有価証券報告書-第114期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/25 13:47
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【項目】
132項目

研究開発活動

当社グループは、世界中のお客さまの「美と健康」を実現する画期的な商品、サービスの提供をさまざまな技術の融合による実現をめざしております。平成25年10月には、横浜市に位置していた2拠点のリサーチセンターを統合いたしました。この横浜市のリサーチセンターをはじめ、東京都品川区のビューティークリエーション研究センター、米州(米国)、欧州(フランス)、アジア(中国、タイ)の各拠点とともに、研究開発活動を推進しております。その内容は高く評価されており、化粧品科学技術の最も権威ある研究発表会 IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)では、平成24年10月に開催された「IFSCC Congress 2012」に引き続き、平成25年10月ブラジル リオデジャネイロにて開催の「IFSCC Conference 2013」におきまして、通算22回目の賞を受けました。これは世界の化粧品メーカーの中で最多受賞回数となります。このように世界中のお客さまに向けた安心・安全、高品質な商品の創出に向けた技術の積み重ねは、世界の化粧品業界をリードしております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は13,540百万円(売上高比1.8%)であり、各事業別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、以下のとおりであります。なお、基礎研究などの各事業に直接配賦できない費用4,832百万円が含まれております。
<国内化粧品事業>お客さまに、より美しい肌と美しい生活を実現していただくことを願い、基礎的な皮膚科学・界面科学の研究から化粧品原料素材の開発、製品の開発・評価、美容法の開発、さらにはお客さまが言葉に表しにくいような感覚や気持ちの領域など、幅広い研究開発を行っております。
当連結会計年度は、スキンケアでは、30代以降のお客さまに芽生える「実際の年齢よりも若く見られたい」という意識のもと、エイジングケアへの研究を進めました。30年の長きにわたり培ってきたコラーゲン研究により導き出した新成分に加え、みずみずしい液状にもかかわらず、肌になじませるとリッチで濃密な感触に変わる新感覚処方を「エリクシールシュペリエル エンリッチドセラム」に採用いたしました。
紫外線による肌への悪影響をお客さまが認知し、紫外線ケアの意識は益々高まっております。日常生活での紫外線とレジャーで受ける紫外線の種類は異なりますが、同時にこれらの紫外線から肌を守る処方技術や、製剤の光による劣化を防ぐスタミナ処方技術を組み合わせ、「アネッサ」に応用いたしました。肌にのせると水のようになり、肌を満たすような使用性も合わせて実現いたしました。
メーキャップでは、現代女性のライフスタイルを徹底的に研究し、疲れて帰った時にすぐに入浴しながらお湯でメークが落とせたらよい、という今までの化粧行為の枠をとびこえたお客さまの声の実現を目指してまいりました。重ねたメークであってもお湯で落ちる、暑い時期でも汗では落ちないような化粧もち、化粧下地として化粧のりの良さを実現するという、今までにない視点での研究に取り組み、新しい生活習慣をお客さまへ提供いたしました。また、環境負荷低減も同時に実現し、1回の化粧行為で1.6リットルの水を節約することも可能としました。この技術を「フルメークウオッシャブルベース」に応用いたしました。
ヘアスタイリング剤では、「固めず、まとまる」「再整髪できる」というベネフィットにもとづき、「霧状」の新スタイリング剤「ウーノ フォグバー」に新たな技術を採用いたしました。髪を一本ずつコートし、髪同士がすいつくようにまとまる整髪成分を新たに導入し、自然な毛流れを生かしたヘアスタイルのトレンドを作り出しました。
ヘルスケア事業では、美と健康をつなぐ食品を中心とした研究開発を進めており、「綺麗のススメ」、「ザ・コラーゲン」、「長命草」などに応用いたしました。
当事業に関わる研究開発費は5,822百万円であります。

<グローバル事業>「ハイ・クオリティ」を追求する海外化粧品に対応するために、当社独自の高度なサイエンスと最先端テクノロジーに立脚した製品の開発を推進しております。
肌のキメは、若い女性の肌状態の良し悪しを明確に表すといわれています。お客さまは、一見美しく見える肌やお手入れの行き届いた肌であっても、空気が乾燥すると肌状態が悪化することを経験的に知っています。キメと深いかかわりのある角層細胞との関係に着目した研究を進め、その関係を解き明かすとともに、キメが整った美しい肌をはぐくむことを可能としました。この技術を世界中のさまざまな環境下にいるお客さまにお届けするため、「SHISEIDO IBUKI」に採用いたしました。
アミノ酸は、古くから知られている生体中のたんぱく質を構成する成分で、100年も前から化粧品にも多く使用されております。その多くにはD-体とL-体の2種類あります。当社ではこのアミノ酸の中でも、今まで謎の多かったD-体に改めて着目し、生体への研究を進めてまいりました。その中のひとつ、D-アラニンには、肌をケアし美肌効果のあることを見出しました。これは、当社が得意とする皮膚科学研究と最新の分析技術との融合により成しえました。この技術を中国専用ブランドである「ウララ」に採用しております。
グローバルのお客さまに向けた口紅では、平成23年IFSCC最優秀賞「2層分離技術」をさらに進化させ、漆のようななめらかな仕上がりと深みのあるつや、鮮やかな色合いを実現した「SHISEIDO Lacquer rouge」を次々と世界のお客さまにお届けしました。さらには、すき漆のように透明感のある仕上がりと豊かなつや、シアー感を唇に与える「SHISEIDO Lacquer gross」に応用いたしました。
プロフェッショナル事業では、いきいきと弾むような毛髪は快適な頭皮から生まれることに着目した研究を進めました。スキンケア技術を応用した頭皮バリアケアテクノロジーに基づく研究成果を、アジアのお客さまに向けた「ザ ヘアケア フェンテ フォルテ」に応用いたしました。
当事業に関わる研究開発費は2,715百万円であります。
<その他>フロンティアサイエンス事業では、医療用医薬品、化粧品・医薬品原料、クロマトグラフィー、美容皮膚医療などの研究開発を進めております。
当事業に関わる研究開発費は169百万円であります。
その他のトピックスとしては、新たに、日本を含むアジア全域を対象とした脱毛症や薄毛に悩むお客さまに向け、安全で有効な毛髪再生を提供することを目指した研究開発を進めております。この取り組みは、政府が進める成長戦略を受け、高い成長性が見込める先進医療分野への参入を目指したものであります。
また、新たなイノベーションの実現に向け、皮膚科学と数理モデル・コンピューターシミュレーションを融合した国家プロジェクト研究に参画しております。皮膚科学において、バリア機能低下を伴う「アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症などのかゆみ」、「敏感肌」、「表皮の老化」などの発症や、「バリア機能回復過程」などのメカニズムには不明な点が多く、根本的な治療法も確立されておりません。特にアトピー性皮膚炎に対する「バリア機能回復」視点からの新しい病態改善法を提案できれば、社会的にも大きな貢献につながるものとして研究を進めております。