有価証券報告書-第140期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/25 14:06
【資料】
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【項目】
167項目

対処すべき課題

当社グループは使命である「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」に基づき、創立100周年となる2026年に向けて長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』を策定しました。『Kuraray Vision 2026』で掲げたありたい姿である「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を目指し、社会との価値共創を図りながら、他社と一味違うスペシャリティ製品及びサービスを世界に提供する企業であり続けます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2020年12月31日)現在において当社が判断したものです。
当社グループは、長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』において、以下3つの基本方針を定めています。
① 競争優位の追求
顧客ニーズに基づく高付加価値製品・用途の開発推進や、今後、さらに存在感が増す新興国・地域を、新たな機会創出の場として捉え、戦略的に取り組みを強化することや、ITを活用した生産・業務プロセスの革新・改善を行うことで競争力の強化を行っていきます。
② 新たな事業領域の拡大
独自技術の研鑽と外部技術の取り込みによる新事業の創出やM&A・アライアンスによる新領域の獲得、技術とサービスを組み合わせたビジネスモデルの確立を行うことで事業領域を拡大していきます。
③ グループ総合力強化
ビジネスの拡大に合わせたグローバル経営基盤の構築、世界の多様な優秀人材を惹きつける働きがいのある職場づくり、クラレグループのさらなる一体感の醸成を行っていくと同時に、コンプライアンス徹底の取り組みを強化していきます。
上記基本方針に基づく具体的な施策の実施を通して、コアセグメントであるビニルアセテート関連事業のさらなる強化と、それに次ぐ第2、第3の柱の確立、将来に向けた新事業の創出を行い、持続的な成長に向けた新しいポートフォリオの構築を目指しています。
2018年にスタートした中期経営計画「PROUD 2020」期間において、世界最大の活性炭メーカーであるCalgon Carbon Corporationを買収し、さらなる事業拡大を目指して米国での活性炭設備増強を決定しました。また、イソプレンにおけるタイ新工場建設の投資を決定しました。さらに、光学用ポバールフィルムや水溶性ポバールフィルムの設備増強など、成長に向けた戦略の具体的施策についても着実に実行し、将来の安定したポートフォリオ構築への取り組みを行いました。
最終年度である2020年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で経済活動が停滞し、多くの産業で需要が大きく減退しました。第3四半期連結会計期間より中国や米国を中心に需要の回復が見られたものの、通期では計画を下回る結果となりました。
新型コロナウイルス感染拡大による影響が不透明であることに鑑み、次期中期経営計画を2022年から当社の創立100周年となる2026年までの5か年計画とし、2021年は単年度経営計画とします。2021年は「PROUD 2020」で投資決定をしたイソプレンのタイ新工場建設の着実な推進や、環境ソリューション事業(活性炭事業)におけるCalgon Carbon Corporationとの統合シナジー発現の加速とともに、ビニルアセテート関連事業のより一層の拡大に注力します。また、グループ全社のデジタル戦略を進め、業務プロセス改革や迅速な事業戦略の構築を可能にするとともに、デジタル人材の育成にも注力します。このように競争優位性を強化しつつ、次期中期経営計画に繋げていく所存です。
また、2018年5月に米国子会社で外部委託業者の作業員に負傷を伴う火災事故が発生し、損害賠償を求める民事訴訟が提起されています。一部の原告とは和解に至りましたが、現在も訴訟は係属中です。二度とこのような事故を起こさないために、2019年より本社主導で海外主要化学プラントの安全監査を実施し、安全対策の見直し・強化を図っています。2020年は欧州の2工場、米国の2工場で安全監査を実施し、2019年に抽出した課題の改善状況の確認とともに、新たな課題の抽出を行いました。今後も新たに抽出した課題に対処するとともに、プラントにおける安全に関する設備面の強化、及び管理システムやマニュアル見直し・改善、社員教育の充実などソフト面の強化を継続的に取り組んでまいります。