訂正有価証券報告書-第112期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

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2019/03/12 14:50
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業績等の概要

(1) 業績
当社グループは、2017年12月期より日本のコンシューマープロダクツ事業において販売制度の改定を行い、併せてIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」などを早期適用しています(参照104ページ 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要な会計方針 (20)会計方針の変更)。なお、比較を容易にするため、これらの影響を補正し、さらに為替変動の影響を除いた増減率を以下、「実質」として記載しております。
注:以下、( )付きの数字はマイナス表示
売上高営業利益営業利益率税引前利益当期利益親会社の
所有者に帰属する当期利益
基本的
1株当たり
当期利益
(億円)(億円)(%)(億円)(億円)(億円)(円)
2017年12月期14,8942,04813.72,0431,4861,470298.30
2016年12月期14,5761,85612.71,8341,2791,266253.43
増減率2.2%
実質5.6%
10.4%-11.4%16.2%16.2%17.7%

当連結会計年度は、2017年から2020年までの4ヵ年にわたる花王グループ中期経営計画「K20」の初年度として、順調にスタートすることができました。連結業績は、2017年10月30日公表の連結業績予想を達成し、8期連続の営業利益及び当期利益の増益、5期連続の営業最高益を達成することができました。
当社グループの主要市場である日本のトイレタリー(化粧品を除くコンシューマープロダクツ)及び化粧品市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると、2017年1月から12月において、金額では堅調に推移しました。特にEコマースチャネルが大きく伸び、デパートチャネルを中心にした化粧品のインバウンド需要は大きく伸長しました。またトイレタリー商品の平均単価は、1ポイント上昇しました。
このような状況の下、当社グループは、研究開発を重視し消費者や顧客の立場にたった“よきモノづくり”に基づき、消費者ニーズの変化に対応した高付加価値商品の発売や育成などに努めるとともに、コストダウン活動などに取り組みました。
売上高は、前期に対して2.2%増の1兆4,894億円(実質5.6%増)となりました。コンシューマープロダクツ事業では、日本において、市場の伸長、新製品・改良品の発売及び販売促進活動のさらなる強化などにより、売り上げは伸長しました。海外では、アジアと米州で売り上げは前期を上回りました。ケミカル事業では、天然油脂価格の上昇に対応した販売価格改定に努め、前期を上回りました。
利益面では、天然油脂などの原料価格が上昇しましたが、日本とアジアのコンシューマープロダクツ事業の増収効果などにより、営業利益は2,048億円(対前期192億円増)、営業利益率は13.7%となり、税引前利益は2,043億円(対前期209億円増)となりました。当期利益は、1,486億円(対前期207億円増)となりました。
基本的1株当たり当期利益は298.30円となり、前期の253.43円より44.87円増加(前期比17.7%増)しました。
当社グループが経営指標としているEVA(経済的付加価値)は、NOPAT(税引後営業利益)が大きく増加し、前期を170億円上回り904億円となりました。
当期の海外連結子会社などの財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。
第1四半期
(1-3月)
第2四半期
(4-6月)
第3四半期
(7-9月)
第4四半期
(10-12月)
米ドル113.71円[115.31円]111.13円[108.05円]110.97円[102.38円]112.92円[109.41円]
ユーロ121.13円[127.15円]122.28円[122.05円]130.35円[114.24円]132.95円[117.88円]
中国元16.50円[ 17.63円]16.19円[ 16.55円]16.63円[ 15.36円]17.07円[ 16.01円]

注:[ ]内は前期の換算レート
セグメントの業績
売上高営業利益
通期増減率通期増 減
(億円)
2016年
12月期
(億円)
2017年
12月期
(億円)
(%)実質
(%)
2016年
12月期
2017年
12月期
(億円)利益率
(%)
(億円)利益率
(%)
ビューティケア事業6,0165,860(2.6)2.15118.55769.865
ヒューマンヘルスケア事業2,7312,9437.813.02599.538713.1127
ファブリック&ホームケア事業3,4523,357(2.7)1.578122.676122.7(20)
コンシューマープロダクツ事業計12,19812,160(0.3)4.41,55112.71,72314.2172
ケミカル事業2,7383,10313.310.829710.83039.86
小 計14,93615,2632.25.51,848-2,026-178
セグメント間消去又は調整(360)(369)--8-22-14
合 計14,57614,8942.25.61,85612.72,04813.7192

販売実績
(億円、増減率%)
通期日 本アジア米 州欧 州合 計
化粧品2016年2,153186261842,550
2017年1,979224281952,427
増減率(8.1)20.67.06.2(4.8)
実質増減率(0.6)30.23.55.42.1
スキンケア・ヘアケア製品2016年1,9833316894643,467
2017年1,9593087234423,433
増減率(1.2)(6.7)4.9(4.6)(1.0)
実質増減率3.17.93.0(7.9)2.1
ビューティケア事業2016年4,1375177166486,016
2017年3,9385337516385,860
増減率(4.8)3.15.0(1.5)(2.6)
実質増減率1.215.93.1(4.1)2.1
ヒューマンヘルスケア事業2016年1,9088220-2,731
2017年1,9759670-2,943
増減率3.517.6--7.8
実質増減率7.425.8--13.0
ファブリック&ホームケア事業2016年3,01142317-3,452
2017年2,94838821-3,357
増減率(2.1)(8.3)21.2-(2.7)
実質増減率1.60.417.7-1.5
コンシューマープロダクツ事業2016年9,0561,76273364812,198
2017年8,8621,88877363812,160
増減率(2.1)7.15.5(1.5)(0.3)
実質増減率2.616.83.5(4.1)4.4
ケミカル事業2016年1,1895884355262,738
2017年1,2396965266423,103
増減率4.218.221.022.113.3
実質増減率4.314.017.816.210.8
セグメント間売上高の消去2016年(315)(31)(1)(14)(360)
2017年(318)(34)(1)(16)(369)
売上高2016年9,9302,3201,1671,16014,576
2017年9,7822,5501,2981,26414,894
増減率(1.5)9.911.29.02.2
実質増減率2.916.28.85.05.6

注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業では、コンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。また比較を容易にするため、前期の売上高を同様の方法で記載しています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。
売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前期の33.8%から37.0%となりました。
コンシューマープロダクツ事業
売上高は、前期に対して0.3%減の1兆2,160億円(実質4.4%増)となりました。
日本では、数多くの高付加価値商品の発売や提案型販売活動の強化などに取り組んだほか、Eコマースへの対応を強化し、売上高は、前期に対して2.1%減の8,862億円(実質2.6%増)となりました。
アジアでは、中国やインドネシアなどを中心に好調に伸長し、売上高は、7.1%増の1,888億円(実質16.8%増)となりました。
米州の売上高は、5.5%増の773億円(実質3.5%増)となり、欧州の売上高は、1.5%減の638億円(実質4.1%減)となりました。
営業利益は、ヒューマンヘルスケア事業の増収効果があり、1,723億円(対前期172億円増)となりました。
当社は、[ビューティケア事業]、[ヒューマンヘルスケア事業]、[ファブリック&ホームケア事業]を総称して、コンシューマープロダクツ事業としております。
[ビューティケア事業]
売上高は、前期に対して2.6%減の5,860億円(実質2.1%増)となりました。
化粧品の売り上げは、前期に対し4.8%減の2,427億円(実質2.1%増)となりました。海外では、中国を中心にアジアが好調に推移し、売り上げを大きく拡大させることができましたが、日本では、実質の売り上げは、前期をわずかに下回りました。2016年に大きく伸長したインバウンドによる売り上げが減少したほか、中価格帯スキンケアブランドが苦戦しました。一方、化粧品ビジネスの大改革は着実に進んでおり、土台美容液「ソフィーナiP」は、アジアでの展開もスタートし好調に推移しています。また、グローバルブランド「KANEBO」は日本、アジアに加えて欧州での展開を開始しました。デパートチャネルで展開しているプレステージブランドの「SUQQU」や2017年秋に発売した「エスト ザ ローション」が好調に売り上げを伸ばしました。
スキンケア・ヘアケア製品の売り上げは、前期に対し1.0%減の3,433億円(実質2.1%増)となりました。スキンケア製品では、「ビオレ」が日本、アジア、米州で好調に推移しており、欧州での展開も本格化させ、順調に売り上げを伸ばしました。また乾燥性敏感肌ケアの「キュレル」は、エイジングケア市場への新製品の投入や化粧品カテゴリーの品揃えも進んだことなどもあり、日本、アジアで売り上げは大きく伸長しました。一方、ヘアケア製品は、日本では、マス市場の縮小の影響を受けて、売り上げは前期を下回りました。欧州では、ヘアケアブランド「ジョン・フリーダ」の売り上げは前期を下回りましたが、ヘアサロン向け製品は前期に対してほぼ横ばいでした。
なお、2017年12月には、米国のスーパープレミアム価格帯のヘアサロン向けブランド「Oribe(オリベ)」を所有するOribe Hair Care, LLCの買収を発表しました。
営業利益は、576億円(対前期65億円増)となりました。
[ヒューマンヘルスケア事業]
売上高は、前期に対して7.8%増の2,943億円(実質13.0%増)となりました。
フード&ビバレッジ製品の売り上げは、多くの分野から体脂肪にかかわる特定保健用食品や機能性表示食品が発売されたことなどで、特定保健用食品「ヘルシア」の価値を十分に伝えることが出来ず苦戦しました。
サニタリー製品の売り上げは、前期を上回りました。ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、売り上げを大きく伸ばしました。日本の売り上げは、激しい競争の中、国内市場で前期を上回り、中国市場向けの越境Eコマースも大きく伸長しました。中国では、2016年度から実施してきた販売構造改革が順調に推移したことやEコマース向けの出荷が伸びたこともあり、売り上げは大きく伸長しました。インドネシアでも、中間所得層向けの現地生産品が順調に売り上げを伸ばしました。生理用品「ロリエ」は、売り上げを伸ばしました。日本では競争が激しく苦戦しましたが、アジアでは順調に売り上げを伸ばしました。
パーソナルヘルス製品の売り上げは、前期を上回りました。オーラルケアは、新製品の発売や高機能品が順調に推移し、売り上げは前期を上回りました。「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」は、前期に比べインバウンド需要が減少しましたが、日本で新たに使用者を開拓し、売り上げは順調に伸長しました。
営業利益は、日本とアジアの増収効果などにより、387億円(対前期127億円増)となりました。
[ファブリック&ホームケア事業]
売上高は、前期に対して2.7%減の3,357億円(実質1.5%増)となりました。
日本では、ファブリックケア製品の売り上げは、実質では前期を上回りました。衣料用洗剤は、消費者の菌に対する意識が高まる中、「アタックNeo抗菌EX Wパワー」を改良しましたが、厳しい競争環境の中、売り上げは前期に比べてほぼ横ばいに推移しました。また、柔軟仕上げ剤は順調に推移しました。ホームケア製品の売り上げは、高付加価値商品が消費者に受け入れられ、堅調に推移しました。食器用洗剤「キュキュット」では、泡スプレータイプが市場に浸透し、売り上げを伸ばしました。
アジアでは、タイやインドネシアの衣料用洗剤で、厳しい価格競争がありましたが、売り上げは前期に比べ、ほぼ横ばいになりました。
営業利益は、原材料価格の上昇の影響などにより、761億円(対前期20億円減)となりました。
ケミカル事業
売上高は、前期に対して13.3%増の3,103億円(実質10.8%増)となりました。
油脂製品では、グローバルで原料価格の上昇に伴う販売価格の改定に努めたことなどにより売り上げは伸長しました。機能材料製品では、日本や中国などでの自動車生産台数の増加に加えて、日本のインフラ関連分野の市況も回復傾向にあり、売り上げを伸ばしました。スペシャルティケミカルズ製品では、情報材料関連製品やハードディスク関連製品などの需要が伸び、売り上げは順調に推移しました。なお、環境負荷低減に貢献する水性インクジェット用顔料インクの開発と事業のグローバル展開を加速するため、米国と欧州の会社を買収し、米国の会社は2016年7月から、欧州の会社は2017年4月から、それぞれ連結子会社となりました。
営業利益は、原料価格の急激な変動の影響を受けましたが、売り上げが伸長し、303億円(対前期6億円増)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前連結会計年度末に比べ400億円増加し、3,431億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,858億円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、△961億円となりました。
以上の結果、フリー・キャッシュ・フローは、897億円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、△532億円となりました。
なお、キャッシュ・フローの詳細は、「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態の分析」に記載しております。
(3) IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
当連結会計年度における主要な項目及び差異の金額は、以下のとおりであります。
なお、当該差異の金額については、当社グループは日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、概算額で記載しております。
(収益)
日本基準では、当社グループが顧客に対して支払う対価である販売促進費などの一部について、販売費及び一般管理費に含めて表示しておりましたが、IFRSでは売上高から控除しております。この結果、売上高が457億円減少しております。
(のれんの償却停止)
日本基準では、のれんの償却については、実質的に償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSでは償却を停止しております。この結果、販売費及び一般管理費が日本基準より128億円減少しております。
(退職給付に係る費用)
①日本基準では、退職給付に係る期待運用収益及び利息費用は退職給付費用として売上原価、販売費及び一般管理費に含めて表示しておりましたが、IFRSでは退職給付に係る利息純額を金融費用として表示しております。この結果、売上原価、販売費及び一般管理費から金融費用に△54億円の表示組替が発生しております。
②日本基準では、数理計算上の差異は、発生時にその他の包括利益で認識し、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を発生年度から純損益に認識しておりましたが、IFRSでは、発生時にその他の包括利益として一括で認識し、直ちに利益剰余金に振り替えております。また、日本基準では、過去勤務費用について、発生時にその他の包括利益で認識し、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を発生年度から純損益に認識しておりましたが、IFRSでは発生時に純損益として認識しております。これらの結果、売上原価、販売費及び一般管理費が日本基準より5億円減少しております。
③日本基準では、退職給付費用として、退職給付債務に割引率を乗じて利息費用を、年金資産に期待運用収益率を乗じて期待運用収益をそれぞれ認識しておりましたが、IFRSでは退職給付債務と年金資産の純額に割引率を乗じた利息純額を認識しております。この結果、金融費用が62億円増加しております。