有価証券報告書-第120期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/25 14:40
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【項目】
166項目

有報資料

文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2020年3月25日)現在における当社グループの将来に関する見通し及び計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
①企業理念および中長期戦略VISION 2020
THE SHISEIDO PHILOSOPHY(企業理念)
当社は100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、新・企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指します。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの140年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
[THE SHISEIDO PHILOSOPHY]

[OUR MISSION]
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
ビューティーイノベーションでよりよい世界を
資生堂は多様化する美の価値観、ニーズをとらえ、人々に自信と勇気を与え、喜びや幸せをもたらす
イノベーションに挑戦します。
美でこの世界をよりよくするためにイノベーションを
おこし続けていくことが私たちの責任であり、使命です。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/企業理念」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
中長期戦略VISION 2020
当社は、100年先も輝き続ける資生堂の原型をつくるため、2020年を一つの節目とした中長期戦略VISION 2020を策定し、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”として確固たる地位を築くべく、すべての活動をお客さま起点に、マーケティングやイノベーションを強化するとともに、それらを支える多様な人材の活用とグローバル組織の構築などに取り組んでいます。2020年までに“成長エネルギーが充満した会社”“若々しさがみなぎる会社”“世界中で話題になる会社”“若者があこがれてやまない会社”そして“多様な文化が混じりあう会社”となることを目指しています。
VISION 2020の具体的な戦略推進にあたっては、2020年までの期間を、2015年から2017年までの3カ年と、2018年から2020年までの3カ年に分け、最初の3年間を事業基盤の再構築の期間、後半の3年間を成長加速のための新戦略に取り組む期間と位置づけ、以下のマイルストーンを確実に達成しながら活動を進めています。
戦略策定当初、VISION 2020の定量的な目標は、2020年の売上高を1兆円超、営業利益を1,000億円超、連結ROEを12%以上に定めていました。売上高については2017年に3年前倒しで、営業利益と連結ROEについては2018年に2年前倒しで目標を達成しました。お客さまも社会環境も日々変化していく中、ビューティービジネスの革新を通して社会や人々に貢献する真のグローバルビューティーカンパニーの実現に向け、長期的には売上高2兆円、営業利益3,000億円を目指していきます。
②VISION 2020の最終年となる2020年の計画
2020年の業績については、当初は、プレステージブランドの成長持続、中国・トラベルリテール事業の拡大、米州・欧州事業の収益性の改善、日本事業の確実な成長、供給基盤のさらなる確立、「Drunk Elephant」の統合と拡大などにより、成長を加速する計画でした。
しかしながら、昨年後半より、香港市場や韓国市場の環境悪化、米中貿易摩擦の影響、為替の変動など不透明な経済環境に加え、日本事業についても消費税増税の前後から当初想定より計画を大きく下回る結果となりました。
このような事業環境変化への対応および2019年11月に買収した「Drunk Elephant」の影響を踏まえ、2020年の連結売上高は1兆2,200億円、営業利益は1,170億円を見込んでいます。
なお、2020年1月下旬以降、新型肺炎ウイルスへの感染が世界的に拡大していますが、上記の業績見通しにはその影響を織り込んでいません。日本、中国、トラベルリテールなど当社事業への影響について検証していますが、さらに慎重に見極め、然るべきタイミングで業績見通しに反映し、開示する予定です。
[2020年の見通し(2020年2月発表)]

[2020年の営業利益見通しの詳細(2020年2月発表)]

主力ブランドへの集中投資
プレステージファースト戦略により、当社が強みを持つプレステージ領域をグローバルで強化しています。中でも、当社の社名を冠するブランド「SHISEIDO」は、2014年から2019年の売上高の年平均成長率が17%となり、2,000億円※を超える規模に成長しました。今後も、成長性と収益性の拡大が期待できる「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」などのプレステージブランドへの投資を継続します。
さらに、人体にも環境にも“Clean”な製品を求める世界的な傾向を捉え、米国で加速度的に成長しているプレステージ・スキンケアブランド「Drunk Elephant」を2019年11月に買収したことにより、グローバルブランドポートフォリオをさらに強化しました。同ブランドは、デジタルを活用した優れたマーケティング力を通じて、2019年には、上市からわずか7年で100億円を超える売上高を達成しています。“Clean”市場は、米国に留まらず、欧州でも既に拡大しています。欧州事業をさらに拡大することに加え、中国でも受容性が高いという調査結果を得ていることから、クロスボーダーマーケティングのノウハウやグローバルに配備された資生堂のプラットフォーム・経営資源を活かし、アジアを含むグローバル市場における将来的な展開を見込んでいます。これにより、当社の収益基盤となるプレステージ・スキンケアブランドの一角を担うブランドへと成長させていきます。
一方、日本を中心に長年にわたり高い支持を得ている「エリクシール」、「アネッサ」は、アジア、欧米地域での成長加速を目指し、グローバルブランドとして投資を強化していきます。
※米国での新収益認識基準ASC第606号影響を除く実質ベース
主な地域における今後の戦略
<日本事業>インバウンド需要の減少や、消費税増税後の消費マインドの弱さの影響を受ける中、インバウンド売上の成長に依存せず、日本のお客さまの価値観や購買行動の変化を確実に捉え、改めてローカル市場を再強化します。また、本社と日本事業が一体となって改革を進めるべく経営体制を再構築します。構造的な改革を進めるとともに、グループ全体の基盤である日本事業の位置づけを明確にし、今後は、安定的な収益成長を目指します。
<中国事業>力強い成長を維持すべく、プレステージブランドの「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」と日本発ブランドの「エリクシール」、「アネッサ」を中心に投資を集中します。また、実店舗での取り組み強化とともに、ネット流通大手との戦略的提携をさらに進め、Eコマースも一層強化します。一方、新型肺炎ウイルスの影響によるお客さまの購買行動の変化に対応し、一部のマーケティング活動は延期・中止します。今後は、市場状況を注視しながら迅速に投資判断し、市場が回復する期を捉えてマーケティングを強化していきます。
<米州・欧州事業>収益性が課題となっている米州・欧州事業については、それぞれ改善に取り組みます。米州では、構造改革を進めている「bareMinerals」の不採算店舗の閉鎖を進める一方、同ブランドの欧州での展開を拡大します。また、グローバルプレステージ領域において大きな成長ポテンシャルを持つ「Drunk Elephant」、「Tory Burch」の事業を本格的にスタートさせ、収益拡大を実現していきます。
欧州では、フレグランスが成長をけん引しており、好調な「Dolce&Gabbana」、「narciso rodriguez」にさらに注力します。加えて「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」といったスキンケアブランドの育成にも注力し、売上成長に伴う収益性の確実な向上を目指していきます。
<トラベルリテール事業>プレステージ領域でのポジションを一層強化するための最重要事業として、積極的なマーケティング投資を継続します。2020年より、日本の空港免税店等におけるビジネスも統合し、全世界のトラベルリテール事業が連携できる体制となりました。大手オペレーターとの交渉力を高め、売り場カウンターを強化するとともに、クロスボーダーマーケティングを積極的に展開し、高い成長性を持続します。
市場の変化に迅速に対応できるサプライチェーン体制へ
VISION 2020の実現に向けた取り組み強化の結果、日本市場をはじめ、グローバル全体で当社製品への需要が増加しています。特に、高品質なメイド・イン・ジャパンの商品を評価いただいている海外のお客さまの需要が拡大しています。これらに対応するため、2019年は短期的な施策として、既存工場の設備増強や外部委託の活用等により、機会損失を前年比で半減することができました。
一方、中長期的には国内に3つの新工場を建設することとして、昨年12月には、那須工場が稼働しました。本年12月には大阪茨木工場が稼働し、その後、福岡久留米工場も稼働する予定です。これらの工場では、更なるデジタルやIoT技術の活用により、生産の効率化を徹底します。さらに、原材料のグローバル調達や物流体制の再整備により生産性を向上させ、市場の変化に迅速に対応できるサプライチェーン体制を構築していきます。
成長を支えるイノベーションの加速
将来の成長を支えるイノベーションへの注力も継続します。塗布した日焼け止めが太陽の熱などで温められると、紫外線防御効果が高まる技術を世界で初めて開発したり、皮膚中の構造を三次元に観察する技術開発を通じ、皮膚中の毛細血管を健康に保つことが皮膚弾力の維持につながることを見出し、2019年に化粧品技術を競う世界最大の研究発表会IFSCCにおいて口頭発表部門の「最優秀賞」を受賞する等、当社のイノベーションは、ビューティーの世界でさまざまな新しい価値を生み出し続けています。
また、昨年オープンした研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC)」ではオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の活動を開始しています。「fibona」は、スタートアップ企業とのコラボレーションや生活者とのコラボレーションなど4つの活動プランにより構成され、ビューティー領域における新価値創造や化粧品だけにとどまらないイノベーションの創出を目的として、外部との共創を行うプログラムです。
さらに、アメリカ・ボストンの技術開発拠点「テクノロジーアクセラレーションハブ」では、デジタル領域の強化を行う等、GICを中心に、現地のニーズに合わせた価値開発を行っている海外の研究所も連携して多様な知見、情報、技術を融合させることによって、世界中のお客さまに向けた価値の発信を強化していきます。
不透明な経営環境に立ち向かい長期視点で成長基盤を強化
昨年後半から増している世界情勢の不透明感は、当面続くものと想定されます。新型肺炎ウイルスはこれまでの当社の成長をけん引してきた日本・中国・トラベルリテール事業などでのビジネスに影響を及ぼします。まずは、お客さま、従業員の健康と安全確保に努め、当面の間のマーケティング活動の一部については、必要に応じて中止や延期を行います。
その一方で、社名である資生堂が中国の古典書に由来し、1981年より北京で事業を開始した当社は、隣国の友人企業として感謝の気持ちを還元することとして、中国現地での医療や感染予防策に役立てていただくため1,000万元(約1億5000万円)の寄付を2月に実施したほか、2月から6カ月間、アジア圏での売上の1%を活用して、寄付や商品提供さらに化粧品の力で活力を取り戻していただくためのさまざまなサポートを実施する「爱心接力 Relay of loveプロジェクト」を展開します。また、今できることとして、Eコマースや越境ECの強化等を行い、新型肺炎ウイルスの感染拡大が終息するのを待って、マーケティング活動の追加や強化を行う等、年間を通じてグループ全社の経費を効率的にコントロールします。
これらの取り組みにより、不透明な状態の続く経営環境に立ち向かいながら、長期視点で成長基盤を強化し、確実に成長モメンタムを継続していきます。
③100年先も輝き続ける企業になるために
当社は、企業として成長することはもちろんのこと、本業であるビューティービジネスそのものを通じて社会課題の解決や、人々が幸せになるサステナブルな社会を実現することが、私たちの使命であると考えています。その使命の実現と環境・社会・文化に関わる社会価値創造の加速を目的に、2019年1月に社会価値創造本部を新設しました。
同本部では、さらなるサステナブル経営の実現に向けて、CO2排出量やパーム油、紙や水資源等の環境負荷軽減項目について、目標値とその達成目標年限を定めて開示しています。また、ダイバーシティ推進に向けて国内の女性管理職比率は2020年中に40%を目指します。なお、当社の取締役会は提出日現在において、取締役、監査役の女性比率は、46%となります。
2019年5月1日には、企業の役員に占める女性の割合向上を目的に、2010年に英国で創設された「30% Club」 (サーティパーセント クラブ)が、「30% Club Japan」を発足し、日本で正式に活動を開始しました。当社はその趣旨に賛同し、当社代表取締役 社長 兼 CEO 魚谷雅彦が「30% Club Japan」の初代会長に就任しました。今後は社内だけでなく、社会の女性活躍をサポートし、日本社会におけるジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを加速させていきます。
[主な環境負荷軽減項目]
項目目標値達成時期
CO2排出量カーボンニュートラル2026年
パーム油サステナブルなパーム油 100%
(RSPO MB方式以上)
2026年
サステナブルな紙 100% (認証紙・
再生紙など)※1
2023年
水消費量 △40% (対2014年)※22026年
廃棄物埋め立てゼロ※32022年

※1:商品における ※2:資生堂グループ全事業所、売上高原単位 ※3:自社工場のみ
環境対応パッケージ開発促進
当社は、循環型経済への移行を目指し、3R(リデュース、リユース、リサイクル)と生分解性技術の開発を積極的に進めています。特に、私たちの日々の暮らしに不可欠な素材であるプラスチックは、便利な一方で海洋ゴミとして世界の大きな環境課題の一つになっており、環境に配慮した素材に関心が高まっています。この課題への取り組みの一つとして、海水中でも高い生分解性を持つ新素材「PHBH」※の化粧品容器への応用を目指し、2019年4月に株式会社カネカとの共同開発を開始しました。同社の保有する独自の素材開発技術と、当社の長年にわたる化粧品などの容器開発のノウハウを融合させることで、化粧品に関わる環境負荷の少ない生分解性容器の早期の実用化を目指しています。
2019年12月には、容器の回収・リユースを前提として、テラサイクル社(アメリカ・ニュージャージー州)が開発した循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」の日本展開にパートナー企業として参画することを表明しました(2020年中に東京都内でサービスを開始予定)。また、化粧品容器の国際イニシアティブ「SPICE」にて、環境対応パッケージの業界標準化を目的に、評価手法をまとめたガイダンスの開発に取り組んでいます。このように、当社は、独自の技術や社外とのコラボレーションを通じて、商品の使いやすさや美しさだけでなく環境への配慮を追求し、環境負荷の最小化を目指していきます。
※「カネカ生分解性ポリマーPHBH」
株式会社カネカが独自に開発した植物油などのバイオマスを原料とし微生物発酵プロセスによって生産されるバイオポリマーで、幅広い環境下で優れた生分解性が期待される素材です。
ビューティーとクリエイティブの力で肌悩みをお持ちの方をサポート
あざや白斑などの肌色変化、肌の凹凸や、がん治療の副作用による外見上の変化など、さまざまな肌悩みをお持ちの方にメイクアップ方法をアドバイスする専門の施設「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター」を2019年5月にシンガポールに開設しました。本センターは、2006年に資生堂創業の地である東京・銀座でのオープンを皮切りに、2008年の上海、台湾、2011年の香港に続くもので、さまざまな肌悩みをお持ちの方が毎日自分らしく過ごせるようにグローバルで展開していきます。
現在、治療技術の進歩や早期発見により、がんと向き合って過ごす期間が長くなる傾向にあり、就労しながら通院するがん患者も増加しています。当社では、2017年からビューティーとクリエイティブの力でがん患者の方の社会復帰を支援するプロジェクト「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」を行っています。本プロジェクトは、2019年12月に一般財団法人 国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)が主催する2019年IAUD国際デザイン賞のソーシャルデザイン部門で金賞を受賞しました。資生堂の従業員ボランティアと、活動趣旨に賛同した異業種企業、団体、医療機関と連携し、がんになっても笑顔で暮らせる社会の実現を目指していきます。
企業文化・芸術・美の発信を通じて、よりよい世界の実現へ
東京・銀座にある当社の画廊「資生堂ギャラリー」は2019年12月に100周年を迎えました。前年に同ギャラリーが開催したアーティスト蓮沼執太氏の展覧会「蓮沼執太: ~ ing」は高い評価を受け、2019年度の文化庁芸術選奨で文部科学大臣賞メディア芸術新人賞を受賞しました。
また、資生堂の企業文化誌「花椿」ウェブ版で連載していた漫画「ダルちゃん」は、幸せとは何かを考え苦悩する若い女性主人公の姿が若年層を中心に共感をよび、インターネット上で大きな話題となりました。小学館から刊行された同漫画の単行本は累計10万部を突破しています。「花椿」は82年の歴史を持ち、現在は季刊誌とウェブマガジンの2つのメディアで、現代を生きる女性へ向けて、豊かな生活につながるヒントを提供しています。季刊誌の2020年春号では「SAVE THE BEAUTY OF EARTH」をテーマに、環境問題にさまざまな角度からアプローチし、子どもたちと動物、都市の自然を捉えたビジュアルや若い世代のサステナブル活動などを紹介しています。当社は今後も、アートによるイノベーションを目指し、“新しい美の発見と創造”を理念として、芸術文化支援活動を通じ、世の中に新たな価値を紹介していきます。

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