有価証券報告書-第103期(平成26年12月1日-平成27年11月30日)

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2016/02/29 9:41
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125項目

研究開発活動

当社グループは、おいしさ、やさしさ、ユニークさを大切に適正価格で食品をお客様に提供するという姿勢のもと、「調味料」、「タマゴ」、「サラダ・惣菜」、「加工食品」、および「ファインケミカル」の各事業に関する研究開発に取り組んでいます。
研究開発は、主として当社研究開発本部、および生産技術部、国内連結子会社ではアヲハタ株式会社、デリア食品株式会社、キユーピー醸造株式会社、コープ食品株式会社、株式会社サラダクラブなど、海外連結子会社ではHENNINGSEN FOODS, INC.、北京丘比食品有限公司、杭州丘比食品有限公司、KEWPIE(THAILAND)CO.,LTD.、KEWPIE MALAYSIA SDN.BHD.およびKEWPIE VIETNAM CO.,LTD.などの各研究開発部門が連携、協力して行っています。
特に当社研究開発本部は、グループの研究開発の中核として、オリジナリティのある技術や原料素材を創出し、技術から生まれる感動をお客様に商品として提供できるよう、研究開発を行っております。
当社研究開発本部は、グループオフィスである仙川キユーポートを活用して、研究開発におけるグループシナジーの発揮と付加価値創出力を強化しています。社外との連携においてはオープンイノベーションに積極的に取り組み、価値の高い研究開発を加速しています。
また、7月には商品開発における包材開発の重要性を鑑み、品質保証本部の包材部門を統合して、商品開発研究所に「包材開発部」を新設しました。10月には、技術研究所の各部組織の役割をより明確にするために、野菜および資源循環に関するテーマに特化した「野菜・資源循環研究部」、加工プロセスに特化した「加工プロセス研究部」、健康栄養および基盤技術を統合した「評価・解析研究部」をそれぞれ新設しました。
これらの研究開発と並行して生産技術部門では、これまで築き上げた豊富な独自技術を活かした生産技術・開発技術力から、研究部門での開発商品を品質第一で具現化する設備開発ならびに、独創的な現場IT技術を駆使したグループの生産効率や品質保証体制を高める生産環境、およびシステムの標準化された開発を行っています。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、42億1百万円です。
また、報告セグメントにおける研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1)調味料、タマゴ、サラダ・惣菜、加工食品、ファインケミカル
当連結会計年度において、研究開発活動の中で創出した新規技術は、25件学会で発表し、6件論文に投稿し掲載されました。以下の表には代表的な発表を示します。
<学会発表>
タイトル学会共同研究先
卵白由来ペプチドにおける抗酸化能の研究第12回日本機能性食品医用学会総会お茶の水女子大学
がん患者の嗅覚変化への食事工夫:特に魚臭に注目した調味料活用の試み第18回日本病態栄養学会年次学術集会
経腸栄養療法導入管理時の粘度調整食品が投与時間におよぼす多施設共同無作為比較試験(第2報)第30回日本静脈経腸栄養学会学術集会東京慈恵会医科大学付属第三病院
Improvement of stool form by adding viscosity regulation solution to enteral nutrition: A multicenter randomized controlled trial.2015 A.S.P.E.N. (American Society for Parenteral and Enteral Nutrition) Annual Conference東京慈恵会医科大学付属第三病院他
長距離ランナーの持久的トレーニングにおける高機能卵白ペプチド摂取による抗疲労効果および競技パフォーマンスに及ぼす影響第27回ランニング学会発表北海道教育大学
神奈川大学
The absorption and the effect on skin of administrated hyaluronan12th Asian Congress of Nutrition東京農工大学
Beneficial effects of consuming a well-balanced breakfast with an egg on daily nutritional intakes and blood parameters in young females12th Asian Congress of Nutritionお茶の水女子大学
乳酸発酵卵白は内臓脂肪を低減する第15回日本抗加齢医学会総会東京慈恵会医科大学女子栄養大学
ヒアルロン酸による肌の保湿効果について~機能性表示食品制度に向けて~第15回日本抗加齢医学会総会
「噛むことができる食品」の評価基準の提案第33回日本顎咬合学会学術大会・総会日本顎咬合学会
メイラード反応による乾燥ガーリックの風味強化2015 IFT Annual Meeting & Food Expo
マヨネーズによる野菜の苦味低減効果の検討日本調理科学会平成27年度大会
定量的構造活性相関手法を用いた鶏卵カラザ由来抗酸化ペプチドの研究日本食品科学工学会 第62回大会京都大学
乳酸発酵卵白による食品の風味改善機構の解明日本食品科学工学会 第62回大会
QDA法を用いた官能評価による半熟卵黄の食味性の解析日本食品科学工学会 第62回大会日本獣医生命科学大学
ホスホリパーゼA2処理卵黄の分散性及び乳化性‐基質特異性の異なるホスホリパーゼA2の影響‐日本食品科学工学会 第62回大会京都大学
運動と乳酸発酵卵白の摂取が中高齢女性の骨格筋機能及び筋量に及ぼす影響第70回 日本体力医学会大会大妻女子大学

<論文>
タイトル掲載雑誌共同研究先
Thermal Aggregation of Hen Egg White Proteins in the Presence of SaltProtein Journal (2015) 34:212–219筑波大学
Heat-Denatured Lysozyme Inactivates Murine Norovirus as a Surrogate Human NorovirusScientific Reports 5, Article number: 11819 (2015)東京海洋大学
Pretreatment with citric acid or a mixture of nitric acid and citric acid to suppress egg white protein 3 deposit formation on stainless steel surfaces and to ease its removal during cleaningFood Control 07/2015; 53.東京海洋大学
Ovalbumin Delivery by Guanidine-Terminated Dendrimers Bearing an Amyloid-Promoting Peptide via Nanoparticle FormulationBioconjugate Chemistry
2015, 26 (8), 1804–1810
京都工芸繊維大学
大阪府立大学
Inactivation of enterobacter aerogenes in carboxymethyl cellulose solution using intense pulsed electric fields (iPEF) combined with moderate thermal treatmentIEEE Transactions on
Dielectrics and Electrical
Insulation, 22, (4) 1849-1855. 2015
熊本大学
Oral administration of hyaluronan prevents skin dryness and epidermal thickening in ultraviolet irradiated hairless mice.Journal of Photochemistry & Photobiology,B
:Biology Volume 153, Pages
215–221 (2015)
東京農工大学


<調味料>マヨネーズでは、卵を使用せずにマヨネーズのコクを再現しマヨネーズの美味しさを多くのお客様に楽しんでいただけるようにするため、卵不使用のマヨネーズタイプ調味料「エッグケア(卵不使用)」を発売し、卵アレルギー配慮の要望への対応を進めました。卵黄の豊かなコクとうま味を追求した特別なマヨネーズ「卵をあじわうマヨネーズ」を発売しこだわりを持った商品開発を進めました。
主力ドレッシングでは「香り」に着目した「粗挽き黒こしょうドレッシング」、「バジルドレッシング」を開発し肉や魚介をサラダで食べる「主菜サラダ」の提案強化とサラダメニューの活性化を進めました。ノンオイルドレッシングでは満足感のあるしっかりとしたコクとうま味にこだわった、「ノンオイルごま」、「ノンオイル4種のチーズ」、「ノンオイルフレンチたまねぎ」の3品を開発し健康意識が高いお客様の嗜好性ニーズへの対応を進めました。
サラダを美味しく楽しく食べる提案として、「3色のベジクルトン」を開発し、サラダ周りアイテムの拡充を進めました。業務用では野菜をおつまみとする食べ方を提案する「ベジつまソース 焦がしねぎ」を開発しサラダ調味料カテゴリーの拡大を図りました。
また、マヨネーズなどの外装フィルムの改良を進め、賞味期限表示を消えずに読みやすくする技術を大日本印刷株式会社と共同で開発しました。
<タマゴ>フードサービスの現場で使用されている殻付卵の攻略を目的として、製菓リテール市場に向けた21日間の消費期間を有する「液全卵(ロングライフ)」、製菓加工メーカーに向けた起泡力が高く製菓適性に優れた「エクセルエッグSP」、主に中華料理市場に向けた14日間の消費期間を有し炒飯やスープに適した「液全卵(調理用)」、料飲の現場に向けた初心者でも、ふんわりやわらかなスクランブルエッグが作れる「スクランブルエッグベース」を発売し、差別化された商品開発を通して、液卵市場でユニークな存在になる対応を進めました。
インバウンド消費が高まり人手不足が課題となっている、ホテル、レストランに向けた、スノーマンブランドの「スクランブルエッグ」シリーズを投入し、好評をいただいております。
また、用途を明確にする目的で「たまごサラダ(マイルド)」に名称変更したタマゴスプレッドは、たまごサンドに加えて調理パン、コロッケの具材等に用途が広がり、売上の増加に貢献しました。
家庭用の商品展開では、昨年発売した量販店のチルドコーナーで販売する「つぶしておいしいたまごのサラダ」をリニューアルして全国展開に繋げ、売上と消費者からの認知度の拡大に繋げました。
また、「とろっと名人ひらけオムレツ」シリーズ3種(プレーン・天津飯の素・親子丼の素)をエリア限定でテスト販売を実施し、次年度以降の展開に繋がる可能性を掴みました。「つぶしておいしいたまごのサラダ」においては、11月に食品産業新聞社主催の食品産業技術功労賞を受賞いたしました。
また、卵の機能性探索の一環として、カラザに抗酸化活性の高いペプチドがあることを発見して学会発表を行うなど、卵の価値向上に繋げる研究を進めております。
<サラダ・惣菜>サラダ・惣菜では当社研究開発本部、連結子会社であるデリア食品株式会社および株式会社サラダクラブなどと連携し商品開発を行っています。
全国農業協同組合連合会との合弁で設立された株式会社グリーンメッセージにて、フードサービス市場向けカット野菜の新たな製法の確立と特許出願を実施し、販売を開始しました。
主力商品である「ポテトサラダ」のさらなる展開として、地域ごとの嗜好性を調査して、それにあわせた商品化を推進し、売上の拡大に貢献しました。
また、健康に配慮した惣菜(北海道食品機能性表示制度認定商品、良くかめる食品(日本顎噛合学会推薦)等)を開発し、健康意識の高いお客様に向けた対応を進めました。
パッケージサラダ(カット野菜)では、「千切りキャベツ」、「ミックスサラダ」の2アイテムで、消費期間を1日延長できる技術(野菜にやさしい製法)を確立し、売上の増加に貢献しました。
<加工食品>加工食品の商品開発は、グループ各社の開発部署と当社研究開発本部が密接に連携し、それぞれの強みを活かしながら短中長期の研究開発テーマに取り組んでいます。
グループ会社においては、独自原料や製造設備を活用したフルーツや豆類、長芋、ごぼう、バジルなどの農産加工品、パスタソースや調理ソース、スープなどの調理食品、国産鶏やアンチョビなどを加工した商品などを開発しております。
一方当社研究開発本部は、介護食や育児食、病態食などの特殊技術を要する商品やナショナルブランド商品の開発、新たな技術や素材の開発を伴う中長期的商品開発、あるいは次世代を担う新カテゴリーの創出などを主たる役割としています。
主な開発品は、家庭用ではパスタソース、介護食、育児食、パン周り商品などの主要カテゴリーに新商品を投入し、売り場の活性化を図りました。業務用の料飲向けには、本格的な味わいを手軽に再現できる「オマールソースベース」などを発売し、病院・施設向けには家庭用やわらか食の技術を活用した、病院・施設向けの冷凍やわらか食を発売しました。
さらに、加工食品の海外展開として、中国にて中国国内向け病態食の製造を開始しました。
<ファインケミカル>ファインケミカルでは、ヒアルロン酸、タマゴ成分、EPA(エイコサペンタエン酸)を3つの柱と位置付け、これらの素材の可能性を最大限引き出す研究と商品開発を進めています。
今期は、当社が食品用ヒアルロン酸でこれまで蓄積した多くのエビデンスを基本に、4月から施行された「機能性表示食品」制度を活用して、肌の水分保持、乾燥緩和機能を有する機能性表示食品「ヒアロモイスチャー240」を発売しました。
また卵白から抽出し、変性処理したリゾチームがヒトノロウイルスを不活化することを確認した東京海洋大学との共同研究論文が、権威あるScientific Reports誌に受理、掲載されました。
連結子会社であるキユーピー醸造株式会社では、加工用途向けに、新タイプの醸造酢として黒蜜のコクのある風味を生かした「さとうきび酢」を発売しました。また、果実酢の発酵技術を生かした「赤ワインタイプ発酵調味料」を発売しました。
業務用調味料として、芳醇な香りと濃厚な味を特長とする芳醇白葡萄酢をベースとした「芳醇ピクルスビネガー」と「アジアンテーブル・トムヤムベース」を、ドリンクシリーズとして「ビネガードリンク(カシス)」を発売しました。業務用のすし酢として、2年以上熟成させた酒粕を原料にしたお酢を使用した「すし酢(江戸前赤酢)」を発売しました。
海外の商品開発では、各地の伝統的なメニューや調味料を参考にした商品開発を推進しました。一例としては、中国北部の伝統的なサラダである大拌菜(ダーバンツァイ)を手軽に楽しめるドレッシングや、ベトナムで伝統的な基礎調味料であるチリソースとマヨネーズを別々に充填したツインパックのソースを発売いたしました。
また、アメリカではアジア系以外の一般のスーパーへ向けたドレッシングで、フルーツやココナツ等とスパイスを組み合わせた新しいフレーバーを新規に開発し、深煎りごまドレッシングなど日本で展開している商品に加えてシリーズ化いたしました。
また昨年度末より稼働を開始したPT. KEWPIE INDONESIAにおいて家庭用の商品を発売いたしました。
これらの結果、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、42億1百万円です。
(2)共通、物流システム
該当事項はありません。