有価証券報告書-第12期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/19 16:40
【資料】
PDFをみる
【項目】
70項目

対処すべき課題

当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。
(1) 2025年ビジョン
当社グループは、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」となることを2025年ビジョンとして掲げております。
具体的には、2025年にがん事業を中心とするスペシャルティ領域※1が中核事業となっており、各国市場に適合したリージョナルバリュー製品※2を豊富に持ち、SOC※3を変革する先進的な製品・パイプラインが充実し、同時に効率的な経営による高い株主価値を実現した姿を目指しております。
※1 スペシャルティ領域:病院・専門医で主に処方される医薬品。
※2 リージョナルバリュー製品:各国・各地域の事業戦略に適合した製品。
※3 SOC:スタンダードオブケアの略。現在の医学では最善とされ、広く用いられている治療法。
(2) 第4期中期経営計画
2016年度から2020年度までの第4期中期経営計画を2025年ビジョンに向けた転換を実現するための5カ年計画と位置付け、「2017年度パテントクリフの克服」とその後の「持続的成長基盤の確立」という2つの経営課題に取り組んでおります。
① 経営課題1:2017年度パテントクリフの克服
主力製品である高血圧症治療剤オルメサルタン等のパテントクリフを克服し、2017年度の売上収益9,300億円、営業利益1,000億円の確保を目指して参ります。
売上収益の目標達成に向けて、グローバル主力品の抗凝固剤エドキサバンに加え、日本の主力製品及び米国ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.事業の成長加速を図って参ります。
また、2016年度までに実施した構造改革による利益創出力の強化に加え、さらなるコスト削減及び資産の適正化に取り組み、営業利益1,000億円の確保を目指して参ります。
② 経営課題2:持続的成長基盤の確立
持続的成長基盤を確立し、2020年度の売上収益1兆1,000億円、営業利益1,650億円、ROE 8%以上の目標達成を目指して参ります。また、2020年度時点で5年以内に市場投入しかつピーク時売上収益1,000億円以上を期待できる後期開発品を3~5品目保有することを目指して参ります。
持続的成長基盤を確立するため、次の6つの戦略目標を掲げ、その達成に向けた取り組みを進めて参ります。
(ⅰ) 戦略目標
(a) エドキサバンの成長
グローバルな上市戦略の着実な展開、確立された製品特性の継続的訴求、製品力強化を目的とした新規エビデンスの創出を進めて参ります。日本では製品力と質の高い営業力によってNo.1製品に育成し、欧州では提携会社との協業も利用し、欧州全域で本格的に展開を図り、エドキサバンの成長を加速し、2020年度の売上収益1,200億円以上の主力品に育てて参ります。
[2016年度に取り組んだ主な課題]
・日本、ドイツ及び韓国における売上収益の拡大、並びに新規の経口抗凝固剤市場におけるシェアの伸長
・欧州及びアジアにおける上市・承認国の拡大
・新規エビデンス創出の加速

(b) 日本No.1カンパニーとして成長
日本No.1カンパニーとして、イノベーティブ医薬品事業の強みを活かし、そこにワクチン事業、ジェネリック医薬品事業、OTC医薬品関連事業の3つの事業を加え、予防、セルフメディケーション、治療までの様々な社会的ニーズ、医療ニーズへ的確に対応することにより、名実ともにNo.1カンパニーとして成長することを目指して参ります。
[2016年度に取り組んだ主な課題]
・主力6製品(ネキシウム、メマリー、プラリア、ランマーク、エフィエント及びテネリア)の売上収益の拡大
・MR評価No.1の獲得
・ビムパットの発売、効能追加申請及びバイオシミラー9品目の導入等による製品ポートフォリオの拡充
・オルメサルタン及び他社品の製造販売承認の取得によるオーソライズド・ジェネリック事業の強化
・医療用医薬品市場における売上収益シェアの伸長

(c) 米国事業の拡大
第一三共Inc.では、モバンティック、CL-108、ミロガバリンによって、疼痛領域での事業拡大を図り、2020年度の売上収益1,000億円以上を目指して参ります。
ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.では、鉄注射剤のインジェクタファーとジェネリック注射剤を伸長させ、2020年度の売上収益1,500億円を目指して参ります。
[2016年度に取り組んだ主な課題]
・乱用防止特性を備えたオピオイド鎮痛薬2剤の導入等による疼痛領域事業の強化(第一三共Inc.)
・インジェクタファーの成長加速及び鉄注射剤市場における売上収益シェアの伸長(ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.)

(d) がん事業の立上げ・確立
後期開発品の上市によってがん事業を立上げ、初期開発品の着実な開発推進、外部資源の獲得による製品・開発品の充実、新組織によるがん研究開発の加速を図り、売上収益を2020年度400億円以上、2025年度3,000億円規模の事業に育てて参ります。
[2016年度に取り組んだ主な課題]
・がん領域の研究開発体制の一元化及び豊富な経験と実績を兼ね備えた開発責任者の採用
・優先的に資源配分を行うフランチャイズの設定(抗体薬物複合体と急性骨髄性白血病)
・当社独自の抗体薬物複合体技術を活用したパイプラインの充実(DS-8201の有望な臨床試験データの獲得と同技術を応用した開発候補品目の拡充)
・バイオ医薬品の開発体制の強化及び大型設備投資

(e) SOCを変革する先進的新薬の継続的創出
疾患のターゲットとして、がんを重点領域と定め、疼痛、中枢神経系疾患、心不全・腎障害、希少疾患を次世代領域と位置付け、研究組織をバイオベンチャーモデルへ転換するとともに、パートナリング、オープンイノベーション、トランスレーショナルリサーチを利用してSOCを変革する先進的新薬創出を目指して参ります。また、核酸医薬や細胞治療等先進的技術の治療応用実現を進めて参ります。
[2016年度の主な進捗及び成果]
・先進的技術の導入(虚血性心不全の細胞治療薬ハートセル及びがん領域における細胞治療薬KTE-C19等)
・共同研究開発及びオープンイノベーションの推進(肺がん治療薬、がん免疫薬、バイスペシフィック抗体、バイオマーカー、疼痛治療に向けた新規低分子治療薬、及び毛細血管幹細胞等)

(f) 利益創出力の強化
利益創出力の強化として2015年度までに実施した取り組みに加え、今回の中期経営計画期間中に、グローバルレベルでの生産体制の最適化及び調達機能の強化を進めて参ります。同時にグループ全体に亘る大幅なコスト削減・効率化を行い、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費の見直しを進め、利益創出力の強化を図って参ります。
[2016年度に取り組んだ主な課題]
・グローバル生産体制の最適化(第一三共ケミカルファーマ㈱の平塚工場の生産終了、及び米国ベツレヘム工場の売却)
・フランスを中心とした欧州営業体制の再編
・グローバル研究開発体制の再編(ドイツ子会社U3ファーマGmbHの閉鎖、及びインド子会社第一三共インドLTD.と国内子会社アスビオファーマ㈱の閉鎖決定)
・原材料等の仕入、設備投資及び支出経費全般に亘るコスト削減

(ⅱ) キャッシュの創出と成長投資等への配分
第4期中期経営計画期間中は、成長投資を優先しつつ、株主還元も充実していく方針であります。
2015年度末における手元流動性約7,000億円に、今後研究開発費控除前のフリー・キャッシュ・フローと資産スリム化によって生みだすキャッシュを加えた約2兆2,000億円が5カ年計画の原資となります。成長投資として研究開発に9,000億円、事業開発に5,000億円、残りを株主還元、設備投資、運転資金に充当する考えであります。
[2016年度に取り組んだ主な課題]
・超長期無担保社債の発行による長期安定資金の確保
・政策保有株式の圧縮

(ⅲ) 株主還元方針
株主還元策としては、総還元性向※4を期間中100%以上、配当金は普通配当を年間70円以上とする方針であります。配当は安定的に行い、自己株式取得を機動的に実施して参ります。
※4 総還元性向:(配当金の総額+自己株式の取得総額)/親会社の所有者に帰属する当期利益
[2016年度の実績]
・1株当たり70円の普通配当の実施(1株当たり35円の中間配当の支払、及び1株当たり35円の期末配当の支払予定)
・自己株式の取得(約500億円、約2,025万株)