有価証券報告書-第124期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 9:52
【資料】
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【項目】
89項目

有報資料

(1)経営方針、経営環境
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループは、写真フィルム需要が激減した2000年以降、積極的な事業構造の転換を進め、安定的に利益を創出できる経営基盤を再構築し、新たな成長戦略を推進しています。2017年8月に2030年度を目標とした新CSR計画「サステナブル バリュー プラン(Sustainable Value Plan)2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定。革新的技術・製品・サービスの提供等事業活動を通じて「新たな価値」を創出することで、社会課題の解決に取り組んできました。当社は、持続可能な社会の実現に貢献する企業であり続けます。また、「SVP2030」で示した目指す姿を実現するための具体的なアクションプランとして実行した中期経営計画「VISION2019」では、各事業を「収益力の向上」「さらなる成長の加速」「未来を創る投資」の3つのステージに位置づけ、成長過程に合わせた施策を適切に展開し、個々の事業の収益力の強化を図ることで、事業ポートフォリオをより強固なものにし、一層の飛躍へとつなげてきました。2020年度は、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」と記載します。)の世界的な流行による各国での非常事態宣言や入国禁止措置、東京オリンピック・パラリンピック延期等に伴う実体経済の停滞等、これまで経験したことのない事態に直面しています。各国で推進される金融緩和や景気対策が、COVID-19流行終息後の景気押し上げに寄与すると期待される一方で、感染拡大が長期化した場合の、もう一段激しい世界経済の落ち込みも危惧される等、国内外問わず極めて先行き不透明な社会経済状況が続くことが予想されます。この様な状況の中、当社グループは全事業の収益力向上に努め安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、特に「ヘルスケア・高機能材料領域の事業成長」と「ドキュメント事業の新たな成長戦略とさらなる収益力向上」を実現することで、事業ポートフォリオをより強固なものとし、この難局を乗り越えていきます。
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の予想値につきましては、COVID-19が世界規模で流行拡大している影響により、現段階では合理的な予想の算出が困難であるため、未定とさせていただきます。
(2)対処すべき課題
「ヘルスケア・高機能材料領域の着実な事業成長」
ヘルスケア領域では、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業が売上成長を牽引し、増収・増益を確保します。医薬品事業と再生医療事業は、研究開発の効率化・パートナーとの提携を推進することで、事業を育成していきます。また、COVID-19感染拡大抑止や流行終息に貢献するべく、早期の「アビガン®錠」提供や、各製薬会社の治療薬等のプロセス開発・製造受託を進めていきます。
メディカルシステム事業では、医療IT領域で“REiLI(レイリ)”というブランド名称のもと、医療現場のワークフローを支援するAI技術の開発と実用化を進めています。同技術を活用し、X線画像診断機器、内視鏡、超音波、体外診断(IVD)の幅広い製品ラインアップを活かしたソリューション提案を一層強化します。最大市場の北米においては、主要病院への内視鏡システム導入の促進や外科用処置具の販売強化に加えて、手術室のシステムインテグレーション市場へのビジネス展開を加速し、事業拡大を図ります。また、㈱日立製作所から買収する画像診断関連事業とのシナジー最大化を図ることで、メディカルシステム事業のさらなる成長に向けた、強固な事業基盤の構築を進めていきます。
高い市場成長が見込めるバイオ医薬品のプロセス開発・製造受託事業では、2019年8月にBIOGEN (DENMARK) MANUFACTURING ApSを買収しました。従来のFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesの米国・英国拠点と併せて、設備投資・技術開発による生産能力の拡大、スケールメリットによる収益力強化を進めます。また、最先端医療の遺伝子治療薬CDMOに本格参入し事業成長を加速します。
医薬品事業では、抗菌剤、放射性医薬品、アンメットメディカルニーズが高い領域の新薬等において、研究開発を効率的に推進します。ドラッグ・デリバリー・システム分野においては、当社独自技術を活用したリポソーム製剤「FF-10832」「FF-10850」(抗がん剤)の臨床第Ⅰ相試験を米国で進めています。また、富士フイルム富山化学㈱のリポソーム工場(GMP対応)を2020年2月に稼働させました。治験薬製造や商業生産の体制を構築するとともに、核酸内包リポソームの開発・製造受託サービスも開始していきます。
再生医療事業では、細胞治療分野においては、FUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.が治療用iPS細胞の生産施設「i-FACT」(cGMP対応)を2020年3月に稼働させました。自社での再生医療製品の開発を加速させるとともに、開発・製造受託サービスも展開していきます。創薬支援分野においては、国内では2019年9月にヒトiPS 細胞由来腸管上皮細胞 「F-hiSIEC™」を販売開始しました。米国ではFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.がFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.と協業し、細胞・培地・試薬のキット販売や、顧客の実験プロセスにおける細胞・培地・試薬の最適な使用方法の確立をサポートするソリューション販売を進めていきます。製薬企業やアカデミアとの協業を推進することで、画期的な製品の開発・提供を加速し、医薬品開発の効率化や再生医療の産業化に貢献していきます。
高機能材料領域の各事業では、独自の技術力を生かし現在の競争優位性を維持して、市場のニーズにあった高収益の製品をタイムリーに投入することで売上・利益ともに拡大していきます。
電子材料事業では、イメージセンサー用「WCM(Wave Control Mosaic)」や後工程材料を中心に新製品開発・ラインアップ拡充を行います。また、レジスト材料は、先端領域にターゲットを絞り新規材料の開発を進め、事業成長を加速させます。AI・IoTや5Gの普及等により、半導体は需要拡大とともに、高性能化に必要とされる処理能力アップ・微細化が進むとみられており、当社はこうした新たな顧客ニーズに応えていきます。主に半導体の高性能化を支える材料開発及び安定供給を目的とした設備投資を継続的に実施し、さらなる需要拡大に対応していきます。
ディスプレイ材料事業では、液晶パネル向けの既存タック製品におけるマーケットポジションの維持に加え、薄膜・積層塗布技術を活用し、有機ELや車載ディスプレイ向け等新規用途材料のビジネス拡大を進めます。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」等、当社独自技術を活用した高機能製品を拡販していきます。また、橋梁やトンネル等のひび割れ検出サービス「ひびみっけ」等、AIを活用した画像解析によってソリューションビジネスへの展開を行い、事業を拡大します。
「ドキュメント事業の新たな成長戦略とさらなる収益力向上」
2019年11月に「戦略の自由度と意思決定のスピード向上」を狙いとして、富士ゼロックス㈱の完全子会社化を実施しました。さらに、2021年3月31日にゼロックスコーポレーションとの技術契約の終了により、富士フイルムブランドでのグローバル展開が可能となります。2021年4月からは新社名「富士フイルムビジネスイノベーション㈱」として、新たなブランドのもと、ドキュメント機器のグローバル市場への展開を加速します。
オフィスプロダクト&プリンター事業では、セキュリティ機能を強化したカラー複合機「ApeosPort」「DocuCentre」新シリーズを核として日本・中国をはじめとするアジア・オセアニア地域で、さらなるシェア拡大を目指します。加えて新たな戦略として、品質・堅牢性を高く評価されている当社複合機のOEM供給拡大を軸にグローバル市場への展開を加速し、売上成長を目指します。
プロダクションサービス事業では、富士フイルム㈱のグラフィックシステム事業とのシナジーを最大化し、商業印刷分野でのオフセット印刷機からデジタル印刷機までの幅広いラインアップや有力な顧客基盤を梃子に、グローバル市場攻略を進めます。
ソリューション&サービス事業では、富士ゼロックス㈱が培ってきた先進テクノロジーやAI技術を駆使し、働く人の知的生産性を向上させる環境を構築するとともに、紙文書業務プロセスの効率化を可能とするDocuSign, Inc.やEsker SAをはじめとしたさまざまなITサービス提供企業との戦略提携を拡大することで、クラウド上のセキュアな環境で新たなドキュメントソリューションを提供し、事業成長を拡大していきます。
COVID-19感染対策としてリモートワークが浸透することで、お客様の業務プロセス・働き方が変化することが予想されます。お客様の働き方改革の鍵となる、ドキュメント・業務プロセスのデジタル化を促進するソリューション&サービス事業へのシフトを加速し、新たな事業の柱としていきます。オフィスに縛られない働き方や、デジタルトランスフォーメーションにつながるような、お客様の働き方やビジネスに変革を起こしていくソリューションの提供により、事業成長と収益力向上を目指します。
当社は、「SVP2030」の下、「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」と「事業を通じた社会課題の解決」の2つの側面から、当社が取り組むべき重点分野を「環境」「健康」「生活」「働き方」「サプライチェーン」「ガバナンス」の6つに定め、各分野で設定した目標達成に向けて取組みを進めています。かかる取組みを着実に遂行すべく、2019年6月に、これまでのCSR部門を発展的に改組し、社長直下の組織として「ESG推進部」を新設しました。
6つの重点分野のうち、「環境」においては、国際社会共通の重要課題である気候変動への対応として、CO2排出削減に積極的に取り組んでいます。具体的には「自社の事業プロセスにおける排出削減」を実現するため、省エネ化に加え、2019年1月に再生可能エネルギー使用率の目標を設定、100%再生可能エネルギー化を目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しました。「製品・サービス・技術を通じた排出削減」としては、環境配慮製品のさらなる創出に向け、製品の環境価値を明確化し、優れた製品を開示する社内認定制度「Green Value Products」を導入。当連結会計年度までに121件を認定しました。今後も、自社の排出削減と社会への貢献の両面でCO2排出削減に向けた取組みを加速させていきます。「ガバナンス」においては、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、強化に取り組んでいます。誠実かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指していきます。
当社グループは、前年度まで取り組んだ中期経営計画「VISION2019」で、重点領域を中心として各事業のビジネスを拡大・成長させてまいりました。当社グループの2020年度の基本方針は「“All-Fujifilm”でたゆまぬ挑戦を!」と掲げました。新規市場創出・拡大に向けて、マーケットニーズを的確に捉えることで新たな価値を持つ製品・サービスの開発・提供を推進します。社会課題の解決を事業成長の機会と捉え、持続可能な社会の発展に貢献するために、富士フイルムホールディングス傘下の全ての会社・組織・従業員の力を結集した“All-Fujifilm”で挑戦してまいります。

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