有価証券報告書-第116期(平成27年4月1日-平成27年12月31日)

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2016/03/25 16:28
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度における財政状態及び経営成績の分析は次のとおりです。
なお、文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2016年3月25日)現在における当社グループの将来に関する見通し及び計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
① 有形固定資産
当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
② のれん、商標権及びその他の無形固定資産
当社グループでは、のれん、商標権及びその他の無形固定資産について、減損の判定を行っています。のれん、商標権及びその他の無形固定資産の公正価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率など、多くの見積り・前提を使用しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。経営者は、当該判定における公正価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。
③ 有価証券
当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価又は実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態及び経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
⑤ 退職給付費用及び債務
当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度及び退職一時金制度です。従業員の退職給付費用及び債務は、割引率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用及び債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類毎に期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 概要
当社グループは、2015年度より、100年先も輝き続ける企業となるための中長期戦略 VISION 2020 をスタートさせ、実現に向け大きく動き出しました。2015年度からの最初の3カ年を事業基盤の再構築の期間と位置づけ、戦略の根幹となるブランド価値向上のため、すべての活動をお客さま起点とし、マーケティングとイノベーションの強化、それらを支える多様な人材の活用とグローバル組織の構築などに取り組みました。
なお、売上高、営業利益のセグメントの分析については、「1 業績等の概要 (1)業績」に記載しています。
② 売上高
当連結会計年度の連結売上高は、前期同一期間比12.6%増の763,058百万円となりました。国内売上は中高価格帯を中心とするブランド改革の成果に加えインバウンド需要を着実に取り込んだことにより前期同一期間比11.7%増の296,903百万円、海外売上は中国、アジア、米州及び欧州のすべての地域において前期同一期間を上回ったことにより現地通貨ベースで前期同一期間比5.4%増、円換算後では為替レートが円安傾向で推移したことにより前期同一期間比13.3%増の466,155百万円となりました。
③ 売上原価、販売費及び一般管理費
(売上原価)
売上原価は、前期同一期間に比べ11.3%増加の196,009百万円となりました。売上高に対する比率は前期同一期間より0.3ポイント改善され25.7%となりました。これは主にプロダクトミックスの好転、コスト構造改革の効果によるものです。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、前期同一期間に比べ10.3%増加の529,388百万円となりました。売上高に対する比率は、売上が伸長したことで1.5ポイント改善され69.4%となりました。その内訳は次のとおりです。
(イ) マーケティングコスト
マーケティングコストの売上高に対する比率は25.2%と前期同一期間に比べ0.5ポイント増加しました。積極的にTVCMなどの広告費を増加させたことに加え、企業広告を強化したことが主な要因です。
(ロ) 人件費
人件費の売上高に対する比率は、前期同一期間より1.6ポイント改善され25.7%となりました。構造改革による生産性向上の効果もあり、売上が伸長したことで売上比率が大きく改善しました。
(ハ) 経費
経費(その他の費用)の売上高に対する比率は、前期同一期間より0.3ポイント改善され17.2%となりました。研究開発費を増加させた一方、構造改革の着実な進捗により前年度より低下しました。
(ニ) M&A関連償却費
M&A関連償却費の売上高に対する比率は、前期同一期間より0.1ポイント減少し、1.3%となりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は11,299百万円となり、売上高に対する比率は1.5%となりました。なお、研究開発活動についての詳細は、「6 研究開発活動」として開示しています。
④ 営業利益
営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、積極的にマーケティング投資をすると同時に費用を効率的に運用してきたことなどから、前期同一期間比77.4%増の37,660百万円となりました。売上高営業利益率は1.8ポイント改善され4.9%となりました。
⑤ 営業外損益
営業外損益は、前期同一期間に比べ1,652百万円減少し、72百万円の損失となりました。
⑥ 経常利益
経常利益は、営業利益が増加したことから、前期同一期間比64.8%増の37,588百万円となりました。
⑦ 特別損益
特別損益は、ジャン ポール ゴルチエ フレグランスに関する知的財産権の譲渡に関連して生じたライセンス契約の早期終了補償金及び特別ボーナス等のほか、アユーラブランド及びトルコ子会社の譲渡による事業譲渡益を計上したことなどにより、5,304百万円の利益となりました。
⑧ 税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純利益は、前期同一期間に比べ9.8%増益の42,892百万円となりました。
⑨ 法人税等(法人税等調整額を含む)
当連結会計年度は変則決算に伴う未実現利益消去に係る税効果の影響で法人税等調整額が増加したことなどにより、前期同一期間比94.0%増加の17,292百万円となりました。
⑩ 非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は、前期同一期間に比べ9.3%減少の2,389百万円となりました。
⑪ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期同一期間に比べ15.7%減益の23,210百万円となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「4 事業等のリスク」として開示しています。
(4) 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しについては、「1 業績等の概要」及び「3 対処すべき課題」として開示しています。
(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資金調達と流動性マネジメント
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能な財務体質を維持すべく、ベンチマークとなる有利子負債比率は25%を目安としており、大型投資案件による資金調達が必要となった場合には、経営動向や財務状況及び市場環境などを勘案して、最適な方法でタイムリーに実施します。
手元流動性については、連結売上高の1.5カ月程度をひとつの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金、有価証券の総額は124,457百万円となり、手元流動性は連結売上高(2015年1月1日から2015年12月31日までの期間)の1.7カ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は86,613百万円となっています。国内普通社債の発行登録枠の未使用枠900億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠3.0億米ドル、並びに米国子会社のCPプログラムの未使用枠65百万米ドルなどを有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
② 格付け
当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、グローバルな資本市場から円滑な資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下「ムーディーズ」)及びスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(以下「S&P」)の2社より格付けを取得しています。
2016年2月29日現在の債券格付けの状況(長期/短期)は以下のとおりです。
ムーディーズS&P
長期A2(見通し:安定的)A-(見通し:安定的)
短期P-1A-2

③ 資産及び負債・純資産
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1.8%減少の808,547百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ1.1%減少の410,673百万円となりました。
固定資産は、のれん等の償却に加え、本社保有の投資有価証券を売却したことなどにより、前連結会計年度末に比べ2.6%減少の397,873百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、借入の返済などにより、前連結会計年度末に比べ4.6%減少の395,212百万円となりました。
有利子負債の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑤連結附属明細表」に記載しています。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、株主資本が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1.0%増加の413,334百万円となりました。
1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べて11.37円増加し981.37円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末の47.0%から1.4ポイント上昇し48.4%となりました。
キャッシュ・フローについては、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
(キャッシュ・フロー指標の推移)
2011年
3月期
第111期
2012年
3月期
第112期
2013年
3月期
第113期
2014年
3月期
第114期
2015年
3月期
第115期
2015年
12月期
第116期
自己資本比率(%)41.640.340.142.247.048.4
時価ベースの自己資本比率(%)77.578.973.890.3103.3124.8
債務償還年数(年)2.93.54.41.83.31.4
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)32.827.322.547.524.271.7

(注) 1 自己資本比率 : (純資産の部合計-新株予約権-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額/総資産
債務償還年数 : 有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
4 有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しています。
5 当社グループの米州子会社における、店頭販売活動に関する見本品・販促物の会計処理は、従来、取得時に資産計上し、顧客へ出荷した時点で費用処理していましたが、グループ内の会計処理の統一を図るため、第112期より取得時費用処理に変更しました。当該会計処理の変更は遡及適用され、第111期の連結財務諸表について遡及処理しています。
6 第114期より、「従業員給付」(国際会計基準第19号 2011年6月16日改訂)を一部の連結子会社において適用し、確定給付負債の純額の変動の認識方法の変更等を行っています。当該会計方針の変更は遡及適用され、第113期の関連する主要な経営指標等については遡及処理後の数値を記載しています。
7 第116期より当社及び3月決算であった連結対象会社は、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。この変更に伴い、当社とすべての連結対象会社の決算日が統一され、第116期においては、当社及び3月決算であった連結対象会社は4月1日から12月31日までの9カ月間、12月決算である連結対象会社は1月1日から12月31日までの12カ月間を連結対象期間としています。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
(中長期戦略 VISION 2020)
当社は、資生堂グループの企業使命である“美しい生活文化の創造”のもと、100年先も輝き続ける資生堂の原型をつくるため、2020年度を一つの節目とした中長期戦略VISION 2020 を策定し、2015年度より取組みを始めています。VISION2020では、2020年度までに“成長エネルギーが充満した会社”“若々しさがみなぎる会社”“世界中で話題になる会社”“若者があこがれてやまない会社”そして“多様な文化が混じりあう会社”となることをめざしています。また、世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーとして確固たる地位を築くべく、すべての活動をお客さま起点に、マーケティングやイノベーションを強化するとともに、それらを支える多様な人材の活用とグローバル組織の構築などに取り組んでいます。
定量的な目標として、2020年度の連結営業利益を1,000億円超、ROEを12%以上と定め、これらの目標を達成するための連結売上高は1兆円超をめざします。
具体的な戦略推進にあたっては、2015年度から2017年度までの3カ年を今後の成長のための事業基盤の再構築の期間と位置づけ、ブランドの選択と集中、ブランド強化に向けたマーケティングや研究開発への投資拡大を進めます。日本の成長性回復、中国事業の再建、欧米の収益力向上に注力するとともに、トラベルリテールやデジタル・Eコマースなど成長領域への投資も拡大し、2017年度には、連結売上高9,000億円超、営業利益500~600億円、ROE9~10%をめざします。また、2018年度から2020年度までの3カ年を成長加速のための新戦略に取り組む期間と位置づけ、新ブランドの開発・M&A、投資継続・リターンの獲得、未進出エリア・新規事業開拓、グローバル経営体制の確立、ビジネスモデルの見直し・刷新に取り組みます。
(2016年度計画)
3カ年計画の2年目である2016年度は、以下の事項に集中してさらに一歩踏み込んだ構造改革・積極投資を継続していきます。これにより徹底的な事業基盤の再構築を実現し中長期的成長を確実なものにしていきます。
日本においては、持続的な成長によるシェアの拡大をめざします。ブランド力の強化に向けては、ブランドの選択と集中及びマーケティング投資の拡大を継続することはもとより、取引先と協働し店頭実現力を強化するトレードマーケティングの強化や、インバウンド需要を獲得するべく訪日外国人に対する店頭サポートの継続強化と訪日前後の情報発信による緊密なアプローチを推進します。課題であった低価格コスメティクスブランド、パーソナルケア事業については、それぞれマーケティング強化やブランドリニューアルにより本格育成を図ります。
海外においては、各地域本社主導による地域密着マーケティングの推進による成長性の拡大と、構造改革を通じた収益性の向上をめざしていきます。また、地域本社の本格稼働を受け、組織・マーケティングの強化を行うとともに、間接部門の共有を図るシェアードサービスを導入し、各地域における現地法人が有する機能をできるだけ集約しコスト削減も進めていきます。中国については、本社と現地法人の総力をあげて事業を再構築し、再成長の礎を築いていきます。売上が伸び悩んだ中価格帯ブランドについては、先行投資としてのマーケティング投資を強化するとともに、リニューアルを実施することで現地ブランドを復活させていきます。「bareMinerals」の売上が伸び悩んだベアエッセンシャルInc.については、マーケティング、チャネル、組織、オペレーションコストなどすべての項目の抜本的見直しに着手し、ブランド強化に取り組みます。
なお、取組みの詳細は「3 対処すべき課題」に記載しています。