有価証券報告書-第9期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/23 16:36
【資料】
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【項目】
64項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2014年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。
当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上収益
売上収益は、前連結会計年度に比べ1,236億円(+12.4%)増収の1兆1,182億円となりました。第一三共グループにつきましては、高血圧症治療剤オルメサルタン、抗血小板剤プラスグレル、抗潰瘍剤ネキシウム、アルツハイマー型認知症治療剤メマリー等が伸長いたしました。また、ドル・ユーロに対する円安の寄与(約537億円)もあり、当社グループ全体では増収となりました。
② 売上原価
売上原価は、前連結会計年度に比べ638億円(+18.8%)増加の4,023億円となりました。主に売上収益増加に伴う増加であります。当連結会計年度についても、原価低減への取り組みを継続的に実施しております。
③ 販売費及び一般管理費、研究開発費
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ402億円(+10.8%)増加の4,132億円となりました。研究開発費は、前連結会計年度に比べ68億円(+3.7%)増加の1,912億円、対売上収益研究開発費比率は17.1%となりました。当社グループは、今後とも収益動向を踏まえた研究開発活動の効率化を進めると同時に、企業価値の向上と将来にわたる成長力獲得を目指した積極的な研究開発投資を実施してまいります。
④ 営業利益
これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ128億円(+13.0%)増益の1,116億円、対売上収益営業利益率は10.0%となりました。
⑤ 税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度に比べ39億円(+4.1%)増益の998億円となりました。
⑥ 法人所得税費用
法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ165億円(+55.0%)増加の464億円となりました。
⑦ 親会社の所有者に帰属する当期利益
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度に比べ31億円(△4.8%)減益の609億円となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
① 重要な製品の売上げ動向
当社グループでは、高血圧症治療剤オルメサルタン・フランチャイズ、抗血小板剤プラスグレル及び経口FXa阻害剤エドキサバンをグローバル戦略製品と位置付けております。競合激化、価格への圧力増大といった環境下においても、日本市場及び欧米市場での最大化を図ってまいります。その売上の動向は当社グループの経営成績に重要な影響を与えるものと考えております。
② 研究開発活動・ライセンス活動の動向
当社グループは、継続的に新製品を発売し成長を続けるために、グローバルに研究開発活動・ライセンス活動を推進しております。
後期開発段階においては、抗血小板剤プラスグレルについて、日本において2014年3月に経皮的冠動脈形成術を伴う虚血性心疾患の適応で製造販売承認を取得し、2014年5月にエフィエントの製品名で発売いたしました。さらに、虚血性脳血管障害患者を対象とした第3相臨床試験を推進しております。
経口FXa阻害剤エドキサバンについて、2013年9月に、深部静脈血栓症、肺塞栓症患者におけるVTEの治療及び再発抑制に関するHokusai-VTE試験の結果を欧州心臓病学会にて発表いたしました。また、2013年11月に、AFに伴う脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制に関するENGAGE AF-TIMI 48試験の結果を米国心臓協会年次学術集会にて発表いたしました。両試験において、対照薬であるワルファリンに対して有効性で非劣性、安全性で優越性を示すことが確認され、主要評価項目を達成いたしました。この結果に基づき、2013年12月に日本で、続いて2014年1月に欧米で、VTE及びAFに関する承認申請を行いました。
さらに、米国アムジェン社から日本国内の開発、販売に関して導入した抗RANKL抗体デノスマブについて、2012年4月にランマークの製品名で多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変の適応症で発売し、2013年6月にプラリアの製品名で骨粗鬆症治療剤として発売いたしました。また、2014年5月に骨巨細胞腫を対象とした効能追加承認を取得いたしました。さらに、乳癌術後補助療法を対象としたグローバル第3相臨床試験、関節リウマチ患者を対象とした国内第3相臨床試験を推進しております。
これらの開発品について、当局の審査動向によっては、将来の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、製品として発売するに至るまでには、相当額の投資が必要となります。収益動向等を踏まえ効率的な研究開発投資に努めておりますが、想定以上の投資が必要となり経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験で新薬の候補品が期待通りの効果を得られなかった場合や、候補品の安全性に疑問が残る結果となった場合、開発期間の延長、開発の中断あるいは中止を行う場合があり、経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
③ 日本及び諸外国の薬価制度の動向
日本、米国及び欧州等の薬価基準及び薬剤の価格は、各国政府の規制、保護を受けておりますが、規制あるいは保護の制度変更等により、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
④ サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.によるランバクシー・ラボラトリーズLtd.の吸収合併について
当社は、連結子会社ランバクシー・ラボラトリーズLtd.の軌道回復による企業価値の向上を検討してまいりましたが、今般、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.がランバクシー・ラボラトリーズLtd.を吸収合併し、その対価として当社がサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式を受領することが最善の方法であると判断し、2014年4月6日、3社において必要な契約を締結するに至りました。
本合併は、ランバクシー・ラボラトリーズLtd.及びサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.両社の株主並びに規制当局の承認その他必要な手続の終了後、2014年12月末までに完了する予定であります。合併後のサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.は、グローバルジェネリック企業としても、インドの製薬企業としても指折りの企業となります。当社にとっては、本合併完了時にサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式を約9%保有し、取締役1名を派遣する権利を有することとなり、より強力なインド製薬企業とのパートナーシップを通じたハイブリッドビジネスの新展開を図ることが可能となります。
ランバクシー・ラボラトリーズLtd.及びサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の事業環境や競合状況の変化、各国薬事当局等に対する対応状況、各国の法規制等の遵守状況如何により、同社の事業計画遂行に支障が生じたり、同社の株式取得に際して当社が見込んでいたシナジーが実現できない可能性があり、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 財政状態
当連結会計年度末における資本合計は1兆75億円(前連結会計年度末比690億円増加)、資産合計は1兆8,540億円(前連結会計年度末比1,691億円増加)、親会社所有者帰属持分比率は52.9%(前連結会計年度末53.8%)となりました。資本合計は、当期利益の計上やその他の資本の構成要素の増加等により、増加いたしました。資産合計は、社債及び借入金の増加等により、資本合計と比較して増加額は大きくなっております。
② キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、期首に比べ81億円減少の1,831億円となりました。
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは、税引前利益998億円、減価償却費及び償却費515億円等の非資金項目のほか、法人所得税や米国司法省との和解費用の支払等による資金の減少により、前連結会計年度に比べ920億円減少の373億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、運用資産の取得や設備投資等により、前連結会計年度に比べ525億円支出増加の1,614億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債及び借入金の増加や配当金の支払等により、前連結会計年度に比べ1,586億円収入増加の1,003億円の収入となりました。
③ 資金需要
当社グループでは、今後もグローバル市場での事業展開を加速するため、主に日本、米国及び欧州において研究開発活動、ライセンス活動を継続するとともに、自社販売体制をより一層拡充してまいります。当社グループは、引き続き財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローの創出によって、当社グループの成長に必要な資金調達が可能であると考えております。