訂正有価証券報告書-第10期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2017/06/07 9:21
【資料】
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【項目】
70項目

対処すべき課題

現在、当社が対処すべき課題は次のとおりであります。
(1) エドキサバンの各国での早期市場導入と大型製品への育成
オルメサルタンに続く主力品として期待しているエドキサバンについては、心房細動領域及び静脈血栓塞栓症の両適応症に関して、当連結会計年度に日米で販売を開始いたしました。米国において使用制限が付いたことによる影響を最小限に止め、これまで培ってきた循環器に強みを持つ当社グループの営業基盤をフル活用して、着実に成長させるべく全力で取り組んでおります。続いて2015年4月に承認勧告を受けた欧州、今後発売が見込まれるアジア、中南米地域においても円滑な市場導入を果たし、グループの総力をあげて主軸製品に育成して参ります。加えて、製品価値最大化に向けたライフサイクルマネジメントを推進いたします。
(2) オルメサルタンの収益最大化
2016年秋以降の日米欧における特許期間の満了に備えて、現在の当社グループにおける最主力品であるオルメサルタンの収益最大化に全社で取り組むとともに、特許期間の満了後の影響を最小限に止める戦略を策定・実行して参ります。
(3) プラスグレルの日本における拡大と各国での維持成長
当連結会計年度に日本において販売開始した抗血小板剤プラスグレルについては、医療関係者との強い信頼関係を通じて、発売後1年経過し得られた有効性・安全性に関する評価をより浸透させ急速拡大させて参ります。また、欧米、アジア、中南米においても継続成長を図って参ります。
(4) 日本市場No.1に向けたシェア拡大
国内主力品(オルメテック・レザルタス、メマリー、ネキシウム、エフィエント、リクシアナ、テネリア・カナグル、ランマーク・プラリア)へプロモーションを集中することにより、日本市場シェアNo.1の獲得に向けて、一丸となって取り組んで参ります。
また、北里第一三共ワクチン㈱及びジャパンワクチン㈱との連携によるワクチン事業の拡充、第一三共エスファ㈱によるジェネリック事業の拡充、並びに第一三共ヘルスケア㈱によるヘルスケア事業の収益力向上に努めて参ります。
(5) 米国市場における維持拡大と新興国市場への取り組み
第一三共Inc.では、主力品オルメサルタン、エドキサバン、プラスグレルへの注力に加え、外部資源の導入を進めており、当連結会計年度にCL-108、キザルチニブ、モバンティック等の販売権、共同販促権を獲得し、オルメサルタンのパテントクリフを見据え収益の維持拡大に努めております。
ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.では、前連結会計年度に発売した貧血治療剤インジェクタファーの販促活動領域拡大による売上急伸を梃子として、大幅増収を実現いたします。
また、新興国では、中国におけるオルメサルタンをはじめとする主力品の伸長を成長牽引力とするASCA(アジアや中南米)事業の一層の拡大を目指して参ります。
(6) 研究開発力の強化
研究開発における重点領域を循環代謝領域・癌領域・フロンティア領域と定め、さらに医療ニーズの高い疼痛への取り組みも強化しております。
個別化医療へのアプローチ、バイオマーカー開発の強化、前連結会計年度に設立したベンチャーサイエンスラボラトリーからの成果獲得等、新薬候補の継続的創出に向けた研究開発の加速と生産性の向上を図って参ります。
また、戦略的な開発投資を推進し、エドキサバンに続く新たな自社グローバルパイプラインの確立を進めて参ります。ミロガバリン、キザルチニブ、CL-108等のフェーズ3試験を確実に推進して参ります。
さらに、自社の製薬技術の高度化により、新薬開発スピードの加速、高付加価値製剤の創出に繋げて参ります。
(7) ワクチン事業における課題
北里第一三共ワクチン㈱は、2011年に厚生労働省より新型インフルエンザワクチンの「細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業」の事業者に採択されましたが、ワクチン抗原の精製過程における収率低下等の要因により、国からの要請後6ヶ月以内に4,000万人分のワクチンを供給することが保証できない状況にありました。生産工程の見直しによる収率向上を果たし、2016年6月までには安定供給できるよう生産体制を整備して参ります。
他の製品についても、安定的に供給できる生産基盤の確立と原価低減による収益の改善を目指して参ります。
(8) 収益力向上への取り組み
継続的な投資原資を確保するため、日米欧において構造改革を行い、組織のスリム化、要員の適正化を図って参りました。
今後も、製造原価についてはエドキサバンの製法改良等による原価低減を推進し、研究開発費については選択と集中による効果的な資源投入を行い、販売管理費については国内外の事業運営体制の継続的な見直しによるさらなる効率化を図る等、グループ全体にわたるコスト削減による収益力向上への取り組みを進めて参ります。
また、資産の効率化によるキャッシュ・フローの改善にも取り組んで参ります。
(9) 株式の大量取得を目的とする買付けに対する基本的な考え方
当社は、株式の大量取得を目的とする買付けが行われる場合、それに応じるか否かは、株主の皆様の判断に委ねられるものと考えており、経営権の異動を通じた企業活動の活性化等の意義を否定するものではありません。したがって、当社は買収防衛策を予め定めておりません。
しかし、一般に高値売抜け等の不当な目的による企業買収の提案があり、それが当社の企業価値・株主共同の利益の向上に資さない場合には、当社としてその提案に対抗することは当然の責務と認識しております。そのため、当社は株式取引や株主の異動状況等を常に注視しており、実際に当社株式の大量取得を目的とした買付者が出現した場合には、社外の専門家を交えて買収提案の評価を行い、当社の企業価値・株主共同の利益への影響を慎重に判断し、これに資さない場合には、個別の案件に応じた適切な対抗措置を講じて参ります。
(10) 新たな中期経営計画の策定
当社グループは、オルメサルタンのパテントクリフ(特許期間満了による影響)を中期的な最大の経営リスクとして捉え、その克服のため「持続的成長の実現と収益性の改善」、「第一三共/ランバクシーを軸とするグループビジネスの深化と成果創出」を目指して参りました。
2014年4月に、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.がランバクシー・ラボラトリーズLtd.を吸収合併し、当社がその対価としてサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式を受領することを合意し、その後インド国内外で必要手続を全て終え、2015年3月に合併を完了いたしました。
同時に、今後のあるべき経営方針を検討して参りました結果、経営の方向性を
① イノベーティブ医薬品をコアとした事業戦略に回帰する。
② 日米市場を中心に事業基盤を強化し、新興国への投資は中国を優先する。
③ 研究開発力の強化を図る。
と定めました。
この経営の方向性を基に、2016年3月を目処に、新たな中期経営計画(2016年度~2020年度)を策定して参ります。