有価証券報告書-第76期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/21 13:22
【資料】
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【項目】
123項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
① T&Kの精神に則った経営の展開
T&Kは、Technology and Kindness(技術と真心)の頭文字であり、常に数歩先んじたテクノロジーで製品を開発、市場に供給し、そのバックグランドは人間性のある思いやり、真心(技術重視経営プラスハート)に支えられているとする考え方であります。
このような方針のもとで当社グループは、絶えずユーザーニーズに耳を傾け、T&Kの精神に基づき、お客様に喜んでお使い頂ける高い技術水準で安定した品質の製品作り、よりきめ細かいサービスに努め、会社の競争力の維持、強化、収益力の向上、財務体質の強化を図るとともに、株主の皆様に対しては配当水準の安定と向上に取り組んでおります。
② グローバルなグループ経営の展開
将来に向けての成長が期待できるアジア地域への積極的な投資による事業拡大を行い、アジア地域での生産、販売を更に拡大させ、印刷用インキを通じて地域の文化や風習を尊重した現地化に徹した経営に努めることで、当社グループの総合力の強化を図っております。特に印刷用インキの需要が増加しております中国市場を最重点地域として、将来の更なる需要増に対処すべく経営の展開を図っております。
③ UVインキ市場での優位性の確立
UVインキは、瞬間硬化で強靭な塗膜を形成し高品質な印刷ができることから、ラベル、パッケージ、証券、カード類、プラスチック容器、金属缶など様々な用途に使われております。また、近年ではカタログや書籍においても、小ロット・短納期の印刷ニーズに対応するため、UVインキが使われるようになってきました。先進国ではIT化の流れの中で情報媒体としての印刷物需要は減少傾向にありますが、UVインキにおきましては、今後も用途拡大により安定した成長が見込まれております。一方、アジア地域などの新興国では、経済水準の向上に伴い包装容器の高級化のニーズが増加し、UV印刷の普及拡大が進みつつあります。これらの状況を踏まえ、当社グループ全体の製品開発力を高め、また当社が得意とする多品種・小ロット・短納期対応を強化することで、他社との差別化を図り、優位性を確立する所存であります。
④ 経営の最重要課題として位置づけられる環境問題
UVインキをはじめとして、環境への配慮を考慮した安全で環境対応型の印刷インキの開発及び販売の強化に努める所存であります。
⑤ 経営における迅速な意思決定と実行・透明性・健全性の追求を目指します。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、企業価値の増大を図っていくために、重要な経営指標として、株主還元としての配当性向30%以上を目指すことを目標としております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
経営の基本方針に則り、当社グループは印刷インキの総合インキメーカーとしての技術を基礎に、新しいマーケットの開拓、新製品の開発及び高付加価値製品の開発を行い、顧客ユーザーに信頼され、同業他社と一味違う特色あるインキメーカーとしてT&Kの精神に則り、強力なる企業集団づくりを目指します。
経営上の戦略は次のとおりであります。
① 販売網強化によるグローバル展開の加速
欧州及び北米を重点展開地域とし、市場規模が大きく当社グループの競争力が高いUVインキ中心の拡販、アライアンス等を視野に各地域における販売網の強化
② 地域別拡販体制の再整備による拡販
地域特性に適した油性インキ、UVインキそれぞれの高級市場をメインとした獲得を図りつつ、これまで築いたポジションをもとに地域別拡販体制を再整備し、当社グループ及び協力代理店との連携による拡販の推進
③ 付加価値訴求の強力推進
トータルコストメリットの訴求や環境対応製品の開発による省電力UVインキ市場でのシェア獲得、“キレイナ”等商品力を活かして機能性分野に一層注力した高付加価値枚葉インキのシェア拡大
④ 効率化による収益力向上
生産・技術部門が一体となった作業工程の見直しや廉価原料の採用などによるトータルコストダウンの推進
⑤ 研究開発及び生産体制の強化
新素材分野への進出や社外研究機関との共同開発体制の構築による研究開発体制の強化、滋賀工場の有効活用による効率化及び供給力強化
(4) 当社の現状の認識について
当社グループは、T&K(Technology and Kindness=技術と真心)の精神に則り、日本国内及びアジア地域では、UVインキにおいて高い市場シェアを獲得しております。アジア地域におきましては高い市場シェアと高収益を維持しております。このベースは絶えずユーザーニーズに耳を傾け、ユーザーの役に立つ製品の開発供給、よりきめ細かいサービスに努めること、更に東南アジアにおきましては、これらに加えて地域の文化や風習を尊重した現地化に徹していることであります。
(5) 当面の対処すべき課題及びその対処方針
当社グループは、印刷インキの総合メーカーとしての技術を基礎に新しいマーケットの開拓、新製品の開発及び高付加価値製品の開発を行い、顧客ユーザーに信頼され、同業他社と一味違う特色あるインキメーカーとしてT&K(Technology and Kindness=技術と真心)の精神に則った経営を展開しております。国別、地域別に対処すべき課題はそれぞれに異なっておりますが、当面、当社グループが対処すべき課題及び対処方針といたしまして以下のことが挙げられます。
① UVインキの用途拡大と市場シェアの拡大
日本国内におきましては、UVインキの印刷インキ全体に占める割合は5%前後と低く、この割合を上げることこそ、当社グループの業績向上に直結する課題であるため、ユーザーニーズを積極的に掘り起こし、UVインキを訴求し、また、近年新規導入が増えている省電力型UV印刷機用のUVインキ開発等に積極的に取り組んでおります。また、アジア地域におきましては、UVインキによる印刷方式が急速に拡大されつつある中で、関係会社での現地生産設備を増強し、この需要に対応いたします。更に欧米向けにはUVインキの輸出拡大及び技術フォローを図り、日本国内、海外ともにそのシェアの拡大を目指します。
② 油性枚葉オフセットインキのシェア拡大
印刷機メーカー主導による省電力UV印刷の機械台数が増える中、従来からの油性オフセット枚葉印刷は、まだ8割以上の市場があります。この印刷方式では、印刷工程でインキの裏移りを防ぐためにパウダーを散布
しており、それが印刷機械や周辺に堆積し様々な弊害の原因となっております。それらを大幅に軽減できるパ
ウダーレスインキは、当社グループが顧客のソリューションを提供するために、独自に開発した新しい製品です。既に多くのユーザーで採用され高い評価を得ております。これを積極的に展開することで、更なる市場シェア拡大を目指します。
③ 特殊UVインキへの積極的な対応
特殊UVインキ(液晶パネル向け着色用レジストの分散加工及び新規用途製品)の分野では、市況が大変厳しい状況にはありますが、引き続き新規の高性能製品の開発に尽力するとともに、生産技術の更なる向上により高品質かつ低コスト生産を実現することで競争力を高め、販売量の増加を目指します。
④ アジア地域での印刷インキの市場シェアの拡大
当社が合弁事業を展開しておりますアジアの国々におきましては、当社グループが生産しております印刷インキは高い市場シェアと高収益を実現しております。特に中国では、今後もインキの需要の増加が続くと予想されるため、長期的戦略に基づいた設備の増強を図り、シェアの向上を目指します。
⑤ 印刷用インキの原料値上げの対応
主原料であります原油系原料、植物系原料は殆どが国外から調達しておりますため、資源の価格上昇及び為替相場の変動が原料の調達価格に影響を及ぼす可能性があります。そのため原料購入先の見直し、使用量の多い原材料の価格交渉を継続的に行うことで、原料原価の上昇を極力抑制し、コスト削減策に取り組むとともに、自助努力の限界を超える上昇分につきましてはユーザーへの理解、協力のもと製品価格の値上げを推進してまいります。
⑥ BCP(緊急時の事業継続計画)対策
日本ではどの地域におきましても地震などの災害が起こるリスクが存在いたします。当社グループはUVインキのシェアが高く、また当社製品を100%使用しているユーザーも多数あります。現在、主力製品は埼玉事業所でのみ生産しておりますため、緊急時には供給に支障をきたす可能性があります。その対策及び生産能力増強を兼ねて、滋賀事業所に合成樹脂工場を移転し、その敷地内にUVインキ工場を建設しております。
(6) 具体的な取組現況等
UVインキの用途拡大、新製品の開発及び市場シェアアップに向け、UVインキの研究開発体制の強化を推進しております。特殊UVインキ分野につきましては、新規用途製品の開発のために、ヒト・モノ・カネの経営3資源を重点投下しております。
また、アジア地域のUVインキの需要増へは、韓国及び中国国内の合弁会社にあるUVインキ生産専用工場にて対応しております。更にUVインキの技術を輸出し、インキの技術の提供や、技術の協力を行うことにより、グループ全体における品質向上および技術サービスの強化を図っております。
パウダーレスインキは画期的なインキゆえに、社内における新規素材開発を重点的に進め、開発の加速化と技術の流出防止にも努めております。
当社の主力製品の印刷インキの原料であります顔料、合成樹脂及び有機溶剤などには多種類の化学物質が原料として使われおり、その製品特性に応じて何らかの環境に及ぼす可能性があります。法令の遵守はもとより、できるだけ環境に配慮した製品設計を心がけております。