストが高まります。健康意識が高い消費者が増加し、サラダなど野菜の摂取量が増加します。また、環境意識の高まりから持続可能性が高い商品の需要も増加します。環境政策進展シナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
リスク項目 | リスク | 機会 | 時期※3 | インパクト | ||
大分類 | 中分類 | 小分類 | ||||
移行リスク | 政策・規制 | 炭素税の導入 | ○ | 中期 | 中 | |
プラスチック・包装材への規制 | ○ | 中期 | 小 | |||
未利用資源の価値化 | ○ | 中期 | 中 | |||
市場 | 持続可能性が高い商品の需要増加 | ○ | 中期 | 大 | ||
環境に配慮した原資材の調達コスト増加 | ○ | 中期 | 小 | |||
※3 時期の定義:短期:2024年まで 中期:2030年まで 長期:2050年までとしています。 |
<成り行きシナリオ>低炭素化は進展するものの、2050年カーボンニュートラルは達成せず、気温が上昇する影響により、自然災害は激甚化・頻発化し、サプライヤー・自社の生産拠点で浸水被害発生頻度が上昇します。熱ストレスによる農作物の収量低下により、原材料調達コストが増加します。一方で気温上昇に伴い免疫事業などの需要が増加します。成り行きシナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
リスク項目 | リスク | 機会 | 時期※3 | インパクト | ||
大分類 | 中分類 | 小分類 | ||||
物理リスク | 慢性 | 熱ストレスによる収量減少に伴う農作物の調達コストの増加 | ○ | 中期 | 中 | |
急性 | 洪水による生産設備の被災・停電、操業の停滞・停止 | ○ | 短~ 長期 | 小~大 | ||
商品・ サービス | 気温の上昇に伴う、新製品・新規事業の需要増加 | ○ | 中期 | 大 | ||
※3 時期の定義:短期:2024年まで 中期:2030年まで 長期:2050年までとしています。 |
・気候変動リスクと機会に対する対応策(●リスクに備えた対応 ○機会を活かした取り組み)
シナリオ分析により特定されたリスクと機会に対し、次のテーマを推進し、持続的成長に活かしていきます。
○環境政策の進展した市場への対応
・環境配慮型商品の需要増加への対応
・農作物(食油)などを使いこなす技術革新
・原料相場に強い体質への転換
・容器包装プラスチックの軽量化
・使用したプラスチックの再利用
・再生プラスチックやバイオマスプラスチックの積極導入
・商品の使い方提案による環境負荷低減
○食品ロスの削減と有効活用
・野菜未利用部の有効活用(飼料・肥料化)
○温暖化による感染症への関心拡大
・酢酸菌ビジネスの展開
●CO2排出量の削減
・インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用による低炭素投資の促進
・CO2排出量の削減を指標とした設備投資(電化の推進、インターナルカーボンプライシング(ICP)の
導入など)
・製造工程中の加熱や殺菌工程の見直し
・再生可能エネルギーの活用・導入・サプライヤーとの協働
●洪水への備え
・洪水リスク評価に応じ重点的な対策
・主力製品のBCP(被災時に備えた事業継続計画)
インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用
当社は、気候変動リスクを財務的視点で評価し、低炭素投資を促進するため、ICPを導入しています。ICPは主に以下の目的で活用されています。
・設備投資の意思決定における炭素排出コストの考慮
・低炭素技術への投資促進
・社内での気候変動リスクに対する意識向上
2022年度より社内炭素価格の運用が開始され、その内部炭素価格をベースに2028年までの環境投資計画の立案を社内で進めています。これまでの運用では投資対効果が薄いとの理由から社内承認が難しい低炭素投資がありましたが、社内炭素価格の導入により、脱炭素を含めたトータルの投資対効果を示すことができ、より脱炭素への取り組みが加速することが期待されます。直近では、太陽光パネル導入などにおいて、社内炭素価格を用いた投資対効果を基に決裁が実行されています。
上記の対応策に関連して2024年度に実施した内容は主に下記のとおりです。
対応策 | ○環境政策の進展した市場への対応 |
取り組み | 2月上旬から、ドレッシングやスープの素など、環境に配慮した容器包装の商品に対し、独自のecoラベルの付与を開始 |
概要 | 容器包装に対する環境配慮基準を策定し、基準を満たした商品には、パッケージに当社グループ独自のecoラベルを付与していきます。![]() ![]() ![]() |
対応策 | 〇使用したプラスチックの再利用 |
取り組み | ・油付きPETボトル(ドレッシングボトルなど)の資源循環 ・マヨネーズボトルの資源循環 |
概要 | 油が付着したPETボトルは、リサイクルの洗浄工程で油が残り、再生PETの品質に影響を与えることが懸念されており、リサイクルの仕組みが社会的に実装されていません。また、国内のマヨネーズボトルには、主にポリエチレン(PE)というプラスチック素材が使用されており、PEは食品包装に多く使用されていますが、素材の種類や他素材と複合しているものが多いことから、飲料PETボトルに代表されるような水平リサイクルの仕組みが社会的に実装されていません。 これらの課題に対して企業の枠を超えて協働することで、ボトルを資源循環できる社会をめざします。当期は技術の確立と技術検証を進めるための効率的なサンプル収集のため、小売店の店舗でボトルの回収実証実験を実施しました。 ![]() |