有価証券報告書-第15期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/24 15:12
【資料】
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【項目】
153項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、従来から一貫して経営理念を「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」と定め、経営方針としては、「ユニークな中堅メーカーとしての強みを生かして、顧客満足度の最大化を推進し、利益の最大化を目指す」としております。株主を中心とし、更に従業員、取引先、地域社会、環境面での様々なステークホルダーに貢献し、その活動を通じて当社グループの企業価値の向上を追求することをもって経営方針としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社が経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、これに持分法による投資損益等を反映した経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。
(3)中長期的な経営戦略
当社グループは、将来目指すべき姿として長期目標(営業利益100億円、ROE8%)を定め、更なる成長の機会探索と既存事業の体質強化に取り組んでおります。
第5次中期経営計画の「成長戦略施策」としては、
①偽造防止機能や意匠性等を付与した高付加価値の「パッケージ分野の強化」
②特殊機能紙における既存/新技術を活かした「環境対応型製品の開発」
③合成繊維・セルロースナノファイバー等の付加価値の高い「高機能シート分野での上市・拡販」
④固形燃料事業の拡大や廃棄物の再資源化を目指した「廃棄物利活用事業の強化・新規立上げ」
⑤環境対応樹脂(生分解性)を使用したラミネート技術での「新ブランド『NatuLami(ナチュラミ)』の立ち上げ」
などを掲げております。
上記の成長戦略に加えて、アフターコロナの新常態における市場変化に対応するべく、当社グループの「既存事業の体質強化」の施策として、
⑥日本製紙株式会社と連携した「段原紙・クラフト紙の生産体制の強化」
⑦全社的な「業務プロセスの見直し」による収益基盤の安定
⑧特殊素材事業での「工場設備・生産体制の見直し」によるコスト削減
などを重点に取り組んでまいります。
(4)経営環境
①企業構造
当社は、2010年、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社を吸収合併することで設立され、主たる事業である製紙業においては「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」、製紙以外の事業領域については「環境関連事業」によって構成されております。また、横の連携も円滑に行うことを目的とした“事業本部制”を採用することにより、各セグメントが持つ技術や生産力をより相乗的に発揮できるように運営を行っております。
「産業素材事業」は、段ボール原紙やクラフト紙等の産業用紙事業において日本製紙株式会社と合弁事業を行っており、当事業の売上については、その大半が持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けのものです。したがって、当事業の業績は主に持分法利益の取り込みにより経常利益に反映されることになります。
「特殊素材事業」は、ファンシーペーパー等の特殊印刷用紙及び特殊機能紙など高付加価値製品の製造・販売を行っており、事業の主体は特種東海製紙本体となります。
「生活商品事業」は、子会社2社により構成されており、業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、ラミネート紙及びコート紙の製造・販売を行っております。
「環境関連事業」は、当社保有の南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業、当社サプライチェーンを起点としたリサイクルビジネスの拡大を目的とした資源再活用事業によって構成され、今後の新規事業の要の一つとしてさらなる拡大を進めてまいりたい事業分野であります。
以上のように、規模の経済が働く事業分野においては他企業との合弁事業にて、独自の強みを活かすことのできる「多品種・小ロット・高付加価値」事業である特殊素材事業については、特種東海製紙本体により事業を推進、他のセグメントについては基本的に子会社による事業展開を行う体制を採っており、この事業本部制は適切に機能していると判断しております。
②市場環境・顧客動向
a.産業素材事業
当事業においては、段ボール等包装材に用いられる段ボール原紙、クラフト紙の製造を行っております。国内では新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、経済活動が回復基調にあること、加えてアジアを中心とした旺盛な段ボール需要も想定されることから、産業用包装素材の需要については今後も堅調に伸長するものと認識しております。
b.特殊素材事業
当事業においては、出版向けやハイエンドパッケージ向けファンシーペーパー、特殊機能紙など、小ロット多品種・高付加価値・高価格製品の製造・販売を行っております。従来からのデジタル化の流れによる出版部数の伸び悩みに伴って、出版向けファンシーペーパー等の特殊印刷用紙については、市場が縮小傾向にありますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が大幅に減少した前期からは需要の回復が進みました。特殊機能紙については、電子化による影響で情報用紙の需要は減少傾向にあるものの、海外向け一部製品は引き続き堅調な需要を見込んでおります。
c.生活商品事業
当事業においては、トイレットペーパーやペーパータオル等、業務用及び家庭向けの衛生用紙や、紙を基材としたラミネート等加工製品の製造・販売を行っております。トイレットペーパーについては、国内の人口減少によって需要の伸びは見込めない一方、ペーパータオルについては、新型コロナウイルス感染拡大以降、社会全般の衛生意識の向上に伴って引き続き需要増加の傾向にあります。また、ラミネート等の加工品は、経済活動の緩やかな回復基調に伴って需要が増加傾向にあります。
d.環境関連事業
当事業においては、資源リサイクルを積極的に推進すべく産業廃棄物中間処理業等を営む中で、主に廃プラスチック等を有効活用した固形燃料(RPF)及び原燃料用木質チップの製造・販売等を行っております。中長期的には国内の社会課題解決に向けた動きとともに、環境負荷低減を目指した資源リサイクルの活動は重要性を増し、関連する事業のニーズは今まで以上に伸びるものと認識しております。
③競合他社の状況
当社グループは製紙業を主たる事業としており、事業セグメントごとに異なった競合他社が多数存在します。いずれの事業セグメントにおいても、総需要に対して生産能力が超過気味であるという構造になっており、業界全体での競争は厳しさを増しているということが、共通認識となっております。その中で、比較優位にある分野を強化しつつ如何に差別化できる業務を行っていくかが極めて重要であると認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①原燃料価格の高騰
急速に変化する地政学的リスクと昨今の為替相場の動向から、日本企業の原燃料調達に係る不確実性が急速に高まっております。その結果、重油をはじめとする各種原燃料価格の高騰が進んでおり、当社グループの製紙業全般にとって利益圧迫要因およびリスクとなっていることから、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。
当社グループはこの課題に対応するため、燃料調達構造の見直しや分散化等業務プロセスを全社的に見直すとともに、徹底した経費削減および原価低減努力、製品価格の適正化等既存事業の体質強化を実施し、不確定性が高い事業環境において収益の改善・安定化を図ってまいります。
②紙製品への需要構造の変化
国内人口の減少やデジタル技術の発展、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、情報媒体としての紙製品への需要減退が進む一方で、脱プラスチック化への社会的要請、衛生意識の高まりや在宅需要の増加等、紙製品への需要構造は大幅に変化しており、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。
当社グループはこの課題に対応するため、既存事業の体質強化による収益基盤の安定化を図るとともに、以下の2点に取り組んでまいります。
a.環境対応型紙製品の開発
脱プラスチック化の社会的要請が紙製品の新たな需要を生む可能性があると見込んでおります。プラスチック容器に代替するウエットモウルド事業や幅広い機能性を活用したTT-PACKAGEといったパッケージ分野をはじめ、リチウムイオン二次電池のセパレータ向けCNF製品やラミネート技術における樹脂層の薄膜化等、引き続き脱プラスチック・減プラスチックに貢献する製品開発に努めてまいります。
b.優位性のある紙製品の拡大
高水準な品質管理と技術力により他社との差別化を図ってまいります。高い品質が求められる特殊機能紙については製品への異物混入を極めて低位に抑えること等により一層の付加価値化を図り、シェアの維持・拡大に努めてまいります。また、兼ねてより開発に注力しております非セルロース系繊維素材については、継続的な機能性強化に取り組むとともに、多様な顧客ニーズに対応した拡販を推進してまいります。
③製紙以外の新たな事業領域の拡大
当社グループは、環境関連事業を製紙業に次ぐ成長分野として認識しております。当セグメントでは、南アルプス社有林の有効活用を目指すとともに、資源再活用事業における固形燃料の生産体制強化および産業廃棄物処理の領域拡大に努めることで、製紙以外の新たな収益基盤の構築を図ってまいります。
④持続可能な社会に向けた対応
当社グループは、カーボンニュートラルをはじめとした持続可能な社会に向けた取り組み、およびそれに関わる情報開示の充実を対処すべき課題として認識しております。脱プラスチック化に関わる新たな紙素材の開発に加え、化石燃料使用量のさらなる削減によりCO₂の発生減少に努めてまいります。また、グループ内の廃棄物ゼロエミッション化を目指し、ボイラーから発生する廃棄物の再資源化の検討を進めてまいります。情報開示につきましては、昨年12月にカーボンニュートラルに向けたロードマップを公開、本年3月には統合報告書を開示いたしました。6月にはTCFDフレームワークに基づく情報開示を予定しており、今後さらなる開示の充実を目指してまいります。
⑤資産の有効活用
当社グループは、積み上げられた財務余力による成長戦略への積極的な投資を対処すべき課題として認識しており、既存事業の強化や新製品の開発に加え、新たな事業領域の拡大に向けたM&Aを積極的に実施してまいります。