有価証券報告書-第121期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/25 15:11
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【項目】
170項目

対処すべき課題

文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2021年3月25日)現在における当社グループの将来に関する見通し及び計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
① 企業理念及び中長期経営戦略 WIN 2023 and Beyond
THE SHISEIDO PHILOSOPHY(企業理念)
当社は100年先も輝き続け、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、新・企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指します。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの140年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
[THE SHISEIDO PHILOSOPHY]

[OUR MISSION]
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
ビューティーイノベーションでよりよい世界を
資生堂は多様化する美の価値観、ニーズをとらえ、人々に自信と勇気を与え、喜びや幸せをもたらす
イノベーションに挑戦します。
美でこの世界をよりよくするためにイノベーションを
おこし続けていくことが私たちの責任であり、使命です。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「会社案内/企業理念」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
中長期経営戦略 WIN 2023 and Beyond
当社は、スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行し、2030年までにこの領域における世界No.1の企業になることを目指します。外部環境が急激に変化する中、2021年~2023年の3年間は、これまでの売上拡大による成長重視から、収益性とキャッシュ・フロー重視の戦略へと転換し、“Skin Beauty Company (スキンビューティーカンパニー)”としての基盤を盤石にするために、下記の取り組みを実施します。
まず、2021年を「変革と次への準備」の期間とし、With / Afterコロナへの対応・準備をしながら、事業ポートフォリオの再構築を中心とした構造改革、財務基盤の強化に集中します。また、創業150周年を迎える2022年は「再び成長軌道へ」の年と位置づけ、グローバルブランドのさらなる成長及び、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを加速させます。そして、最終年度となる2023年は「完全復活」の年と定め、“スキンビューティーカンパニー”として、売上高1兆円程度、営業利益率15%の達成を目指します。さらにこの3年間で、ブランド・イノベーション・サプライチェーン・DX・人材組織への積極的な投資を継続し、強化していきます。

[WIN 2023 主要戦略]
高収益構造への転換1. 事業構造改革による収益性改善
2. コスト競争力強化・生産拠点の生産性向上
3. 中国を中心としたアジア圏での成長強化
スキンビューティーへ注力4. スキンビューティーブランド育成・ポートフォリオ拡充
5. 他社との協業によるイノベーション強化
6. インナービューティー事業の開発
成長基盤の再構築7. サステナビリティを中心とした経営への進化
8. ブランドを強くするマーケティングの革新と組織強化
9. デジタル事業モデルへの転換・組織構築
10. 人材・組織のさらなる多様化と能力開発


[グローバルトランスフォーメーションロードマップ]

② WIN 2023の初年度となる2021年の計画
2021年の景況感については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による世界的な経済活動の減速等が引き続き懸念されます。また、外出自粛による消費マインドの低下に加え、特に国内においては訪日外国人の大幅な減少により消費低迷が続くなど、先行き不透明な状況が続くことが見込まれます。こうした経済環境の中で、すでに市況が回復に転じた中国を除くすべての地域で、上期は厳しい経済環境が継続するものの、下期以降、緩やかに回復することを想定しています。
このような事業環境変化に対し、当社は、プレミアムスキンビューティー事業やデジタルを中心としたビジネスモデルへの転換など、成長戦略領域への投資を強化するとともに、事業構造改革による収益基盤の再構築を進めています。
上記の取り組みにより、連結売上高は1兆1,000億円を見込んでいます。利益については、上記投資強化に加え、2020年に新型コロナウイルス感染症に係る特別損失として振替計上した固定費の反動影響がある一方、売上増に伴う差益増などにより営業利益350億円、経常利益310億円、親会社株主に帰属する当期純利益115億円を見込んでいます。
年間の主要な為替レートを、1米ドル=105円、1ユーロ=127円、1中国元=16円として計画を策定しています。
なお、今後パーソナルケア事業の譲渡が見込まれるものの、本件取引が当社の連結業績に与える影響については現在精査中です。現時点で売上高、営業利益等への影響額を正確に見込めないため、上記の業績見通しにはパーソナルケア事業の譲渡影響を織り込んでいません。
[2021年の営業利益見通しの詳細(2021年2月発表)]

③ パーソナルケア事業の合弁事業化
スキンビューティー領域をコア事業と位置づけ、その一環として事業ポートフォリオの再構築について検討を重ねる中で、2021年2月には、「TSUBAKI」や「SENKA」等をグローバルに展開するパーソナルケア事業について、そのポテンシャルを最大化し、今後さらに成長させるうえで、マーケティング投資強化を可能にする新しい事業モデルの構築が必要と判断しました。そして、同事業を、世界最大級のプライベートエクイティファンドで、投資先企業の事業成長及び企業価値向上に豊富な実績を有するCVC Capital Partnersに譲渡し、当社は、同事業を運営する会社の一部出資株主として参画することを決定しました。合弁事業化を通じ、成長投資の強化を可能にする事業環境を整えることで、事業・ブランド及び社員のさらなる成長・発展、ひいてはお客さまやお取引先さまへの貢献を実現していきます。
パーソナルケア事業の合弁事業化に関する詳細は、当社企業情報サイトに掲載しているニュースリリース、及び本件に関するCEOメッセージを参照ください。
https://bit.ly/2LwQupU (短縮URL)

④ プレミアムスキンビューティー事業の拡大
既存ブランドの強化
当社が強みを持つプレミアムスキンビューティー領域は、肌だけでなく身体の内側からアプローチして美を実現する“インナービューティー”を強化することによってさらに拡大し、当社グループ全体の売上高に占めるプレミアムスキンビューティー事業の構成を、2019年の60%から、2023年には、80%にまで高めることを目指します。
「SHISEIDO」は、サイエンスの力で付加価値の高いイノベーションをおこし続け、革新的な技術“セカンドスキン”の応用や、高まる男性用化粧品へのニーズに対応する新製品の発売などによって、多様な美を実現します。一方で、“つめかえ”の文化を世界に発信し、原材料の産地を“見える化”するなど、サステナビリティの対応も強化し、ホリスティックビューティーブランドとして進化を続けます。
また、最先端のサイエンスとラグジュアリーを融合したブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」、究極のカスタマイゼーションによって美を追求する「イプサ」、欧州・アジアへの導入を加速している「Drunk Elephant」もグローバルでの成長拡大を見込んでいます。長年にわたり高い支持を得ている日本発のブランド「エリクシール」、「アネッサ」も日本・中国を中心としたアジアでさらに成長を加速させます。
新たな成長領域での拡大
将来の成長を支える新たな成長領域にも注力します。“樹木との共生”をテーマに掲げて、2020年6月にローンチしたプレステージ・スキンケアブランド「バウム」は、全化粧品の90%以上を自然由来の素材から製造し、商品のパッケージには家具の製造工程で発生した小さい木材を再生利用しています。自然や環境に関心の高いお客さまに支持され、好調に推移しており、2021年9月には、中国で販売を開始する予定です。さらに、当社は2020年、美容機器ビジネスの知見・技術を有するヤーマン株式会社と合弁会社、株式会社エフェクティムを設立しました。ヤーマン社の高機能な美容機器技術と、当社の最先端の皮膚科学技術を組み合わせた、革新的な新エイジングケア※1ブランド「エフェクティム」を2021年春より、日本、中国で発売します。
※1 年齢に応じた、美容機器による対策と化粧品によるうるおいケア
⑤ グローバルでのDX加速
事業を再構築し、デジタルを中心とした事業モデルへの転換に向けた基盤構築、組織体制強化にも取り組みます。他のグローバル企業でのDX化に豊富な経験を持つプロフェッショナルをチーフデジタルオフィサーに選任し、グローバル規模で、オムニチャネル※1体験・デジタルマーケティングの加速、肌データ分析を活用したコンシューマー体験、顧客管理(CRM)強化などに取り組み、2023年には、グローバルでのEコマース売上比率を35%超※2まで引き上げることを目指します。
※1 インターネットや実店舗など、さまざまなチャネルを連携・統合させて顧客の利便性や満足度を高める
※2 小売Eコマース、Eコマース専門サイト、自社サイト売上高を含む
⑥ 主な地域における今後の戦略
<日本事業>高収益事業基盤の再構築を目指して、日本事業ではローカル・インバウンド別の事業管理を徹底したうえで、日本ブランド専門の研究開発部門を設立して、スキンケアを中心とする化粧品ブランドや中核となる商品を集中強化します。また、主要取引先との協働やEコマース拡大、“Omise+(オミセプラス)※1”の導入など、専門店との取り組みにも注力します。さらに、デジタル人材を育成するとともに、店頭とオンラインが融合した体験による事業モデルを構築し、お客さまのライフタイムバリュー※2の向上につながる提案を行うことで、長期愛用者の拡大につなげていきます。
また、DXによる事業モデルの革新に向けて、アクセンチュア株式会社と戦略パートナーシップを締結し、デジタル人材の獲得・育成を加速するなど、組織能力を強化していきます。
※1 化粧品専門店Eコマースプラットフォーム
※2 一人ひとりの顧客に対し、生涯にわたって提供する価値
<中国事業、アジアパシフィック事業、トラベルリテール事業>グローバルでコロナ禍から最も早く成長性を回復している中国では、日本発ブランドの導入・育成を強化します。世界最大級のEコマース企業であるアリババグループなどとの戦略提携を強化し、Eコマース売上比率50%超を目指します。
また、2020年2月に“爱心接力Relay of Loveプロジェクト”を立ち上げ、新型コロナウイルス感染症でお困りの方や医療関係者など多くの方々に、寄付や商品提供等を通じて、美の力で元気と笑顔を届ける活動を行ってきました。今後も、商品やサービス、社会貢献活動を通じ、企業市民として中国のお客さまと深い信頼関係を築くことによって、強固な成長基盤を確立していきます。
アジアパシフィック事業では、スキンビューティーブランドに注力するとともに、Eコマース専業パートナーとの取り組みを強化します。また、CRMの構築・活用や越境Eコマースへの積極的な取り組みなどにより、日本、中国、トラベルリテール(空港・市中免税店等)を一つの市場と捉え、主に中国のお客さまを対象にしたクロスボーダーマーケティングを進化させ、成長を実現していきます。
<米州事業、欧州事業>欧米では、スキンビューティーブランドを集中強化します。日本発ブランドに加え、2020年末に11の国と地域で展開していた「Drunk Elephant」については、2023年には35を超える国と地域へと拡大し、飛躍的な成長を目指します。また、デジタルマーケティングやEコマースの強化とともに、組織構造改革や固定費の低減によってフレグランス・メイクアップ事業の収益性を改善します。
⑦ 成長を支えるイノベーションとサプライチェーン
将来の成長を支えるイノベーション強化のための投資・リソースを拡大させます。研究開発体制は、2021年1月より中長期のシーズ開発及び新領域の価値・事業開発を行う“みらい研究”と商品開発機能を担う“ブランド価値開発”に組織を改編し、これまでさまざまな分野で培ってきた知見を融合した独自のアプローチを強化するとともに、インナービューティー等“WELLNESS”の新領域の研究も開拓していきます。2021年には、中国に新たな研究拠点を設立し、先進的な研究開発や化粧品のプロトタイプの開発などを行う技術革新の拠点と位置づけます。
サプライチェーンについては、新工場の稼働(那須・大阪茨木・福岡久留米)により、供給体制強化・内製化と生産効率改善を進めます。システム、データの標準化・統一化、グローバル全体での業務プロセスの高度化・効率化など、全社を挙げた業務改革プロジェクトである“FOCUS”によって需要供給精度の向上を図ります。これらにより、2023年には原価率を2019年比で2%改善させます。
⑧ イノベーションをおこし、変革をもたらす人材の育成
当社では“PEOPLE FIRST”の方針のもと、人材開発・獲得、グローバル統一人事制度の整備やジョブ型人事制度の導入、さらに、組織変革とともにパフォーマンスマネジメントの強化や“Shiseido Work Style 2.0”などによって生産性を向上します。これらの取り組みを通して多様なバックグラウンドを持つ人材が個の力を発揮し、イノベーションをおこし続ける組織を実現します。
⑨ WIN 2023 財務戦略
財務KPI
2023年までの3年間は、構造改革により筋肉質な財務状況を確立し、安定的なキャッシュを生み出すための基盤再構築のフェーズと位置づけています。その中で、中核事業であるスキンビューティー領域の強化、基盤再構築のための構造改革等を通じて、営業利益・EBITDAを改善し、事業そのものの収益性を引き上げます。2023年の目標として、売上高1兆円程度、営業利益率15%のほか、EBITDAマージン20%超、フリーキャッシュ・フローで1,000億円程度を目指します。資本効率については、NPV・ハードルレートなど資本コストを意識しながら、2023年にROIC14%、ROE18%を実現します。
キャッシュ・フロー改革及び戦略的投資アロケーション
キャッシュインフローとして、①スキンケア強化、構造改革などを通じた「事業自体の収益性改善」、②在庫の効率化、調達から生産のリードタイム短縮などの「キャッシュ・フロー改革」、③「ポートフォリオの見直し」に取り組むことにより、3年間累計で5,000億円を超えるキャッシュを創出します。これらキャッシュについては、企業価値の最大化に向けて、基盤再構築への構造改革、人材育成やコア事業であるスキンビューティー領域へのマーケティング、デジタル・IT・工場などの成長投資、負債の縮減に充てるとともに、株主還元を強化します。
株主還元
株主への利益還元については、直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指しています。フリーキャッシュ・フローの状況を重視し、自己資本配当率(DOE)2.5%以上を目安とした長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。WIN 2023においては、不透明な経営環境の中でもDOE2.5%以上の安定的な増配を目指します。その後、中長期的には事業自体の稼ぐ力を土台にしたEPSの成長に合わせた配当を実施していきます。
⑩ 2030年に向けたVISION
当社は、2030年に“PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY(パーソナルビューティーウェルネスカンパニー)”として、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指します。同時に、サステナブルな社会の実現を目指し、本業であるビューティービジネスを通じて世界2億人の人生に寄り添い、幸福を実感できる機会を提供し、スキンビューティー領域における世界No.1となり、売上高2兆円、営業利益率18%の達成を目標とします。これらを実行することで、当社の企業使命である“BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD (ビューティーイノベーションでよりよい世界を)”を実現していきます。
[社会価値創造に向けた取り組み]
2030年に向けたサステナビリティアクション及びKPI
当社は、“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現を目指し、2030年に向けたサステナビリティアクションとKPIを設定しました。
For People生涯を通じて、健やかな美を提供し、自分らしい人生を支援・商品愛用者継続率の向上
・美の力で高齢者・がんサバイバーをエンパワー:
50万人
For Society個々人が尊重され、誰もが活躍できる社会の実現(日本のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)リーディングカンパニーとして)・国際機関等と協働した女性支援:100万人
・30% Club - 大手企業の女性役員比率を高める
・(自社組織)全階層におけるジェンダー平等(50%)
・多様なバックグラウンド人材
For the Planet人と共生し、持続的に美を楽しめる地球環境への貢献・すべてのパッケージをサステナブルに
・カーボンニュートラルの実現
・持続可能な調達・環境配慮対応(処方・原材料)

サステナビリティの推進
資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。サステナビリティ関連業務における迅速なマネジメントの決定と認知徹底を確実に遂行するため、2020年にサステナビリティ関連課題を専門的に扱う「サステナビリティコミッティ」を新設しました。本コミッティは定期的に開催し、グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、具体的活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況のモニタリングを行っています。出席者は代表取締役を含む経営戦略・R&D・サプライネットワーク・広報・社会価値創造・ブランドホルダーなどの各領域エグゼクティブオフィサー、及び監査役で構成され、迅速に意思決定を行い、推進できる体制をとっています。課題によってその他の役員も出席しています。
また、2020年には初めてグローバルで「サステナビリティレポート」を発行し、事業を通じた社会価値創造活動を加速させていくことを社内外のステークホルダーに対して明らかにしました。SDGsとの関係性を明確にしつつ、E(環境)、S(社会)、C(文化)の中長期的なコミットメントと活動の進捗を報告しています。
[環境関連の中期目標](2020年2月時点)
項目目標値達成時期
CO2排出量カーボンニュートラル※12026年
パーム油サステナブルなパーム油 100% (RSPO MB方式以上)2026年
サステナブルな紙 100% (認証紙・再生紙など)※22023年
水消費量 △40% (対2014年)※32026年
廃棄物埋め立てゼロ※42022年
容器包装100%サステナブルな容器※52025年

※1: 資生堂全事業所 ※2:商品における ※3:資生堂全事業所、売上高原単位 ※4:自社工場のみ ※5:プラスチック製容器について
「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下 TCFD)」の提言に基づくシナリオ分析結果を開示
当社は、長期にわたる持続的な成長のためには、気候関連リスクへの対応が不可欠という認識のもと、TCFDへの賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響を分析する手法を開発しました。
そして、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会、及び気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされる物理的リスク・機会について、1.5℃シナリオと4℃シナリオそれぞれにおける分析結果をまとめ、サステナビリティレポートにて開示しました。さらに、気候関連リスクを軽減するため、当社は2026年までのカーボンニュートラル達成を目標として開示し、全バリューチェーンを通じたCO2削減とイノベーションを伴う機会創出に努めていきます。
環境対応パッケージ開発促進
プラスチックは、便利な一方で海洋ゴミとして世界の大きな環境課題の一つになっています。当社は、サーキュラー・エコノミーの考えに賛同し、環境負荷軽減に向けて、資生堂5Rsを定めました。Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース)からなる5Rsのもと、2025年までに100%サステナブルな容器※1とすることを目標として定め、製品のライフサイクル全体を通じた環境影響軽減に努めます。
環境に配慮したさまざまな容器包装には、例えば、つめかえ・つけかえ容器の展開や、容器再利用プログラムLOOPへの参加(2021年中に東京都内でサービスを開始予定)、リサイクルに適した単一素材容器、再生PET容器などを実現しています。また、株式会社カネカとの共同開発により、優れた生分解性が期待される素材「カネカ生分解性ポリマー PHBH®※2」の化粧品容器への応用を実現しました。このように、当社の独自の技術や社外とのコラボレーションを通じたイノベーションにより、商品の使いやすさや美しさだけでなく環境への配慮を追求していきます。
※1 プラスチック製容器について
※2 株式会社カネカが独自に開発した100%植物由来のポリマーであり、海中や土中など幅広い環境下で優れた生分解性が期待される素材
当社のサステナビリティについての詳細及び公表済みのサステナビリティレポートについては、当社企業情報サイトの「サステナビリティ」(https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/)をご覧ください。
メイクを通じた社会貢献活動、日経SDGs「社会価値賞」受賞
資生堂は2020年「第2回 日経SDGs経営大賞」の部門賞である「社会価値賞」を受賞しました。この賞は、SDGsと経営を結び付けることで事業を通じて社会、経済、環境の課題解決に取り組み、企業価値の向上につなげた企業を選出し表彰するものです。当社のこれまでの女性活躍推進の取り組み及び本業を通じた社会貢献活動が評価されました。
当社は本業のメイクを通じて、がん患者さんや肌に深いお悩みをもつ方の支援を行っています。現在、治療技術の進歩や早期発見により、がんと向き合って過ごす期間が長くなる傾向にあり、就労をしながら通院するがん患者さんも増加しています。当社では、2017年から化粧とクリエイティブの力でがん患者さんの社会復帰を支援するプロジェクト「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」を行っています。資生堂の社員ボランティアと、活動趣旨に賛同した異業種企業、団体、医療機関と連携し、がんになっても笑顔で暮らせる社会の実現を目指しています。また、世界対がんデーである2月4日には、プロジェクトに参加したがんサバイバーの写真やインタビューをまとめた書籍を刊行しました。
今後も当社の活動の趣旨に賛同する組織団体(NPOや医療機関など)と業務提携を行い、より多くの患者さんとの接点を拡大すべく活動を展開していきます。
デジタルを活用した社員へのヘリテージの継承活動を強化
来年、創業150周年を迎える資生堂がさらなるイノベーションをおこしていくために、社員に向け、デジタルを活用したヘリテージの継承活動を強化しています。新たに制作した映像コンテンツでは、静岡県掛川市にある資生堂企業資料館の見学を世界中のグループ社員がイントラネット上で疑似体験することが可能になりました。加えて、社員がヘリテージから活動のヒントを得るために先人のエピソードをショートストーリーとして定期的に発信しています。一方で、マーケティング、研究などさまざまな領域の社員に対しヘリテージをテーマに直接語り掛ける講演を積極的に進めてきました。多様なバックグラウンドをもつ社員が、資生堂のヘリテージに触れ、新たな気づきと発見を得る機会を増やし、社員のモチベーションを高め、今後の価値創造を加速してまいります。
また、企業文化活動のグローバル展開の一環として、企業文化誌「花椿」は2020年夏・秋合併号より中国語版を刊行し、中国国内15都市で配布をスタートさせました。中国の資生堂のお客さまはもちろん、若い世代に資生堂の美意識、「花椿」視点のジャパニーズ・ビューティー、カルチャーを知っていただき、資生堂への興味、共感をさらに喚起させることを目指しています。7~9月には中国各地で刊行イベントも開催され、11月には上海での第3回中国国際輸入博覧会でも配布されるなど、すでに多くの人々の手に渡り中国での認知を高めています。
当社はこれらの活動を通じて、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指し、100年先も輝き続ける企業となれるよう取り組みを継続してまいります。