有価証券報告書-第105期(2023/01/01-2023/12/31)

【提出】
2024/03/26 15:20
【資料】
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【項目】
147項目
① 戦略
当社グループでは、2024年を初年度とする中期事業計画(2024-2026)において、経営スタンスを、「危機対応」から、経営・業務品質の向上を最優先に、それを追求する情熱を示す「Passion for Excellence」へ進化させ、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、「良い種まきを実施し、新たなビジネスを創る」の4つのシナリオで構成される「ビジネス具体化シナリオ」にそって、価値創造へよりフォーカスしてまいります。このビジネス具体化シナリオの中でも、「良いビジネス体質を創る」すなわち、経営・業務品質の向上を、2024年に取り組むべき最優先課題と捉えており、その推進のためには、すべての企業活動の基盤、原動力である「人財」一人ひとりが生産性・創造性(人的創造性)の向上に取り組むこと、それに向けた環境を整備していくことが不可欠であると考えております。
・一人ひとりの生産性・創造性(人的創造性)の向上
当社グループでは、事業戦略と連動した人財戦略の推進に向けて、事業戦略と連動した付加価値創造により、企業価値向上を図ると共に個人の成功・自信の波及を通じて、多様な人財が輝ける様になることを人財戦略の軸とし、付加価値の最大化、人財一人ひとりの生産性・創造性の向上に向けて、持続的な成長を図る様々な取り組みを進めております。これらの取り組みを表す指標として、「人的創造性」を2023年から試行し、中期事業計画(2024-2026)からグローバル経営KPIとして導入しております。「人的創造性」は、人財投資を強化し、付加価値を上げ、価値創造の好循環を生むことを基本的な考え方としております。グローバル共通の一本の軸として、人的創造性KPI(調整後営業利益(付加価値)を人財投資(労務費、教育訓練費、福利厚生費の和)で割ったもの)でグローバルの推移を把握しながら、地域別・国別の課題に取り組んでおります。
この人財戦略を推進し、「人的創造性」を向上させていくにあたり、グローバル共通の重点課題である「ブリヂストンらしい人財の確保」、「人財能力開発」、「働きやすい環境整備」、「多様な人財が輝ける場所の提供」に取り組み、また、事業戦略と連動した人財ポートフォリオ推進・強化を図っていくべく、「人財の見える化」「ポジションの見える化」の取り組みにも着手しております。
人的創造性KPI
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・ブリヂストンらしい人財の確保-経営・業務品質の向上-
当社グループは、創業以来、「最高の品質で社会に貢献」を不変の使命として、変わりゆく社会のニーズに対応し、安心・安全なヒトとモノの移動を支え続けるために、事業を拡大・進化させてまいりました。「品質へのこだわり」「現物現場」「お客様の困りごとに寄り添う」「挑戦」というブリヂストンDNAはブリヂストンの挑戦の歩みとその歴史の中で培われたものであります。こうした4つのDNAに共感し、体現していく「ブリヂストンらしい人財」を確保していくことは、「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」で掲げている「常態化する変化に動ぜず、ゴムのように強靭でしなやかに、変化をチャンスに変えるレジリアントな“エクセレント”ブリヂストン」に向けて、また、中期事業計画(2024-2026)の初年度2024年において、「良いビジネス体質を創る」すなわち経営・業務品質向上に取り組んでいくために不可欠であると捉えております。そして、その基盤となるのは1960年代に、卓越した総合的品質管理を実施している企業に与えられる「デミング賞実施賞」の受賞に向けて策定した当社独自の「デミング・プラン」であります。1968年にデミング賞実施賞を受賞し、その活動は、当社グループの使命である「最高の品質で社会に貢献」及び、ブリヂストンDNAである「品質へのこだわり」に強く反映されております。「現物現場」で行われている継続的改善活動は、当社グループのグローバルでの財産となっており、この財産を大切に、リーダーから、組織全体、そして従業員一人ひとりが、それぞれの役割の中で、イノベーションと継続的改善を推進し、当社グループのあらゆる業務において、生産性の向上や、質の高い業務を遂行することを常に目指すという意味のオペレーショナルエクセレンスを追求することが業務品質の向上につながっていくものと考えております。ブリヂストンらしい人財の確保及び育成に向けて、ブリヂストンらしい品質経営研修を2023年より当社経営層から強化し、2024年からは、さらに幅広い層に実施していくと共に、グローバルへ展開してまいります。
・人財能力開発(人財の育成に関する方針)
当社グループは事業戦略と連動した人財戦略に基づく人財育成を推進しております。「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の実現、中期事業計画(2024-2026)の遂行に向けて、ブリヂストンDNA強化を進めていくと共に、会社の成長と従業員一人ひとりの成長の実現が両輪をなすものであるよう、自ら挑戦・成長する意欲がある人財が更なる価値創出につなげていくための人財育成施策を加速させております。
a.挑戦意欲の向上
「挑戦」に関しては、特に探索事業において、他社とのアライアンスに加え、社内ベンチャー「ソフトロボティクス ベンチャーズ」を立ち上げ、新しい事業をゼロから創り出したいという起業家精神を持った多様な人財が集結、早期の事業化に挑戦するなど、「多様な人財が“輝く”、多様な挑戦の場」づくりを進めております。当社グループには、プレミアムタイヤ、ソリューション、化工品・多角化といった幅広い事業領域と川上(原材料)から川下(販売・サービス)までのバリューチェーンがありますが、どの事業領域・バリューチェーンにおいても、ステークホルダーにさらなる価値を提供すべく、主体的に行動を起こし、挑戦する姿勢は不可欠と考えております。当社においては、自ら手を挙げて各業務における国内外の現場において、自分で立てた課題・仮説の調査・検証に取組む「現場100日チャレンジプログラム」やマネジメントへのチャレンジ意欲のある若手従業員が、マネジメント補佐として早期にマネジメント経験に挑戦する「マネジメント・チャレンジ制度」等を導入し、意識と行動変革を進めております。なお、2023年、現場100日チャレンジプログラムには15名、マネジメント・チャレンジには10名がそれぞれ参加しました。現場100日チャレンジプログラムについては、2024年以降、グローバルへの展開も進め、さらに多くの従業員の挑戦を後押ししてまいります。
b.リーダーシップ開発
当社グループは150か国以上で事業を展開しており、海外売上比率は約80%となっております。より進化させた「グローカル」経営体制の構築と共に、将来にわたり、持続的に成長し、企業価値向上を図っていくためには、単にビジネスに精通するだけでなく、異文化対応力を持つ次世代経営リーダーの育成が急務であると考えております。各地域・国別にリーダーシップ開発を進めると共に、次世代グローバル経営リーダー育成を目的とした「Bridgestone NEXT100」ではグローバルで毎年約100人を選抜し、各経営報告会議体への参画、海外ビジネススクール研修への参加等を通じた重点育成も進めております。
c.デジタルスキル強化
“リアル”דデジタル”の融合による社会価値・顧客価値の創造は中期事業計画(2024-2026)の達成、「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の実現に不可欠であると考えております。デジタル領域に関しては、グローバルでデジタル人財の育成・獲得を図っております。2023年デジタル人財はグローバルで約1,600名となっております。当社では2023年より導入した幅広いレベルをカバーした「デジタル100日研修」に延べ700名を超える従業員が自分に合ったレベルを組み合わせたプログラムに参画し、デジタルスキル強化に取り組んでおります。
d.幅広い層に対する学びの機会
従業員一人ひとりの生産性・創造性の向上に向けて、意欲ある人財に継続的な学び(研修や教育)と挑戦の場を提供することは、会社の成長と従業員一人ひとりの成長の実現を両輪とし、レジリアントな“エクセレント”ブリヂストンへ変革させていくために非常に重要なものと考えております。地域別・国別の状況を踏まえながら、グループ全体で学びと挑戦の機会に対する人財育成投資を実行してまいります。当社においては、職種にかかわらず、全従業員に共通して必要な能力(職務遂行力・マネジメント力)を強化すること、自ら挑戦・成長する意欲のある従業員を支援することを目的とした研修体系「人財育成カレッジ」を構築・運営しており、「学ぶ機会」と「実践の場」を効果的に組み合わせることで、個人の成長と能力発揮、組織の活性化、事業戦略への貢献を図っております。また、受講者の声やニーズを把握し、PDCAをしっかり回しながら、毎年プログラムのレビューや拡充も行なっております。
・働きやすい環境整備(社内環境整備に関する方針)
当社グループは、多様な人財の活躍こそが「Bridgestone E8 Commitment」に表される価値の創出につながるという考えの下、多様な人財が輝く職場環境を整備しております。「Bridgestone E8 Commitment」と連動したグローバルカルチャーチェンジを推進するうえで、従業員エンゲージメントの向上を重要課題のひとつと位置付け、エンゲージメントサーベイによりモニタリングを行い、各地域の事例を共有し合う取り組みも始めております。また、2023年からはグローバル統一のエンゲージメントサーベイを実施し、各地域の文化、特性の違いを尊重しながらも、グローバル共通の評価と活動の軸をもって、取り組みを深化・進化させております。日本においては、当社グループの海外拠点と比べ、エンゲージメントやDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)領域でギャップがあり、その解消に向け、取り組んでおります。具体的には、当社グループで働く誇りの醸成を図るべく、入社時研修や新任管理職研修において創業の地である久留米へ訪問するプログラムを導入し、創業者の想いやDNA、企業理念を一層体感できるような機会を提供していることが挙げられます。また、多様な価値観を尊重し、組織としての意思決定の多様化を進めるため、女性リーダーの育成・登用促進へますます注力すると共に、多様な人財の活躍基盤整備として、全ライン長を対象としたDE&Iマネジメントワークショップの実施、女性特有の健康課題をテクノロジーを活用し解決するフェムテックプログラム導入等、ブリヂストンらしい取り組みを様々な形で進めております。
当社グループの企業経営の基盤は、「安全宣言」に掲げております「安全はすべてに優先する」であります。従業員一人ひとりが安全な職場で安心して働くための活動推進はもちろん、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様からも期待されており、高い安全基準の適用により当社グループの従業員や協力会社の労働安全・衛生を確保する上で、この安全宣言は一層重要になっております。当社グループは、高齢化に伴う人間工学的リスクの増加、規制の変更、機械や設備の老朽化、そして新技術の現場への導入にも対応するように安全基準を継続的に更新すると共に、当社グループが取り組みを開始する新規事業においても安全に対する意識を真摯に育んでまいります。
また、生産現場における環境整備に関しては、現場最前線の声を反映した即効性がある投資を実施し、福利厚生の充実化、職場環境改善、労働負荷軽減策に取り組んでおります。
・多様な人財が輝ける場所
当社グループは種々取り組みを通じて、多様な人財が“輝く”、多様な挑戦の場づくりをさらに進め、これらを通じて従業員エンゲージメントの向上や「Bridgestone E8 Commitment」による価値創造と連動した新たなDNAの創造、カルチャーチェンジの推進、女性リーダー人財の育成と登用、配置を実行してまいります。「Bridgestone E8 Commitment」で示す8つの「E」は、ブリヂストンらしい価値創造の軸と指針となっており、当社グループの最高位の従業員表彰制度であるBGA(ブリヂストングループアワード)やTQM(Total Quality Management)大会においても、主要な審査基準として取り入れ、実際のビジネスや現場の改善活動にも組み込んでおります。エンゲージメントサーベイ含め、各種意識・行動を測る調査等も通じて、進捗を見える化、PDCAを回しながら活動の質とレベルを向上させてまいります。
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