有価証券報告書-第78期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 16:53
【資料】
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【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
①全般
当連結会計年度の世界経済は、全体として緩やかに回復していたものの、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと見込まれます。
日本は、雇用・所得環境の改善が続くなか個人消費は持ち直し景気も緩やかに回復してきたものの、先行きについては、当面、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと見込まれます。
アジア地域については、新型コロナウイルス感染症の影響により、中国では経済活動の大幅な縮小が生じており、足下で景気は減速しております。また、その他アジア地域については、経済活動が抑制されており、当面、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと見込まれます。
アメリカでは、景気は着実に回復が続いてきたものの、先行きについては、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済活動が抑制されており、当面、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと見込まれます。
ヨーロッパ地域については、ユーロ圏では景気は新型コロナウイルスの影響により、経済活動が抑制され、足下で景気は弱い動きとなっており、当面、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと見込まれます。
世界経済は、当面、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと見込まれ、金融資本市場の変動の影響には引き続き注意が必要です。
②印刷市場
印刷産業をパッケージ印刷(各種パッケージ、ラベル等)、出版印刷(雑誌、新聞、書籍等)、商業印刷(冊子・パンフレット、カタログ、DM等)の3つに区分すると、世界市場の割合はそれぞれ約65%、20%、15%となります。従来は、パッケージ印刷は4~5%の成長、出版印刷は2%程度の縮小、商業印刷は1%程度の成長により、全体としては2%台後半の年間成長ポテンシャルが見込まれておりましたが、足下では新型コロナウイルス感染症の影響による世界的な経済活動の縮小がみられ、下押しされることが予想されます。
③新型コロナウイルス感染症への対応と課題
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行下においても、当社が製造・販売する印刷用インキは、医薬品や食料品のパッケージに使用されております。生活必需品の安定的な供給が求められているなか、最善の感染予防策を講じた上で事業を継続させることは、当社の社会的な責任であると認識しております。
そのため、基本的な感染予防策の徹底に加え、テレワーク体制への移行、時差勤務、デスクワークの分散等、各種感染リスクの低減・感染規模縮小のための施策や、従業員の家庭生活における負荷低減のための施策、また罹患者発生時の対応手順やバックアップ体制の準備等、種々の施策を行っております。
一方、全世界的な経済活動や企業活動の低下の影響は、当社の様々な取り組みに及んでいることも事実であり、これらに対しては新しい企業活動様式の模索と、経営会議等での状況の変化に応じた迅速な意思決定により対応してまいります。
④印刷インキに対するニーズと当社の対応
印刷産業における世界的ニーズの潮流は、地球環境問題を背景として、環境配慮型インキ(水性インキ、ノントルエンインキ、ノンVOCインキ等)や植物由来原料インキ、省エネルギー対応インキへのシフトを、印刷工程等における生産性向上や印刷物自体の品質向上を伴いつつ実現するところにあります。
当社が中期経営計画の重点施策の一つとしている2つの付加価値訴求製品、省電力UVインキとパウダーレス枚葉インキ“キレイナ”は上記ニーズを業界最高水準で満たしており、これらの製品を、T&K TOKAとVan Sonの販売網を通じて、世界各国の印刷事業者へ提供いたします。
当社がUVインキ自社開発成功以来、40年以上に亘って蓄積したノウハウと、製品ラインナップの多様さは、競合他社との競争優位の源泉となっています。また、グッドデザイン賞も受賞した“キレイナ”は、印刷現場における永年の夢であった‘パウダーフリー化’をも実現できる画期的な油性枚葉インキとして、他社に先駆けて新しい市場を創出する可能性があると考えています。
(2) 中期経営計画の進捗状況
中期経営計画「With You toward 2020」の2年目にあたる当連結会計年度におきましては、北米地域における事業伸長は順調に進んだものの、日本やアジア地域のオフセットインキが低調に推移したことや、特殊UVインキの開発遅延への対応の遅れなどにより、2年目の売上高は目標値を大幅に下回る結果となり、中期経営計画の売上高計画値の達成が困難な状況となりました。しかしながら、当社の事業課題から導かれた基本方針、基本戦略に変更はなく、それらを着実に実行してまいります。
中期経営計画の重点施策は(a)グローバル展開の加速(b)付加価値訴求の強力推進(c)コスト削減・効率化の追求の3つであり、当連結会計年度の進捗状況は次のとおりです。
(a) グローバル展開の加速
当社として早期に海外進出を果たした東南アジア地域に加え、重点展開地域としているヨーロッパ地域並びに北米地域においても、以下の具体的な成果を中心に、各地域において事業の拡大に向けた取り組みが行われました。中期経営計画2年目の目標値を達成した地域がある一方、競争の激化や需要の伸び悩みへの対応が遅れた地域では、売上高は伸長したものの年度目標値の達成には至りませんでした。2021年3月期においては、リソースの投入や運営の見直しを各地域の状況に応じて行ってまいります。
地域・国具体的成果
東南アジア地域中国浙江迪克東華精細化工有限公司の工場建設プロジェクト推進
タイトオカ(タイランド)㈱の事業伸長
その他の地域ヨーロッパ地域Van Son(NL)※1での枚葉インキの販売伸長
Van Son(NL)※1での省電力UVインキの販売伸長
北米地域Van Son(US)※2での省電力UVインキの販売伸長
T&K TOKA U.S.A., INC. による事業伸長

※1.Royal Dutch Printing Ink Factories Van Son B.V.(オランダ王国)
※2.Van Son Holland Ink Corporation of America(アメリカ合衆国)
(b) 付加価値訴求の強力推進
2つの付加価値訴求製品、省電力UVインキとパウダーレス枚葉インキ“キレイナ”については、ヨーロッパ地域ならびに北米地域において省電力UVインキの販売が大きく伸長しましたが、日本においてはプロモーション活動が価格改定活動に分散され、年度シェア目標の達成に至りませんでした。2021年3月期においてはプロモーション活動を重点的に実施してまいります。
(c) コスト削減・効率化の追求
生産・技術部門が一体となって生産コストのトータルコストダウンに取り組んだ結果、UVインキの生産能率は前年比で106%と改善しましたが、需要が低迷した製品群においては数量減少の影響をカバーしきれず、各主要製品群の生産能率は前年比で91%~106%となり、全体としては年度目標値の達成に至りませんでした。
業務コストの削減については、Web-EDIの採用数の増加やRPAの導入促進、製品ストックポイントの統廃合などにより、年度目標値を達成いたしました。
原材料コストの削減については中国の環境規制強化やグローバル規模の素原料需給逼迫に端を発した原材料価格の高騰・高止まりの影響を受け、年度目標値の達成に至りませんでした。
なお、前期より活動を続けてきた価格改定の取り組みは、収益改善に一定の効果をもたらしました。
研究開発および生産体制の強化については、グループ内研究機能の相互共有が具体的に進捗し、海外グループ会社と本社研究開発部門との共同した取組みにより、性能とコストのバランスをこれまでにない高水準で実現した戦略製品の市場投入が開始されました。
(3)2021年3月期における取り組み
中期経営計画最終年度となる2021年3月期は、売上高の計画値達成は困難な状況であるものの、当連結会計年度に引き続き、グローバル展開の加速、付加価値訴求の強力推進ならびにコスト削減・効率化の追求を継続して推進し、次期中期経営計画に繋がる改革を着実に実施してまいります。
(2021年3月期アクションプラン)
グローバル展開の加速のうち、ヨーロッパ地域ではT&K TOKAとVan Sonの統合された商流を活用し、新設計省電力UVインキのプロモーションの強化をおこないます。また、Van Son(NL)における枚葉インキの品質管理水準の引き上げと増産を進め、Van Son(NL)の売上高・生産量・収益性の向上を更に強力に推進いたします。北米地域ではT&K TOKA U.S.A., INC.が中心となりVan Son(US)、Midwest Ink Co.による省電力UVインキの拡販を中心とする成長戦略を進めてまいります。その他のエリアとしてASEAN・南インド地域では販売体制を再編することによりT&K TOKAのエリア統括機能を強化し、既存事業の収益基盤拡充を継続的に進めてまいります。
日本における付加価値品への注力につきましては、技術並びに営業部門リソースの省電力UVインキと“キレイナ”への重点的な投入と、組織効率を向上させ印刷インキ事業の運営管理体制の強化を行ってまいります。
コスト削減・効率化の追求につきましては、前期に引き続き生産・技術部門が一体となったトータルコストダウンを進めるほか、赤字製品群の削減を継続的に行ってまいります。
研究開発につきましては、前期に引き続き国内外の大学および研究機関との共同開発を進め、新素材開発の取り組みを加速させます。また、原材料産地として中国への依存度が高い状態の改善については、他産地原材料の採用検討を進め安定供給の確保を図ります。生産体制の強化につきましては、浙江迪克東華精細化工有限公司の新工場稼働開始を着実に行ってまいります。