有価証券報告書-第78期(2025/04/01-2026/03/31)
②戦略
■ 当社グループ及び各事業会社の経営戦略と人的資本戦略
当社グループの経営戦略は、中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」において、「高い感性と品質を基盤に、世界のワコールグループとして進化・成長する」ことをベースとして、とりわけ直近年度の中期経営計画(リバイズ)においては、収益性の改善に向けた構造改革を中心に「VISION 2030」の達成に向けた成長戦略を並行して進め、併せて資本効率向上のためのアセットライト化、ROICマネジメントの導入を進めてきました。
一方、2027年3月期から始まる中期経営計画2029においては、成長戦略のための投資拡大や想定されるコストアップ要因の吸収のために、構造改革への取り組みも継続していきますが、より成長戦略の実行による新たな価値の創出に軸足を移していきます。このような経営戦略に連動し、人的資本戦略については、以下の3つの重点方針(Ⅰ.人財獲得、Ⅱ.成長支援(育成・キャリア形成)、Ⅲ.健全な組織風土・文化の醸成)を定め、取り組んでいます。

Ⅰ.人財獲得
■ 基本方針
当社グループは、中期経営計画の実現に向けた「成長領域への戦略的資源配分」という方針に基づき、採用活動においても従来の「バランス重視」から脱却し、事業戦略と連動した戦略的な人財獲得へと転換しています。特に、グローバル・EC・DX・新規事業等の成長を牽引する専門人財の獲得を最優先課題と位置づけ、採用手法の多様化と高度化を推進しています。
■ 主な取り組み(㈱ワコール)
事業戦略の実現に不可欠な専門スキルを持つ人財を計画的に獲得するため、従来の新卒一括採用に加えて、以下の取り組みを強化しています。
<専門スキル型採用の導入>総合職採用において、新卒採用についても従来のポテンシャルを重視した「一斉採用」に加え、特定の職務(研究、IT、経理、技術開発等)で求められる専門性やスキルを明確にした「専門スキル型採用」を導入しました。また、経験者採用についても既に総合職採用の半数を超える年度もあり、今後も3~5割程度を維持する計画です。これにより、事業戦略上、特に強化が必要な領域へ、専門性の高い人財を確実に配属することを目指します。
<実務体験型インターンシップの強化>多様な人財との早期接点を強化するため、短期インターンシッププログラム「Wacoal Career Journey」を深化させました。このプログラムでは、参加者が実際にワコール社員と交流し、リアルな働き方や価値観に触れることで、当社で働く意義や文化を肌で感じてもらうことを目的としています。さらに、学生が実際の職場で数日間の実務を経験する「実務体験型インターンシップ」を強化しています。2026年卒採用では、EC部門において10日間のインターンシップを実施し、参加者6名の中から2名が内定に至るなど、高い志望度を持つ即戦力人財の獲得に繋がりました。2027年卒採用では、この取り組みを研究開発、IT、経理、技術開発といった部門にも拡大し、優秀な人財の確保と入社後のミスマッチの解消に取り組んでいます。
<リファラル採用の推進>2025年10月からは、自社の従業員が友人や知人を紹介し、その紹介によって採用に至る「リファラル採用」を導入。販売職については、特に人員確保が難しいエリア中心に4名の採用につながり、ワコールに親和性の高い従業員を迎え入れることにも取り組んでいます。
<人財リテイン策>・地域限定採用の柔軟運用
人財獲得・定着施策として、2020年8月から、地域限定採用である販売コースが自己都合で転居した場合でも、一定の条件を満たせば転居先への勤務地変更を可能にし、就業継続できるしくみを整えています。(2026年3月末時点の制度利用者累計:55名)。
・若手向け住宅支援制度の対象拡大
2025年4月より若手社員を対象とした住宅支援制度の対象範囲を拡大しました。販売コースについては、新卒入社のうち約60%が利用しています。私生活の安定を通じて、安心して業務に定着できる就業環境の整備を進めています。
㈱ワコールの主たるコースの採用状況
Ⅱ.成長支援(育成・キャリア形成)
■ 基本方針
従業員一人ひとりが自らのキャリアにオーナーシップを持ち、専門性を高めながら継続的に成長できる環境を整備することが、組織全体の持続的な成長に不可欠であると考えています。この考え方のもと、㈱ワコールでは、「自律革新型人財」の育成を中核に据え、従業員の挑戦と成長を支援する多様な機会を提供しています。
また、2025年7月に導入した役割等級制度と連動させ、年功的要素を排し、役割と成果に基づく評価・処遇を徹底するとともに、教育体系「WACOAL TERAKOYA」を再設計しました。これにより、従業員が主体的にキャリアを選択し、自律的に学び続ける文化の醸成を目指しています。
さらに、「WACOAL TERAKOYA」の一部を等級認定要件、マネジメント・ライセンス審査受験の必須要件として位置づけることで、マネジメント任用に至るまでの過程においても、学び続ける姿勢を持ち、専門性を高めていくことを制度の基盤としています。
また、事業戦略に基づくリソースシフトや一人当たりの処遇水準の向上のためには、とりわけ既存事業における生産性の向上のための人財育成も重要で、一部職種において、相対的にパフォーマンスの高い人財の行動特性に基づく必要なナレッジ・ノウハウの形式知化、業務フローの仕組み化により、個と組織のケイパビリティを高める取り組みに着手しています。
■ 主な取り組み(㈱ワコール)
・キャリア自律を支援する制度と環境の整備
従業員が自らの意思でキャリアパスを形成できるよう、多様な選択肢と挑戦の機会を提供しています。
<キャリア選択の多様化>従業員が自らの意思で希望部門への異動に挑戦できる「社内公募制度」を運用しています。また、募集のない部門に対しても自ら手を挙げて異動に挑戦する「ジョブチャレンジ制度」を運用しています。合わせて、他社へ一定期間出向し、新たなスキルや視点を獲得する「キャリア留学制度」も設けており、復帰後にその経験を活かしてマネジメントに着任する事例も生まれています。
<キャリア面談の実施>社内のキャリア支援担当者や外部の専門キャリアコンサルタントとの面談機会を設け、従業員が自身のキャリアについて客観的な視点で棚卸し、将来の方向性を考えることを支援しています。
<主体的な学びを促進する教育体系「WACOAL TERAKOYA」>従業員の自律的な学習を促進するため、学習管理システムを導入し、教育体系「WACOAL TERAKOYA」を再設計しました。
<研修効果の可視化>研修の効果測定の指標の一つとして、人財育成施策の実効性向上を目的に、当期より研修受講後の行動変容を定量的に把握する「研修転移」の測定を開始しました。具体的には、研修で習得した学び(スキル・知識)を現場で実践・活用されているかを、研修実施後1~3ヶ月後にアンケートを実施し確認しています。受講者が具体的な行動事例を振り返ることで内省を促すと同時に、研修効果や定着率を数値化し、研修内容と業績成果の関連性を可視化しています。これにより、人財育成施策の改善及び投資対効果の最適化に活用しています。
人財育成プログラムの例
(内勤社員実績)
※2025年7月の制度変更に伴い、一部プログラムを再編成しています。
(外勤社員実績)
Ⅲ.健全な組織風土・文化の醸成
ⅰ.マネジメント力の強化
■ 基本方針
当社グループは、経営戦略の的確かつ迅速な実行を通じて組織全体の成果を最大化するため、マネジメント力の強化を人的資本戦略における最重要課題の一つと位置づけています。変化の激しい事業環境下においては、過去の成功体験や固定化された手法に依存するのではなく、状況に応じて自らの判断軸で意思決定し、その結果に責任を持つ「自律革新型人財」の育成が不可欠です。
この考えに基づき、当社ではマネジメントを単なる役割や技術(スキル)としてではなく、個々の判断軸や組織への向き合い方といった「在り方」そのものとして捉え直すことを重視しています。ビジョンの実現と戦略の実行を牽引し、かつ従業員一人ひとりの力を組織の成果へと結びつけることのできるマネジメント人財の計画的な発掘・育成・任用を一貫して推進してまいります。
■ 主な取り組み
マネジメント力の強化に向け、以下の取り組みを体系的に実施しています。
・次世代リーダーの計画的な発掘と育成
サクセッションプランに基づき、将来の経営を担う人財を早期に発掘し、長期的な視点で育成する仕組みを構築しています。
<早期選抜と育成機会の提供>20代後半からの経営視点の醸成を図っています。本取り組みでは、ヒューマンアセスメントを単なる「選抜の場」ではなく、強み・弱みをフィードバックし成長を促す「育成の場」と位置づけ、ポテンシャルのある人財に対して計画的な育成機会を提供しています。
・マネジメントの質を高める研修体系
マネジメント層に対し、その役割と責任に応じた体系的な研修プログラムを提供しています。
<マネジメント・ライセンス制度>実際に担う役割と成果を重視する「マネジメント・ライセンス制度」を導入しました。論文、外部機関によるヒューマンアセスメント、役員面接といった多面的な要素に加え、財務会計やITに関する知識・資格取得を必須要件とすることで、マネジメントの質を担保しています。
・健全な組織文化の醸成
個の力を最大限に引き出し、組織の成果へとつなげるためには、心理的安全性の高い組織文化が不可欠であるとの認識のもと、以下の取り組みを推進しています。
<フィードバック文化の醸成>経営職を対象とした360度多面観察を年1回実施し、上司・同僚・部下からの客観的なフィードバックを成長の糧とする仕組みを運用しています。また、継続的に開催し、経営層と従業員が直接対話する機会を設けることで、経営方針の浸透と現場の実態の共有を図るとともに、その場で従業員から出た意見、リクエストに対して後日フィードバックを行いフィードバック文化の醸成に取り組んでいます。
ⅱ.DE&Iの推進
当社グループは、従業員一人ひとりの働きがいを高める仕組みを追求しつつ、人的資本の量的・質的な適正化を図ることにより、健全な企業風土と強固な経営体質の構築を進めています。多様な人財や価値観を受容し相互の信頼関係を深め、従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮できる職場環境の実現を目指しています。引き続き、多様なキャリアパスや柔軟な働き方の選択肢を拡充し、変化の激しい市場環境に適応した意思決定を可能とするため、従業員の多様性を活かす人財施策を推進してまいります。
<女性活躍の推進>㈱ワコールでは、顧客・従業員の多くが女性であること、また多様な価値観を経営の意思決定に反映する必要があることから、女性活躍推進を重要な経営課題と位置づけています。女性特有のライフステージに応じた就労環境の整備や柔軟な働き方の実現を進めるとともに、性別や年齢に関わらず能力や成果に応じた公正な登用の仕組みを整備しています。
<女性の管理職への登用>㈱ワコールは、重要な意思決定に関わる人財の多様性を確保するため、管理職層のジェンダーバランスを経営課題と位置づけ、2029年3月期中に部長級以上の女性比率を30%以上とすることを目標としています。2026年4月1日時点の課長級以上の女性比率は32.2%(管理職ライセンス保有者を含むと41.6%)である一方、部長級以上は依然として18.8%であるため、育成・登用施策を強化していきます。
具体的には、後継者プールにおけるジェンダーバランスを確認しながら計画的な育成を行うとともに、社内外のキャリアコンサルタントによるキャリア相談を通じたキャリア形成支援、並びに能力・成果に基づく昇格・登用制度の運用を推進しています。また、柔軟な働き方の選択肢拡大の一環としてコアタイムなしの「スーパーフレックスタイム制度」を導入し、継続的なキャリア形成を支援しています。
育成施策として、多様性が企業の価値創造に資することへの理解を促し、無意識の偏りを抑えた公正な意思決定を浸透させることを目的としたアンコンシャスバイアス研修を実施しています。今期までに経営層及び部・課長層への研修を完了しており、次期は対象を全従業員へ拡大する予定です。
これらの施策を通じ、女性を含む多様な人財が重要な意思決定に参画できる環境整備を進め、組織の多様性向上と経営判断の高度化を図ってまいります。
<男女間の賃金差異>男女の賃金差異は当社・㈱ワコールで49.7%(正社員50.0%、パート・有期58.9%、総合職67.2%、管理職90.9%)となっています。同一役割における男女間の賃金差は設けておらず、この差異の主な要因は以下の3点です。
・管理職に占める男性比率が約70%であること。
・近年は新卒・総合職採用において女性比率が上昇し、入社10年以下では65%が女性であること。
・女性は65%が販売職、男性は86%が総合職であり、職種による賃金水準の差が影響している。
これらの構造的課題の解決に向け、特に総合職採用(新卒・経験者)においてジェンダーバランスを意識しつつ、これまで以上に能力やパフォーマンスに基づく登用、任用を行い、マネジメント・リーダー層の多様性を実現していきます。
<海外各社における管理職登用>当社グループは、米国・欧州をはじめとした海外各法人において、代表(社長)や主要経営ポストに現地人財を積極的に登用しています。また、㈱ホンコンワコール及び㈱フィリピンワコールの代表(社長)は現地の女性が務めています。
今回より海外を含む連結グループ会社の管理職(課長級以上)の女性比率の公表を開始しました。個社別の状況には差があるものの、総じて当社グループの海外各社においては、日本国内以上に女性登用が進んでいますが、今後も多様な現地人財の採用と登用を推進し、各市場での顧客視点に基づく事業成長と競争力強化を図ります。
<障がい者雇用>当社グループでは全員がいきいきと働き続けるために必要な研修や個別面談を通じて環境改善・就労支援を行っています。2018年に設立したワコールアイネクスト㈱では特例子会社として多様な働き方を実施し、数値目標にとどまらず、相互信頼のもとすべての人が活躍できる職場づくりを進めています。2025年7月からは新しい人事制度も導入し、個々の特性や意欲に応じた活躍機会の拡大を目指しています。
<多様なお客さまへの対応方針に基づく対応>2026年1月には、㈱ワコールの全従業員を対象に、「ビジネスと人権」に関する動画研修を実施しました。本研修により、人権尊重の基本的な考え方への理解を促進し、より多様なお客さまへの配慮だけでなく、取引先・地域社会を含む幅広いステークホルダーに対して適切に対応するための基盤整備を進めています。
ⅲ.Well-beingの実現
中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」で掲げる「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを実現するためには、重要なステークホルダーである従業員の働きがいを高め、生産性向上につなげることが不可欠です。
㈱ワコールは、従業員エンゲージメント向上の観点から、心身の健康、働き方、キャリア形成、社会とのつながりといった多面的な領域でWell-beingを推進しています。
<多様な働き方推進>㈱ワコールでは、業務特性やライフスタイルに応じた柔軟な働き方を実現するため、コアタイムなしスーパーフレックスタイム制度を導入し、時間と場所を自律的に選択できる環境整備を進めています。また、勤務地限定制度の運用や京都地区事業所の再編を通じて、ワコール版ABW(Activity Based Working)を推進し、生産性向上を目的とした働き方改革を進めています。
あわせて、長期自己啓発休暇制度など、従業員の学び直しやキャリア形成を支援する制度も拡充しています。これらの取り組みにより、実績・成果を重視しつつ、個々を尊重し、ビジネスパートナーとして互いを認め合う組織風土づくりを推進しています。
<ワークライフバランス・メンタルヘルス支援>当社は、従業員が安心して働き続けられる職場環境の整備を目的として、ワークライフバランス施策及びメンタルヘルス支援を強化しています。ストレスチェックの実施と結果の分析を活用し、専門家によるカウンセリング支援に加えて、高ストレス組織に対する職場活性化面談を実施することで、組織課題の可視化と改善を進めています。これらの取り組みにより、従業員の心身の健康保持・増進と働きやすい職場づくりを推進しています。
テレワーク、自己啓発・配偶者帯同の長期休職制度、副業制度等を整備し、多様なキャリア選択を支援。
■ 当社グループ及び各事業会社の経営戦略と人的資本戦略
当社グループの経営戦略は、中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」において、「高い感性と品質を基盤に、世界のワコールグループとして進化・成長する」ことをベースとして、とりわけ直近年度の中期経営計画(リバイズ)においては、収益性の改善に向けた構造改革を中心に「VISION 2030」の達成に向けた成長戦略を並行して進め、併せて資本効率向上のためのアセットライト化、ROICマネジメントの導入を進めてきました。
一方、2027年3月期から始まる中期経営計画2029においては、成長戦略のための投資拡大や想定されるコストアップ要因の吸収のために、構造改革への取り組みも継続していきますが、より成長戦略の実行による新たな価値の創出に軸足を移していきます。このような経営戦略に連動し、人的資本戦略については、以下の3つの重点方針(Ⅰ.人財獲得、Ⅱ.成長支援(育成・キャリア形成)、Ⅲ.健全な組織風土・文化の醸成)を定め、取り組んでいます。

Ⅰ.人財獲得
■ 基本方針
当社グループは、中期経営計画の実現に向けた「成長領域への戦略的資源配分」という方針に基づき、採用活動においても従来の「バランス重視」から脱却し、事業戦略と連動した戦略的な人財獲得へと転換しています。特に、グローバル・EC・DX・新規事業等の成長を牽引する専門人財の獲得を最優先課題と位置づけ、採用手法の多様化と高度化を推進しています。
■ 主な取り組み(㈱ワコール)
事業戦略の実現に不可欠な専門スキルを持つ人財を計画的に獲得するため、従来の新卒一括採用に加えて、以下の取り組みを強化しています。
<専門スキル型採用の導入>総合職採用において、新卒採用についても従来のポテンシャルを重視した「一斉採用」に加え、特定の職務(研究、IT、経理、技術開発等)で求められる専門性やスキルを明確にした「専門スキル型採用」を導入しました。また、経験者採用についても既に総合職採用の半数を超える年度もあり、今後も3~5割程度を維持する計画です。これにより、事業戦略上、特に強化が必要な領域へ、専門性の高い人財を確実に配属することを目指します。
<実務体験型インターンシップの強化>多様な人財との早期接点を強化するため、短期インターンシッププログラム「Wacoal Career Journey」を深化させました。このプログラムでは、参加者が実際にワコール社員と交流し、リアルな働き方や価値観に触れることで、当社で働く意義や文化を肌で感じてもらうことを目的としています。さらに、学生が実際の職場で数日間の実務を経験する「実務体験型インターンシップ」を強化しています。2026年卒採用では、EC部門において10日間のインターンシップを実施し、参加者6名の中から2名が内定に至るなど、高い志望度を持つ即戦力人財の獲得に繋がりました。2027年卒採用では、この取り組みを研究開発、IT、経理、技術開発といった部門にも拡大し、優秀な人財の確保と入社後のミスマッチの解消に取り組んでいます。
<リファラル採用の推進>2025年10月からは、自社の従業員が友人や知人を紹介し、その紹介によって採用に至る「リファラル採用」を導入。販売職については、特に人員確保が難しいエリア中心に4名の採用につながり、ワコールに親和性の高い従業員を迎え入れることにも取り組んでいます。
<人財リテイン策>・地域限定採用の柔軟運用
人財獲得・定着施策として、2020年8月から、地域限定採用である販売コースが自己都合で転居した場合でも、一定の条件を満たせば転居先への勤務地変更を可能にし、就業継続できるしくみを整えています。(2026年3月末時点の制度利用者累計:55名)。
・若手向け住宅支援制度の対象拡大
2025年4月より若手社員を対象とした住宅支援制度の対象範囲を拡大しました。販売コースについては、新卒入社のうち約60%が利用しています。私生活の安定を通じて、安心して業務に定着できる就業環境の整備を進めています。
㈱ワコールの主たるコースの採用状況
| 職群 | 区分 | 性別 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
| 事業開発コース (総合職) | 経験者 | 男性 | 4 | 1 | 8 | 19 |
| 女性 | 6 | 15 | 8 | 16 | ||
| 合計 | 10 | 16 | 16 | 35 | ||
| 新卒 | 男性 | 6 | 2 | 6 | 4 | |
| 女性 | 10 | 10 | 12 | 8 | ||
| 合計 | 16 | 12 | 18 | 12 | ||
| 経験者採用比率 | 38% | 57% | 47% | 74% | ||
| 販売コース | 経験者 | 男性 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 女性 | 6 | 14 | 58 | 92 | ||
| 合計 | 6 | 14 | 58 | 92 | ||
| 新卒 | 男性 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
| 女性 | 16 | 14 | 19 | 24 | ||
| 合計 | 16 | 14 | 19 | 24 | ||
| 経験者採用比率 | 27% | 50% | 75% | 79% | ||
| 商品開発コース (クリエイター職・ 技術・研究職) | 経験者 | 男性 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 女性 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
| 合計 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
| 新卒 | 男性 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
| 女性 | 0 | 0 | 4 | 10 | ||
| 合計 | 0 | 0 | 4 | 10 | ||
| 経験者採用比率 | 0% | 0% | 0% | 0% | ||
Ⅱ.成長支援(育成・キャリア形成)
■ 基本方針
従業員一人ひとりが自らのキャリアにオーナーシップを持ち、専門性を高めながら継続的に成長できる環境を整備することが、組織全体の持続的な成長に不可欠であると考えています。この考え方のもと、㈱ワコールでは、「自律革新型人財」の育成を中核に据え、従業員の挑戦と成長を支援する多様な機会を提供しています。
また、2025年7月に導入した役割等級制度と連動させ、年功的要素を排し、役割と成果に基づく評価・処遇を徹底するとともに、教育体系「WACOAL TERAKOYA」を再設計しました。これにより、従業員が主体的にキャリアを選択し、自律的に学び続ける文化の醸成を目指しています。
さらに、「WACOAL TERAKOYA」の一部を等級認定要件、マネジメント・ライセンス審査受験の必須要件として位置づけることで、マネジメント任用に至るまでの過程においても、学び続ける姿勢を持ち、専門性を高めていくことを制度の基盤としています。
また、事業戦略に基づくリソースシフトや一人当たりの処遇水準の向上のためには、とりわけ既存事業における生産性の向上のための人財育成も重要で、一部職種において、相対的にパフォーマンスの高い人財の行動特性に基づく必要なナレッジ・ノウハウの形式知化、業務フローの仕組み化により、個と組織のケイパビリティを高める取り組みに着手しています。
■ 主な取り組み(㈱ワコール)
・キャリア自律を支援する制度と環境の整備
従業員が自らの意思でキャリアパスを形成できるよう、多様な選択肢と挑戦の機会を提供しています。
<キャリア選択の多様化>従業員が自らの意思で希望部門への異動に挑戦できる「社内公募制度」を運用しています。また、募集のない部門に対しても自ら手を挙げて異動に挑戦する「ジョブチャレンジ制度」を運用しています。合わせて、他社へ一定期間出向し、新たなスキルや視点を獲得する「キャリア留学制度」も設けており、復帰後にその経験を活かしてマネジメントに着任する事例も生まれています。
<キャリア面談の実施>社内のキャリア支援担当者や外部の専門キャリアコンサルタントとの面談機会を設け、従業員が自身のキャリアについて客観的な視点で棚卸し、将来の方向性を考えることを支援しています。
<主体的な学びを促進する教育体系「WACOAL TERAKOYA」>従業員の自律的な学習を促進するため、学習管理システムを導入し、教育体系「WACOAL TERAKOYA」を再設計しました。
<研修効果の可視化>研修の効果測定の指標の一つとして、人財育成施策の実効性向上を目的に、当期より研修受講後の行動変容を定量的に把握する「研修転移」の測定を開始しました。具体的には、研修で習得した学び(スキル・知識)を現場で実践・活用されているかを、研修実施後1~3ヶ月後にアンケートを実施し確認しています。受講者が具体的な行動事例を振り返ることで内省を促すと同時に、研修効果や定着率を数値化し、研修内容と業績成果の関連性を可視化しています。これにより、人財育成施策の改善及び投資対効果の最適化に活用しています。
人財育成プログラムの例
(内勤社員実績)
| プログラム名 | 実施目的 | 一人当たりの 研修時間 | 年間参加人数 | ||
| 2025年3月期 | 2026年3月期 | ||||
| 階層別研修 | 役割・資格の変化に伴う、期待役割の認識及びマインドセットを目的に実施します。同時に会社の方向性と自身のキャリアビジョンを考える機会とします。 | 1~6日 (研修による) | 349名 | 729名 | |
| ビジネススキル | ビジネスパーソンとして求められる必須スキルを、社内のみならず社外人財との交流を通して学ぶことで、社内外で通用する普遍的なビジネススキルを体得できます。 | 1日~半年 | 35名 | 230名 | |
| 部門別マスタリー プログラム | ワコールにおける社内ナレッジの共有、知識伝承、組織開発等を目的に社内外の講師による研修・セミナーを開催します。 | 7時間~ | 1,390名 | 252名 | |
| セルフラーニング | Eラーニングを活用した「いつでも、どこでも」学べるコンテンツ提供と主体的な能力開発・自己研鑽を支援する制度があります。 | 自己啓発援助制度 | - | 38名 | 24名 |
| 通信教育・Eラーニング | - | 470名 | 737名 | ||
※2025年7月の制度変更に伴い、一部プログラムを再編成しています。
(外勤社員実績)
| プログラム名 | 実施目的 | 一人当たり の研修時間 | 年間参加人数 | 研修転移率 | |
| 2025年3月期 | 2026年3月期 | ||||
| 昇格時研修 | 各等級への期待値や役割行動を理解すると同時に、経営理念の浸透を図り、必要なマインドやスキルを習得することで、組織全体のパフォーマンス向上と円滑なチーム運営につなげます。また、昇格を機会に自身のキャリアについて考える機会としています。 | 6時間~ | 75名 | 79名 | 60% |
| 役割任命時研修 | 役割任用者(スーパーバイザーや店長等)としての店舗管理、人財育成に関する責任を理解し、人財育成に関わるマインドセットを行い、効率的な業務志向と組織目標の達成を支援します。 | 6時間~ | 78名 | 48名 | 65% |
| シーズンビジネス トレーニング | 販売チャネルごとのシーズン戦略や商品知識の理解、接客シミュレーションを通して接客手法を学び、LTVの最大化を目指します。 | 6時間~ | 830名 | 1,682名 | - |
| スタンダード トレーニング | 接客の基本を身に付けた中堅クラスのスタッフを対象とし、ブランドイメージを体現する接客(会話力、提案力)を習得し、更なる顧客満足度向上と売上拡大を目指します。 | 6時間~ | 550名 | 727名 | 55% |
| 接客強化塾 | タブレット端末を活用した人財育成の一つとして、事業所から離れたメンバーにもリアルタイムでお客さまへの接客販売スキルの向上や新たに取り組みの理解浸透に取り組んでいます。 | 45分 | - | 1,142名 | - |
Ⅲ.健全な組織風土・文化の醸成
ⅰ.マネジメント力の強化
■ 基本方針
当社グループは、経営戦略の的確かつ迅速な実行を通じて組織全体の成果を最大化するため、マネジメント力の強化を人的資本戦略における最重要課題の一つと位置づけています。変化の激しい事業環境下においては、過去の成功体験や固定化された手法に依存するのではなく、状況に応じて自らの判断軸で意思決定し、その結果に責任を持つ「自律革新型人財」の育成が不可欠です。
この考えに基づき、当社ではマネジメントを単なる役割や技術(スキル)としてではなく、個々の判断軸や組織への向き合い方といった「在り方」そのものとして捉え直すことを重視しています。ビジョンの実現と戦略の実行を牽引し、かつ従業員一人ひとりの力を組織の成果へと結びつけることのできるマネジメント人財の計画的な発掘・育成・任用を一貫して推進してまいります。
■ 主な取り組み
マネジメント力の強化に向け、以下の取り組みを体系的に実施しています。
・次世代リーダーの計画的な発掘と育成
サクセッションプランに基づき、将来の経営を担う人財を早期に発掘し、長期的な視点で育成する仕組みを構築しています。
<早期選抜と育成機会の提供>20代後半からの経営視点の醸成を図っています。本取り組みでは、ヒューマンアセスメントを単なる「選抜の場」ではなく、強み・弱みをフィードバックし成長を促す「育成の場」と位置づけ、ポテンシャルのある人財に対して計画的な育成機会を提供しています。
・マネジメントの質を高める研修体系
マネジメント層に対し、その役割と責任に応じた体系的な研修プログラムを提供しています。
<マネジメント・ライセンス制度>実際に担う役割と成果を重視する「マネジメント・ライセンス制度」を導入しました。論文、外部機関によるヒューマンアセスメント、役員面接といった多面的な要素に加え、財務会計やITに関する知識・資格取得を必須要件とすることで、マネジメントの質を担保しています。
・健全な組織文化の醸成
個の力を最大限に引き出し、組織の成果へとつなげるためには、心理的安全性の高い組織文化が不可欠であるとの認識のもと、以下の取り組みを推進しています。
<フィードバック文化の醸成>経営職を対象とした360度多面観察を年1回実施し、上司・同僚・部下からの客観的なフィードバックを成長の糧とする仕組みを運用しています。また、継続的に開催し、経営層と従業員が直接対話する機会を設けることで、経営方針の浸透と現場の実態の共有を図るとともに、その場で従業員から出た意見、リクエストに対して後日フィードバックを行いフィードバック文化の醸成に取り組んでいます。
ⅱ.DE&Iの推進
当社グループは、従業員一人ひとりの働きがいを高める仕組みを追求しつつ、人的資本の量的・質的な適正化を図ることにより、健全な企業風土と強固な経営体質の構築を進めています。多様な人財や価値観を受容し相互の信頼関係を深め、従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮できる職場環境の実現を目指しています。引き続き、多様なキャリアパスや柔軟な働き方の選択肢を拡充し、変化の激しい市場環境に適応した意思決定を可能とするため、従業員の多様性を活かす人財施策を推進してまいります。
<女性活躍の推進>㈱ワコールでは、顧客・従業員の多くが女性であること、また多様な価値観を経営の意思決定に反映する必要があることから、女性活躍推進を重要な経営課題と位置づけています。女性特有のライフステージに応じた就労環境の整備や柔軟な働き方の実現を進めるとともに、性別や年齢に関わらず能力や成果に応じた公正な登用の仕組みを整備しています。
<女性の管理職への登用>㈱ワコールは、重要な意思決定に関わる人財の多様性を確保するため、管理職層のジェンダーバランスを経営課題と位置づけ、2029年3月期中に部長級以上の女性比率を30%以上とすることを目標としています。2026年4月1日時点の課長級以上の女性比率は32.2%(管理職ライセンス保有者を含むと41.6%)である一方、部長級以上は依然として18.8%であるため、育成・登用施策を強化していきます。
具体的には、後継者プールにおけるジェンダーバランスを確認しながら計画的な育成を行うとともに、社内外のキャリアコンサルタントによるキャリア相談を通じたキャリア形成支援、並びに能力・成果に基づく昇格・登用制度の運用を推進しています。また、柔軟な働き方の選択肢拡大の一環としてコアタイムなしの「スーパーフレックスタイム制度」を導入し、継続的なキャリア形成を支援しています。
育成施策として、多様性が企業の価値創造に資することへの理解を促し、無意識の偏りを抑えた公正な意思決定を浸透させることを目的としたアンコンシャスバイアス研修を実施しています。今期までに経営層及び部・課長層への研修を完了しており、次期は対象を全従業員へ拡大する予定です。
これらの施策を通じ、女性を含む多様な人財が重要な意思決定に参画できる環境整備を進め、組織の多様性向上と経営判断の高度化を図ってまいります。
<男女間の賃金差異>男女の賃金差異は当社・㈱ワコールで49.7%(正社員50.0%、パート・有期58.9%、総合職67.2%、管理職90.9%)となっています。同一役割における男女間の賃金差は設けておらず、この差異の主な要因は以下の3点です。
・管理職に占める男性比率が約70%であること。
・近年は新卒・総合職採用において女性比率が上昇し、入社10年以下では65%が女性であること。
・女性は65%が販売職、男性は86%が総合職であり、職種による賃金水準の差が影響している。
これらの構造的課題の解決に向け、特に総合職採用(新卒・経験者)においてジェンダーバランスを意識しつつ、これまで以上に能力やパフォーマンスに基づく登用、任用を行い、マネジメント・リーダー層の多様性を実現していきます。
<海外各社における管理職登用>当社グループは、米国・欧州をはじめとした海外各法人において、代表(社長)や主要経営ポストに現地人財を積極的に登用しています。また、㈱ホンコンワコール及び㈱フィリピンワコールの代表(社長)は現地の女性が務めています。
今回より海外を含む連結グループ会社の管理職(課長級以上)の女性比率の公表を開始しました。個社別の状況には差があるものの、総じて当社グループの海外各社においては、日本国内以上に女性登用が進んでいますが、今後も多様な現地人財の採用と登用を推進し、各市場での顧客視点に基づく事業成長と競争力強化を図ります。
<障がい者雇用>当社グループでは全員がいきいきと働き続けるために必要な研修や個別面談を通じて環境改善・就労支援を行っています。2018年に設立したワコールアイネクスト㈱では特例子会社として多様な働き方を実施し、数値目標にとどまらず、相互信頼のもとすべての人が活躍できる職場づくりを進めています。2025年7月からは新しい人事制度も導入し、個々の特性や意欲に応じた活躍機会の拡大を目指しています。
<多様なお客さまへの対応方針に基づく対応>2026年1月には、㈱ワコールの全従業員を対象に、「ビジネスと人権」に関する動画研修を実施しました。本研修により、人権尊重の基本的な考え方への理解を促進し、より多様なお客さまへの配慮だけでなく、取引先・地域社会を含む幅広いステークホルダーに対して適切に対応するための基盤整備を進めています。
ⅲ.Well-beingの実現
中長期経営戦略フレーム「VISION 2030」で掲げる「高い感性と品質で、ひとりひとりのからだとこころに、美しさと豊かさを提供し、『世界のワコールグループ』として進化・成長する」ことを実現するためには、重要なステークホルダーである従業員の働きがいを高め、生産性向上につなげることが不可欠です。
㈱ワコールは、従業員エンゲージメント向上の観点から、心身の健康、働き方、キャリア形成、社会とのつながりといった多面的な領域でWell-beingを推進しています。
<多様な働き方推進>㈱ワコールでは、業務特性やライフスタイルに応じた柔軟な働き方を実現するため、コアタイムなしスーパーフレックスタイム制度を導入し、時間と場所を自律的に選択できる環境整備を進めています。また、勤務地限定制度の運用や京都地区事業所の再編を通じて、ワコール版ABW(Activity Based Working)を推進し、生産性向上を目的とした働き方改革を進めています。
あわせて、長期自己啓発休暇制度など、従業員の学び直しやキャリア形成を支援する制度も拡充しています。これらの取り組みにより、実績・成果を重視しつつ、個々を尊重し、ビジネスパートナーとして互いを認め合う組織風土づくりを推進しています。
<ワークライフバランス・メンタルヘルス支援>当社は、従業員が安心して働き続けられる職場環境の整備を目的として、ワークライフバランス施策及びメンタルヘルス支援を強化しています。ストレスチェックの実施と結果の分析を活用し、専門家によるカウンセリング支援に加えて、高ストレス組織に対する職場活性化面談を実施することで、組織課題の可視化と改善を進めています。これらの取り組みにより、従業員の心身の健康保持・増進と働きやすい職場づくりを推進しています。