有価証券報告書-第130期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針、経営環境
当社は、創立90周年を機に、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を制定しました。創業以来、先進的かつ独自の技術に基づいた商品やサービスの提供を通じて、人々の「笑顔」に寄り添ってきました。これから迎える100周年、さらにその先においても、当社は全事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、世界中の人々に幸せな笑顔が何度も訪れるよう、従業員一人ひとりが「アスピレーション(志)」を持って挑み続けていきます。このグループパーパスを実現するためには、①事業の持続的成長につながる新製品開発や設備投資、②環境・人権・サプライチェーンマネジメント等のESG課題への取組み、③人材育成や労働環境の向上、賃金引き上げ等、従業員の働きがいや能力発揮につながる取組み、④株主への還元を確実に実行し、多様なステークホルダーに価値を提供することが成功の鍵となります。当社グループは、これらの活動の原資となる利益を生み出すために、競争優位性を長期にわたって維持できる力強いビジネスにフォーカスすることで「稼げる力」を向上させ、経済的価値と社会的価値の両方を追求しながら、「稼げる会社」に進化させていきます。そして、獲得した利益を上記①②③④に再投資することにより、永続的な好循環を実現させます。
当社は、2017年8月に長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定しました。2024年4月に発表した中期経営計画「VISION2030」(以下、「VISION2030」と記載します。)は「SVP2030」の具体的なアクションプランとして位置付けています。「VISION2030」では、収益性と資本効率を重視した経営により当社グループの価値を向上させ、世界TOP Tierの事業の集合体として、世界をひとつずつ変え、様々なステークホルダーの価値(笑顔)を生み出すことを「2030年度のあるべき姿」としました。「VISION2030」の2年目にあたる2025年度においては「売上高」は4期連続、「営業利益」は5期連続、「当社株主帰属当期純利益」は6期連続で過去最高を更新しました。「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化により確保した原資を、バイオCDMO事業や半導体材料事業を中心とした成長分野の設備投資に充てる等、「VISION2030」達成に向けて順調に歩みを進めています。
2026年度の世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢に加え、足元でのイラン情勢の混乱長期化懸念等の地政学的要因や、エネルギー市場の変動、人工知能(AI)の急速な発展に伴う社会構造の変化、各国の保護主義的な貿易政策やレアアース等の希少資源をめぐる資源安全保障の強化等、不確実性が高い状況が続いています。国内では賃金上昇と金利のある環境が徐々に定着する一方、長く続く円安が材料費の高騰を招き、あらゆる製品の価格見直しが迫られています。このような状況下において当社グループは、リスクを見据え、各種の変化にいち早く対応する柔軟性・機敏性と多様な事業ポートフォリオを武器に、全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、ヘルスケア部門・エレクトロニクス部門の成長加速や、持続的な成長を可能とする強靭な事業基盤を構築して、「稼げる会社」へと進化させていきます。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。
(2)対処すべき課題
「ヘルスケア部門の成長戦略」
ヘルスケア部門では、高齢化社会におけるQOL(Quality Of Life)向上や新興国における医療環境の整備といった医療分野の社会課題に対し、当社独自のAI技術やバイオ技術等、最先端の技術を駆使した製品やサービスを提供し続けます。これにより、2026年度は、ヘルスケア部門として、2024年度、2025年度に引き続き売上高1兆円を上回る、さらなる増収を目指します。
メディカルシステム事業では、AI・画像技術を価値創出のエンジンとして、医療機器・ITサービスに実装し、当社にしかできない新たな臨床価値(術前・術中支援ソリューション等)を創出するとともに、サービス・消耗品等のリカーリングビジネスの拡大を確実に進めていきます。また、新興国向けに展開している健診センター「NURA」は、AIを活用した診断支援や、当社独自のAIを搭載し、画像からのノイズ除去により高画質化を実現したCT等の最先端機器により、国や地域を問わず、均質で高水準な健診サービスを提供することに成功しており、これまでに5ヵ国へ展開をしています。引き続き「NURA」を通し、健診事業としての価値提供に留まらず、その運営を通じて得られる現場の課題や潜在ニーズをAI技術の高度化や新製品開発に反映させることで、メディカルシステム事業の競争優位性を高めていきます。
バイオCDMO事業では、抗体医薬品の旺盛な需要に応えるべく、2024年度のデンマーク拠点における能力増強に引き続き、2025年度は米国ノースカロライナ拠点にて新規の大型製造工場を開設し、第一次投資設備である20,000リットル動物細胞培養タンク8基の稼働を開始しました。米国ノースカロライナ拠点においては、Johnson & JohnsonグループのJanssen Supply Group, LLC及びRegeneron Pharmaceuticals, Inc.との長期製造契約を締結している等、受託が順調に進展しています。米国で高 まる製造需要を背景に、同拠点への第二次投資の稼働時期前倒しを進めており、2026年度は引き続き先行投資の時期となりますが、今後の大型製造設備を中心とした事業を加速させていきます。
LSソリューション事業のうち、ライフサイエンス事業では、創薬支援分野において、基礎研究から製造・安全性・品質試験までの広範囲にわたり、顧客ニーズに対応した培地・試薬・細胞等の多種多様な製品とサービスを大手製薬会社やバイオテック企業向けに提供していきます。医薬品事業では、ペニシリン等の抗菌剤の製造販売を進めていきます。また、2025年には、既存の富山拠点を活用し、国内最大級のバイオ医薬品CDMO工場を竣工し、2027年度からの稼働を予定しています。新工場では、平時は顧客ニーズに応じた抗体医薬品や抗体薬物複合体(ADC)等のバイオ医薬品を製造し、パンデミック時はmRNAワクチン・遺伝子組換えタンパクワクチンの製造が可能なデュアルユース体制を構築します。CRO事業では、当社独自のペプチド探索技術をコアコンピテンシーとし、AIやiPS細胞を用いた評価技術等を駆使した特徴的なサービスを国内外へ展開し、主に基礎研究から非臨床試験までの創薬初期段階の顧客に広めていきます。コンシューマーヘルスケア事業では、主力ブランドのASTALIFT(化粧品)、メタバリア(サプリメント)の通販強化に加え、男性向け化粧品「ASTALIFT MEN」や、機能性表示食品の「ヒザテクト」の拡販を進めます。
「エレクトロニクス部門の成長戦略」
エレクトロニクス部門では、「エレクトロニクス戦略本部」の下、同領域の顧客アプリケーション軸での製品ポートフォリオの構築・戦略マネジメントを通じて既存事業の拡大と新規事業の開発を進めていきます。
半導体市場は、AI半導体を中心に需要が引き続き拡大しており、半導体のパフォーマンス向上のため、微細化に加えて、後工程での高集積化が加速するとみています。当社半導体材料事業では、半導体の殆どの製造プロセスに材料を供給している強みを生かし、単一材料では解決できない複雑な顧客課題を解決する「ワンストップソリューション」を提供することで事業成長を加速させます。また、地産・地消・“地援*1”を重視し、日・米・欧・アジアの拠点への積極的な投資が顧客の成長を支えるとともに、紛争によるサプライチェーンの混乱等、地政学リスクの軽減にも寄与しています。さらに、半導体市場の成長が期待されるインドでは、製造拠点用の土地を取得する等、現地進出の準備を着実に進めており、新市場の開拓にも積極的に取り組んでいます。当社の重点製品であるフォトレジストについては、2026年2月に開催された半導体関連技術の国際カンファレンス「SPIE Advanced Lithography + Patterning 2026」にて次世代EUV技術を中心とした先端レジストの最新技術を発表し、さらに2026年4月にはネガ型液浸ArF領域で世界初となるフッ素フリーのレジスト開発を発表しました。これらEUVやArF等の新技術に対し、顧客から高い評価を頂き、引き合いも着実に増えています。また、後工程材料においては、インターポーザーの大型化やビルドアップ基板の微細化ニーズの高まりに伴い、フィルム型ポリイミドの需要増加が見込まれています。加えて、ハイブリッドボンディングといった先端パッケージング工程において高い精度で平坦化するCMPスラリーも用途検討が進んでいます。これらについて、先端パッケージング分野の複数の顧客からも大きな期待が寄せられており、本格的なサンプル評価が開始され、採用に向けた取組みを順調に拡大しています。
AF材料事業では、ディスプレイ向けTAC製品の強いマーケットポジションの維持、OLED向け材料のシェア向上を推進するとともに、ストレージ需要拡大に伴い世界中で新規開設が著しいデータセンターで使用されるデータテープや、半導体・ディスプレイ等エレクトロニクスデバイス製造工程に使用される圧力測定フィルム「プレスケール」、市場拡大する半導体材料向けのポリマー・光酸発生剤等、当社が持つ技術を駆使して、エレクトロニクス分野向けに差別化した製品の供給を拡大します。
*1「地援」とは、顧客の課題に現地で対応できるサポート体制を指します。
「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」
ビジネスイノベーション部門では、2025年度にデバイス及びソリューションへのAI実装を本格化させ、オフィスから商業印刷(アナログ・デジタル)・産業印刷まで全領域をカバーする業界唯一の「ソリューションパートナー」として価値創出を進めています。また、事業環境の変化を踏まえ、構造改革を集中的に進めるとともに、成長領域への経営資源シフトを加速し、持続的成長に向けた基盤を確立します。
ビジネスソリューション事業では、基幹・IT・業務の各領域において、セキュリティ及びAIを成長ドライバーとし、顧客のステージに応じたソリューションを展開することで、提供価値の高度化とリカーリングビジネスの拡大を推進していきます。基幹ソリューション領域では、「Microsoft Dynamics 365」を主力としたERPの提供体制強化を目的に、2026年3月にETG Global Information Technology Services Inc.を買収(同月より社名をFUJIFILM ETG Global Inc.に変更)し、今後のグローバル展開加速に向け、欧州・北米へとビジネス拡大を進めていきます。ITソリューション領域では、ITリソースが不足する中堅・中小企業向けに、ITインフラ環境の運用・管理を支援する「IT Expert Services」を展開しています。業務ソリューション領域では、顧客企業のインフラのクラウド化、顧客企業の業務プロセス変革・DXを支援するクラウドサービス「FUJIFILM IWpro(アイダブリュプロ)」を提供しています。2025年1月に「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistant」オプションを搭載して以来、AI機能の強化を続けており、2026年3月には「AIチャット機能」を搭載する等、新たな価値提供を進めています。
オフィスソリューション事業では、プリントボリュームが漸減する中で、当社がトップレベルのシェアを有するA3カラー領域に注力し、環境対応と生産基盤の強化を図ります。販売では、効率的な販売体制への転換による収益性の維持・向上、及び欧州各国や北米の有力代理店による当社複合機の新規取り扱いや新規OEM等、新たな市場での販売拡大を目指します。また、AI活用によるサービス高度化の取組みとして、全国のセブン‐イレブンに設置されているマルチコピー機の利便性向上を目的に、マイクロソフトが提供する生成AIアシスタント「Microsoft Copilot」を活用した新たなプリント支援機能の開発に着手しており、2026年度中の提供開始を目指しています。当社のマルチコピー機においては、今後もAIをはじめとするデジタル技術の活用を通じて、提供サービスの拡充に向けた取組みを進めていきます。
グラフィックコミュニケーション事業では、商業印刷・パッケージ印刷市場におけるトレンドシフトに対応しています。大ロットのアナログ印刷やモノクロ印刷が減少する一方で多品種・小ロット印刷やカラー印刷の需要が増加する中、当社は刷版、デジタル印刷機、産業用ヘッドにおいてトップレベルのシェアを持つ強固な顧客基盤を中心に販売を拡大し、デジタルシフトをさらに加速させます。2025年12月には、ハイエンドプロ市場向けフラッグシップモデルとして、独自のAI技術によりお客様の印刷業務を自動化・効率化するプロダクションプリンター「Revoria Press PC2120」を国内にて先行発売しました。インクジェットインク・ヘッドについては、生産体制の再編で収益性改善を図るとともに、高生産性・高品質を誇るヘッドや安定性の高い水系顔料分散技術等の特長のある製品・技術により、成長が期待される商業印刷及びパッケージ印刷のデジタル市場や、インクジェット技術の向上により市場拡大が見込まれる新領域での事業拡大を進めていきます。
「イメージング部門の成長戦略」
コンシューマーイメージング事業では、音と静止画の組み合わせを進化させたハイブリッドインスタントカメラ「instax mini LiPlay+」(2025年11月発売)や、静止画に加えて動画の撮影を可能とし、1930~2020年代の映像を再現する「ジダイヤル」を搭載した“動画を手渡せる”インスタントカメラ「instax mini Evo Cinema」(2026年1月発売)等をはじめとした魅力的な新製品を持続的に市場投入し、ユーザー層の拡大を図ります。また、業務用途フォトプリンターの展開拡大や異業種パートナーとのアライアンスによる若い世代との新たなタッチポイント創出等を通じて、新規プリント需要の掘り起こしを進めていきます。
プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルに最適化された色再現が特徴のデジタルカメラ「Xシリーズ」「GFXシリーズ」のマルチブランド戦略を強化することで、スマートフォンでは満足できない潜在ニーズを掘り起こし、当社ファンの拡大を図ります。また、2025年10月に発売した当社初の映像制作用カメラ「FUJIFILM GFX ETERNA 55」にて映像制作市場へ本格参入し、豊かな階調表現と立体感のある映像表現が国内外において好評を得ております。また、プロジェクター・遠望監視カメラの新規用途・エリア展開、最先端の光学技術・画像処理技術・AIを駆使したインフラ点検DXといった新規ソリューション分野の立ち上げも加速させていきます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針、経営環境
当社は、創立90周年を機に、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を制定しました。創業以来、先進的かつ独自の技術に基づいた商品やサービスの提供を通じて、人々の「笑顔」に寄り添ってきました。これから迎える100周年、さらにその先においても、当社は全事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、世界中の人々に幸せな笑顔が何度も訪れるよう、従業員一人ひとりが「アスピレーション(志)」を持って挑み続けていきます。このグループパーパスを実現するためには、①事業の持続的成長につながる新製品開発や設備投資、②環境・人権・サプライチェーンマネジメント等のESG課題への取組み、③人材育成や労働環境の向上、賃金引き上げ等、従業員の働きがいや能力発揮につながる取組み、④株主への還元を確実に実行し、多様なステークホルダーに価値を提供することが成功の鍵となります。当社グループは、これらの活動の原資となる利益を生み出すために、競争優位性を長期にわたって維持できる力強いビジネスにフォーカスすることで「稼げる力」を向上させ、経済的価値と社会的価値の両方を追求しながら、「稼げる会社」に進化させていきます。そして、獲得した利益を上記①②③④に再投資することにより、永続的な好循環を実現させます。
当社は、2017年8月に長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定しました。2024年4月に発表した中期経営計画「VISION2030」(以下、「VISION2030」と記載します。)は「SVP2030」の具体的なアクションプランとして位置付けています。「VISION2030」では、収益性と資本効率を重視した経営により当社グループの価値を向上させ、世界TOP Tierの事業の集合体として、世界をひとつずつ変え、様々なステークホルダーの価値(笑顔)を生み出すことを「2030年度のあるべき姿」としました。「VISION2030」の2年目にあたる2025年度においては「売上高」は4期連続、「営業利益」は5期連続、「当社株主帰属当期純利益」は6期連続で過去最高を更新しました。「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化により確保した原資を、バイオCDMO事業や半導体材料事業を中心とした成長分野の設備投資に充てる等、「VISION2030」達成に向けて順調に歩みを進めています。
2026年度の世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢に加え、足元でのイラン情勢の混乱長期化懸念等の地政学的要因や、エネルギー市場の変動、人工知能(AI)の急速な発展に伴う社会構造の変化、各国の保護主義的な貿易政策やレアアース等の希少資源をめぐる資源安全保障の強化等、不確実性が高い状況が続いています。国内では賃金上昇と金利のある環境が徐々に定着する一方、長く続く円安が材料費の高騰を招き、あらゆる製品の価格見直しが迫られています。このような状況下において当社グループは、リスクを見据え、各種の変化にいち早く対応する柔軟性・機敏性と多様な事業ポートフォリオを武器に、全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、ヘルスケア部門・エレクトロニクス部門の成長加速や、持続的な成長を可能とする強靭な事業基盤を構築して、「稼げる会社」へと進化させていきます。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。
| (単位:億円) | |||||
| 2025年度 | 2026年度 (次期の見通し) | 対前年度 | 2026年度 (中期経営計画) | ||
| 売上高 | 33,570 | 34,700 | 1,130 | 34,500 | |
| 営業利益 | 3,502 | 3,650 | 148 | 3,600 | |
| 当社株主帰属当期純利益 | 2,767 | 2,800 | 33 | 2,700 | |
| ROE | 7.7% | 7.8% | 0.1ポイント増 | 8.1% | |
| ROIC | 5.5% | 5.6% | 0.1ポイント増 | 5.8% |
(2)対処すべき課題
「ヘルスケア部門の成長戦略」
ヘルスケア部門では、高齢化社会におけるQOL(Quality Of Life)向上や新興国における医療環境の整備といった医療分野の社会課題に対し、当社独自のAI技術やバイオ技術等、最先端の技術を駆使した製品やサービスを提供し続けます。これにより、2026年度は、ヘルスケア部門として、2024年度、2025年度に引き続き売上高1兆円を上回る、さらなる増収を目指します。
メディカルシステム事業では、AI・画像技術を価値創出のエンジンとして、医療機器・ITサービスに実装し、当社にしかできない新たな臨床価値(術前・術中支援ソリューション等)を創出するとともに、サービス・消耗品等のリカーリングビジネスの拡大を確実に進めていきます。また、新興国向けに展開している健診センター「NURA」は、AIを活用した診断支援や、当社独自のAIを搭載し、画像からのノイズ除去により高画質化を実現したCT等の最先端機器により、国や地域を問わず、均質で高水準な健診サービスを提供することに成功しており、これまでに5ヵ国へ展開をしています。引き続き「NURA」を通し、健診事業としての価値提供に留まらず、その運営を通じて得られる現場の課題や潜在ニーズをAI技術の高度化や新製品開発に反映させることで、メディカルシステム事業の競争優位性を高めていきます。
バイオCDMO事業では、抗体医薬品の旺盛な需要に応えるべく、2024年度のデンマーク拠点における能力増強に引き続き、2025年度は米国ノースカロライナ拠点にて新規の大型製造工場を開設し、第一次投資設備である20,000リットル動物細胞培養タンク8基の稼働を開始しました。米国ノースカロライナ拠点においては、Johnson & JohnsonグループのJanssen Supply Group, LLC及びRegeneron Pharmaceuticals, Inc.との長期製造契約を締結している等、受託が順調に進展しています。米国で高 まる製造需要を背景に、同拠点への第二次投資の稼働時期前倒しを進めており、2026年度は引き続き先行投資の時期となりますが、今後の大型製造設備を中心とした事業を加速させていきます。
LSソリューション事業のうち、ライフサイエンス事業では、創薬支援分野において、基礎研究から製造・安全性・品質試験までの広範囲にわたり、顧客ニーズに対応した培地・試薬・細胞等の多種多様な製品とサービスを大手製薬会社やバイオテック企業向けに提供していきます。医薬品事業では、ペニシリン等の抗菌剤の製造販売を進めていきます。また、2025年には、既存の富山拠点を活用し、国内最大級のバイオ医薬品CDMO工場を竣工し、2027年度からの稼働を予定しています。新工場では、平時は顧客ニーズに応じた抗体医薬品や抗体薬物複合体(ADC)等のバイオ医薬品を製造し、パンデミック時はmRNAワクチン・遺伝子組換えタンパクワクチンの製造が可能なデュアルユース体制を構築します。CRO事業では、当社独自のペプチド探索技術をコアコンピテンシーとし、AIやiPS細胞を用いた評価技術等を駆使した特徴的なサービスを国内外へ展開し、主に基礎研究から非臨床試験までの創薬初期段階の顧客に広めていきます。コンシューマーヘルスケア事業では、主力ブランドのASTALIFT(化粧品)、メタバリア(サプリメント)の通販強化に加え、男性向け化粧品「ASTALIFT MEN」や、機能性表示食品の「ヒザテクト」の拡販を進めます。
「エレクトロニクス部門の成長戦略」
エレクトロニクス部門では、「エレクトロニクス戦略本部」の下、同領域の顧客アプリケーション軸での製品ポートフォリオの構築・戦略マネジメントを通じて既存事業の拡大と新規事業の開発を進めていきます。
半導体市場は、AI半導体を中心に需要が引き続き拡大しており、半導体のパフォーマンス向上のため、微細化に加えて、後工程での高集積化が加速するとみています。当社半導体材料事業では、半導体の殆どの製造プロセスに材料を供給している強みを生かし、単一材料では解決できない複雑な顧客課題を解決する「ワンストップソリューション」を提供することで事業成長を加速させます。また、地産・地消・“地援*1”を重視し、日・米・欧・アジアの拠点への積極的な投資が顧客の成長を支えるとともに、紛争によるサプライチェーンの混乱等、地政学リスクの軽減にも寄与しています。さらに、半導体市場の成長が期待されるインドでは、製造拠点用の土地を取得する等、現地進出の準備を着実に進めており、新市場の開拓にも積極的に取り組んでいます。当社の重点製品であるフォトレジストについては、2026年2月に開催された半導体関連技術の国際カンファレンス「SPIE Advanced Lithography + Patterning 2026」にて次世代EUV技術を中心とした先端レジストの最新技術を発表し、さらに2026年4月にはネガ型液浸ArF領域で世界初となるフッ素フリーのレジスト開発を発表しました。これらEUVやArF等の新技術に対し、顧客から高い評価を頂き、引き合いも着実に増えています。また、後工程材料においては、インターポーザーの大型化やビルドアップ基板の微細化ニーズの高まりに伴い、フィルム型ポリイミドの需要増加が見込まれています。加えて、ハイブリッドボンディングといった先端パッケージング工程において高い精度で平坦化するCMPスラリーも用途検討が進んでいます。これらについて、先端パッケージング分野の複数の顧客からも大きな期待が寄せられており、本格的なサンプル評価が開始され、採用に向けた取組みを順調に拡大しています。
AF材料事業では、ディスプレイ向けTAC製品の強いマーケットポジションの維持、OLED向け材料のシェア向上を推進するとともに、ストレージ需要拡大に伴い世界中で新規開設が著しいデータセンターで使用されるデータテープや、半導体・ディスプレイ等エレクトロニクスデバイス製造工程に使用される圧力測定フィルム「プレスケール」、市場拡大する半導体材料向けのポリマー・光酸発生剤等、当社が持つ技術を駆使して、エレクトロニクス分野向けに差別化した製品の供給を拡大します。
*1「地援」とは、顧客の課題に現地で対応できるサポート体制を指します。
「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」
ビジネスイノベーション部門では、2025年度にデバイス及びソリューションへのAI実装を本格化させ、オフィスから商業印刷(アナログ・デジタル)・産業印刷まで全領域をカバーする業界唯一の「ソリューションパートナー」として価値創出を進めています。また、事業環境の変化を踏まえ、構造改革を集中的に進めるとともに、成長領域への経営資源シフトを加速し、持続的成長に向けた基盤を確立します。
ビジネスソリューション事業では、基幹・IT・業務の各領域において、セキュリティ及びAIを成長ドライバーとし、顧客のステージに応じたソリューションを展開することで、提供価値の高度化とリカーリングビジネスの拡大を推進していきます。基幹ソリューション領域では、「Microsoft Dynamics 365」を主力としたERPの提供体制強化を目的に、2026年3月にETG Global Information Technology Services Inc.を買収(同月より社名をFUJIFILM ETG Global Inc.に変更)し、今後のグローバル展開加速に向け、欧州・北米へとビジネス拡大を進めていきます。ITソリューション領域では、ITリソースが不足する中堅・中小企業向けに、ITインフラ環境の運用・管理を支援する「IT Expert Services」を展開しています。業務ソリューション領域では、顧客企業のインフラのクラウド化、顧客企業の業務プロセス変革・DXを支援するクラウドサービス「FUJIFILM IWpro(アイダブリュプロ)」を提供しています。2025年1月に「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistant」オプションを搭載して以来、AI機能の強化を続けており、2026年3月には「AIチャット機能」を搭載する等、新たな価値提供を進めています。
オフィスソリューション事業では、プリントボリュームが漸減する中で、当社がトップレベルのシェアを有するA3カラー領域に注力し、環境対応と生産基盤の強化を図ります。販売では、効率的な販売体制への転換による収益性の維持・向上、及び欧州各国や北米の有力代理店による当社複合機の新規取り扱いや新規OEM等、新たな市場での販売拡大を目指します。また、AI活用によるサービス高度化の取組みとして、全国のセブン‐イレブンに設置されているマルチコピー機の利便性向上を目的に、マイクロソフトが提供する生成AIアシスタント「Microsoft Copilot」を活用した新たなプリント支援機能の開発に着手しており、2026年度中の提供開始を目指しています。当社のマルチコピー機においては、今後もAIをはじめとするデジタル技術の活用を通じて、提供サービスの拡充に向けた取組みを進めていきます。
グラフィックコミュニケーション事業では、商業印刷・パッケージ印刷市場におけるトレンドシフトに対応しています。大ロットのアナログ印刷やモノクロ印刷が減少する一方で多品種・小ロット印刷やカラー印刷の需要が増加する中、当社は刷版、デジタル印刷機、産業用ヘッドにおいてトップレベルのシェアを持つ強固な顧客基盤を中心に販売を拡大し、デジタルシフトをさらに加速させます。2025年12月には、ハイエンドプロ市場向けフラッグシップモデルとして、独自のAI技術によりお客様の印刷業務を自動化・効率化するプロダクションプリンター「Revoria Press PC2120」を国内にて先行発売しました。インクジェットインク・ヘッドについては、生産体制の再編で収益性改善を図るとともに、高生産性・高品質を誇るヘッドや安定性の高い水系顔料分散技術等の特長のある製品・技術により、成長が期待される商業印刷及びパッケージ印刷のデジタル市場や、インクジェット技術の向上により市場拡大が見込まれる新領域での事業拡大を進めていきます。
「イメージング部門の成長戦略」
コンシューマーイメージング事業では、音と静止画の組み合わせを進化させたハイブリッドインスタントカメラ「instax mini LiPlay+」(2025年11月発売)や、静止画に加えて動画の撮影を可能とし、1930~2020年代の映像を再現する「ジダイヤル」を搭載した“動画を手渡せる”インスタントカメラ「instax mini Evo Cinema」(2026年1月発売)等をはじめとした魅力的な新製品を持続的に市場投入し、ユーザー層の拡大を図ります。また、業務用途フォトプリンターの展開拡大や異業種パートナーとのアライアンスによる若い世代との新たなタッチポイント創出等を通じて、新規プリント需要の掘り起こしを進めていきます。
プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルに最適化された色再現が特徴のデジタルカメラ「Xシリーズ」「GFXシリーズ」のマルチブランド戦略を強化することで、スマートフォンでは満足できない潜在ニーズを掘り起こし、当社ファンの拡大を図ります。また、2025年10月に発売した当社初の映像制作用カメラ「FUJIFILM GFX ETERNA 55」にて映像制作市場へ本格参入し、豊かな階調表現と立体感のある映像表現が国内外において好評を得ております。また、プロジェクター・遠望監視カメラの新規用途・エリア展開、最先端の光学技術・画像処理技術・AIを駆使したインフラ点検DXといった新規ソリューション分野の立ち上げも加速させていきます。