有価証券報告書-第120期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)
研究開発活動
当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、人間科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、環境負荷を最小限に日本発のイノベーションを創出することで、資生堂の新たな企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。
2019年4月に本格稼働した資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでおり、世界中のお客さまに対して安全・安心、高品質な商品・サービスの創出に向け、革新的な技術の積み重ねにより世界の化粧品業界をリードしていきます。
当社グループのイノベーションへの取り組みは外部から高い評価を受けており、化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Conference 2019」において当会計年度におきましても最優秀賞を受賞しました。また、30年にわたり当社と共同研究を進めている、ハーバード医科大学付属皮膚科学研究所とマサチューセッツ総合病院が設立した、皮膚科学の領域では世界トップクラスの研究所として知られている「CBRC(Cutaneous Biology Research Center)」とさらに共同研究を6年拡大することに合意しました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は317億円(売上高比2.8%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。
(1) スキンケア
当社グループは、心地よい使用感触を実現する化粧品の研究開発を進めた結果、“塗布中にリッチなコクがありながらスッと肌になじみ、塗布後の肌がべたつかない、これまでにない心地よい感触”を実現する成分(新規水溶性高分子)の開発に成功し、その技術を「SHISEIDO」へ採用しました。その心地よい感触で脳の快適度も上昇することを感性工学・脳科学を通じて定量的に確認しました。
多くの女性の悩みである、加齢によって発生するシワやたるみといった顔の形状変化の詳細なメカニズム解明に向けて共同研究を進めた結果、細胞の微細な形状まで観察することに成功し、加齢に伴い肌内部に形成される老化した細胞が、周囲の細胞の機能を低下させ、肌の加齢変化を引き起こすことを解明しました。また、この“老化の伝播”を真皮の幹細胞が抑制することと、加齢で著しく減少するこの幹細胞が高齢者の肌でも皮脂腺周囲に豊富に存在することを発見しました。これらの技術は「IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Congress 2018」で最優秀賞を受賞しました。得られた技術を応用し「クレ・ド・ポーボーテ」へ採用しました。
敏感肌ブランド「dプログラム」に向けた、20歳~49歳の敏感肌女性200名を対象にしたアンケート調査では、97%の人が「寒暖差は肌にダメージを与える」という意識があることが分かりました。寒暖差(温度低下刺激)により肌のバリア・保湿機能に重要な酵素のひとつであるカスパーゼ14が減少し、寒暖差が直接的に肌に悪影響をもたらす要因であることを解明しました。
皮膚表面から放出される気体(皮膚ガス)に着目し、緊張による心理的ストレスが加わることで特徴的なニオイが皮膚ガスとして放出される現象を発見し2つの成分を特定しました。本知見は皮膚ガスが生理的に重要な指標であり、心理的変化も捉えることが出来ることを示すものです。このニオイを包み込んで目立たなくする技術を開発し、本技術を「エージーデオ24」へ応用しました。
(2) メイクアップ
当社の調査では女性がファンデーションをつけている時間が年3,500時間もあることがわかりました。約6割の女性が持つ「ファンデーションは肌によくない」というネガティブなイメージをポジティブに転換する、薬用化粧品での効能効果に加えてファンデーション機能を持たせた、美しい仕上がりを両立する素肌までキレイにするファンデーション「薬用 ケアハイブリッドファンデ」を開発しました。薬用化粧品にファンデーション機能を持たせるという新しい美容習慣を提案します。得られた技術を「dプログラム」、「HAKU」、「純白専科」へ採用しました。
唇の印象に関する調査結果より、自然な艶で透明感が高い唇が「浮かずに自然なのに惹きつける」と評価されることが分かりました。薄くぴったりフィットする密着層に肌なじみ効果の高いパールを配合し、その上を薄膜の艶がフィルムのように包み込む新処方を開発し、「マキアージュ」の目指す自然な艶と透明感の高い発色を叶える口紅を実現しました。
2015年に世界的に権威のある仏マリ・クレール誌で最優秀化粧品賞を受賞するなど日焼け止め用乳液に採用した紫外線防御膜をさらに強化する技術開発を進めています。汗を弾く、広がる、乾く、の3ステップメカニズムで汗が玉になりにくい汗・速乾技術を開発し、汗による化粧崩れを防ぐBBプロテクターを開発しました。得られた技術を「SHISEIDO」へ採用しました。
(3) ヘアケア
若年層も育毛剤・ヘアトニックを使用している一方で、「スタイリング剤で頭皮への悪影響を心配せず、頭皮ケアまでできたら楽なのに」という声があります。1本でスタイリングから頭皮ケアまでできる、頭皮ケアエッセンスを開発し、「UNO」へ採用しました。頭皮への負担を心配することなく、自信をもってスタイリングできる生活を提供します。
(4) ヘルスケア
ヘルスケア領域では、美と健康をつなぐ食品や一般用医薬品の研究開発を進めています。食品では、ヘルシーライフを楽しむアクティブな40代以降の女性を対象としたブランド「N.O.U」で、新しいボディマネジメント発想のサプリメント「サプリ セルサイザー」を開発しました。
(5) プロフェッショナル
サロントリートメントで得られる極上の髪の美しさを最大限に持続させるために、特定の成分が熱と反応して髪表面に新しい層を形成し、髪を外的ストレスから防ぐ独自テクノロジーを開発しました。施術直後のサロンならではの仕上がりと、3日に1度のホームケアで悪影響を与える外的要因から髪を守り長期間持続を実現します。その対応技術を「サブリミック」へ採用しました。
その他の活動としては、環境負荷の最小化を目指し、株式会社カネカと海水中で高い生分解性を持つ独自素材「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の化粧品容器などへの活用を目指し、共同開発を開始することに合意しました。独自の技術や社外とのコラボレーションを通じて、商品の使いやすさや美しさだけでなく環境への配慮を追求した容器の開発などを行っています。
また、毛髪再生医療の実用化に向けて開発を進めています。当社が細胞培養加工を担当して共同研究先の医療機関で行われた臨床研究では、安全性及び一定の有効性が確認されました。今後は、前回の臨床研究結果を踏まえ、共同研究先とともに、より実用的な治療を目指した臨床研究を行う予定です。
2019年4月に本格稼働した資生堂グローバルイノベーションセンター(呼称「S/PARK エスパーク」)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでおり、世界中のお客さまに対して安全・安心、高品質な商品・サービスの創出に向け、革新的な技術の積み重ねにより世界の化粧品業界をリードしていきます。
当社グループのイノベーションへの取り組みは外部から高い評価を受けており、化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Conference 2019」において当会計年度におきましても最優秀賞を受賞しました。また、30年にわたり当社と共同研究を進めている、ハーバード医科大学付属皮膚科学研究所とマサチューセッツ総合病院が設立した、皮膚科学の領域では世界トップクラスの研究所として知られている「CBRC(Cutaneous Biology Research Center)」とさらに共同研究を6年拡大することに合意しました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は317億円(売上高比2.8%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。
(1) スキンケア
当社グループは、心地よい使用感触を実現する化粧品の研究開発を進めた結果、“塗布中にリッチなコクがありながらスッと肌になじみ、塗布後の肌がべたつかない、これまでにない心地よい感触”を実現する成分(新規水溶性高分子)の開発に成功し、その技術を「SHISEIDO」へ採用しました。その心地よい感触で脳の快適度も上昇することを感性工学・脳科学を通じて定量的に確認しました。
多くの女性の悩みである、加齢によって発生するシワやたるみといった顔の形状変化の詳細なメカニズム解明に向けて共同研究を進めた結果、細胞の微細な形状まで観察することに成功し、加齢に伴い肌内部に形成される老化した細胞が、周囲の細胞の機能を低下させ、肌の加齢変化を引き起こすことを解明しました。また、この“老化の伝播”を真皮の幹細胞が抑制することと、加齢で著しく減少するこの幹細胞が高齢者の肌でも皮脂腺周囲に豊富に存在することを発見しました。これらの技術は「IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Congress 2018」で最優秀賞を受賞しました。得られた技術を応用し「クレ・ド・ポーボーテ」へ採用しました。
敏感肌ブランド「dプログラム」に向けた、20歳~49歳の敏感肌女性200名を対象にしたアンケート調査では、97%の人が「寒暖差は肌にダメージを与える」という意識があることが分かりました。寒暖差(温度低下刺激)により肌のバリア・保湿機能に重要な酵素のひとつであるカスパーゼ14が減少し、寒暖差が直接的に肌に悪影響をもたらす要因であることを解明しました。
皮膚表面から放出される気体(皮膚ガス)に着目し、緊張による心理的ストレスが加わることで特徴的なニオイが皮膚ガスとして放出される現象を発見し2つの成分を特定しました。本知見は皮膚ガスが生理的に重要な指標であり、心理的変化も捉えることが出来ることを示すものです。このニオイを包み込んで目立たなくする技術を開発し、本技術を「エージーデオ24」へ応用しました。
(2) メイクアップ
当社の調査では女性がファンデーションをつけている時間が年3,500時間もあることがわかりました。約6割の女性が持つ「ファンデーションは肌によくない」というネガティブなイメージをポジティブに転換する、薬用化粧品での効能効果に加えてファンデーション機能を持たせた、美しい仕上がりを両立する素肌までキレイにするファンデーション「薬用 ケアハイブリッドファンデ」を開発しました。薬用化粧品にファンデーション機能を持たせるという新しい美容習慣を提案します。得られた技術を「dプログラム」、「HAKU」、「純白専科」へ採用しました。
唇の印象に関する調査結果より、自然な艶で透明感が高い唇が「浮かずに自然なのに惹きつける」と評価されることが分かりました。薄くぴったりフィットする密着層に肌なじみ効果の高いパールを配合し、その上を薄膜の艶がフィルムのように包み込む新処方を開発し、「マキアージュ」の目指す自然な艶と透明感の高い発色を叶える口紅を実現しました。
2015年に世界的に権威のある仏マリ・クレール誌で最優秀化粧品賞を受賞するなど日焼け止め用乳液に採用した紫外線防御膜をさらに強化する技術開発を進めています。汗を弾く、広がる、乾く、の3ステップメカニズムで汗が玉になりにくい汗・速乾技術を開発し、汗による化粧崩れを防ぐBBプロテクターを開発しました。得られた技術を「SHISEIDO」へ採用しました。
(3) ヘアケア
若年層も育毛剤・ヘアトニックを使用している一方で、「スタイリング剤で頭皮への悪影響を心配せず、頭皮ケアまでできたら楽なのに」という声があります。1本でスタイリングから頭皮ケアまでできる、頭皮ケアエッセンスを開発し、「UNO」へ採用しました。頭皮への負担を心配することなく、自信をもってスタイリングできる生活を提供します。
(4) ヘルスケア
ヘルスケア領域では、美と健康をつなぐ食品や一般用医薬品の研究開発を進めています。食品では、ヘルシーライフを楽しむアクティブな40代以降の女性を対象としたブランド「N.O.U」で、新しいボディマネジメント発想のサプリメント「サプリ セルサイザー」を開発しました。
(5) プロフェッショナル
サロントリートメントで得られる極上の髪の美しさを最大限に持続させるために、特定の成分が熱と反応して髪表面に新しい層を形成し、髪を外的ストレスから防ぐ独自テクノロジーを開発しました。施術直後のサロンならではの仕上がりと、3日に1度のホームケアで悪影響を与える外的要因から髪を守り長期間持続を実現します。その対応技術を「サブリミック」へ採用しました。
その他の活動としては、環境負荷の最小化を目指し、株式会社カネカと海水中で高い生分解性を持つ独自素材「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の化粧品容器などへの活用を目指し、共同開発を開始することに合意しました。独自の技術や社外とのコラボレーションを通じて、商品の使いやすさや美しさだけでなく環境への配慮を追求した容器の開発などを行っています。
また、毛髪再生医療の実用化に向けて開発を進めています。当社が細胞培養加工を担当して共同研究先の医療機関で行われた臨床研究では、安全性及び一定の有効性が確認されました。今後は、前回の臨床研究結果を踏まえ、共同研究先とともに、より実用的な治療を目指した臨床研究を行う予定です。