訂正有価証券報告書-第90期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/07/29 9:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
188項目
(1)経営方針
当社グループは、「お客さまの社会活動の基盤となる商品・サービスを提供することにより、永く『安心と信頼に満ちた社会』の実現に貢献する」ことを企業理念として掲げ、企業理念の実践による社会発展への貢献をめざしております。また、企業理念と表裏一体をなすCSR(企業の社会的責任)ビジョンのなかで地球環境の保護に努めることを宣言しております。
そのために、安定した事業基盤を活かしつつ成長を遂げる企業をめざし、新しい視点で業務に取り組み企業価値の一層の向上に努めております。そしてお客さまに最適な商品・サービスを提供することによりお客さまの満足を何より重視することを、基本姿勢としてまいります。
結果として、高い成長と企業価値の向上を実現し、あらゆるステークホルダーの信頼を得られるよう努力してまいります。
目標とする経営指標
当社グループは、不動産賃貸事業での安定収益を確保しつつ、開発事業・バリューアッド事業・アセットマネジメント事業の展開などにより、利益成長と収益の安定性の両面を具備した事業構造の強化を推進することとしております。
注視する指標としては経常利益等の段階利益だけでなく、ネットD/Eレシオや有利子負債対EBITDA倍率等、種々の経営指標のバランスを取りながら、収益力の着実な増強を実現してまいります。
(2)経営環境
我が国経済は、設備投資や国内需要を中心に概ね堅調に推移しておりましたが、世界経済における米中貿易摩擦問題などの影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大懸念から、原油市場・金融市場の不安定さが増大しており、予断を許さない状況となっています。
不動産事業環境におきましても、こうした経済状況が影響を及ぼす可能性があるため、今後の動向を留意する必要があります。
(3)対処すべき課題
当社グループは、2018年度を初年度とする中期経営計画に基づき、不動産賃貸事業の更なる増強をはかるとともに、開発事業及びバリューアッド事業の軌道化を実現した結果、2019年度におきましては、中期経営計画の最終年度にあたる2020年度の経常利益などの目標を1年前倒しで概ね達成いたしました。
2020年度におきましては、更なる成長戦略を志向し、2020年度を初年度とする新中長期経営計画を策定し、ビジネスモデルの進化と賃貸ポートフォリオの再構築、開発事業及びバリューアッド事業の強靭化、独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上、経営基盤の強化とリスク管理の徹底、社会と企業の共創・共生をはかるサステナビリティを重視したマネジメントを実践のうえ、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上を実現する企業グループへと進化してまいります。
当社グループは、容積消化率の低い物件を建替するという施策と優良な新規物件の購入を推進してきたことから、比較的負債依存度が高く2019年12月期末時点での総借入は9,860億円となっております(うち234億円はノンリコースローン)。
外部負債の利用は、高い収益力を背景とした低コスト調達により、総コストを抑えつつ安定的に調達をおこない、企業価値の向上をめざすという財務戦略に立脚したものであります。一方において、負債管理を総合的におこない最適なバランスシートコントロールに努めていることから、相対的に高い外部格付けを維持しております。
このようにして当社グループは、負債水準を適切にコントロールしつつ、高い利益率に支えられた安定的な収益を挙げる事業構造を確立しておりますが、更なる成長の実現に向けて主に以下の戦略に取り組んでまいります。
①不動産賃貸事業の強化
当社グループの中核事業は、東京23区の駅近を中心に保有・管理する賃貸物件を活用した不動産賃貸事業であり、今後はマーケットニーズに即した用途バランスと競争優位性を有する賃貸ポートフォリオの再構築をおこなってまいります。
また、賃貸事業をベースとした「安定性」と「効率性」を両立したビジネスモデルの進化をはかってまいります。
当社グループの所有物件は、駅近の好立地のビルが大宗を占めており、かつメインテナントがみずほフィナンシャルグループで安定していることもあって、マーケットより常に低い空室率を維持し、安定的な収益を確保しております。建替・開発物件につきましては、2019年は6物件が竣工し、2020年についても9物件が竣工する計画となっており、更なる営業収益の増強をはかることが可能となっております。
また、当社はマーケットより常に低い空室率を維持しておりますが、CREなど戦略的ソーシングによる着実なポートフォリオの拡充に合わせて、テナントリーシング力を更に強化し、不動産賃貸事業の底支えをはかっております。
②開発事業及びバリューアッド事業の強靭化
中長期パイプラインの整備を基にした耐震・省エネに優れた開発事業を推進することによって、優良な賃貸ポートフォリオの増強及び開発利益の享受をはかってまいります。
また、バリューアッド事業については、多様なバリューアップ手法に基づく取り組みを強化することによって、安定した売却利益の創出及び成長ドライバーとしての体制整備をはかってまいります。
③独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上
3Kビジネス(高齢者・観光・環境ビジネス)の一つとして取り組んでいる高齢者ビジネスにおきましては、引き続き多数の高齢者施設を開発、取得及び保有しております。
観光ビジネスにおきましては、2019年9月に日本ビューホテル株式会社を完全子会社化し、浅草ビューホテルを含めた不動産及び運営事業をグループ化するとともに、自社運営ホテルの「THE GATE HOTEL」シリーズや、高級温泉旅館「ふふ」シリーズの開発にも引き続き積極的に取り組むことで、観光ビジネス領域での事業拡大をはかっております。
環境ビジネスにおきましては、高い耐震性・CO2排出量の削減・100年耐久を実現する環境配慮・BCP対応ビルの開発、耐火木造建築の活用のほか、2025年に「RE100」を達成するべく、再生可能エネルギー設備への投資をおこない、当社グループ企業が入居するビルへの電力供給に取り組む予定です。
今後も、3Kビジネスを拡大するとともに、新たな価値創造を提供する新規事業を開拓・軌道化し、グループ連携を活かした収益機会の獲得及びシナジー追求によるグループ総合力の向上をはかってまいります。また、新規事業の軌道化及びグループ力向上の早期実現の手段として、M&Aやアライアンス等を積極的に活用してまいります。
④経営基盤の強化とサステナビリティ経営の実践
従来からの事業展開に加えて、「内部統制」、「リスク管理」、「コンプライアンス」、「開示統制」についても、引き続き徹底をはかってまいります。特にリスク管理に関しては、「事業継続基本計画」(BCP:Business Continuity Plan)を制定しており、定期的に訓練を実施する等、有事対応力の向上を更に進めてまいります。
また、「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を踏まえ、当社の持続的成長・企業価値向上に向けての最適なコーポレートガバナンスを実現するための枠組みとして、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しております。ガイドラインを基に健全な企業統治の下で株主の権利に留意し、永続的な企業価値の向上をめざしてまいります。
そのほか、サステナビリティの考え方を重視したバランス経営を実践すべく、環境に配慮したビジネス展開、地域社会をはじめ各ステークホルダーとの関係強化、強固なガバナンス体制の構築など、バランスのとれたESG経営を基に社会的ニーズに対応した価値創造を進めており、更に、日本将棋連盟及び障がい者スポーツ団体への支援など、社会貢献活動も強化しております。併せて、人材育成を軸として、健康経営・働き方改革等の取り組み、女性活躍推進法に基づく行動計画策定など、女性や高齢者も等しく能力を発揮できる職場とし、一人当たり生産性の高い企業、人が育つ企業をめざしてまいります。
配当政策につきましては、不動産賃貸事業を主たる事業としていることもあり、長期的かつ安定的な事業基盤の強化のために必要な内部留保の充実をはかるとともに、株主への利益還元を狙いとして、安定した配当を継続することを基本方針としております。また、業績動向を踏まえた配当とすることも同様に重要と考えております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。