有価証券報告書-第130期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/24 15:49
【資料】
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【項目】
107項目
③ 戦略
TCFDシナリオ分析では、IPCC第6次評価報告書(AR6)等の中で示されたSSPシナリオや、国際エネルギー機関(IEA)「World Energy Outlook」等の気候関連シナリオをもとに、脱炭素社会に向けた厳しい対策がなされ、2100年までの気温上昇が産業革命時期比で1.5℃程度に抑えられる「1.5℃シナリオ」と、温室効果ガス排出が非常に高い水準で推移し、産業革命時期比で3.3~5.7℃(約4.4℃)上昇する「4℃シナリオ」を設定し、評価しました。
<シナリオ分析結果>「4℃シナリオ」(高排出シナリオ)
各国において追加的な気候変動対策が十分に導入・強化されず、温室効果ガス排出が非常に高い水準で推移し化石燃料への依存を前提とした経済成長が継続することにより、2100年時点の世界平均気温の上昇が産業革命前比でおおむね3.3~5.7℃(約4.4℃)となることを想定したシナリオです。移行政策が相対的に緩やかである一方、海面上昇や異常気象の激甚化等の物理リスクがより顕在化する状況を想定しています。
なお、当該シナリオは、現在の政策動向に基づく蓋然性の高い見通しを示すものではなく、物理リスクが大きく顕在化する場合における事業のレジリエンスを評価するためのストレスシナリオとして用いています。
IPCC第6次評価報告書(AR6)における、非常に高い温室効果ガス排出シナリオであるSSP5-8.5等の気候関連シナリオを参照しています。
・事業リスク(物理リスク)
4℃シナリオでは異常気象による生産設備への影響や製品原材料の供給停止、停電による工場停止等のリスクが想定されます。これらリスクに対しBCP(Business Continuity Plan)※6の策定による生産拠点や原材料調達先の分散化、安定電源の確保等の対策を進めています。特に近年、異常気象に起因する台風や豪雨により、重要なライフラインである送電網の寸断による被害が各地で発生しています。当社グループでは、安定的な電源確保のため、1960年代から主要生産拠点に自家発電設備を順次導入し、停電による操業停止リスクを回避しています。
また、気温や降水パターンの変化により、動植物の生息地域の変化や個体数の減少・死滅が発生するリスクもあります。これらの影響により、植物由来原料の供給不安定化や価格高騰の他、化石燃料の枯渇による石油由来原料の供給不安定化や価格高騰も想定されます。当社グループでは、植物由来原材料を使用するフィルムの薄手化や生産工程で発生する端材の原材料としての再利用、ビジネスイノベーション領域での複合機の再生活用(リユース)推進等、新たに投入する原材料使用量の削減を通じて、これらのリスク低減に取り組んでいます。
※6 Business Continuity Plan(事業継続計画)。自然災害やテロ、大規模なシステム障害等の危機的状況が生
じた場合に、重要な業務を継続し早期復旧できるように計画しておくこと。
・事業機会
気温上昇により、極端な高温、海洋熱波、大雨、干ばつ、熱帯性低気圧の発生頻度や強度が増加すると予測されます。こうした異常気象や、異常気象に伴う生態系や健康への影響に適応するための製品・サービスの需要が高まると見込まれます。
『社会インフラの強靭化』
異常気象が頻発する状況において、社会インフラの強靭化は重要な課題の一つです。当社グループは、レンズの高精度加工製造技術を活用し、夜間や荒天時でも河川や海面を監視できる高感度カメラの提供や、高精度画像解析・AI技術を用いた橋梁、堤防等の劣化診断技術により、気候変動への適応に貢献できると考えています。また、災害発生時における自治体の罹災対応プロセスのデジタル化により、自治体業務と住民の早期生活再建支援に貢献するソリューションの必要性も高まると予想されます。
『医療従事者の負担軽減及び医療アクセスの向上』
気温上昇は人々の健康にも大きな影響を及ぼします。感染症等の予期せぬ疾病拡大による医療従事者の負担増加や、台風・集中豪雨・熱波の頻度増加により患者や医療従事者の往来が困難になり、医療従事者が少ない国や地域において医療崩壊につながる可能性があります。当社グループは、医療IT技術や医用画像診断・AI技術をグローバルに展開することで、医療従事者の負担軽減や遠隔診断等による医療アクセス向上に貢献していきます。
「1.5℃シナリオ」
パリ協定が掲げる温度目標に即し、2100年までの世界平均気温の上昇を産業革命前比でおおむね1.5℃程度に抑えることを目指す経路を前提としたシナリオです。脱炭素社会の実現に向けて、カーボンプライシングの導入や再生可能エネルギーへの急速な転換、電化、省エネルギーの推進等、社会経済システムの大きな変革が必要となることから、主として移行リスク及び脱炭素関連の機会が顕在化する状況を想定しています。
国際エネルギー機関(IEA)「World Energy Outlook」のNet Zero Emissions by 2050シナリオ(NZEシナリオ)等の気候関連シナリオを参照しています。
・事業リスク(移行リスク)
1.5℃シナリオでは、脱炭素社会へ移行する過程で、化石燃料の使用を制限し技術革新を促す政策としての炭素税や、各国・地域の炭素税額格差による産業移転を抑制するための炭素国境調整措置の導入による財務リスクが生じる可能性があります。2024年度に当社グループが直接及び間接排出したCO2は919千トンでした。炭素税価格を2025年度下期に設定した社内炭素価格13,000円/トン-CO2とした場合、2024年度製造段階で排出したCO2は919千トン-CO2であり、約119億円(≒919千トン-CO2×13,000円/トン-CO2)の財務リスクとなります。
当社グループはCSR計画「SVP2030」の気候変動対応として、2040年度に自社で使用するエネルギーによるCO2排出量ゼロを目標とし、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの導入を両輪で進めています。2024年度の自社直接排出CO2(Scope 1+2)は、省エネや再生可能エネルギー導入により、基準年である2019年度比で18%削減しました。
・事業機会
人為的に排出されるCO2は主にエネルギー起因であるため、今後はエネルギー利用効率を最大限に高め、CO2排出を伴わない自然エネルギー(風力・太陽光・水力等)を主に利用する社会への移行が進むと予想されます。
『省エネルギー』
社会全体のエネルギー利用効率を高めるためには、まず製品やサービスにおいてエネルギー効率の高い方式が優先して採用されます。当社グループは、データ保存時のCO2排出を削減する大容量磁気テープによるデータアーカイブストレージシステムや、省電力性能を高めた複合機の提供を通じて、お客様の使用段階でのCO2排出削減に貢献しています。
『創エネルギー』
自然エネルギーの活用拡大に伴い、関連インフラの整備が進みます。そのうち海上も含め世界的に設置拡大が予想される風力発電設備は、高所や遠隔地等点検が困難な環境に設置されるため、設備の劣化診断や点検に対する技術向上が必要となります。当社グループは、撮像技術や精密成型技術を活用した高性能防振・超望遠カメラと、高精度画像解析・AI技術の組み合わせにより、風の強い海岸や洋上等の過酷な環境下でも、風力タービンのブレード欠陥を稼働中に点検・診断可能な技術開発を風力エネルギー供給会社と協働で進めており、風力発電設備の普及・安定稼働に貢献していきます。
『分散型社会に適応したソリューション・サービス』
自然エネルギーとの親和性を高めるためには、大都市への集中型社会から地方への分散型社会へ移行することが求められ、分散型社会での生活や事業活動を支えるソリューションが普及すると考えています。当社グループが提供する業務プロセスのデジタル化・自動化・ペーパーレス化を促進するソリューション・サービスは、リモートワークやハイブリッドワークといったビジネス面での分散型社会への対応と、省移動・省時間・省スペースによるCO2排出削減の両面で必要となり、今後さらに需要が拡大すると見込まれます。
また、生活を支える医療の側面では、4℃シナリオと同様、「医療 IT、医療画像診断・AI 技術活用による医療従事者支援や医療アクセス向上に貢献するソリューション」が地域ごとに必要不可欠となり、大きな事業機会になると考えています。メディカルシステム事業を通じて、分散型社会に対応した地域医療への貢献を進めていきます。
当社グループは、今後もコア技術を磨き、レジリエントな社会の実現に必要な多様な製品・サービスの開発を推進していきます。

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