有価証券報告書-第112期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/30 14:49
【資料】
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【項目】
181項目

対処すべき課題


文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
1.経営方針
中長期的な会社の経営戦略
連結中期経営計画「The TOP 2021」
当社グループは長期的に目指す姿を設定し、2019年より連結中期経営計画「The TOP 2021」を推進している。当社グループが持続的に発展し、社会から信頼・評価されるためには、株主様をはじめ、お客様、お取引先、地域関係者、従業員など、全てのステークホルダーの皆様にご満足いただけるよう、企業価値の向上を図ることが重要である。当社はこれをグループ経営理念として明確にし、株主価値・顧客価値・社会価値の最大化に向けた経営を推進する。
当社グループは、「The TOP 2021」の完遂により収益力基盤の強靭化と収益変動幅の抑制を図り、企業価値を向上させるとともに、日立化成㈱(2020年10月1日より昭和電工マテリアルズ㈱に社名変更)との2021年7月の実質的な統合、2023年1月の法人格統合を目指す。当社は、昭和電工マテリアルズ㈱との統合により将来に向けて成長基盤を確立するための“統合新会社の長期ビジョン(2021~2030)”を2020年12月10日に発表した。
昭和電工マテリアルズとの統合により、短中期シナジーの実現及び両社技術の融合やイノベーションを通じて成長事業の規模を拡大させるとともに、収益体質のさらなる改善を図る。
両社は統合新会社として、今後もグローバル競争の激化や市場構造の変化が予想される化学産業において顧客企業に新たな機能・価値を提供し続け、持続可能な社会の実現に貢献していく。
(1)統合新会社の長期ビジョン(2021~2030)
① 存在意義(パーパス)と目指す姿
統合新会社としての存在意義(パーパス)として、当社は「化学の力で社会を変える」ことを掲げていく。ここには先端材料パートナーとして、時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献するという意味合いが包含されている。また、この存在意義(パーパス)の充足に向けた目指す姿として「世界で戦える会社」「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」の2つを掲げ、実現に向けて邁進していく。
昭和電工の川中の素材技術、昭和電工マテリアルズの川下のアプリケーション技術、両社の評価・解析技術、これらの融合でブレークスルーを実現する世界トップクラスの機能性化学メーカーとして、お客様にワンストップソリューションと新たな機能を提供し、持続可能な社会全体へ貢献していく。
② ポートフォリオマネジメント
目指す姿の実現を可能にするのが、今回の統合によって構築された補完性の高い事業ポートフォリオである。コア成長事業、次世代事業、安定収益事業、基盤事業、この役割の異なる4つの事業群がそれぞれに高い競争力を持って役割を発揮することで、市場に新たな機能を提供し続け、持続的な成長を実現していく。
コア成長事業エレクトロニクス、モビリティ
成長市場で圧倒的な規模感とトップシェア製品を有し、今後の当社の成長を担う事業
次世代事業ライフサイエンス
有望市場で将来の成長に繋がる優位ポジションにあり、次世代の柱へと育成していく事業
安定収益事業カーボン、石油化学、デバイスソリューション、産業ガス、基礎化学品、アルミ圧延品、アルミ缶、コーティング、電子機能材、エネルギー
競争環境の落ち着きつつある市場で高い競争力・シェアを有し、安定した利益で
投資資金を捻出する事業
基盤事業セラミックス、機能性化学品、アルミ機能部材
他の3つの事業群の競争力を支える無機・有機・アルミの幅広い技術・素材で、各事業のイノベーションを支える技術プラットフォーム事業

また、多様な事業で基盤事業の技術・素材を磨き続けることで、将来の新たな有望市場へも事業を広げていく。
③ コア成長事業/次世代事業
当社グループの今後の成長をけん引していくコア成長事業/次世代事業の中で、当社は特に以下の5事業を「成長事業」として、中長期的に当社グループの成長の中心となる事業と位置づけている。
エレクトロニクス半導体ウエハ工程事業
半導体パッケージ工程事業
モビリティマルチマテリアル・大型一体成形モジュール事業
熱マネジメント(パワーモジュール)事業
ライフサイエンス再生医療事業

上記5つの成長事業の2020年の合計売上規模は約2,300億円であり、両社の技術シナジーを含むイノベーションを通じて年平均成長率10%を達成しながら、2030年にはこれを6,000億円規模にまで拡大させていく。またこの5事業におけるシナジーを含むイノベーション部分で、2025年に180億円、2030年に480億円の営業利益を創出していく。
④ 統合による技術融合
当社は川中の素材技術と川下のアプリケーション技術を併せもつハイブリッド型の先端材料企業として、成長事業を中心とするイノベーションを統合後の両社の技術融合によって実現していく。昭和電工の川中素材の「作る化学」と、昭和電工マテリアルズの川下アプリケーションの「混ぜる化学」、両社の評価・シミュレーション、構造解析、計算科学の「考える化学」、この3つの技術の融合によって市場に幅広い機能を提供し続けて事業を強化・創出するとともに、事業を通じて技術を継続的に強化し、この好循環によって自律的なポートフォリオの変革と持続的な高成長を実現する。
⑤ SDGsへの貢献
当社では、国際社会と当社グループの持続的発展のために、社員一人ひとりが何をしていくべきかを「私たちの行動規範」に定めて行動している。また、SDGsの17の目標にも沿った事業活動を進め、統合新会社としても多様な技術・事業を通じてSDGsに貢献し、ESGへの取組みをより一層強化していく。
(2)長期数値目標
① 長期数値目標の考え方
当社の経営理念は、価値創造の主役である従業員、株主様、お客様、取引先など、すべてのステークホルダーの皆様にご満足いただくことを目指し、企業価値の向上を図ることである。
<グループ経営理念>私たちは、社会的に有用かつ安全でお客様の期待に応える製品・サービスの提供により企業価値を高め、株主にご満足いただくと共に、国際社会の一員としての責任を果たし、その健全な発展に貢献します。
2020年12月10日に発表した統合新会社の長期ビジョン(2021~2030)において、EBITDAマージン、ネットD/Eレシオ等を統合新会社としての長期数値目標として設定し、その達成のために邁進していく。
② 長期数値目標
2020年実績
(年間換算ベース)*
2021年予想2025年2030年
TSR**(%)中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指す
売上高(兆円)1.251.281.61.8~1.9
EBITDA(億円)8971,6513,200-
対売上EBITDA(%)7.2%12.9%20%-
ROE(%)△20.3%△3.7%15%-
ネットD/Eレシオ
(倍)
1.841.961.0倍に
近づける
-

*年間換算ベースは、制度会計ベースの昭和電工マテリアルズの2020年1月期首から6月までの業績数値を合算した値(但し、下期ののれん等償却費と同等額を含む)。
** TSR:Total Shareholders Return 総株主還元
③ 2025年に向けた利益改善のドライバー
2020年のEBITDAマージンは7.2%(年間換算ベース)だったが、2021年以降、エレクトロニクスやモビリティを中心とした事業成長、前述のイノベーションの取り組み、構造改革によって2025年にEBITDAマージン15%まで改善させ、さらにこれらの取り組みにCOVID-19の影響からの回復や市況変動を加えることで、2025年にEBITDAマージン20%を達成する目標とした。なお、市況が想定から外れた場合においても、事業再編や追加の構造改革を実施して挽回し、EBITDAマージン20%は必達目標とした。
④ 株主還元方針
今後の事業成長を通じて獲得したキャッシュの配分については、統合後の状況に鑑み、当面は借入金返済を進めてネットD/Eレシオを1.0倍に近づけることと利益拡大に向けた成長投資を最重視しつつも、可能な限りでの安定配当との両立を図っていく。また、中長期的な総還元性向は30%を実現することを目指していく。
⑤ 報酬体系の考え方
当社グループの経営層としてグループの目標達成・企業価値向上に着実にコミットしていくため、役員報酬の一部を経営指標と紐づけ、連動させていく方針である。具体的な指標や項目ごとのウェイト等は検討中だが、TSRやEBITDAマージン、ROE、ネットD/Eレシオ等のKPIとの紐づけを想定している。
(3)短中期シナジー
当社グループの持続的な成長を実現するには、ポートフォリオの厳選、組織の生産性を最大化していくことが重要と考えている。その一環として2023年までの短中期では、事業ポートフォリオ再編に伴う事業売却に加え、収益体質の改善や資産のスリム化、組織の完全統合を確実に実行していく。詳細については2020年12月10日のリリースを参照。
今後のマイルストンとして、2021年7月に実質統合(指揮命令系統の統一やコーポレート機能の統合)、同年10月の本社統合を経たのち、2023年1月に法人格統合することを目指しており、統合に向けたPMIを順調に推進していく。
2.経営環境及び当社グループの対処すべき課題
新興国において急速な経済成長により生活水準が向上する一方で、CO2排出量などの地球環境への負荷増大を抑制するための取り組みが世界全域で求められている。社会動向を市場性の観点から見た場合、電子産業分野の一層の高品位化・高速化・高容量化・小型化の進展による利便性・快適性の向上、地球温暖化対策・環境保全の推進による健康で安全な社会の実現、化石エネルギー依存度低下・省エネルギー推進によるエネルギー供給保障等の人類共通の諸課題に対応するための新技術の開発と事業化が求められている。
当社グループは、連結中期経営計画「The TOP 2021」に基づき、当社グループは長期的な事業の成長に大きく舵を切り、将来に向けた成長基盤を確立させ、株主価値・顧客価値・社会価値の最大化に向けた経営を今後も推進していく。
また、当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、企業価値の持続的な向上により社会から信頼・評価される「社会貢献企業」を実現するために、2015年、「コーポレート・ガバナンス基本方針」を定め、その充実に取り組んでいく。
特に、グループ全体のリスク管理機能強化を重要課題として捉え、多面的な施策を適時実施していく。
「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページを参照。
https://www.sdk.co.jp/ir/governance.html
なお、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大に対し、当社グループは、お客様、お取引先、従業員など関係する皆様の安全・健康を第一に考え、COVID-19の拡大防止に向けた多くの施策を実行している。具体的には、主要な事業所、部署においてテレワークによる在宅勤務を導入し、特に本社に関しては抜本的な業務の見直しも併せて行うことにより感染症拡大以降継続して出社率を最小限に抑制する対応を実施している。また、感染懸念時における特別休暇の付与、会食の自粛要請など従業員の安全確保と感染拡大防止を最優先にした施策を適時適切に行っている。同時に、生産拠点では、感染防止策を徹底した上での生産活動の維持に努め、お客様に対する製品供給の継続など社会インフラ機能の維持に注力している。