有価証券報告書-第9期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/23 16:36
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64項目

対処すべき課題

当社グループは、中長期にわたって、世界の多様な医療ニーズに応えるとともに持続的成長力を備えたGlobal Pharma Innovatorを目指しており、2013年度を起点とする5年間の第3期中期経営計画(2013~2017年度)を策定し、目標達成に向けグループ一丸となって取り組んでおります。
当社は中長期的な成長にとって、新興国市場への事業展開が不可欠であると捉え、2008年にランバクシー・ラボラトリーズLtd.を連結子会社といたしましたが、今般、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.がランバクシー・ラボラトリーズLtd.を吸収合併し、当社がその対価としてサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式を受領することを合意し、2014年4月6日に契約が成立いたしました。今後、当社はサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.とのパートナーシップを通じて、新興国市場での事業のさらなる発展を図ってまいります。
今回の決定を踏まえ、あるべき経営戦略を再検討し、当社グループの第3期中期経営計画の修正等も含め、あらためてご報告いたします。
現在、当社が対処すべき課題は次のとおりであります。
(1) オルメサルタンの維持拡大
欧米におけるオルメサルタンビジネスは、他剤との激しい競合下においてプロモーションの効率化を徹底するとともに、引き続き製品ポテンシャル拡大に努めます。
その他の地域では、配合剤を中心にさらなる拡大を目指します。
(2) エドキサバン、プラスグレルの大型製品への育成
次期主力品として期待する抗凝固剤エドキサバンにつきましては、心房細動(AF)に伴う脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、さらには、深部静脈血栓症、肺塞栓症患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の治療及び再発抑制に関して、日米欧で承認申請を行いました。2014年度中の承認取得を念頭に置き、全地域においてスムーズな市場導入ができるよう鋭意準備を進めております。加えて、長期的な成長を目指し、適応拡大等、製品の価値を高めるようなライフサイクルマネジメントを推進してまいります。
また、2014年3月、抗血小板剤プラスグレルの国内製造販売承認を取得いたしました(製品名:エフィエント)。今後、多くの医療関係者への新たな治療提案に努め、早期に大型製品へと育成してまいります。
(3) 日本市場における伸長
今後、強力な製品ポートフォリオが構築される日本市場で、重点製品の売上拡大を中心に取り組みを強化し、グループ全体の収益力向上を図ります。
最主力品オルメテックは、低用量から高用量まで豊富なラインアップを揃え、降圧効果、持続性を訴求するプロモーションを継続して新規処方を獲得するとともに、効果不十分症例では配合剤レザルタスへの切替を推進し、市場での確固たる競争優位を築いてまいります。ネキシウムは、強い酸分泌抑制効果のさらなる訴求に努め、同薬効ナンバー1を目指してまいります。メマリーは、治療意義の理解を促すことによる新規処方獲得、及びドネペジル等との併用推進に努め、さらなる拡大を図ります。
また、北里第一三共ワクチン㈱、ジャパンワクチン㈱との協業によるワクチン事業の拡充、第一三共エスファ㈱を核とするジェネリック事業の拡充及び第一三共ヘルスケア㈱によるOTC事業の収益力向上を一層図ってまいります。
(4) 新興国市場への事業拡大
今後著しい成長が見込まれる新興国への事業展開に関しましては、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.とのパートナーシップを通じて、さらなる発展を図ってまいります。
加えて、当社グループの中国、ブラジル等新興国拠点での新製品の発売やプロモーション強化を推進してまいります。
(5) 研究開発の強化
Global Pharma Innovatorとして持続的な成長を実現するために、当社の強みの源泉である研究開発の強化を引き続き推進してまいります。
第3期中期経営計画においては、臨床初期段階から承認取得・上市に至るプロセスにおいて、定量的な目標を設定し、効率的かつ生産性の高い研究開発活動を目指しております。
抗凝固剤エドキサバンにつきましては、主要国での2014年度中の承認取得を目指しており、また今後の営業展開に貢献しうる追加適応取得を含むライフサイクルマネジメントを進めてまいります。
エドキサバンに続く大型新薬の候補の育成にも力を入れており、2014年度におきましては疼痛治療剤Mirogabalin(DS-5565)の第3相臨床試験の開始、癌領域プロジェクト群の進捗を計画しております。
また、より競争力を持った新薬パイプラインの創出を実現させるために、バイオベンチャーやアカデミアとの連携等、オープンイノベーションの取り組みを加速しております。
(6) 品質保証水準の向上
当社が2008年10月に連結子会社化いたしましたランバクシー・ラボラトリーズLtd.は、インド国内2工場の品質管理問題に関し、2012年1月に米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)との同意協定書を締結し、品質保証の強化に取り組み、当社も支援してまいりました。しかし、2013年9月にはモハリ工場が、2014年1月には原薬工場であるトアンサ工場が米国向け輸出禁止措置の対象となりました。
また、米国ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.のシャーリー工場につきましては、2011年9月以来、FDAより品質管理上の課題を指摘されておりますが、2013年度は課題解決のための設備投資を行い、FDAの再査察への準備を進めてまいりました。同時に今後の生産能力拡大に向けた取り組みも推進しております。
当社は、このような状況にあることを真摯に受け止め、さらに品質保証水準を向上させるべく、当社グループの総力を挙げて取り組んでまいります。
(7) ワクチン事業における課題
当社のグループ会社である北里第一三共ワクチン㈱は、2011年8月に厚生労働省の「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業(第2次事業)」の「細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業」の事業者に採択され、2014年3月末までに、6ヶ月以内に4,000万人分のワクチン供給体制を構築する計画でありましたが、ワクチン抗原の精製過程における収率低下等の要因により、本供給体制を確立できない状況となりました。
今後、生産工程の見直しによる収率向上及び早期の供給体制確立という責務を果たし、わが国の医療に貢献すべく、当社グループの総力を挙げて取り組んでまいります。
(8) 収益力向上への取り組み
各部門、各地域において組織運営体制の最適化を推進するとともに、予算の効率運用徹底や調達機能の強化等により経費削減の成果を創出し、さらなる収益力向上に努めてまいります。
また、引き続き原価低減の推進、適正な卸在庫水準、グローバルサプライチェーン体制の構築等を進めてまいります。
(9) 株式の大量取得を目的とする買付けに対する基本的な考え方
当社は、株式の大量取得を目的とする買付けが行われる場合、それに応じるか否かは、株主の皆様の判断に委ねられるものと考えており、経営権の異動を通じた企業活動の活性化等の意義を否定するものではありません。したがって、当社は買収防衛策を予め定めておりません。
しかし、一般に高値売抜け等の不当な目的による企業買収の提案があり、それが当社の企業価値・株主共同の利益の向上に資さない場合には、当社としてその提案に対抗することは当然の責務と認識しております。そのため、当社は株式取引や株主の異動状況等を常に注視しており、実際に当社株式の大量取得を目的とした買付者が出現した場合には、社外の専門家を交えて買収提案の評価を行い、当社の企業価値・株主共同の利益への影響を慎重に判断し、これに資さない場合には、個別の案件に応じた適切な対抗措置を講じてまいります。