有価証券報告書-第116期(平成27年4月1日-平成27年12月31日)

【提出】
2016/03/25 16:28
【資料】
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【項目】
133項目

研究開発活動

当社グループは、さまざまな技術の融合により、世界中のお客さまの「美と健康」を実現する画期的な商品、サー
ビスの実現をめざしています。横浜市のリサーチセンターをはじめ、東京都港区のビューティークリエーション研究センター、米州(米国)、欧州(フランス)、中国、東南アジア(タイ)の各拠点において、研究開発活動を推進しています。各研究所において、より地域に密着した研究体制の確立と規模の拡大を図り、国・地域別にお客さまのインサイトを捉えた商品開発やマーケティングとの連携を強化しています。先端のシミ予防研究から新知見を見出し独自の美白有効成分や新技術開発により進化し続けている「HAKU」は、商品ラインナップとマーケティングの強化、積極的な売場づくりや情報発信と連動し、10年連続で美白美容液市場No.1を達成しています。世界中のお客さまに向けた安心・安全、高品質な商品の創出に向けた技術の積み重ねにより、世界の化粧品業界をリードしていきます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は11,299百万円(売上高比1.5%)であり、各事業別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、以下のとおりです。なお、基礎研究などの各事業に直接配賦できない費用4,205百万円が含まれます。
(1) 日本事業
お客さまにより美しい肌と美しい生活を実現していただくために、お客さまを中心に据え、お客さまが言葉に表しにくいような感覚や気持ちにまで踏み込んだ美容法の開発、製品の開発・評価に取り組んでいます。また、基礎的な皮膚科学・界面科学の研究など幅広い研究を行っています。
スキンケアでは、うるおいはコラーゲンによる弾力を維持するためにも重要であるため、肌のうるおい成分である「ヒアルロン酸」に着目し研究を進め、ヒアルロン酸を生み出す表皮幹細胞技術を開発しました。お客さまに肌のハリ・弾力をより実感いただけるよう、これまでのコラーゲン研究と併せて、世界で初めて実証した「表皮と真皮のダブルの幹細胞アプローチ」を「エリクシール」に採用しました。また、デリケートな肌のお客さまはお手入れ自体にストレスを感じていることを究明し、腹式呼吸とハンドプレスを活用したストレス軽減のお手入れ方法を開発し、「d プログラム」に活用しました。
メーキャップでは、約13,000回の肌色・肌質感の印象評価テストを実施し、20~30代女性の化粧肌の色と印象の関係を捉え、最新の感性科学、脳科学を駆使し、「直感でわかる、人を惹きつける魅力」と「心地よい感触」を解析・検証しました。10秒間、マッサージをするようになじませることで、カラー成分が溶け出し、疲れた印象にみせる「くすみ」や「毛穴」をカバーし、美人印象を高める肌色、肌質感に変える新発想の化粧下地を開発し「マキアージュ」に採用しました。
ヘアケアでは、お客さまの「髪と地肌のやわらかさ」を求める意識に寄り添い、「髪と地肌をWケアする」というコンセプトを更に体感していただけるよう、ダメージ補修効果の高いオイルを極小化し、高い補修機能と持続機能をかなえる技術を「TSUBAKI」のアウトバストリートメントに採用しました。
ヘルスケア事業では、美と健康をつなぐ食品や一般用医薬品の研究開発を進めています。
当事業に関わる研究開発費は4,300百万円です。
(2) グローバル事業
「ハイ・クオリティ」を追求する海外のお客さまに向け、当社独自の高度なサイエンスと最先端テクノロジーに立脚した製品の開発を推進しています。
スキンケアでは、栄養や酸素を供給する毛細血管と水分や老廃物を回収するのに欠かせないリンパ管が健やかな肌を維持するうえで重要な役割を担っていることから、毛細血管とリンパ管の研究に注力して研究を進めました。その結果、皮膚のリンパ管の機能が低下すると皮下脂肪が蓄積し「たるみ」の原因となることを解明し、「SHISEIDO」に応用しました。また、加齢と共に大きく変化する顔の形は多くの女性の悩みとなっていますが、その形状を支える肌構造を世界に先駆けて明らかにした研究成果(IFSCC Congress 2014にて最優秀賞受賞)をプレステージブランドの「クレ・ド・ポー ボーテ」、中国市場向けブランドの「オプレ」「ウララ」に応用し、世界中のお客さまにお届けしました。
プロフェッショナル事業では、大人の女性が抱える「うねり」「ハリ・コシのなさ」「艶の低下」といった髪の悩みに対応した技術を新ヘア&スカルプケアライン「ザ・ヘアケア フューチャーサブライム」に採用しました。
当事業に関わる研究開発費は2,733百万円です。
(3) その他
フロンティアサイエンス事業では、敏感な肌に適用する医科向け化粧品「ドゥーエ」、先進の美容皮膚医療用化粧品「ナビジョン」をはじめ、医療用医薬品、化粧品・医薬品原料、クロマトグラフィー分析装置など、化粧品開発技術を応用した商品開発を進めています。また、国内外の大学、研究機関と連携して、キラルアミノ酸を指標とする新たな医療分野への貢献を目指しています。
当事業に関わる研究開発費は59百万円です。
その他の活動としては、時代の変化と共に多様な価値観・ライフスタイルが生まれ、これまで以上に主体的に行動する生活へとシフトしているお客さまの変化に対応した、新たなイノベーションに向けた取組みを進めています。新たに毛髪再生医療の事業化に向けた研究開発に取り組むために、2014年に神戸市に開設した資生堂細胞加工培養センター「SPEC®」は、2015年に厚生労働省より施設許可を取得しました。また、1989年から共同研究を続けてきた米国・ボストンのマサチューセッツ総合病院/ハーバード医科大学付属皮膚科学研究所「CBRC」と新たな提携に関する契約を締結しました。皮膚科学の共同研究を拡大するとともに、健康な肌を保つための啓発活動にも取り組んでいきます。また、2018年末に多様な人々との交流や融合によって新しい価値を生み出す新研究所「グローバルイノベーションセンター(仮称)」を横浜・みなとみらい21地区に設立します。新研究所設立へ向けた新しい研究開発のかたちの第一歩として、研究員が教育機関、企業など30を超える異業種と共同で作品を制作し、サイエンスの知見とデザインが出会う(LINKする)ことで、感触を視覚化することに挑戦した展覧会「LINK OF LIFE さわる。ふれる。美の大実験室 展」を開催しました。今後も多様な知の融合によって「これからの美」を生み出していきます。