有価証券報告書-第148期(2023/01/01-2023/12/31)
③戦略
当社グループは、気候関連のリスクについて、低炭素経済への移行に関連するリスク(移行リスク)と気候変動の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)の二つに分類、影響を受ける財務影響の大きさを評価し、事業に及ぼすリスクと機会を整理しました。さらに、気温上昇につきIEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオを用いてシナリオ分析を実施し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれのリスクと機会を踏まえた適応策・財務影響等について検証しました。今後も引き続き、リスクと機会の検討やシナリオ分析の精緻化を進めていきます。
<気候変動に関する主なリスクと機会>
<シナリオ分析の結果概要>
当社グループは、気候関連のリスクについて、低炭素経済への移行に関連するリスク(移行リスク)と気候変動の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)の二つに分類、影響を受ける財務影響の大きさを評価し、事業に及ぼすリスクと機会を整理しました。さらに、気温上昇につきIEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオを用いてシナリオ分析を実施し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれのリスクと機会を踏まえた適応策・財務影響等について検証しました。今後も引き続き、リスクと機会の検討やシナリオ分析の精緻化を進めていきます。
<気候変動に関する主なリスクと機会>
重要な要因 | 区分 | 潜在的な財務的影響 | 財務影響 | 今後の対応策 | ||
リスク | 移行リスク | 脱炭素社会への移行 | 政策・ 法規制 | カーボンプライシングの導入・上昇 | 大 | ・カーボンニュートラルのロードマップの策定と実践 ・エネルギー使用量の「年1%削減活動」の推進(設備の効率化、運転の最適化、加工仕様の見直し等) ・再生可能エネルギーの利用拡大 ・エネルギー新技術の導入 |
市場 | 資源(原料)価格の高騰・供給の不安定化 | 大 | ||||
再生可能エネルギー・燃料価格(原油、天然ガス)の上昇 | 大 | |||||
技術 | 製造プロセス効率の改善のための設備投資 | 中 | ||||
評判 | 排出量削減の取り組みや取り組み姿勢に対する顧客評価、株価への影響 | 小 | ||||
再生可能エネルギー利用を推進する世界的な動きへの対応(ステークホルダーからの評判) | 小 | |||||
製品・サービス需要の変化 | 市場 | 製造時CO2排出量評価による製品選別(同一製品内の競争) | 大 | 製造時のCO2排出ゼロに向けた製造拠点のカーボンニュートラル化の推進 | ||
自動車業界の変革への対応 | 市場 | MaaSによる自動車販売台数の低下 | 大 | 生産財タイヤの強化、コスト、サービス、DXの探索 | ||
物理的リスク | 気温上昇に伴う気象災害の 激甚化 | 急性 | サプライチェーンの寸断による原材料調達困難化、調達コストの上昇 | 大 | ・サプライヤー、原料産地の分散化 ・風 水害や地震等に対応した生産拠点の補強、BCP策定 | |
異常気象による設備損壊、運転停止 | 大 | |||||
気候変動の激甚化 | 慢性 | 気候変動による天然ゴム(天然資源)の枯渇、調達困難化 | 大 | サステナブル原料の研究開発強化 | ||
降雪の減少等による冬用タイヤ需要の低下 | 大 | オールシーズンタイヤの開発・販売 | ||||
製品性能向上に必要な研究開発投資の増加 | 中 | ビジネスパートナーとの共同研究開発の推進 | ||||
機 会 | 脱炭素社会への移行 | エネルギ ー源 | 製造プロセス効率の改善によるエネルギーコスト削減 | 中 | エネルギー使用量の「年1%削減活動」の推進(設備の効率化、運転の最適化、加工仕様の見直し等) | |
製品・ サービス | 需要の変化(カーボンニュートラル対応・電動車(EV)装着の性能要求)や規制強化への早期対応によるシェアの拡大 | 大 | ・EV対応タイヤの新車装着強化 ・E+マークのEV対応タイヤの販売拡大 | |||
製品・サービス需要の変化 | 製品・ サービス | 再生可能/リサイクル原料を使用した環境負荷低減製品や低燃費、低炭素化製品の提供による競争力・収益力の向上 | 大 | ・再生可能/リサイクル原料を使用したタイヤ、ゴム製品の販売拡大 ・環境性能に優れた低燃費タイヤの販売拡大 ・製造時のCO2排出ゼロのタイヤ、ゴム製品の販売 | ||
自動車業界の変革への対応 | 製品・ サービス | 次世代モビリティを支える製品・サービスの需要増 | 大 | ・センサータイヤ(IoTタイヤ)の販売 ・タイヤソリューションサービスの強化 | ||
気候変動 | 製品・ サービス | 防災・復旧・気温変動や食料・自然に資する製品・サービスの需要増 | 大 | ・オフハイウェイタイヤ(OHT)の販売拡大 ・耐衝撃性、耐熱性の高いコンベヤベルト等のゴム製品の販売拡大 |
<シナリオ分析の結果概要>
シナリオ条件 | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | |
シナリオの概要 | 持続可能な発展のため、厳しい気候政策や技術革新により、2100年までの世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5℃に抑えるシナリオ | 厳しい気候政策や技術革新が進まず、気候変動の物理的影響が急速に強まり、2100年までの平均気温が産業革命前に比して4℃上昇することを想定するシナリオ | |
参照 シナリオ | 移行リスク | IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE) | IEA World Energy Outlook 2021(WEO2021) |
物理リスク | IPCC第6次報告書SSP1-1.9 | IPCC第6次報告書SSP5-8.5 | |
分析結果 | 主に移行リスク・機会が顕在化。 (リスク) 厳格な気候変動規制への対応が求められ、再生可能エネルギーの調達やカーボンプライシング導入などによりエネルギーコスト負担や製造プロセス効率改善のための設備投資が増加。 環境負荷低減製品の増加に伴い、再生可能/リサイクル原料の研究開発費や調達コスト負担が増加。 (機会) カーボンニュートラル対応、EV装着の性能要求への早期対応、環境負荷低減製品や低燃費、低炭素化製品の提供により、競争力・収益力が向上。 | 主に物理リスク・機会が顕在化。 (リスク) 拠点やサプライチェーンにおける甚大な自然災害の発生が増加。また、異常気象により天然資源が枯渇し、原料供給が不安定化。 降雪の減少等による冬用タイヤ需要の低下など、慢性的な気候変動により製品需要が変化。 (機会) 防災・復旧・気候変動などに対応する製品・サービスの需要が増加。 |