有価証券報告書-第123期(2022/01/01-2022/12/31)
有報資料
文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2023年3月24日)現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
①企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY
当社は、1872年に創業し、昨年2022年に150周年を迎えました。その創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指して活動してきました。そして、2019年には、100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指しています。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの150年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
[THE SHISEIDO PHILOSOPHY]

[OUR MISSION]
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びやしあわせをもたらす力が
あると信じています。
資生堂は創業以来、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の
発見と創造を行ってきました。
これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。
美の力でよりよい世界を。
それが、私たちの企業使命です。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/THE SHISEIDO PHILOSOPHY」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
②中期経営戦略 「SHIFT 2025 and Beyond」~Shift for New Growth~
当社は、今年からスタートする2023年から2025年までの3ヶ年を中心に取り組む中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定しました。「SHIFT 2025 and Beyond」は、「守り」から「攻め」に転じる躍動の期間として、新経営体制のもと、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、さらなる事業成長を確実なものにします。
2021年から取り組んできた中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」は、新型コロナウイルス感染症が厳しい影響をもたらす中、多くの成果を生み出しました。まず、収益性を高めるため「選択と集中」を実行し、パーソナルケア事業譲渡やメイクアップブランドの譲渡など厳しい判断を必要とする変革を世界中で鋭意進め、徹底した構造改革を実施しました。また、長年の懸案であった欧米の収益性を改善しました。さらに全社でのスキンビューティー売上比率を着実に拡大させました。そして、日々変化する市場環境に迅速に対応するデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や FOCUS※1への投資、最先端技術を搭載した新工場や物流体制を構築し、高い品質や生産性を実現しました。このようなさまざまな取り組みを間断なく実行し、強固な財務基盤を確立することができました。
「SHIFT 2025 and Beyond」では、まず「WIN 2023 and Beyond」の残った課題である日本事業の成長性回復に取り組みます。2023年から3年間の抜本的な改革により、2025年に同事業で500億円を超えるコア営業利益を実現します。また、同期間において全社をあげて持続的な売上成長と収益性を向上させるための改革を実行し、Personal Skin Beauty & Wellness Company を目指します。長期的な成長を目指すうえで、「ブランド」、「イノベーション」、「人財」の3つの重点領域への投資を強化し、コア営業利益率で、2025年までに12%、さらに2027年の最終年度には15%という目標達成を計画しています。引き続き当社は、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指していきます。
長期的な成長を目指した主な重点領域
ブランド価値の向上・強化
「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」などのグローバルブランドをはじめ、「エリクシール」などアジアをメインに展開しているブランド、フレグランスブランド、メンズブランドそして戦略的に開発された新ブランドに対して、マーケティング投資について3ヶ年で累計1,000億円超※2の追加投資を実施します。
イノベーションへの研究開発費の継続投資
グローバル体制を活かした各地域における研究所との連携をこれまで以上に強化し、イノベーション領域の拡大、生活者への魅力ある訴求開発などの研究開発プロセスを進化させていきます。また、当社の知見を、外部との共同研究や企業間連携・M&Aなどを通じて取り入れた技術と掛け合わせ、新たな商品やサービスの創造を進めます。イノベーションのさらなる加速に向け、売上高比率3%の研究開発費を投資します。
グローバルな人財・リーダーシップの強化
「PEOPLE FIRST」という考えのもと、人財育成へ積極的に投資しています。将来のリーダー候補社員に対する選抜型プログラムや自発的キャリア開発支援、グローバルでの人財配置の加速や報酬制度の整備など、今後も企業成長を支える「人財」に引き続き投資をしていきます。さらに、創業150周年の記念事業として、今秋、当社の創業の地である銀座に次世代を担う人財開発の拠点「Shiseido Future University」をオープンし、当社のCEOである魚谷雅彦が初代学長を務めます。
各地域事業の主な取り組み
積極投資により継続的な安定成長を実現・高収益構造へ転換を目指します。
・日本:ブランド力・組織力の強化、再成長による収益基盤の再構築
・中国:ブランドポートフォリオの拡充・新領域開発
・アジアパシフィック:将来の有望市場における事業基盤構築
・トラベルリテール:旅行者向けの独自価値を構築
・米州:次なる成長の柱として成長基盤を構築
・欧州:構造改革を経て収益性を伴う成長の実現
財務戦略
財務目標
これまでの構造改革を経て構築した強固な財務基盤を活かして、2023年以降は、戦略的な成長投資を加速し、これによる持続的な売上拡大とコスト低減、そして収益性・キャッシュ創出力の強化に取り組みます。売上高 CAGR※3は、2023年から2025年までの3年間で+8%(2022年比)、2026年から2027年までの2年間で+6%(2025年比)を目指します。コア営業利益率は、この力強い売上成長とコスト低減施策の両輪で、2025年に12%、2027年に15%の実現を目指します。また、フリー・キャッシュ・フローは2025年に1,000億円、EBITDA※4マージンは、2025年に18%、2027年に20%を見込みます。資本効率については、2025年にはROICで12%、ROEで14%を実現します。
キャッシュアロケーション
当社の価値創造ドライバーである「ブランド」、「イノベーション」、「人財」への積極投資を通じた収益性改善で、2023年から2025年の3年間で4,000億円のキャッシュ・インフローを見込みます。この創出したキャッシュを、FOCUSをはじめとしたIT/DX関連や、工場への省エネ設備の導入等の設備投資、またM&A・新領域への成長投資に振り向け、中長期的な企業価値の最大化に向けた好循環を構築します。
株主還元
株主のみなさまへの利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指しています。フリー・キャッシュ・フローの状況を重視し、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。

「SHIFT 2025 and Beyond」の詳細については、当社企業情報サイトの「投資家情報/IRライブラリー/決算短信・決算説明資料」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/library/tanshin/)に掲載の「2022年度決算説明資料」等、および「第123回 定時株主総会 招集ご通知」の5ページ~6ページの「株主のみなさまへお伝えしたいこと」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/shareholder/)をご覧ください。
※1 全世界共通のITプラットフォームの構築・最適化(データの標準化や業務プロセスの最適化など)を進めるプ
ロジェクト
※2 2023~2025年累計 2022年比増加総額
※3 為替影響、事業譲渡影響を除いた年平均成長率
※4 コア営業利益+減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)
③サステナビリティの取り組み
資生堂は、事業を通じて人々の幸福感・充足感を高め、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指しています。サステナビリティを経営戦略の中心に据え、本業を通じた社会価値創出と社会・環境課題の解決を促進します。
推進体制(ガバナンス)
資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。2022年はサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、専門的に審議するSustainability Committeeを定期的に開催しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表取締役を含む経営戦略・R&D・サプライネットワーク・広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合はGlobal Strategy Committeeや取締役会にも諮り、審議しています。
また、毎年グローバルのステークホルダーに向けたサステナビリティレポートを発行し、当社の本業を通じたサステナビリティアクションの中長期目標とその進捗を開示しています。
[中長期目標]
※1 資生堂全事業所(対2019年)
※2 資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体(対2019年)
※3 資生堂全事業所、売上高原単位(対2014年)
※4 プラスチック製容器について
※5 物理的なサプライチェーンモデルによる認証:アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマ
スバランスに基づく
※6 製品における、認証紙または再生紙など
気候変動対応とTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言への取り組み
資生堂は、気候変動問題による事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、TCFDフレームワークに沿った情報開示を行っています。脱炭素社会への移行、および気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされる長期的なリスク・機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオそれぞれの短期・中期・長期の定性的・定量的な分析結果と主な対応アクションを開示しました。
ガバナンス
当社の気候関連のリスクおよび機会に係るガバナンスに関しては、サステナビリティ関連業務における推進体制と同様に取り組んでいます。詳細は、前述「サステナビリティの取り組み」の「推進体制(ガバナンス)」をご覧ください。
シナリオ分析
1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、IPCCが示したRCPとSSPシナリオに沿ってリスクと機会について分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について、1.5/2℃および4℃の各シナリオを分析しました。なお、2030年時点においては、炭素税によるコスト増のリスクが最も事業への影響が大きいと想定し、導入される国や地域の数により約1~8億円規模の財務影響が発生する可能性を予測しています。
一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオにおいて、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まると予想されます。4℃シナリオにおいては、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大すると予想されます。イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していくことで、リスクの緩和と新たな機会の創出を目指しています。
●がついている要因は定量分析も実施しています。
詳細なリスク分析を含めた気候関連財務情報開示レポートは、当社企業情報サイトで公開しています。
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/env/pdf/risks_report.pdf
リスクマネジメント
資生堂は2022年も、事業中長期の事業戦略の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを総合的・多面的な手法を用いて抽出し、特定しました。その中には、「環境・気候変動」「自然災害・人的災害」といったサステナビリティ領域のリスクも含まれています。気候関連リスクも、事業継続や戦略に影響を及ぼす要因の1つとして科学的または社会経済的なデータに基づいて分析され、気候変動や自然災害に関わるリスクとして全社のリスクマネジメントに統合されます。特定されたリスクは、重要度に応じて、「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」、取締役会にて対応策などが審議される体制となっています。
指標と目標
資生堂は、CO2排出量削減を目標として設定し、また定期的に気候変動に伴う状況をモニタリングし、対応策を講じることで、リスクの緩和に貢献しています。特にScope 1およびScope 2のCO2排出量については2026年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として設定しました。
また、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に関しては、1.5℃シナリオにて2030年に向けた目標に対して、SBTイニシアティブ(SBTi)※1の認証を取得し、CO2排出量削減に取り組んでいます。
気候関連リスクと機会の評価の詳細については、「気候関連財務情報開示レポート」、「サステナビリティレポート」をご参照ください。
※1 パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定すること
を推進している国際的なイニシアティブ
サステナブルパッケージと循環型モデルの推進
資生堂は、海洋プラスチックゴミ問題は、グローバルで喫緊に解決すべき環境課題と認識し、サステナブルな容器包装の開発など対応を強化しています。
資生堂独自の容器包装開発ポリシー5Rs(Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース))を前提としたイノベーションを通して、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標を掲げています。容器の軽量化や「つめかえ・つけかえ」容器の拡大などによるプラスチック使用量の削減、分別しやすい容器設計や単一素材(モノマテリアル)によるリサイクルの促進や再生素材(PCR)を使用するなど環境負荷軽減を推進しています。
また、2022年には、積水化学工業株式会社、住友化学株式会社と協業し、プラスチック製化粧品容器を回収し、分別することなく資源化、原料化を経て、容器として再生する一連の循環モデル構築に向けた取り組みを開始しました。今後は、3社が企業の垣根を超えて連携するとともに、関連する業界や企業にも参加を働きかけ、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

CDPにおける気候変動調査での最高評価獲得
当社は、国際的な環境調査・情報開示を行う非政府組織であるCDP※1の気候変動に関する調査において、最高評価にあたる「Aリスト企業」に選定されました。2022年は、過去最高の約18,700社の企業が調査に応じ、当社を含む日本企業74社が気候変動の「Aリスト企業」に選定されました。当社は、気候変動に関わる温室効果ガス削減目標として「2026年カーボンニュートラル達成※2」を掲げ、工場や事業所における継続的な省エネルギーの取り組みに留まらず、CO2排出量削減および環境負荷軽減に積極的に取り組んでいます。2022年には、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に対してSBTイニシアティブ(SBTi)からの認定取得やRE100※3への加盟、TCFD※4に準拠したリスクと機会の分析および対応策の開示と、全世界の工場や事業所において再生可能エネルギーの導入を積極的に行いました。具体的なCO2排出量削減の活動の姿勢が高く評価されたものと考えています。
※1 CDPは、130兆米ドル以上の資産を持つ680社以上の機関投資家と、6.4兆米ドルの調達支出を持つ280社の大手購買企業の要請に基づき、毎年、企業や自治体に環境への影響やリスク等に関するデータの開示を要請し、環境対策を促すことを主な活動としている
※2 資生堂全事業所、Scope1・2
※3 100%Renewable Electricityの略で、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする企業で構成される国際的なイニシアティブ
※4 Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略で、主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会(FSB)によって2015年12月に設立されたタスクフォース

社会課題への取り組み
資生堂は、1872年の創業以来、多様な価値観やライフスタイルのアップデートを通して時代を切り開き、心豊かな生き方を提案してきました。一方、現在の社会環境はかつてなく急激に変化し、既成概念や慣習、働き方にも多大な影響を与えています。新型コロナウイルス感染症拡大は社会的に困窮している人々の状況を悪化させるなど、課題は一層深刻になっています。私たちは、人は本来、多様であるという認識のもと、一人ひとりが自分らしい人生を実現できるインクルーシブな社会の実現に向け、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要な経営戦略テーマと位置づけています。「女性のエンパワーメント」と「美の力によるエンパワーメント」を戦略の柱とし、社内におけるD&Iの取り組みや事業活動の実績をいかした社会貢献を推進していきます。
そのひとつに、英国発祥のグローバルイニシアティブとして、企業の意思決定機関における健全なジェンダーバランスを目指す「30% Club Japan(2019年5月発足)」へ参画しています。日本企業の役員※1に占める女性比率の向上(2030年をめどにTOPIX100企業で女性役員の比率30%※2を達成)を目標とし、当社代表取締役 会長 CEO 魚谷雅彦が会長を務め、TOPIX100を中心とした33社※3の企業トップとの議論、また、大学、インベスターとの連携など、日本企業ひいては日本社会のジェンダーギャップ解消に向けた取り組みを進めています。
一人ひとりが尊重され、誰もが持てる能力を発揮できるインクルーシブな社会が人々の幸福につながると信じ、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に取り組んでいきます。
※1 役員は取締役と監査役と定義
※2 TOPIX100の取締役会における女性役員比率(監査役会設置企業は監査役を含む)
※3 2022年12月末時点(2023年3月時点では34社)

TOPIX社長会

資生堂ギャラリーにおける「第八次椿会 ツバキカイ 8 このあたらしい世界」の開催
創業から150年にわたる資生堂のヘリテージを成す要素の一つに、アートへの取り組みがあります。現存する日本で最古の画廊といわれる資生堂ギャラリーでは、1919年のオープンより「新しい美の発見と創造」に取り組み、日本の芸術文化の振興に寄与してきました。資生堂ギャラリーを代表する展覧会の一つである「椿会」は、第二次世界大戦で一時中断していた資生堂ギャラリーの活動を、1947年に再開するにあたり誕生したグループ展です。アートが人々に希望を与え、勇気をもたらすという信念に基づき、戦争や災害、不況などで世の中が閉塞状況にあるときにも再興を願い開催してきました。誕生から70年以上にわたり継続し、これまで合計86人の作家に参加いただきました。
2021年からスタートした「第八次椿会」のメンバーは杉戸洋、中村竜治、Nerhol (ネルホル)、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]の6組。ジャンルを超えた活動やコラボレーション、チームでの制作などを行う、今の時代を代表するアーティストたちです。同時代のアーティストたちと共に、コロナ後の「あたらしい世界」について考えています。2年目となる2022年は、「豊かさ」について考える場を作ることを試みました。8月27日から12月18日までの3ヶ月以上にわたり開催した展覧会には、延べ12,000人もの方々に来場いただきました。
今、我々の住む世界は大きな転換期にあります。先の予測ができない不確かな時代において、アートは未来を知るヒントや勇気を与えてくれます。資生堂はアートを通して、これからも人々の心を豊かにすることを目指し、社会への貢献を果たしていきます。

「第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界 2nd SEASON “QUEST”」会場風景
撮影:加藤健
次世代を担うリーダーの人財開発施設として「Shiseido Future University」設立
当社は、創業150周年の記念事業として、次世代を担うリーダーの人財開発施設「Shiseido Future University」を、創業の地である銀座(東京都中央区)に設立することを決定しました。2023年秋にオープン予定です。当社のCEOである魚谷雅彦は、人財は当社の最大の資産であり、これまでも人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の経営理念を掲げてきました。「Shiseido Future University」を通じて、さらに人的資本への投資を強化していきます。具体的には、最先端でグローバルレベルのビジネススクールの学びと、美への感性や心の豊かさを創業以来追求してきた資生堂のヘリテージへの学びを掛け合わせたオリジナルカリキュラムで人財開発を行います。“戦略性”や“リーダーシップ”、“感性”を身につけ、イノベーションを起こしビジネスを成長させることでよりよい社会の実現に貢献できる、グローバルビューティーカンパニーのリーダーにふさわしい人財を開発していきます。

ワークショップスペース
当社はこれらの活動を通じて、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指し、100年先も輝き続ける企業となれるよう取り組みを継続してまいります。株主のみなさまにおかれましては、引き続き変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
①企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY
当社は、1872年に創業し、昨年2022年に150周年を迎えました。その創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指して活動してきました。そして、2019年には、100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指しています。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの150年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
[THE SHISEIDO PHILOSOPHY]

[OUR MISSION]
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びやしあわせをもたらす力が
あると信じています。
資生堂は創業以来、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の
発見と創造を行ってきました。
これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。
美の力でよりよい世界を。
それが、私たちの企業使命です。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/THE SHISEIDO PHILOSOPHY」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
②中期経営戦略 「SHIFT 2025 and Beyond」~Shift for New Growth~
当社は、今年からスタートする2023年から2025年までの3ヶ年を中心に取り組む中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定しました。「SHIFT 2025 and Beyond」は、「守り」から「攻め」に転じる躍動の期間として、新経営体制のもと、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、さらなる事業成長を確実なものにします。
2021年から取り組んできた中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」は、新型コロナウイルス感染症が厳しい影響をもたらす中、多くの成果を生み出しました。まず、収益性を高めるため「選択と集中」を実行し、パーソナルケア事業譲渡やメイクアップブランドの譲渡など厳しい判断を必要とする変革を世界中で鋭意進め、徹底した構造改革を実施しました。また、長年の懸案であった欧米の収益性を改善しました。さらに全社でのスキンビューティー売上比率を着実に拡大させました。そして、日々変化する市場環境に迅速に対応するデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や FOCUS※1への投資、最先端技術を搭載した新工場や物流体制を構築し、高い品質や生産性を実現しました。このようなさまざまな取り組みを間断なく実行し、強固な財務基盤を確立することができました。
「SHIFT 2025 and Beyond」では、まず「WIN 2023 and Beyond」の残った課題である日本事業の成長性回復に取り組みます。2023年から3年間の抜本的な改革により、2025年に同事業で500億円を超えるコア営業利益を実現します。また、同期間において全社をあげて持続的な売上成長と収益性を向上させるための改革を実行し、Personal Skin Beauty & Wellness Company を目指します。長期的な成長を目指すうえで、「ブランド」、「イノベーション」、「人財」の3つの重点領域への投資を強化し、コア営業利益率で、2025年までに12%、さらに2027年の最終年度には15%という目標達成を計画しています。引き続き当社は、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指していきます。
長期的な成長を目指した主な重点領域
ブランド価値の向上・強化
「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」などのグローバルブランドをはじめ、「エリクシール」などアジアをメインに展開しているブランド、フレグランスブランド、メンズブランドそして戦略的に開発された新ブランドに対して、マーケティング投資について3ヶ年で累計1,000億円超※2の追加投資を実施します。
イノベーションへの研究開発費の継続投資
グローバル体制を活かした各地域における研究所との連携をこれまで以上に強化し、イノベーション領域の拡大、生活者への魅力ある訴求開発などの研究開発プロセスを進化させていきます。また、当社の知見を、外部との共同研究や企業間連携・M&Aなどを通じて取り入れた技術と掛け合わせ、新たな商品やサービスの創造を進めます。イノベーションのさらなる加速に向け、売上高比率3%の研究開発費を投資します。
グローバルな人財・リーダーシップの強化
「PEOPLE FIRST」という考えのもと、人財育成へ積極的に投資しています。将来のリーダー候補社員に対する選抜型プログラムや自発的キャリア開発支援、グローバルでの人財配置の加速や報酬制度の整備など、今後も企業成長を支える「人財」に引き続き投資をしていきます。さらに、創業150周年の記念事業として、今秋、当社の創業の地である銀座に次世代を担う人財開発の拠点「Shiseido Future University」をオープンし、当社のCEOである魚谷雅彦が初代学長を務めます。
各地域事業の主な取り組み
積極投資により継続的な安定成長を実現・高収益構造へ転換を目指します。
・日本:ブランド力・組織力の強化、再成長による収益基盤の再構築
・中国:ブランドポートフォリオの拡充・新領域開発
・アジアパシフィック:将来の有望市場における事業基盤構築
・トラベルリテール:旅行者向けの独自価値を構築
・米州:次なる成長の柱として成長基盤を構築
・欧州:構造改革を経て収益性を伴う成長の実現
財務戦略
財務目標
これまでの構造改革を経て構築した強固な財務基盤を活かして、2023年以降は、戦略的な成長投資を加速し、これによる持続的な売上拡大とコスト低減、そして収益性・キャッシュ創出力の強化に取り組みます。売上高 CAGR※3は、2023年から2025年までの3年間で+8%(2022年比)、2026年から2027年までの2年間で+6%(2025年比)を目指します。コア営業利益率は、この力強い売上成長とコスト低減施策の両輪で、2025年に12%、2027年に15%の実現を目指します。また、フリー・キャッシュ・フローは2025年に1,000億円、EBITDA※4マージンは、2025年に18%、2027年に20%を見込みます。資本効率については、2025年にはROICで12%、ROEで14%を実現します。
キャッシュアロケーション
当社の価値創造ドライバーである「ブランド」、「イノベーション」、「人財」への積極投資を通じた収益性改善で、2023年から2025年の3年間で4,000億円のキャッシュ・インフローを見込みます。この創出したキャッシュを、FOCUSをはじめとしたIT/DX関連や、工場への省エネ設備の導入等の設備投資、またM&A・新領域への成長投資に振り向け、中長期的な企業価値の最大化に向けた好循環を構築します。
株主還元
株主のみなさまへの利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指しています。フリー・キャッシュ・フローの状況を重視し、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。

「SHIFT 2025 and Beyond」の詳細については、当社企業情報サイトの「投資家情報/IRライブラリー/決算短信・決算説明資料」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/library/tanshin/)に掲載の「2022年度決算説明資料」等、および「第123回 定時株主総会 招集ご通知」の5ページ~6ページの「株主のみなさまへお伝えしたいこと」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/shareholder/)をご覧ください。
※1 全世界共通のITプラットフォームの構築・最適化(データの標準化や業務プロセスの最適化など)を進めるプ
ロジェクト
※2 2023~2025年累計 2022年比増加総額
※3 為替影響、事業譲渡影響を除いた年平均成長率
※4 コア営業利益+減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)
③サステナビリティの取り組み
資生堂は、事業を通じて人々の幸福感・充足感を高め、美の力を通じて「人々が幸福を実感できる」サステナブルな社会の実現を目指しています。サステナビリティを経営戦略の中心に据え、本業を通じた社会価値創出と社会・環境課題の解決を促進します。
推進体制(ガバナンス)
資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。2022年はサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、専門的に審議するSustainability Committeeを定期的に開催しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表取締役を含む経営戦略・R&D・サプライネットワーク・広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合はGlobal Strategy Committeeや取締役会にも諮り、審議しています。
また、毎年グローバルのステークホルダーに向けたサステナビリティレポートを発行し、当社の本業を通じたサステナビリティアクションの中長期目標とその進捗を開示しています。
[中長期目標]
| 環境 | 目標 | 達成年 | 目標設定年 | |
| CO2排出量 | カーボンニュートラル※1 | 2026 | 2020 | |
| CO2排出量削減⦅SBTi, Scope 1・2⦆ | 46.2%※1 | 2030 | 2022 | |
| CO2排出量削減⦅SBTi, Scope 3⦆ | 55%※2 | 2030 | 2022 | |
| 水 | 水消費量削減 | 40%※3 | 2026 | 2020 |
| パッケージ | サステナブルな容器 | 100%※4 | 2025 | 2020 |
| パーム油 | サステナブルなパーム油 | 100%※5 | 2026 | 2020 |
| 紙 | サステナブルな紙 | 100%※6 | 2023 | 2020 |
| D&I | 目標 | 達成年 | 目標設定年 | |
| (社内) 女性管理職比率 | (国内) あらゆる階層における女性リーダー比率 | 50% | 2030 | 2021 |
| (社会) 女性の エンパワーメント | ・国内における女性活躍 ・グローバルでの女子教育支援と経済的自立支援 | 100万人 (ダイレクトリーチ) | 2030 | 2023 |
| (社会) 美の力による エンパワーメント | ・資生堂 ライフクオリティー ビューティー活動による 自己効力感の向上 ・多様な美の尊重による自己肯定感醸成 | 100万人 (ダイレクトリーチ) | 2030 | 2023 |
※1 資生堂全事業所(対2019年)
※2 資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体(対2019年)
※3 資生堂全事業所、売上高原単位(対2014年)
※4 プラスチック製容器について
※5 物理的なサプライチェーンモデルによる認証:アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマ
スバランスに基づく
※6 製品における、認証紙または再生紙など
気候変動対応とTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言への取り組み
資生堂は、気候変動問題による事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、TCFDフレームワークに沿った情報開示を行っています。脱炭素社会への移行、および気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされる長期的なリスク・機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオそれぞれの短期・中期・長期の定性的・定量的な分析結果と主な対応アクションを開示しました。
ガバナンス
当社の気候関連のリスクおよび機会に係るガバナンスに関しては、サステナビリティ関連業務における推進体制と同様に取り組んでいます。詳細は、前述「サステナビリティの取り組み」の「推進体制(ガバナンス)」をご覧ください。
シナリオ分析
1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、IPCCが示したRCPとSSPシナリオに沿ってリスクと機会について分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について、1.5/2℃および4℃の各シナリオを分析しました。なお、2030年時点においては、炭素税によるコスト増のリスクが最も事業への影響が大きいと想定し、導入される国や地域の数により約1~8億円規模の財務影響が発生する可能性を予測しています。
一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオにおいて、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まると予想されます。4℃シナリオにおいては、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大すると予想されます。イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していくことで、リスクの緩和と新たな機会の創出を目指しています。
| リスク | 機会 | ||
| 移行リスク (主に1.5/2℃) | ・炭素税によるコスト増● ・燃料価格の高騰 ・シングルユースプラスチック使用製品の販売機会喪失● | ・エネルギー効率の向上 ・クリーンビューティーなどのエシカルな製品の販売機会拡大 | |
| 物理的リスク (主に4℃) | 急性 | ・自然災害による生産活動の停止● ・自然災害による物流機能の断絶 | ・環境にやさしい製品 ・気候対応型ソリューションの開発の販売機会拡大 |
| 慢性 | ・降雨や気象の変化による、原材料の調達コストの増加● ・水不足による生産活動の停止● | ||
●がついている要因は定量分析も実施しています。
詳細なリスク分析を含めた気候関連財務情報開示レポートは、当社企業情報サイトで公開しています。
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/env/pdf/risks_report.pdf
リスクマネジメント
資生堂は2022年も、事業中長期の事業戦略の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを総合的・多面的な手法を用いて抽出し、特定しました。その中には、「環境・気候変動」「自然災害・人的災害」といったサステナビリティ領域のリスクも含まれています。気候関連リスクも、事業継続や戦略に影響を及ぼす要因の1つとして科学的または社会経済的なデータに基づいて分析され、気候変動や自然災害に関わるリスクとして全社のリスクマネジメントに統合されます。特定されたリスクは、重要度に応じて、「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」、取締役会にて対応策などが審議される体制となっています。
指標と目標
資生堂は、CO2排出量削減を目標として設定し、また定期的に気候変動に伴う状況をモニタリングし、対応策を講じることで、リスクの緩和に貢献しています。特にScope 1およびScope 2のCO2排出量については2026年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として設定しました。
また、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に関しては、1.5℃シナリオにて2030年に向けた目標に対して、SBTイニシアティブ(SBTi)※1の認証を取得し、CO2排出量削減に取り組んでいます。
気候関連リスクと機会の評価の詳細については、「気候関連財務情報開示レポート」、「サステナビリティレポート」をご参照ください。
※1 パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定すること
を推進している国際的なイニシアティブ
サステナブルパッケージと循環型モデルの推進
資生堂は、海洋プラスチックゴミ問題は、グローバルで喫緊に解決すべき環境課題と認識し、サステナブルな容器包装の開発など対応を強化しています。
資生堂独自の容器包装開発ポリシー5Rs(Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース))を前提としたイノベーションを通して、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標を掲げています。容器の軽量化や「つめかえ・つけかえ」容器の拡大などによるプラスチック使用量の削減、分別しやすい容器設計や単一素材(モノマテリアル)によるリサイクルの促進や再生素材(PCR)を使用するなど環境負荷軽減を推進しています。
また、2022年には、積水化学工業株式会社、住友化学株式会社と協業し、プラスチック製化粧品容器を回収し、分別することなく資源化、原料化を経て、容器として再生する一連の循環モデル構築に向けた取り組みを開始しました。今後は、3社が企業の垣根を超えて連携するとともに、関連する業界や企業にも参加を働きかけ、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

CDPにおける気候変動調査での最高評価獲得
当社は、国際的な環境調査・情報開示を行う非政府組織であるCDP※1の気候変動に関する調査において、最高評価にあたる「Aリスト企業」に選定されました。2022年は、過去最高の約18,700社の企業が調査に応じ、当社を含む日本企業74社が気候変動の「Aリスト企業」に選定されました。当社は、気候変動に関わる温室効果ガス削減目標として「2026年カーボンニュートラル達成※2」を掲げ、工場や事業所における継続的な省エネルギーの取り組みに留まらず、CO2排出量削減および環境負荷軽減に積極的に取り組んでいます。2022年には、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に対してSBTイニシアティブ(SBTi)からの認定取得やRE100※3への加盟、TCFD※4に準拠したリスクと機会の分析および対応策の開示と、全世界の工場や事業所において再生可能エネルギーの導入を積極的に行いました。具体的なCO2排出量削減の活動の姿勢が高く評価されたものと考えています。
※1 CDPは、130兆米ドル以上の資産を持つ680社以上の機関投資家と、6.4兆米ドルの調達支出を持つ280社の大手購買企業の要請に基づき、毎年、企業や自治体に環境への影響やリスク等に関するデータの開示を要請し、環境対策を促すことを主な活動としている
※2 資生堂全事業所、Scope1・2
※3 100%Renewable Electricityの略で、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする企業で構成される国際的なイニシアティブ
※4 Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略で、主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会(FSB)によって2015年12月に設立されたタスクフォース

社会課題への取り組み
資生堂は、1872年の創業以来、多様な価値観やライフスタイルのアップデートを通して時代を切り開き、心豊かな生き方を提案してきました。一方、現在の社会環境はかつてなく急激に変化し、既成概念や慣習、働き方にも多大な影響を与えています。新型コロナウイルス感染症拡大は社会的に困窮している人々の状況を悪化させるなど、課題は一層深刻になっています。私たちは、人は本来、多様であるという認識のもと、一人ひとりが自分らしい人生を実現できるインクルーシブな社会の実現に向け、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要な経営戦略テーマと位置づけています。「女性のエンパワーメント」と「美の力によるエンパワーメント」を戦略の柱とし、社内におけるD&Iの取り組みや事業活動の実績をいかした社会貢献を推進していきます。
そのひとつに、英国発祥のグローバルイニシアティブとして、企業の意思決定機関における健全なジェンダーバランスを目指す「30% Club Japan(2019年5月発足)」へ参画しています。日本企業の役員※1に占める女性比率の向上(2030年をめどにTOPIX100企業で女性役員の比率30%※2を達成)を目標とし、当社代表取締役 会長 CEO 魚谷雅彦が会長を務め、TOPIX100を中心とした33社※3の企業トップとの議論、また、大学、インベスターとの連携など、日本企業ひいては日本社会のジェンダーギャップ解消に向けた取り組みを進めています。
一人ひとりが尊重され、誰もが持てる能力を発揮できるインクルーシブな社会が人々の幸福につながると信じ、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に取り組んでいきます。
※1 役員は取締役と監査役と定義
※2 TOPIX100の取締役会における女性役員比率(監査役会設置企業は監査役を含む)
※3 2022年12月末時点(2023年3月時点では34社)

TOPIX社長会

資生堂ギャラリーにおける「第八次椿会 ツバキカイ 8 このあたらしい世界」の開催
創業から150年にわたる資生堂のヘリテージを成す要素の一つに、アートへの取り組みがあります。現存する日本で最古の画廊といわれる資生堂ギャラリーでは、1919年のオープンより「新しい美の発見と創造」に取り組み、日本の芸術文化の振興に寄与してきました。資生堂ギャラリーを代表する展覧会の一つである「椿会」は、第二次世界大戦で一時中断していた資生堂ギャラリーの活動を、1947年に再開するにあたり誕生したグループ展です。アートが人々に希望を与え、勇気をもたらすという信念に基づき、戦争や災害、不況などで世の中が閉塞状況にあるときにも再興を願い開催してきました。誕生から70年以上にわたり継続し、これまで合計86人の作家に参加いただきました。
2021年からスタートした「第八次椿会」のメンバーは杉戸洋、中村竜治、Nerhol (ネルホル)、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]の6組。ジャンルを超えた活動やコラボレーション、チームでの制作などを行う、今の時代を代表するアーティストたちです。同時代のアーティストたちと共に、コロナ後の「あたらしい世界」について考えています。2年目となる2022年は、「豊かさ」について考える場を作ることを試みました。8月27日から12月18日までの3ヶ月以上にわたり開催した展覧会には、延べ12,000人もの方々に来場いただきました。
今、我々の住む世界は大きな転換期にあります。先の予測ができない不確かな時代において、アートは未来を知るヒントや勇気を与えてくれます。資生堂はアートを通して、これからも人々の心を豊かにすることを目指し、社会への貢献を果たしていきます。

「第八次椿会 ツバキカイ8 このあたらしい世界 2nd SEASON “QUEST”」会場風景
撮影:加藤健
次世代を担うリーダーの人財開発施設として「Shiseido Future University」設立
当社は、創業150周年の記念事業として、次世代を担うリーダーの人財開発施設「Shiseido Future University」を、創業の地である銀座(東京都中央区)に設立することを決定しました。2023年秋にオープン予定です。当社のCEOである魚谷雅彦は、人財は当社の最大の資産であり、これまでも人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の経営理念を掲げてきました。「Shiseido Future University」を通じて、さらに人的資本への投資を強化していきます。具体的には、最先端でグローバルレベルのビジネススクールの学びと、美への感性や心の豊かさを創業以来追求してきた資生堂のヘリテージへの学びを掛け合わせたオリジナルカリキュラムで人財開発を行います。“戦略性”や“リーダーシップ”、“感性”を身につけ、イノベーションを起こしビジネスを成長させることでよりよい社会の実現に貢献できる、グローバルビューティーカンパニーのリーダーにふさわしい人財を開発していきます。

ワークショップスペース
当社はこれらの活動を通じて、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指し、100年先も輝き続ける企業となれるよう取り組みを継続してまいります。株主のみなさまにおかれましては、引き続き変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。